DRAGON -18ページ目

ぼくは死なない

「ぼくは死なない。

 

 永久にこの栄華は続く


 宇宙にも行こう


 不死の薬も手に入れよう


 ぼくは死なない

 

なぜなら、ぼくは神なのだから


ぼくの世界では、ぼくは神だ


この世界は、ぼくのものだ


でも、皆が、ぼくが神ではないと気づいたら


また、新たな神になろう


・・・・・・・・・・・・・


心の片隅で恐れていたことが起きてしまった


みなが、ぼくは神でないことに気づいたのだ


イカロスの翼が


ジェット機の翼が


溶けていく


急降下


みなを見下ろし、雲の上を自在に駆け巡っていたぼくが


海に堕ちていく


どこまでも深く


光の全く届かない奈落の暗黒の淵へ


そこに永久に閉じ込められる


これまでの栄華は望むべくもない


それどころか、これまで自分を見上げていた普通の人が


味わうごく小さな楽しみも


今のぼくには、手が届かない


ぼくは死にたい。」


彼にお神の声が響く


「今こそ、長年のお前の望みを叶えてやろう


 お前は永久に死なない


死にたいたいと思っても死ねない


 手首を切り


 頚動脈を切り


 腹を切り裂いて、腸が飛び出ようと


 お前は死ねない


 お前が死なないよう


 私がここで見張っている


 お前は死ねない。」


「ぼくは、死にたい


 でも、死ねない

 

 ぼくは、死なない。」

            



ホリえもん、トリプルアクセル on the edge

カイテン、カイテン、カイテン、カイ・・・・すっテン

北○弁護士、絶対、訴えないで!

 北○弁護士、50歳、彼は今、長野県の雪山を登っているところである。先ほどまでは晴れ渡っていたが、山の天気は変わりややすい。今は猛吹雪、視界が遮られ、2~3m先もよく見えない。


「いっそのこと下山しようか。」

 ついくじけそうになる。しかし、甲子園をかけた県大会の決勝、9回裏、2アウト、1対3でリードされ、打順が自分に回ってきたときの場面が浮かんできた。


監督は激を飛ばす。

「北○、諦めるな。勇気を出せ!」

しかし、もう無理だと、半ば投げやりの気持ちで打席に立った。案の定、平凡なフライにおわり、げームセット。


以来、彼はそのときのことがずっと心にこびりつき、後悔の念にさいなまされてきた。

「なぜ、あのとき諦めてしまったのか。最後まで全力を尽くさなかったのか。監督に申し訳ない。」

そして、彼の顔から笑顔が消えた。


ことあるごとに彼の心を焼いたが、そのとき以来、どんなことがあっても最後までくじけないよう心がけ、頑張り通してきた。そのガッツがあったからこそ司法試験にも合格したのだ。監督の教えは、今もなお、彼の心の中で生きている。


