曇り空 | 日々を生きる。~大切なものを失って得たもの。

曇り空

鳥の鳴き声が聞こえた。

やけに遠く感じる。

それは小さく澄んでいて、車の騒音に掻き消されそうだった。


窓の外。

眺めていても、鳥など見つからなかった。


気付くと、溜息を付いていた。

心の有り様が、俺を蝕んでいるのはわかっていた。

形だけでも明るく振る舞う。

そうすることによって、気持ちそのものも変わってくる。

何かに書いてあったことで、一度試してみたが、たしかに効果はあるのだった。

しかし、妻の様子を思い浮かべると、そんな気持ちも、掻き消えた。


犬の餌の準備のため、階下に降りた。

その時、ちらりと妻の方へ視線を向ける。

後ろ姿で、表情まではわからなかった。


外に出た。

犬の散歩である。

空を見上げると、雲の隙間から少しだけ、日の光りが差し込んでいた。

それでも、灰色の空だった。


立ち止まり、耳をすましても、鳥の鳴き声など聞こえなかった。


遠くに、車の唸る様な音が、微かに聞こえただけだった。