今回は演奏会の感想でなく、別の話題を。
「一人レコード・アカデミー賞」のシリーズである(その記事はこちら)。
本家のレコード・アカデミー賞(こちらのページを参照)とはまた別に、自分一人で勝手に2020年発売の名盤を選んでみようと思う。
一部門につき5つの名盤を挙げ、そこからさらに一つ選びたい。
今回は音楽史部門。
音楽史、というとどこから選んでいいのかよく分からないのだが、本家のレコード・アカデミー賞では以前にテレマンの曲が音楽史部門に選ばれていたため、少なくともテレマンの生年である1681年以前に生まれた作曲家の曲は選んでいいものと思われる。
順序は、発売日の早い順である。
F.クープラン:ルソン・ド・テネブレ、ジェズアルド:聖木曜日のためのテネブレ・レスポンソリウム
ナイジェル・ショート&テネブレ
(NML/Apple Music/CD)
イギリスの合唱団テネブレによる、F.クープランとジェズアルドという2人の作曲家の「テネブレ(復活祭のお祝いに先立って行われる聖週間の朝課)」にまつわる音楽を取り上げたアルバム。
晴朗なF.クープランと陰鬱なジェズアルドとがうまく対比された、きわめてハイレベルな美しい合唱を聴くことができる。
Leçons de Ténèbres: Première Leçon - YouTube
※YouTubeのページに飛ぶと全曲聴けます。飛ばない場合は以下のURLへ。
https://www.youtube.com/watch?v=KGkNsB9vraE&list=OLAK5uy_ljn6yBmOCVcVfcR4lJD3xkZEzOy-i5xuk
『いざやもろびと、神に感謝せよ~イタリア・バロックのスタイルによるルター派のソロ・カンタータ』
ジュリー・ロゼ、クレマチス
(NML/Apple Music/CD)
以前の記事にも書いたが(その記事はこちら)、フランスの気鋭のソプラノ歌手ジュリー・ロゼの(ソロアルバムとしては)デビュー盤。
バロック期の(主にドイツの)ソロ・カンタータが集められたアルバムで、彼女の天上の歌声が聴ける。
Ach Herr, strafe mich nicht - YouTube
※YouTubeのページに飛ぶと全曲聴けます。飛ばない場合は以下のURLへ。
https://www.youtube.com/watch?v=HPF8HVIxIek&list=OLAK5uy_nN4Gp9uBZCAjsvVqNk_858SWc72NMQIn8
Cum Silentio
Marc Diaz&Cor Cererols
2018年にスペインのモンセラートで結成された合唱団Cor Cererolsは、このデビュー盤を聴く限り相当な実力を持つ団体。
このアルバムで音楽史部門の時代に当てはまるのは2曲のビクトリアの作品のみだが(トラック2と6)、この2曲だけでもこのアルバムを選ばずにはいられないほどに神々しい歌唱である。
※YouTubeのページに飛ぶと全曲聴けます。飛ばない場合は以下のURLへ。
https://www.youtube.com/watch?v=StCjeoFEBC0&list=OLAK5uy_n1du2RcfUk0DNurOu6c25QgxMD5uqg-K0
シュッツ:宗教的合唱曲集(1648)
アレクサンダー・シュナイダー&アンサンブル・ポリハルモニーク
ドイツを中心に活動する合唱団アンサンブル・ポリハルモニークの今回の新譜は、シュッツ中期の傑作「宗教的合唱曲集」。
そのすっきりと洗練された歌唱は、他団体のこれまでの同曲録音を凌ぐものと言ってよさそう。
Die Himmel erzählen die Ehre Gottes, SWV 386 - YouTube
※YouTubeのページに飛ぶと全曲聴けます。飛ばない場合は以下のURLへ。
https://www.youtube.com/watch?v=HjbcA4Bivyc&list=OLAK5uy_nKC6nGtuSsuFifhPfHa-Bxr1JOfFVd_0A
ストラデッラ:『家庭教師トラスポロ』全曲
アンドレア・デ・カルロ&アンサンブル・マーレ・ノストルム、リッカルド・ノヴァロ、ロベルタ・マメリ、他(2019 ステレオ)(3CD)
(NML/Apple Music/CD)
指揮者アンドレア・デ・カルロは、バロック期イタリアの作曲家ストラデッラのオペラやオラトリオを精力的に録音しているが、今回もその一環。
ストラデッラ晩年(といっても30歳代だが)の充実した筆致を鮮やかに引き出した、活気あふれる演奏となっている。
Il Trespolo tutore, Act I: 1. Sinfonia avanti l'Opera - YouTube
※YouTubeのページに飛ぶと全曲聴けます。飛ばない場合は以下のURLへ。
https://www.youtube.com/watch?v=1edjzX7NZlw&list=OLAK5uy_lEJxRoN1EO6RUKiKv3mLRB5rClIrhw3Og
その他、ギヨン&ル・バンケ・セレスト他のストラデッラ「洗礼者聖ヨハネ」、ネーヴェル&ウエルガス・アンサンブルの「ポリフォニーの魔術」、ギヨン&カフェ・ツィマーマンの「ラメント~バロック期ドイツ語圏の器楽と声楽のための哀歌をあつめて」、ルクス&コレギウム1704他のラモー「ボレアド」、アレッサンドリーニ&コンチェルト・イタリアーノのモンテヴェルディ「マドリガーレ集第3巻」、マレット&カンティカ・シンフォニアのジョスカン・デ・プレ「スターバト・マーテル~聖母マリアを讃えるモテット集」、コヌノヴァ&ソシャール&コベキナ&コルシ他のヴィヴァルディ「四季」などが印象に残っているが、最終的には上の5盤を選んだ。
この5つの中から一つ選ぶとすると、スペイン黄金世紀を代表する作曲家ビクトリアの音楽の神々しさを、その400年以上後に同じスペインにおいて見事な合唱精度で体現したMarc Diaz&Cor Cererolsということになろうか。
というわけで、一人レコード・アカデミー賞2020の音楽史部門は、
Cum Silentio
Marc Diaz&Cor Cererols
ということにしたい。
なお、実際のレコード・アカデミー賞2020の音楽史部門は、レツボール(vn,指揮)、アルス・アンティクァ・アウストリアによるビーバー:ロザリオのソナタであった。
これもなかなか良いものである(私としては、アンドルー・マンゼ盤の柔らかい音のほうが好みではあるが)。
ちなみに、「一人レコード・アカデミー賞」のこれまでの記事はこちら。
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