「権力を持った者が権力を失ったとき、金を持っている者がその財を失ったとき、再起を期すためには何が必要か分かるか。勇気だ。勇気を持て!最後まで諦めるな。」


監督の言葉が、今も彼を勇気づける。


「クソッ、絶対負けるものか。最後まで諦めないぞ。今は天国にいる監督、俺を褒めてくれ。」


数日後、彼は遺体となって発見された。肌は雪のように白く、雪と一体となっているようだった。そして、死に顔には笑みが浮かんでいた。

ソクラテスの精神の具現者

記者:「グリーンピア等の施設は保険料の無駄使いではありませんか」

社保庁:「そんなことはありません。法律にも『必要な施設をすることができる』

と定められています。

記者:「13万円の家賃が1万円であったり、福利厚生としてマッサージ機やゴルフ場

を所有するという件についてはどうですか。」

社保庁:「法律の範囲内で行っているだけです。」

記者:「年金資金運用基金は単なる天下り先ではありませんか。」

社保庁:「法律に基づいて設置しています。」

記者:「違法ではないということですね。」

社保庁:「その通りです。」

記者:「違法でなければ、いいということでしょうか。」

社保庁:「法律に従っているだけです。異議があるなら、改正してください。我々は

法を遵守しているのです。それが法治国家です。法を守るのが、国民の取

るべき正しい姿勢です。

気象庁vs天邪鬼

11

素直な人間:今年は暖冬になるそうです。気象庁の長期予報では。

天邪鬼:ということは、寒波襲来ってことか。


12月、20年来の大寒波襲来。

素直な人間:あなたの言っていたとおりです。気象庁も訂正しています。

12月も、この寒さが続いて、今年の冬は寒いそうです。

天邪鬼:ということは、年明けから暖冬ってことか。

雷神:これ天邪鬼、あまのじゃくなことはやめなさい。


戦場のメリークリスマス

ドーン!ギャー!・・・・

あちこちで自爆テロや爆撃が起こり、爆音がなり響く。

「このアメ公、とっとと帰りやがれ。」

男も女も、子供も大人も、アメリカ兵に罵声を浴びせかけ、石を投げつける者も少なくない。売り言葉に買い言葉、つい、住民に発砲したくなるが、冷静を装う。しかし、なかには本当に発砲してしまう者もいる。あるいは、疑心暗鬼のため、身を守るため、普通の国民に銃を向けてしまう。テロリストとの区別がつかないのだ。


 とにもかくにも、いつもの張り詰めた任務を終えると、兵士達は宿営地に戻ってくる。

「今日も、なんとか生き残れた。ヤレヤレだ。」

「現地の奴らが言っているように、本当はオレたちだって帰りたいんだ。」

「そういえば、今日はクリスマスイブだ。本国では皆、クリスマスを祝っているんだろうな。家族や友人たち、彼女は今ごろ、どうしているだろう。」

「シャンパンをパンパン抜いたり、クラッカーを鳴らしているんだろうな。」

「こっちじゃもっとハデに、銃でドンパチパンパン、爆弾を破裂させているじゃないか。」

「悪い冗談はやめろよ。」

「すまん。」

・・・・・・・・

「せめてクリスマスのときぐらい、平穏に過ごしたいなあ。連中もクリスマスのときくらいおとなしくしてりゃいいものを。」

「この国じゃ、クリスマスなんて関係ないのさ。それはそうと、俺たちもささやかながら、クリスマスを祝おうじゃないか。」

「そうだな。ちょうど、クリスマスソングが入っているテープがある。オレは、それを用意する。」

「オレはツリーを用意するよ。」

彼らは用意をし、あるロックグループが歌っているクリスマスソングに聴き入る。


 国は国に、民族は民族に対して立ち上がる

どうして人々は憎しみあい、争うのか

皆、同じこの地球上に住む人間じゃないか

肌の色なんて、関係ない

愛し合おう、わけ隔てなく

争うのはやめて、平和を祈ろう

クリスマスのこの日に



「本当にそうだな。」

「やめたいさ。こんなこと。でも、本当に任務を放棄することができるか。」

「そうさ。それに、確かにこんな状況じゃ、現地の奴等に対して憎しみの感情を抱かざるをえないが、元々、彼らに対して憎しみがあったわけじゃないんだ。」

「彼らだって、元々、俺たちを嫌っていたわけじゃないと思うんだ。」

「では一体なぜ。」

「独裁者やテロリストが悪いんだ。この戦争には大義があるんだ。」

自分に言い聞かせるように言った。そう思わなければ、やりきれなかったからだ。

「自分は安全な所にいて、綺麗事ばかり唱える奴が多すぎる。」

誰かが、はき捨てるように言った。


沈黙が続いたが、それまでのように歌詞がすんなりと心に入っていかない。美しいメッセージだが、何か的外れのような気がしたのだ。


彼らは、ツリーの方に目をやった。それは、この砂漠の地に茂っていた潅木(ブッシュ)に飾りつけをしたものだった。それは一見美しく飾り付けられているようにみえたが、しかし、鈴や星等の代わりに、銀色の銃弾や缶などで飾り付けられたものだった。


