こんばんは!まずは皆さん、乾杯っ!![]()
今回ご紹介するのは、三重の銘酒「高砂(たかさご) 純米大吟醸 松喰鶴(まつくいづる) 火入」です。
前回、この「下戸の酒好き」で「而今 純米吟醸 三重山田錦 火入」をご紹介しましたが、覚えていらっしゃるでしょうか。実は今回の高砂は、その而今との飲み比べでいただいた一本なんです。気の合う仲間と3人での、あの特別な昼飲み。あの日、而今と並んでグラスに注がれていたのが、この高砂でした![]()
ご存知の方も多いと思いますが、この「高砂」も、而今を醸すのと同じ木屋正酒造のお酒。しかも、而今が全国区の華やかなスターだとすれば、高砂は古くから地元で愛されてきた伝統の銘柄という、いわば由緒正しい名門です。同じ蔵の二枚看板を並べて飲み比べる——考えただけで、日本酒好きとしては震えるシチュエーションですよね。
そして、蔵元さんによる両者の位置づけがまた面白いんです。而今は、それ一本で完結できるほど満足感の高いお酒。香りも味わいも華やかで、主役として真ん中に立てる存在です。いっぽう高砂は、食中に飲んでこそ本領を発揮するお酒。料理に寄り添い、その味を引き立てる名脇役として設計されている、というわけです。同じ蔵から生まれた、正反対の個性。これは飲み比べがいがあります。
実はこの高砂、而今ほどではないにせよ、こちらもなかなかの入手困難酒。去年、なかなか而今が手に入らずやきもきしていた時期に、ようやくたどり着いて確保できた、思い出の一本でもあります。手に入れてからも「飲むのがもったいない」と、しばらく冷蔵庫で大切に愛でておりました(笑)そんな秘蔵の一本を、気の合う仲間との特別な席で、ついに開栓——。
思えば、同じ造り手が生んだ二本を、同じ日に、同じ器で、飲み比べられるなんて。これはもう、ちょっとした"利き酒会"のような贅沢さです。仲間と「こっちが好き」「いや、こっちも」と言い合える時間そのものが、何よりのご馳走。下戸の私がこんな夜を過ごせるようになったのも、日本酒という沼にはまったおかげだなあ、としみじみ思います。
華やかな而今と、端正な高砂。同じ蔵の二つの個性は、はたしてどんな表情を見せてくれるのか。ワクワクを抑えきれないまま、いってみましょう!
高砂 純米大吟醸 松喰鶴とは?
まずは造り手から。この「高砂」を醸しているのは、前回の而今と同じ、三重県名張市の木屋正酒造(きやしょうしゅぞう)。1818年(文政元年)創業という、200年を超える歴史を持つ蔵です。六代目蔵元杜氏の大西氏が2005年に立ち上げた「而今」で一躍全国区となりましたが、この「高砂」こそ、蔵が古くから地元・伊賀地方で造り続けてきた伝統銘柄なんです。
而今の成功で名を上げた大西氏は、この由緒ある「高砂」を、ただ昔のまま残すのではなく、現代の技術で新たに磨き上げることを選びました。そして復活した高砂の最大の特徴が、木屋正酒造としては蔵初の挑戦となった「生酛(きもと)造り」です。
生酛造りというのは、乳酸を人工的に添加せず、蔵に住み着いた天然の乳酸菌の力を借りて、時間をかけてゆっくりと酒母を育てる、昔ながらの手間のかかる伝統製法です。手間はかかりますが、そのぶん複雑で奥行きのある、力強い旨味と酸が生まれるのが魅力。華やかな吟醸香で魅せる而今とは、あえて対照的なアプローチを選んだわけですね。伝統銘柄を伝統製法で蘇らせる。この筋の通し方が、たまらなくカッコいい![]()
そして、この「松喰鶴(まつくいづる)」という美しい名前。これは、鶴が松の枝をくわえた姿を描いた、日本の伝統的な吉祥文様のこと。延命長寿を願う、たいへん縁起の良いモチーフで、古くから婚礼など慶事の場を飾ってきました。「高砂」という銘柄名自体も、夫婦円満・長寿を寿ぐ能の演目「高砂」に由来します。めでたさに、めでたさを重ねたような、実に晴れやかなお酒なのです。特別な席にこそふさわしい一本、と言えますね。
ちなみに「松喰鶴」は、火入れのほかにも無濾過生や木桶仕込みなど、いくつかのバリエーションを束ねるシリーズ名としても使われています。今回いただいたのは、その中でも一番落ち着いて楽しめる「火入れ」タイプ。而今が"香りで魅せる主役"なら、この高砂・松喰鶴は"味で支える食卓の要"。同じ蔵が、あえてまったく違うベクトルの酒を用意している——その懐の深さに、飲む前からすっかり唸らされてしまいました。
さて、主役の「高砂 純米大吟醸 松喰鶴 火入」のスペックを見てみましょう。使用米は酒米の王様山田錦を100%、精米歩合はなんと45%。純米大吟醸の名にふさわしく、米を贅沢に磨き上げています。酵母には、穏やかで綺麗な酒質を生むと言われる熊本9号酵母を使用。そして前述の通り生酛造りで、一度火入れをした、じっくり楽しめるタイプです。アルコール分は15.5度。米の磨きも造りも一切妥協のない、まさに"ハレの日の食中酒"と呼ぶにふさわしい造りです。
高砂 純米大吟醸 松喰鶴をチェック!
