こんばんは!まずは皆さん、乾杯っ!日本酒

 

 

草津のつつじ亭での夕食シリーズ、これで3本目となります。前回までの記事「伯楽星 純米吟醸」「水芭蕉 純米吟醸」と続けて、群馬地酒の飲み比べセットを最後まで楽しんでみよう、というわけです。最後の一杯にチョイスしたのは、SAKETIMEの群馬県ランキングで毎年上位常連の銘柄「土田 生酛 純米吟醸ウインク

 

土田 生酛 日本酒 ボトル

 

土田と言えば、近年「江戸時代の製法×現代の技術」を融合した独自路線で全国的に注目を集めている、まさに今をときめく蔵元。SAKETIMEでは群馬県5位(執筆時点、4.01点/619件レビュー)にランクされ、毎年上位に位置している銘柄です。その看板「土田 生酛」を、こんな贅沢な飲み比べシーンで試せる機会はそうそうないので、これは絶対に味わってみたいと意気込んでおりました。

 

 

正直なところ、伯楽星と水芭蕉ですでに1合以上飲んでいて、舌の精度はかなり落ちている自覚がありました。和らぎ水を挟みながらゆっくり、ゆっくり、と自分に言い聞かせつつ、お猪口に注がれる土田 生酛を見つめます。グラスに注ぐと、ふんわりと柔らかいお米の香りが立ち上がってきて、無添加生酛らしいピュアな雰囲気が伝わってきました凝視

 

 

この「土田 生酛」、実は 完全無添加・全量生酛造りという、いまの日本酒シーンの中でもかなり尖った造りをしている一本。醸造アルコールはもちろん、乳酸や酵母の添加すらせず、米と米麹と水だけ、そして蔵に棲みつく天然の蔵付き酵母で発酵させるという徹底ぶり。前2本(伯楽星・水芭蕉)が「究極の食中酒」というキャッチコピーで揃って、これと並ぶ3本目に、まったく違う哲学の生酛が来るのは、群馬の懐の深さを感じる構成ですねキラキラ

 

 

つつじ亭の窓辺に並ぶ3つのお猪口を眺めながら、最後の一杯をゆっくり傾ける。下戸の私には少々過剰なシーンですが、この時間が「今日いちばんの贅沢だなあ」と思えるくらい、心地よい夕食タイムでした。

 

 

土田 生酛 純米吟醸とは?

青磁色の猪口に注がれた土田生酛

 

土田 生酛(つちだ きもと)」は、群馬県利根郡川場村に蔵を構える土田酒造株式会社が手がける、看板銘柄「土田」のレギュラー純米吟醸(生酛造り)。裏ラベルには「本品は、江戸時代の製法 無添加生酛造りの日本酒です」と明記されており、その方向性が一目で分かる、ストイックな造りの一本です。さらに「当蔵のすべての日本酒は、ラベルに表記されている原材料以外使用しておりません」という宣言も添えられていて、米・米麹・水のみで仕込む徹底ぶり。

 

 

土田酒造の創業は1907年(明治40年)。もともとは沼田市に蔵を構えていましたが、1992年に現在の川場村川場湯原へ移転。この川場村、実は前回レビューした「水芭蕉」を造る永井酒造も同じ村にあって、2つの注目蔵が同居する小さな酒どころでもあります。現当主は6代目蔵元の土田祐士氏(元カプコン勤務という変わり種)で、2008年に社長就任。そして杜氏は星野元希氏(1985年東京生まれ)で、2012年に27歳の若さで杜氏に就任、当時の群馬県内最年少杜氏として現在まで醸造を率いていますニコニコ

 

 

土田酒造の現在の姿があるのは、2010年代後半に大改革を断行したから。それ以前は経営的にも厳しい時期があり、いっとき倒産寸前まで追い込まれた蔵だったとも言われています。そこから、星野杜氏が新政酒造に学び、完全無添加・全量生酛・蔵付き酵母醸造へと舵を切ったことで、いまや世界的に注目される蔵元へと再生。「Discover Japan」「dancyu」「SAKETIMES」など多くのメディアで特集されている、まさに今をときめく作り手です。

 

 

蔵の哲学を象徴するのが、ラベルに刻まれた英語コピー「Reclaiming Micro-biodiversity for the Future of Sake」。直訳すれば「お酒の未来のために、微生物の多様性を取り戻す」。乳酸を添加せず、蔵に棲みつく天然の乳酸菌・酵母を使うことで、画一化された現代日本酒の対極を行く——という強烈な意思表示です。「データサイエンスと江戸時代の造り」を融合させるという星野杜氏の独自路線も、まさにこの哲学に根ざしています飛び出すハート

 

 

本作「土田 生酛」のスペックは、純米吟醸酒・精米歩合60%・原料米は群馬県産飯米アルコール度数14%。使用酵母はきょうかい701号、種麹は焼酎用黄麹と白夜のブレンド、と裏ラベルで明記されています。「当商品は、複数本ある仕込桶をブレンド調整せずに瓶詰めしております。仕込桶ごとに若干異なる味わいをお楽しみ下さい」というメッセージもあって、ロットごとの違いを蔵自らが楽しんでほしいと提案する、現代では珍しい姿勢が貫かれています。

 

 

土田 生酛 純米吟醸をチェック!