「見ろ、きれいにできたじゃないか。」

「本物のツリーのように金をかけてはいないがな。」

「いや、一番、金がかかっているさ。銃弾なんか高いんだからな。」







お子様をつけ上がらせる構図

学校の掃除の時間にて

先生:「ほら、お前たち、ちゃんと掃除しなさい。」

生徒:「やだよ。自分の好きな仕事をやればいいんだって、有名な作家が  

   言ってたよ。」

登下校にて

児童:「やったー。学校の行き帰りが危ないっていうから、これからは毎日スクールバスで送り迎えだ。」

携帯電話

危険回避のため、携帯電話を児童が所持することにPTAが要求。学校は

それを承認。以来、お子様たちは携帯使い放題。授業中も携帯をいじる。

先生:「君たち、授業中は携帯禁止!」

お子様:「っるせーな。今、いいところなんだから。話は後にしてくれ」

授業中

先生:「授業中は私語をしないで先生の話に集中しなさい。」

お子様:「てめえの授業がつまんないから、誰も聞かないんだよ。」

心置きなくゲーム三昧

じいさんばあさんが、家の中でゲームばかりにしている孫に向かって

「家の中でゲームばかりしてないで、たまには外で元気よく遊びなさい。」

お子様:「なにこのご時勢に外で遊べって言ってんだよ。殺す気か、このクソババア。休みの日くらい、一日中、ゲームをさせろ。学校でストレスたまってんだ。」

母親:「そうですよ。お母さん、変なこと言わないで下さいよ。あんまりおかしなこと言うと施設に入ってもらいますからね。」

知らない人は変質者

ある村の中を見知らぬ男が歩いていると、それを見かけた親子が警察に通報

警官:「オイ、コラッ!ちょっと署まで来い。」

男:「待って下さい。昔、この辺でバイトをしていたことがあり、懐かしいと思って来てみただけなんですよ。」

警官:「なに訳分かんないこと言ってるんだ。怪しい奴め。いいから来い。」

知らない人は変態

男:「あの君たち、図書館に行く道教えてくれないかな。」

お子様:「・・・・」

男:「ねえ、君たち。図書館に行くにはどうしたらいいんだろう。」

お子様:「変態、これ以上話しかけると警察呼ぶぞ。」

そう言いながら、携帯で110番通報しようとする。

給食にて

母親が怒鳴り込んでくる

「うちの亜美ちゃんは、玉ねぎが嫌いなのにどうして給食にそれを出すの

すか。もっと、子供のことをちゃんとみて下さい。」

脅迫】

お子様:「あの先生、気に入りません。代えてください。」

校長:「君一人が気に入らないからといって、先生を交代するなんてことはできないのだよ。」

お子様:「代えてくれないと、私、殺されます。」

教育委員会1

先生:「授業を真面目に聞かないで騒いでばかりいると、点数下げますよ。」

お子様:「おおっ、脅迫だ。教育委員会に言いつけるぞ。」

教育委員会2

お子様たちが大勢で一斉に先生に勝手なことを要求。

当然、一度に聞くことなどできない。

先生:「ちょっと、待って、みんな。」

お子様たち:「なんで、私たちの言うことを聞いてくれないんですか。」

翌日、親たちが怒鳴り込む。

「先生、どういうことです。どうして子供たちの言うことに耳を傾けてくれないんですか。みんな純粋な感性を持っているんですから、それをしっかり受け止めて下さい。給料さえもらえばいいのですか。あんまりいい加減にやっていると、教育委員会に訴えますよ。」

【怖いもの知らず】

ゲーセンで、先にゲームをしている人の機械のスロットにコインを入れて、ちゃっかりと予約らしきことをしているお子様。

それをされた人:「何しとんのじゃ、このガキャ。」

なんで怒られているのか分からないお子様。しばらく、きょとんとしていると。

男:「何しとると言っとるんじゃ。どこのもんじゃ。」

お子様:「5年4組だけど。そんな口のきき方していると、教育委員会に言いつけるぞ。」

男:「なにカタっておるんじゃ、ワレ。わしは山田組のもんじゃ。ちょっとヤキ入れてやるからの。こっちへこいや。」

お子様:「教育委員会に言いつけてやる。」

組の者:怒、怒、怒、怒。

熟年離婚続き

安井忠郎、60代後半。多くの同年代は引退している年齢であるが、彼は今もバリバリの現役である。職業は行政書士で、年収は数千万円。本業の他にも趣味がたくさんあり、精力的に活動している。そのせいであろうか、実年齢よりずっと若く見える。せいぜい50前後ぐらいにしか見えない。20歳年下の妻がいるが、傍目から見ても年齢差は全く感じない。 

