充電か、それとも放電か
そろそろ妻が帰宅するかもしれない時間だった。
それも、はっきりとしたことはわからない。
妻の帰宅は、今すぐかもしれないし、5時間後かもしれなかった。
そう思うと、落ち着かなかった。
それに、気分は最悪だった。
身体は怠いし、右瞼のあたりが少し腫れたようになっていた。
頭痛の時、いつもそうなるのだか、いまは頭痛もなかった。
とにかく、こんな気分のまま妻に罵られたくはなかった。
闘うためには、力が必要だ。
今は、それがない。
力を蓄えよう。そう思った。
逃げている。
しかしそれは、闘うために逃げるのだ。
立ち上がり、車の鍵を掴んだ。
玄関に向かいながら、体の異変に気付き、一瞬はっとした。
壁に手をかけて、立ち止まる。
何故か、やけに足が重たかった。
ソファーの寝心地
15時間。
車での移動時間である。
その内の、2時間は妻が運転を変わってくれた。
道中、胸の悪くなるような罵りを、妻から受けることもほとんどなかった。
義母も同乗していたからだろう。
さすがに、実の母親の前で、夫を罵るような真似はしなかった。
ただひとつ。
俺の意見に大して、妻がそれを否定する様を見て、義母は驚いたようだった。
そんなに威張らなくてもいいのに。
義母は妻に対して、たしなめるようにそう言ったのだった。
休憩時間などなかった。
観光の時間と、食事の時間。
強いて言えば、それが休憩だった。
帰路。
義母を家まで送った。
その直後、案の定、妻の態度が豹変した。
前方に、車が鼻先を出していた。
おかしな動きだった。
こちらが接近したそのとき、横断を開始した。
それは、ある程度予測が付いていたので、難なくかわせた。
それでも、妻は怒鳴り声を上げた。
「なんで気が付かないのよ、最初からおかしいとおもわない訳」
結局は、一日が気持ちよく終わるなどということはないのか。
思ったのは、それだけだった。
それから、どうしようもない苛立ちに襲われた。
もう一度、何か言ってきたら、こちらも徹底的に喚き散らしてやる。
そう決めた。
しかし、妻は何も言わなかった。
家に到着した。
疲労はピークに達していた。
部屋に入って、寝床の準備をした。
フローリングに、座布団を二枚ひいて、寝る。
最近は、そうしていた。
ソファーで寝るよりも、その方がはるかに快適なのだった。
電気を消し、目をつぶったその瞬間、いきなり戸が開いた。
妻だった。
「何でここで寝ているのよ。この部屋は一番いい部屋だと、母も言っていたわ」
そんなことを、わざわざ夜中に怒鳴り声で言うことなのか。
思ったら、怒りで歯噛みしていた。
「じゃあ、俺はどこで寝ればいいんだよ。ここじゃだめなのか。なら、ソファーで寝ればいいんだろ」
自分でも驚くくらい、でかい声を張り上げていた。
張り上げながら、妻の横をすり抜ける。
背中で、妻からの反撃をまった。
結局は、反撃はなかった。
そして、ソファーの寝心地は悪かった。