 

土田 生酛 日本酒ボトルとお猪口

四合瓶に白い和紙ラベル。中央の「土田 生酛」筆書きと、英語コピー

「Tsuchida KIMOTO / Reclaiming Micro-biodiversity for the Future of Sake」

が共存するモダンな佇まい。

 

土田 生酛の日本酒とぐい呑み

青磁色のお猪口に注がれた土田 生酛。

透明感がありつつ、微かに黄色がかったコクのありそうなニュアンス。

 

土田 生酛 味わい指標と日本酒スペック

蔵元独自の「ツチダ 味わい指標」。

甘辛度は中央やや辛口、酸味おだやか寄り、味わいライト寄り、後味すっきり。

冷酒◎・常温◯・ぬる燗◎。

おすすめ料理は塩焼き鳥、天ぷら、タコわさ、酢豚、ボンゴレパスタ、ハンバーグと、和洋を問わない幅広さ。

 

土田 生酛 純米吟醸酒 ラベル

裏ラベル。「江戸時代の製法 無添加生酛造りの日本酒」と明記。

品目は純米吟醸酒、米と米麹は群馬県産、精米歩合60%、ABV14%、酵母きょうかい701号、種麹は焼酎用黄麹と白夜。

製造者は土田酒造株式会社(群馬県利根郡川場村川場湯原2691)、令和五酒造年度醸造(2023-24)。要冷蔵5℃以下。

 

銘柄 土田 生酛 純米吟醸(つちだ きもと)
品目 日本酒 純米吟醸酒(無添加生酛造り)
原材料名 米(群馬県産)、米麹(群馬県産米)
精米歩合 60%
使用酵母 きょうかい701号(蔵付き酵母を併用)
使用種麹 焼酎用黄麹、白夜
アルコール分 14%
内容量 720ml / 1800ml
適正温度 冷酒◎/常温◯/ぬる燗◎
保存方法 要冷蔵 5℃以下
醸造年度 令和五酒造年度醸造(2023-24)
参考価格 720ml=1,780〜2,140円(税込・販売店により異なる)
蔵の哲学 完全無添加・全量生酛造り・蔵付き酵母醸造/Reclaiming Micro-biodiversity for the Future of Sake
蔵元・杜氏 6代目蔵元 土田祐士氏(2008年社長就任)/杜氏 星野元希氏(2012年就任・当時群馬県内最年少)
SAKETIME 群馬県ランキング 5位(4.01点/619件レビュー、執筆時点)
製造者 土田酒造株式会社(群馬県利根郡川場村川場湯原2691)
創業 1907年(明治40年)/1992年に沼田市から川場村へ移転

 

 

土田 生酛 純米吟醸を飲んでみての評価

 

3本目に挑む土田 生酛 純米吟醸、ということで、すでに伯楽星でキレを、水芭蕉で包み込みを味わってきた舌で迎える3杯目です。お猪口に注ぐと、青磁色の盃の中で微かに緑がかった透明な液体が静かに揺れ、ふんわりと柔らかい米の香りが立ち上がってきます。生酛らしい乳酸の華やかな香りはほどよく抑えめで、上品でクリアな雰囲気。「あ、これは想像していたよりずっと洗練されている」というのが第一印象でした。

 

 

柔らかな酸、ジワリと広がる旨味、クリアな余韻。

 

 

 

口に含むと、まず感じるのが生酛らしい柔らかい酸味。生酛と聞くと「酸が強くてキレが鋭い」というイメージを持っている方も多いかと思いますが、土田の生酛はその対極で、驚くほどクリアで上品な仕立てです。きょうかい701号という協会酵母の系譜を使いながら、無添加・蔵付き酵母の力で複雑なニュアンスを引き出し、それでいて雑味のない透明感のある仕上がりに収まっているのが本当に見事びっくり

 

 

続いて広がるのが、米のきれいな旨味。これがジワーッと舌の上でゆっくり広がっていく感覚で、決して派手ではないけれど、確かにそこにある「存在感」を主張してきます。そして後味は、見事なまでにクリアにキレていく。余韻に重さが残らず、次の一口を呼び込む後半の引き際が素晴らしいんですよね。これこそ「江戸時代の製法×現代の技術」の融合だなと、しみじみ感心してしまいました。

 

 