今でこそ充実している安井であるが、若い頃は恵まれなかった。周囲からは軽く見られほとんど相手にもされなかった。夢はことごとく敗れ去れ、いくつもの会社に勤めるものの、どこも長続きはしなかった。一念発起し、行政書士の資格を取得するものの、弁護士や司法書士、税理士等から見下されてきた。しかし、腐ることなく誠実に仕事に取り組み続け、顧客から多大の信頼を得るまでになった。下手な弁護士等よりはるかに頼りになるとの評判だった。

今日も彼の評判を聞きつけ、ある婦人の依頼者が彼のもとを突然、訪れた。安井は彼女を事務所に招きいれ、まず、お互い、軽い自己紹介から始めた。しかし、開口一番、安井を衝撃が襲った。

なんと、歯が青い

一瞬、引いてしまったが、そんなことはおくびにも出してはいけない。平静を装いながらも紹介をし合った。彼女の名は谷下智恵、主婦である。女性に年齢を聞くのは失礼であると思い、あえて聞かなかったが、どう見ても自分よりは若くはないようだった。70代半ばといったところだろうか。

安井は婦人を椅子に座らせ自分も腰かけると、依頼の件について聞き始めた。

「どうなされました。」

「実は」と彼女は話し始めた。

それにしても歯が青い、と安井は思った。

別に全部が青いというわけではなく、前の方の歯が青いのだった。

「実は、主人と離婚しようと思いまして。」

「なぜなんだ。」と彼は思った。何故、歯が青いんだ。歯が青いのもさることながら、そのことが妙に引っかかるのが自分でも腑に落ちなかった。

「どうしてです。は・・・いえ、離婚されたいのは。どうかお話しになって下さい。お伺いします。」

「すぐに暴力を振るうんです。髪の毛を掴んで引きずり回し、殴る蹴るんです。しかも、平手ではなくて、こぶしでです。見て下さい、昨日も殴られて。顔に青あざができているでしょう。お恥ずかしい話ですが。」

それで歯も青いのか、と合点がいきかけたが、すぐにそんなはずはないことに気がついた。

「言葉の暴力も酷いんです。お前なんか、なんのとりえもないとよく言われますし。誰のおかげで飯が食えるだ、文句があるんだったら出て行けとも言われます。本当に私が出て行ったら何もできないくせに。」

「ワルですね。」

「そうなんです。でも、もともと、そういうところに惹かれたっていうのもあるんです。」

「少し不良っぽくて暴力的で強引で、それがワイルドで男っぽいと思っていたわけですね。」

「そうなんです。同級生のそんなカレに惹かれたんです。」

「私のカレって男らしいのよ。この間なんか、映画に誘われて、どうしようかと迷っていたら、つべこべ言わずに黙ってついてくればいいんだよといって、蹴られたのよ。」

「ワイルドでカッコイイ!」

そんなやりとりを友人としていた若い頃を智恵は思い出していた。

安井も若い頃を思い出していた。もちろん、さえない安井がそんなことを言われる対象などではなく、そういったやりとりを傍で見聞きしていたことを思い出していたのだが。

「若い頃は悲惨だったなあ、誰からも相手にされなかったし。」

あんまり女に飢えていたから、といって周りには女がいなかったから、つい見境なく、かつてバイトをしていた塾で教えていた生徒に、卒業してから2年ほど経った頃、電話をしてしまった。あわよくば誘ってやろうと。

 そのとき、電話して最初に出たのは、お母さんであった。名前を告げ、その娘に代わってもらった。ところが、相手は、最初、自分が誰だか分からない様子だった。すっかり忘れていたのだ。