白地に黒々と大書きされた「高砂」。
「TAKASAGO 2024」と鶴の意匠が、凛とした気品を漂わせます。
ワイングラスに注げば、透明感のある綺麗な酒色。
而今よりも控えめで、それでいて奥に旨味を秘めた表情です。
裏ラベルには、山田錦100%・精米歩合45%・アルコール分15.5%。
そして端に「花半開 酒微酔」という粋な一文が添えられています。
| 銘柄名 | 高砂(たかさご) 純米大吟醸 松喰鶴 火入 |
|---|---|
| 品目 | 日本酒(純米大吟醸酒) |
| 原料米 | 山田錦 100% |
| 精米歩合 | 45% |
| 酵母 | 熊本9号酵母 |
| 造り | 生酛(きもと)造り/一度火入れ |
| アルコール分 | 15.5度 |
| 製造者 | 木屋正酒造株式会社(三重県名張市本町・文政元年創業) |
高砂 純米大吟醸 松喰鶴を飲んでみての評価
さて、いよいよ実飲です。この日は、華やかな而今を先にいただいたあとでの、高砂。正直に言えば、少しだけ不安もありました。あれだけ強烈な個性の而今の直後では、伝統銘柄の高砂は、かすんで見えてしまうのではないか——。名脇役、食中酒——そんな謙虚な位置づけを聞いていたぶん、正直、味の面でも一歩引いた印象になるのだろうと、勝手に思い込んでいたのです。
しかし、それはまったくの杞憂でした。いや、杞憂どころか、失礼な思い込みだったと、すぐに思い知らされることになります。グラスを傾けたその瞬間、私の考えは、心地よく裏切られました。
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脇役なんて、とんでもない。
ひと口飲んで、まず感じたのは——「あの而今と比べても、何ら遜色がない」という驚きでした。これは本当に、正直な感想です。あれだけの名酒と並べて、まったく見劣りしない。むしろ、これはこれで完全に別の魅力を持った、堂々たる一杯だったのです![]()
まず香り。而今のメロンのような華やかさと比べると、高砂の香りはぐっと控えめです。でも、これは物足りないという意味ではまったくありません。むしろ、香りが穏やかだからこそ、料理の香りを邪魔しない。食卓に静かに寄り添う、奥ゆかしい佇まいなんです。
そして味わい。ひと言でいえば、とにかく綺麗。雑味がまったくなく、澄んだ旨味がすっと舌の上を流れていきます。生酛造りと聞くと、どっしり濃厚な味を想像しがちですが、この高砂は違いました。生酛ならではの奥行きのある旨味を持ちながら、後口はあくまでクリーンで端正。この「力強さと綺麗さの両立」こそが、蔵の技術の高さを物語っています。
そして、この酒の真骨頂は料理と合わせたときに現れました。食事とともにいただくと、料理の邪魔をしないどころか、むしろ料理の旨味をぐっと引き立てるんです。酒だけが前に出るのではなく、料理と手を取り合って、互いを高め合っていく。ひと口食べて、ひと口飲む。その繰り返しが、いつまでも続けられる。まさに「食中酒」として設計された酒の、理想的な姿でした。
而今の人気は、それはもう、とてつもないものがあります。でも、この高砂も、決して負けてはいません。而今には而今の、高砂には高砂の良さがある。華やかに主役を張る而今と、静かに食卓を支える高砂。どちらが上ということではなく、それぞれがまったく異なる美学で、確かな高みに立っている。同じ蔵から、こんなにも個性の違う二つの名酒が生まれるということ自体が、木屋正酒造という蔵の懐の深さを物語っています。
そういえば、この高砂の裏ラベルには「花半開 酒微酔(はなはんかい さけびすい)」という粋な言葉が添えられていました。花は満開よりも半開きが趣深く、酒はほろ酔いくらいがちょうど良い——という意味で、中国古典『菜根譚』に由来する言葉だそう。派手に酔わせるのではなく、ほどよく寄り添う。この一本の性格を、これほど見事に言い表した言葉もありません。飲みながらこの一文に気づいたとき、思わず膝を打ってしまいました![]()
気の合う仲間と、二つの名酒を並べて、あれこれ言い合いながら味わう昼下がり。……いやはや、本当に、どちらもとても素晴らしいお酒でした。忘れられない一日になりました![]()
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今日は映画でペアリング!
