大阪フィルハーモニー交響楽団 第568回定期 ウェブスター チャイコフスキー 交響曲第6番 ほか | 音と言葉と音楽家  ~クラシック音楽コンサート鑑賞記 in 関西~

音と言葉と音楽家  ~クラシック音楽コンサート鑑賞記 in 関西~

クラシック音楽の鑑賞日記や雑記です。
“たまにしか書かないけど日記”というタイトルでしたが、最近毎日のように書いているので変更しました。
敬愛する音楽評論家ロベルト・シューマン、ヴィルヘルム・フルトヴェングラー、吉田秀和の著作や翻訳に因んで名付けています。

大阪フィルハーモニー交響楽団

第568回定期演奏会

 

【日時】

2023年5月19日(金) 開演 19:00

 

【会場】

フェスティバルホール (大阪)

 

【演奏】

指揮:アンガス・ウェブスター

ピアノ:小林海都 *

管弦楽:大阪フィルハーモニー交響楽団

(コンサートマスター:崔文洙)

 

【プログラム】

ブラームス:悲劇的序曲 作品81

ショパン:ピアノ協奏曲 第2番 ヘ短調 作品21 *

チャイコフスキー:交響曲 第6番 ロ短調 作品74 「悲愴」

 

※アンコール(ソリスト) *

ショパン:マズルカ 第16番 変イ長調 作品24-3

 

 

 

 

 

大フィルの定期演奏会を聴きに行った。

指揮は、1999年イギリス生まれの若き指揮者、アンガス・ウェブスター。

ソリストは、1995年横浜市生まれ、2021年リーズ国際ピアノコンクール第2位受賞(その記事はこちらなど)のピアニスト、小林海都。

 

 

 

 

 

最初のプログラムは、ブラームスの悲劇的序曲。

私は遅れて行ったので、残念ながら聴けなかった。

この曲で私の好きな録音は

 

●ミュンシュ指揮 ボストン響 1955年12月5日セッション盤(Apple MusicCDYouTube

●クナッパーツブッシュ指揮 ウィーン・フィル 1957年5月セッション盤(Apple MusicCDYouTube

●ライナー指揮 シカゴ響 1957年12月14日セッション盤(Apple MusicCD

●カラヤン指揮 ウィーン・フィル 1961年9月5-22日セッション盤(NMLCDYouTube

●アバド指揮 ベルリン・フィル 1989年9月セッション盤(NMLApple MusicCDYouTube

 

あたりなのだが、これらのうち、今回のウェブスター&大フィルの演奏はきりりと引き締まったアバド盤に近いように感じたものの、モニター越しに聴いただけなのでよくわからない。

 

 

 

 

 

次のプログラムは、ショパンのピアノ協奏曲第2番。

この曲で私の好きな録音は

 

●ポリーニ(Pf) 井上道義指揮 シュトゥットガルト放送響 1973年頃ライヴ盤(CD)

●小林愛実(Pf) プリマ・ヴィスタ弦楽四重奏団 2011年1月13日ショパンコンクール in Asiaライヴ盤(CD) ※弦楽四重奏伴奏版

 

あたりである。

また、実演では2019年の山本貴志のものが忘れがたく(その記事はこちら)、私の中ではこの3つがこの曲における決定的な演奏となっている。

 

 

仙台で聴いて以来(その記事はこちら)4年ぶりに聴く小林海都の演奏は、前回同様みずみずしい音色が大変に印象的。

情感豊かな歌が聴かれるが、その性質は明るく、また速いパッセージはさらりと通り過ぎるあたり、上記のポリーニ、小林愛実、山本貴志といった“ショパン弾き”たちとは異なっている。

ポリーニらの演奏は、速いパッセージでも音符一つ一つに滴るような情感が込められ、涙なしには聴けない。

私としてはそうした“ショパン弾き”のやり方が好きなのだが、小林海都のじとじとしないショパンも新鮮で良い。

上記の3つの名演は私にとって別格だけれど、それに次いで私の好きな

 

●内匠慧(Pf) 岩村力指揮 東京シティ・フィル 2011年8月21日ピティナ特級ライヴ(動画

●牛田智大(Pf) プリマ・ヴィスタ弦楽四重奏団 2012年1月13日ショパンコンクール in Asiaライヴ盤(Apple MusicCD) ※弦楽四重奏伴奏版

●チョ・ソンジン(Pf) ノセダ指揮 EUユース管 2018年8月19日ロンドンライヴ(有料配信

●三浦謙司(Pf) J.Sirvend指揮 フランス国立管 2019年11月15日ロンティボーコンクールライヴ(動画その記事はこちら

●フルネル(Pf) ドゥネーヴ指揮 ブリュッセル・フィル 2021年6月9日エリザベートコンクールライヴ(動画その記事はこちら

●イ・ヒョク(Pf) ボレイコ指揮 ワルシャワ・フィル 2021年10月20日ショパンコンクールライヴ(動画その記事はこちら

 

あたりには迫るような演奏だったと思う。

 

 

 

 

 

最後のプログラムは、チャイコフスキーの交響曲第6番「悲愴」。

この曲で私の好きな録音は

 

●フルトヴェングラー指揮 ベルリン・フィル 1938年10,11月セッション盤(CDYouTube

●ムラヴィンスキー指揮 レニングラード・フィル 1960年11月7-9日セッション盤(NMLApple MusicCDYouTube1234

●西本智実指揮 ロシア・ボリショイ響ミレニウム 2002年2月4-10日セッション盤(CD

●ネゼ=セガン指揮 ロッテルダム・フィル 2012年8,11月セッション盤(NMLApple MusicCDYouTube1234

●クルレンツィス指揮 ムジカエテルナ 2015年2月9-15日セッション盤(Apple MusicCDYouTube1234その記事はこちら

●西本智実指揮 スヴェトラーノフ記念ロシア国立響 2018年6月28日モスクワライヴ(動画その記事はこちら

 

あたりである。

また、実演ではやはり2018年の西本智実(その記事はこちら)や2019年のクルレンツィス(その記事はこちら)のものが忘れがたい。

 

 

今回のウェブスター&大フィルは、これらほど個性の際立った演奏ではなかったが、オーケストラはしっかり鳴らせていたし、音楽の流れも良くて、弱冠23~24歳にしては堂々たる指揮ぶりだった。

この名曲を演奏できることに喜びを感じているような、若々しい明るいエネルギーがある。

そのぶんチャイコフスキー晩年の苦悩や葛藤はあまり感じられなかったし、また音楽の洗練がもう少し欲しかった部分もあるけれど(第1楽章のヴィオラの第1主題などあっけらかんとした歌わせ方)、スラヴ風のメランコリーを前面に出さない明るい音楽という点で、先ほどの小林海都のショパンと呼応しているのが良かった。

また、そういう解釈にもかかわらず、終楽章の最後の音が消えた後、一分近く身動きせず長い静寂を作り出して聴衆を戸惑わせたのも、若気の至りといった感じで何だか愛らしかった(笑)。

これからの成長、活躍に期待したい。

 

 

 

(画像はこちらのページよりお借りしました)

 

 


音楽(クラシック) ブログランキングへ

↑ ブログランキングに参加しています。もしよろしければ、クリックお願いいたします。

 

YouTube(こちら)やTwitter(こちら)もよろしければぜひ!