「あの、安井ですけど」

「やす・・?あっ、なんだ安田君。」と打ち解けたようなフレンドリーな声が返ってきた。

急にパッと明るい声が返ってきたことに、一瞬、心が晴れやかになった気がした。しかし、名前が少し違う。それに君づけである。とまどいながらも、もう一度、名前を言った。

「やすいですけど」

「やすい?安田君じゃなくて」

相手は分からないようだった。そこで、塾の講師であったこと、そのときのエピソードを話すと、ようやく思い出してくれた。しかし、声のトーンは急に変わった。

「ええええ~!」 

「いや、どうしているのかなと思って。学校の成績はどう。」

「ビリから数えた方が早いし、学校の先生からもどうにかしろと言われているし。」

「進路はどうするの」

「まだ、決まってないし。」

「看護婦になりたいとかいっていたじゃない」

「そうだったけ」

「それにしても、しばらくしたら話し方とか全然かわったね。」

智恵はうざったそうに、切り返した。

「どうして電話なんかしてきたんですか。」

「久しぶりだなと思って。」言い訳がましく言ったが、彼女は見抜いていた。

「ところで何才なんですか。」

いい年をして分不相応だと言いたいのだ。それに対して黙っていたが、その後、なんとか取繕うのに精一杯であった。

「それではお元気で。頑張って下さい。」早く彼女は電話を切りたかった。

「ありがとう。それでは。」

苦虫を噛んだような後味の悪さが残ったのだった。青汁どころではなかったな。

「そうだ。思い出した。」安井は心の中で叫んだ。「佐藤智恵だ。あれも歯が青かった。名前も同じ智恵だ。偶然だ。・・・いや、まさか、本人では?そんなはずはない。年だって違うし。しかし、顔つきはなんとなく似ている。」

「あの聞いてます?」

安井は我に返った。

「いや、失敬。」

「主人も来年、定年になりますし、年金分割できるようになってから離婚しようと思っているのですが、どうでしょう。」

さっき、夫とは同級生と言ったが、すると、59歳か。ええっと・・・、頭の中で計算し、佐藤智恵と同じ年齢であることが判明した。それにしてもこの老けようはどうだ。

「離婚されたら、旧姓に戻られるのですか。」

「はい、谷下なんて名、二度と使いたくありません。」

いずれ分かることであるが、旧姓を尋ねた。彼女は佐藤であると答えた。

「やはり、間違いない」安井は確信した。

「ご存知かと思いますが、訴訟性のある案件は行政書士では取り扱えません。協議離婚でよろしいでしょうか。」

「はい。そのつもりでお伺いしました。費用も安くつきますし。」

「実は、最近、熟年離婚が急増していましてね。9割が協議離婚なんですよ。ところで、すいませんが、次の依頼者の予約が入っていまして。次回はもっとゆっくりお話とお伺いしたいと思います。全て法律で解決するわけではありませんから、ゆっくりお話を聞くのも我々の仕事なんですよ。」

そう言って、次回の予約を入れた。

「お元気で。」安井は別れの挨拶をした。

安井は、つい、呟いた。

「商売繁盛なのは、馬鹿が増えているせいかな。」

熟年離婚

安井忠郎、60代後半。多くの同年代は引退している年齢であるが、彼は今もバリバリの現役である。職業は行政書士で、年収は数千万円。本業の他にも趣味がたくさんあり、精力的に活動している。そのせいであろうか、実年齢よりずっと若く見える。せいぜい50前後ぐらいにしか見えない。20歳年下の妻がいるが、傍目から見ても年齢差は全く感じない。 

今でこそ充実している安井であるが、若い頃は恵まれなかった。周囲からは軽く見られ、ほとんど相手にもされなかった。夢はことごとく敗れ去れ、いくつもの会社に勤めるものの、どこも長続きはしなかった。一念発起し、行政書士の資格を取得するものの、弁護士や司法書士、税理士等から見下されてきた。しかし、腐ることなく誠実に仕事に取り組み続け、顧客から多大の信頼を得るまでになった。下手な弁護士等よりはるかに頼りになるとの評判だった。

続く

子思いの親

子思いの親

やってできちゃったから産んだ子を、何も考えないで育てている親

子育てのストレスで感情に任せて子供に当り散らす、自分がまだ子供の親

無干渉の親

何でもわが子を中心にして考え、大切にする親

ときには厳しく、ときにはやさしく、いつも愛情を持って育てている親

子を産まない親(という表現もおかしいが)

以上のうちで誰が一番の子思いでしょう。



 さて、下界では、いかにしたら少子化に歯止めをかけることができるかについての論議が繰り広げられています。

司会者:「これから社会を担っていく子供の数が減っていく現象は由々しきことです。社会の活力が低下し、衰退していきます。今日は、今、直面しているこの危機的な問題について論じあっていきたいと思います。」

