藤田真央 ピアノリサイタル
【日時】
2022年1月16日(日) 開演 14:00 (開場 13:15)
【会場】
住友生命いずみホール (大阪)
【演奏】
ピアノ:藤田真央
【プログラム】
ショパン:ノクターン 第13番 ハ短調 op.48-1
ショパン:ノクターン 第14番 嬰ヘ短調 op.48-2
ショパン:バラード 第3番 変イ長調 op.47
リスト:バラード 第2番 ロ短調 S.171 R.16
ブラームス:主題と変奏 ニ短調 op.18b
クララ・シューマン:3つのロマンス op.21
シューマン:ピアノ・ソナタ 第2番 ト短調 op.22
※アンコール
モーツァルト:ピアノ・ソナタ 第8(9)番 ニ長調 K.311 より 第3楽章
ラフマニノフ:幻想的小品集 op.3 より 第5曲 セレナード
ラフマニノフ:幻想的小品集 op.3 より 第4曲 道化師
モシュコフスキ:15の練習曲 op.72 より 第11曲 変イ長調
下記リブログ元の記事に書いていた、藤田真央のピアノリサイタルを聴きに行った。
彼の実演を聴くのはこれで7回目。
今回は、ショパンやシューマンといったロマン派作曲家の作品を集めたピアノリサイタルである。
最初のプログラム、ショパンの「2つのノクターン」op.48では、私は
【第13番 op.48-1】
●ポリーニ(Pf) 1960年ショパンコンクールライヴ盤(NML/Apple Music/CD/YouTube)
●プーン(Pf) 2015年10月6日ショパンコンクールライヴ(動画)
【第14番 op.48-2】
●小林愛実(Pf) 2021年10月7日ショパンコンクールライヴ(動画)
あたりのメランコリックな演奏が好きなのだが、今回の藤田真央はもっと明るい解釈で、これはこれで良かった。
特に、第13番の中間部および第14番の主部における夢見心地の美しさが印象的で、先日のショパンコンクールでタロン・スミスが弾いた第13番に似たところがある(その記事はこちら)。
スミスの柔らかな澄んだ音を少しきりっとさせて、かつ繊細さを増したような演奏と言ったらいいか。
次の、ショパンのバラード第3番、こちらも弱音主体の繊細きわまりない演奏。
彼の弾く「舟歌」冒頭と同じく(動画はこちらの記事から)、フォルテの指示でもメゾピアノくらいにしてしまうほどの弱音偏向ぶりだが、その朗らかで優しいデリケートな音づくりは他の追随を許さない。
この曲で私がこれまでに最も感銘を受けた演奏は、輝かしい山本貴志(その記事はこちら)と瞑想的な鯛中卓也(その記事はこちらとこちらで、後者は動画あり→こちら)のものだが、藤田真央はそれらともまた違う個性があった。
リストのバラード第2番は、私にはまだいまいちピンとこない曲だが、それでも今回の藤田真央は、古海行子や務川慧悟の同曲演奏に並ぶものだったように思う。
ブラームスやクララ・シューマンの隠れた名曲(前者は弦楽六重奏曲第1番の第2楽章としては名高いが)を発掘するのも、藤田真央らしい意欲的な試みである(彼はこれまでにも、アルカンの「イソップの饗宴」やR.シュトラウスのピアノ・ソナタといったマイナー曲を取り上げてきた)。
最後のプログラム、シューマンのピアノ・ソナタ第2番では、私は
●アルゲリッチ(Pf) 1971年6月セッション盤(NML/Apple Music/CD/YouTube1/2/3/4)
の炎の塊のような演奏が好きなのだが、それに比べると藤田真央は明るく上品で、シューマンの“毒”が少し足りないか。
彼がモーツァルトのソナタK.310やK.457を弾くと過不足なくデモーニッシュなのだが、シューマンのソナタではおとなしく感じる(逆にアルゲリッチのモーツァルトはきっと激しすぎるだろう)。
とはいえ、細部の完成度はアルゲリッチにも勝るほどであり、質の高い演奏を楽しむことができた。
今回はコロナ感染拡大に配慮してか終演後のトークはなかったが、その代わりかアンコールを4曲も弾いてくれた。
特に、最初のモーツァルトと最後のモシュコフスキが絶品で、今回のリサイタルのハイライトとさえ言えるかもしれない。
モシュコフスキのエチュードop.72-11はホロヴィッツが得意とした曲で、同じくホロヴィッツが得意としたリストの「ウィーンの夜会」第6番と同様、藤田真央にぴったりのサロン風ヴィルトゥオーゾ・ピース。
羽の生えた妖精が自由自在に飛び回るような、この上なく軽やかで洗練された、ホロヴィッツ以上の名演となった。
(画像はこちらのページよりお借りしました)
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