今回この「高砂 純米大吟醸 松喰鶴」に合わせたいのは、映画『国宝』(2025年/李相日監督)です。
『国宝』は、吉田修一さんの同名小説を映画化した作品。任侠の家に生まれた少年・立花喜久雄が、父を失って歌舞伎の名門に引き取られ、血のにじむような芸の研鑽を重ねていく——。御曹司であるもう一人の若者を好敵手に、二人が芸を競い高め合いながら、女形としての高みへ、そして人間国宝と呼ばれる場所へと至っていく。一人の人間が、芸の道にすべてを捧げる姿を描いた、圧巻の一作です。
なぜ、この作品を高砂に合わせたいのか。それは、この酒が持つ「和の伝統芸能に通じる美学」と、深く響き合うからです。
そもそも「高砂」という名前は、夫婦円満と長寿を寿ぐ能の演目に由来しています。能、そして歌舞伎。日本が誇る伝統芸能が持つ「様式美」の世界と、この端正で格式高いお酒は、根っこのところで同じ土壌に立っているのです。派手に自己主張するのではなく、磨き抜かれた型の中に、静かで確かな美を宿す。それは高砂の味わいそのものではありませんか。
そして、何より響き合うのが「女形」という存在です。女形が体現するのは、けばけばしい華やかさではなく、抑制の効いた、匂い立つような究極の端正な美。これはまさに、香りを控えめにし、綺麗な味わいで料理を引き立てる、高砂の美学と重なります。前に出過ぎず、しかし確かな実力で場そのものの格を上げる。"名脇役"どころか、その抑制こそが至芸——という点で、女形と高砂は同じ高みを見つめているのです。
さらに言えば、芸の頂点である「人間国宝」という称号は、まさに"寿ぎ"の極み。長い研鑽の果てにたどり着く、めでたく、晴れやかな到達点です。夫婦円満・長寿を寿ぐ能「高砂」、慶事を彩る吉祥文様「松喰鶴」——このお酒がまとう祝祭とめでたさの気配は、一人の役者がたどり着く栄光の物語と、深いところで響き合います。ハレの日にふさわしいこの酒を、芸の頂を描くこの映画に添える。これほど似合う取り合わせも、そうはありません。
一杯の酒を、じっくり味わいながら、一人の役者が芸に人生を捧げる物語に浸る。派手さの奥にある、本物の凄み。それを、舌と目の両方で堪能する。……ああ、こんな贅沢な時間はありません。ぜひ、大切な食事とともに高砂を傾けながら、この芸道の物語に酔いしれてみてください![]()
下戸の酒好き評価点
※下戸の酒好き評価は味の良し悪しを計るものではありません。
下戸で酒初心者の私があくまで個人的な感覚で評価したものになります。
★★★
★★★ … 下戸にも酒初心者にもオススメしたい
★★☆ … 下戸、酒初心者に丁度良く幅が広がる
★☆☆ … 下戸、酒初心者には少し理解が難しい
高砂 純米大吟醸 松喰鶴の価格&どこで買える?
さて、気になるお値段です。「高砂 純米大吟醸 松喰鶴 火入」の蔵元定価は、720mlで税込3,500円ほど。山田錦を45%まで磨き上げた純米大吟醸で、しかも手間のかかる生酛造り。この造りの丁寧さを思えば、定価はむしろ非常に良心的だと感じます。
ただし、こちらも而今と同じく入手困難な人気酒。定価で出会えることは少なく、ネットでの実勢価格は720mlで5,000〜8,000円前後になることも珍しくありません。而今ほどの過熱ぶりではないものの、やはり簡単には手に入らない一本です。とはいえ、そのぶん「而今は買えなかったけれど高砂には出会えた」という話もよく耳にします。プレミア価格の而今を追いかけるより、まずはこの高砂から木屋正酒造の世界に触れてみる、というのも、じゅうぶんに賢い選択だと思いますよ。
購入の狙い目は、やはり木屋正酒造の特約店(正規取扱店)です。而今の抽選に外れても、高砂なら店頭に並んでいた、というケースもあるようで、私自身、而今を探し回るなかでこの高砂に巡り会えました。日本酒に強い酒屋さんを地道にチェックするのが、出会いへの近道です。もし見つけたら、迷わず確保することをおすすめします![]()
下に楽天市場とAmazonのリンクを貼っておきますので、気になった方はぜひチェックしてみてください。婚礼をはじめとする慶事の縁起物「松喰鶴」を冠したこのお酒は、大切な人へのお祝いや、特別な席の贈り物にも、これ以上なくふさわしい一本ですよ。
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