識者:「本当にこれは大問題なのです。経済力が落ち、世界的競争力が失われていくばかりでなく、年金、健康保険の支え手が減っていくことも意味しているのです。」



魂の世界では、これを見ていた魂たちが言いました。

「おいおい、俺たちは人間を支えるための道具かよ。苦しんで稼いで彼らを支えてやる奴隷のような感じじゃないか。」



下界

女性弁護士でもある福岡国会議員が言いました。

「問題なのは、今、産みたくても産んで育てていくことが難しい社会になっているということなのです。経済的余裕がなくて子供なんてとても育てられる状況ではないのです。」

それを聞いていた他の年配の女性が言いました。

「何を言っているんです。今は贅沢になっているんですよ。昔だって、みんな貧乏だったけど、皆、子供を産んでいたじゃないですか。」

年配の男性も言いました。

「子供を産むのは女性の義務だ。」

結婚できない中年女性タレント

「義務とはなんですか。どんな生き方をするかは各自の勝手です。」

先の男性

「それは自分さえ良ければ良いという自分勝手な考えだ。我々には、次の世代を残して社会に貢献するという役目があるんだ。自分のことだけ考えてはいかん。」



魂の世界

「何言ってやがんだ。自分のことしか考えていないのは手前の方じゃねえか。年金を支えるため、健康保険を支えるため、経済を発展させるため、社会を支えるため、つまり自分たちがいい思いをすることしか考えていないじゃないか。俺たちの身にもなってくれ。」



下界

何人も子供を産んだ女性

「子供を産んで育てていくのはたいへんなことだけど、でも、とっても楽しいものよ。」



魂の世界

「お前らの楽しみのためかよ。」

「でも、まだ子供のうちはいいぜ。お肌はツヤツヤ、元気にも満ち溢れ、毎日遊んですごし、その上、至れり尽くせりだからな。特に日本の家では。そのうち、嫌でも苦しみや悩みが増えてくること受けあいだ。」

「苦しさがあるから、本当の価値や意義が分かるとか言っているのもいるけど、それにも一理はあるが、結局、報われないなんてことの方が多いぜ。俺たちの世界で優秀な奴ほど悲惨な目に遭っているよ。天才と言われていた奴も、悲惨のうちに生涯を閉じたのも少なくない。歴史に名を残せたのは、まだましの方で、闇から闇に葬られてしまった奴なんかその何千倍もいるんだからな。それにしても、人生は素晴らしいなんて寝言を言っている奴がいるが、ちょっと、そっちの方へ目を移してみようぜ。」



美人との思いをとげることができた男

「やったぞ、ついにあの女とやることができたんだ。ああ、これまで生きてきて良かった。」



魂の世界

「男の考えていることは大体同じだ。ガキだろうと、ジジイだろうと。いい女とやりたいってこと。」

「ジジイになると女は相手にしてくれないし、ガキだったら、女とやると女の方が逮捕されるんだ。」

「やっぱりガキのうちにはめはずすしかないな」

「それにしてもあの女、相当やっているぜ。あんな女がいるから、俺たちが下界にどんどん送り込まれるはめになるんだ。」

「楽しみのほうが苦しみより、多ければ生きる意味があるなんていっている女のガキもいるぜ。」

「なら、それが逆転すれば死んだ方が良いということだな。それにしても、楽しいことの方が多いなんて奴がいるのかよ。いたとしても、自分さえ良ければいいって奴だよ。その背後にはその犠牲になっているものがはるかに多くあるんだからな。それに、長く生きるほど人生は悲惨になる。容姿は衰えるし、病気にはなるし、若いことに価値があることになっているんだからな。」

「どうして皆、あんなに生にこだわるんだろう。ガンなんて、神の摂理なのに。苦しいガンは、苦痛を軽減する必要があるが、でも、多くのガンは苦しまないで死ぬことができるんだ。それを下手にいじくりまわし、もがくからかえって苦しむはめになって、七転八倒のうちに死んでいくんだ。もうあんたを人生から救ってあげましょうというせっかくの神の計らいをなんと心得ているんだ。」

「結局、人生にハッピーエンドなんてないんだ。人生の一番最後に、たいていの奴らは苦しんで死んでいくんだからな。」



魂の世界の上司

「おい、お前ら、なにを無駄話をしているんだ。今、精子と卵子が合体したぞ。すぐに飛び込め。」

「それはなんとかなりませんか。行きたくないんですが。」

「何を言っているんだ。神の摂理には背けない。」

彼らは泣く泣く連れて行かれ、無理やり、新しい個体に飛び込まされました。



そして誕生。

「おぎゃー。」天も突き崩さんばかりに大声で泣き叫び始めました。