1-1. 楽器本体について
サックスには、ソプラニーノ、ソプラノ、アルト、テナー、バリトンの主に5種類のサイズがあり、大きくなるほど音域が低くなる。このうち、ソプラノ、アルト、テナーが一般的だが、初心者はアルトから始めることを勧める。もちろん、どうしてもソプラノやテナーが吹きたいというのであれば止めはしない。初期衝動は重要なので、何か理由があってソプラノやテナーを選びたいのであれば、その気持ちを大事にすべきだと思う。 ソプラノを勧めない理由は、音程のコントロールがシビアで、初心者が演奏すると、どうしても下手に聞こえてしまうからだ。ピアノやギターのように誰が弾いても音程が同じ楽器とは違い、管楽器は奏者が細かい音程の調整をしている。ソプラノ・サックスで初心者がこれを行うのは難しく、必要以上に自分が下手だと感じ、モチベーションが下がって練習を止めてしまう。バイオリンのハードルが高いのと同じ理由だ。 テナーを勧めない理由は身体的なことだ。テナーは重いので、正しい姿勢(右手で身体の正面に持ち上げる)で吹くことが難しく、また良い音を出すのには肺活量も必要となる。身体が大きい男性用の楽器で、多くの日本人にはあまり向いていない。無理をすると身体を壊すことになるし、肺活量が少ない人は、良い音で長いフレーズを吹くことができないだろう。 ブランドについては、セルマー、ヤマハ、ヤナギサワの3社を勧める。これ以外に信頼できるメーカーがないということではなく、自分自身が吹いたことがあり、長い間、定評のある会社だからだ。セルマーはフランスのブランドで、独特のサウンドがある。見た目が美術品のようで、ヨーロッパのセンスを感じさせる。外車に乗るような感覚だ。問題は価格で、アルトサックスが50~70万円ほどする。需要と供給の問題(需要に対して生産が追いついていない)や円安の関係で、過去10年で金額が2倍になった。また、出荷時の調整が甘いことでも有名だ。そのため、サックス専門店で調整し直したものを購入しなければいけない。 ヤマハとヤナギサワは日本のブランドだが、いまでは「老舗」といえる実績を持ち、世界中に愛用者も多い。セルマーと比べてクセがなく演奏しやすい。そのことを「良い」と考えるか、それとも「悪い」と考えるかは、楽器を「道具」と「贅沢品」のどちらとして捉えているのかで変わる。ヤナギサワのアルトは30~50万円ほど、ヤマハのアルトは15~50万円ほどである。またヤマハだとレンタルのプランもある。長期(6ヶ月以上)だと月10,000円、短期だと月20,000~30,000円くらいだ。 この3つのブランドのサックスであれば、どれを買っても間違いはないが、可能であればサックスを演奏できる人と一緒に店に行き、音を聞いたり、触ってみてから買う方が良い。楽器屋で短い時間を吹くだけでは、どんな音がする楽器かよくわからないが、重さや軽さ、見た目に魅力を感じるかを確認することができる。また演奏できる人と一緒に行けば、音程がとりやすい楽器か、簡単に音がでるかそれとも少し抵抗があるか、といった点を教えてもらえる。インターネットで購入してもいいが、その場合にはサックス店から購入し、郵送前に調整をしてもらえるか確認する。 楽器は購入後もメンテナンスにお金がかかる。パーツを構成するバネや軸がずれてきたり、穴を塞ぐタンポというパーツが痛んでくるのだ。6~12ヶ月ごとに5,000~10,000円くらいかかると見積もっておいてほしい。また、購入店でメンテナンスをしてもらえるかも、確認しておこう。