先日、一人の免状式を行いました。

 

初段の免状が読み上げられているとき、

 

指導者の話を聴いているときの

 

その中学生の表情はとても凛々しく、

 

着実な成長を感じました。

 

これまで積み重ねてきたものは

 

人としての軸をつくり、

 

生涯に渡って決して失われることのない

 

財産となっていきます。

 

この節目は彼も忘れることはないでしょう。

 

 

恩師も、段級を授けるときには、

 

想いを込めて声を掛けてくれたものです。

 

私もたくさんの言葉を覚えていますし、

 

いまも心に残っています。

 

それらの言葉は年齢を重ねるほどに

 

大切な一言となっており、年々、

 

私の理解も深まっているように感じます。

 

 

師範とは、

 

武道や伝統芸能において確固たる存在です。

 

ですが、指導者の立ち位置に上がって

 

それ以外の者たちとは異なる段階に至った、

 

自分の世界と違う人、

 

というような存在ではありません。

 

 

学び続けている点において、

 

みなと同じ。

 

それは指導者の地位を、ではなく、

 

その役割を学びつつ、

 

どこまでも修養者として、

 

そして一人の人としての学びなのです。

 

 

自分が道半ばであることを

 

指導者は充分に知っているゆえに、

 

その考えや言葉には厚みや奥行きが生まれ、

 

あたたかさや優しさをもつ。

 

生涯を通して学び続けるものがあり、

 

その学ぶ一人であることを

 

誰よりも深く分かっている者なのです。

 

 

非営利の顔をしながら

 

地位や権力、立ち位置の維持向上、

 

その報酬にとらわれている

 

あまたの道場や無恥な指導者をはじめ、

 

政治家や教職にある方々でさえ、

 

これらと無関係であれることはそうはない。

 

そのために、

 

真の指導者からの想いや言葉は

 

その他のものとは異なって、

 

私たちのなかに

 

残り続けて、心の奥底まで届き、

 

また何かしらを生み出す源泉となっていく。

 

そして、寄り添うように人生を通して

 

たしかな支えとなっていく。

 

これらのことは、

 

ごく自然なことともいえるでしょう。

 

この身に一切のとらわれやしがらみのない者と

 

そうではない者とは、

 

思考やそこから発せられる言葉に、

 

残念ながら、

 

天と地ほどの違いが起こってしまうものなのです。

 

     

私心のない

 

恩師の言葉が在り続けるのも道理といえます。

 

当初、何も出来ない自分であったこと、

 

これを覚えておくことは、

 

視点を変えれば慣れることよりも難しい。

 

私も生かされている一人であること、

 

そして、継続こそが力であり、

 

努力は必ず実を結ぶことを思い出させてくれる、

 

冬至を控えて寒さの沁みる時季ならではの

 

よい免状式の時間となりました。

 

 

追記

 

剛柔流空手道の特徴は、

 

ヨガを源流とする呼吸法と円運動です。

 

呼吸は心身の動きと一体であるため、

 

さまざまな緩急や強弱、間合い、

 

心の揺れなどとも合致させることにつながります。

 

ゆえに、丹田に落とす刹那を含めて

 

息を止めて踏ん張るような、

 

歯を食いしばるような瞬間はありません。

 

息を大きく吐いて、

 

心身を内に引き締めることで、

 

自律神経に働きかけて

 

全力を出すことと全体を整えること、

 

気持ちを引き上げ、

 

集中力を高めることと

 

それと同時に安定を図って鎮めることを

 

並び立たせることができるのです。

 

 

息を止めるような動き、

 

力んだり踏ん張ったり、奥歯を食いしばったり。

 

生きるものの本質は、

 

これらと対極にあることがよく分かります。

 

呼吸という読んで字のごとく、

 

まずは徹底して吐くことに大きな意味がある。

 

この世に生まれ出たばかり赤ん坊が

 

泣き叫ぶのもその表れ。

 

声を出すとは息を吐くことであり、

 

吐くことは、

 

外に向かって強く見えるようで、

 

その実は、外に強いのではなく、

 

内に向かってとても、強い。

 

内に引き締めることでなせるものなのです。

 

 

恩師も、息を吐くことの大切さを

 

たくさんの考察を交えて教えてくれました。

 

空気が冷たく澄んでいるこの真冬こそ

 

呼吸や息吹も、心身の軸の持ち方、

 

それらと重心の揺れをバランスさせる感覚も

 

より鋭敏なものとなる。

 

厳しさも愉しさも一段と増す、

 

いい時季です。

 

 

5つ、再掲します。

 

絶対的な領域

 

自分を遥かに超える

 

意志と伝統

 

呼吸は個々に特有のもの

 

立禅