飲み比べした3本(伯楽星・水芭蕉・土田)を比較してみると、それぞれが全く違う方向を向いていたのが面白かったです。伯楽星は「シャープなキレと辛口の食中酒」、水芭蕉は「ふんわり包み込むまろやかな食中酒」、そして土田は「柔らかい酸とクリアな旨味の融合」。3本それぞれが「料理を引き立てる」という共通の目的を持ちながら、その実現方法が完全にバラバラなのが、いまの日本酒の豊かさを象徴している気がします飛び出すハート

 

牛肉とアスパラ、トマトの料理

強肴、黒毛和牛炙り フルーツとまと「美」 あすぱら クレソン 共ソース 有馬たれ

 

正直に言えば、3本目ということもあり、酔いがかなり回っていた状態でいただいたので、土田 生酛の真価を完全に捉えきれていない自覚はあります。「もっと素面の最初の一杯目で飲みたかった!」という後悔と、「いやでもこの心地よい酔い加減でこそ感じられるピュアな旨味だったかも」という納得が、半々の不思議な感想。いずれにせよ、「これは絶対にもう一度買って素面で飲みたい!」と思わせる魅力にあふれた一本だったのは間違いありません。下戸目線の評価は迷わず★★★。生酛初心者にも、生酛通の方にも、自信を持ってオススメできます照れ

 

 

今日は小説でペアリング!

 

 

土田 生酛」には、小説「舟を編む」(三浦しをん/光文社、2011年刊、2012年本屋大賞受賞作)とのペアリングを強くお勧めします。出版社・玄武書房の辞書編集部で、新しい大型辞書「大渡海」を15年の歳月をかけて編んでいく辞書編集者・馬締光也たちの物語。地味で気の遠くなるような作業を、しかし執念深く、緻密に、一語ずつ積み重ねていく彼らの姿勢が、土田 生酛の哲学とぴったり重なるのです。

 

 

本作の魅力は、なんと言っても「ふつうの言葉を、ふつうのままに、しかし徹底的に正確に届ける」という姿勢。馬締たちは奇をてらった派手な辞書を作るのではなく、現代日本人が日々使う言葉を一つひとつ用例を集めて、語釈を磨き、ニュアンスを精緻に表現していきます。その作業は時に何年も、十数年も続く。一方の土田酒造は、米と米麹と水だけで、添加物ゼロ、蔵付き酵母任せという、徹底した「ふつう」の素材を、徹底した手仕事で仕立てる姿勢。両者にあるのは、「派手な特別さ」ではなく、「ふつうを極限まで磨いた先の特別さ」という同じ価値観です飛び出すハート

 

 

もうひとつ、両者の親和性を強く感じるのは「再生の物語」という側面。『舟を編む』では、ベテランの荒木公平が定年退職を控え、新しい後継者として馬締を発掘して辞書編集部を立て直していく。土田酒造もまた、2010年代後半の大改革で、6代目蔵元・土田祐士氏と杜氏・星野元希氏が、倒産しかけた蔵を「江戸時代の製法×データサイエンス」という独自路線で世界的ブランドへと再生させました。古いものを守るのではなく、本質に立ち返ったうえで未来へつなぐ——その姿勢が、辞書編纂と日本酒造りに共通して流れる強い意志です。

 

 

個人的にお勧めしたい読み方は、馬締たちが「右」という言葉の語釈を書き直すシーンや、紙の手触りについて延々と議論する場面を読みながら、冷酒の土田 生酛をお猪口でちびちびやる、というスタイル。馬締の文学的なこだわりと、土田の「仕込桶ごとに若干異なる味わいをお楽しみ下さい」というロット差を肯定する姿勢が、口の中と紙の上で奇跡的に交差します。冷酒で繊細な酸を、ぬる燗で米の旨味を、と温度を変えながら、本のページを行ったり来たりする時間は、これ以上ない贅沢な「ふつうの夜」を作ってくれるはずおねがい

 

 

『舟を編む』は2013年に石井裕也監督・松田龍平主演で実写映画化2016年にフジテレビ系ノイタミナ枠でアニメ化(黒柳トシマサ監督・ZEXCS制作)、さらに2024年にはNHK BSプレミアム4Kで池田エライザ主演の実写ドラマ化(『舟を編む 〜私、辞書つくります〜』)と、メディアを越えて何度も再評価されている名作。気軽に手に取れる文庫本でも、映画でも、アニメでも、ドラマでも、入り口はどこからでもOK。土田 生酛の哲学を肌で感じたいなら、ぜひこの一冊(あるいは一本)と一緒に過ごしてみてください。

 

 

下戸の酒好き評価点

 

 

※下戸の酒好き評価は味の良し悪しを計るものではありません。

下戸で酒初心者の私があくまで個人的な感覚で評価したものになります。

 

 

★★★

 

 

★★★ … 下戸にも酒初心者にもオススメしたい

★★☆ … 下戸、酒初心者に丁度良く幅が広がる

★☆☆ … 下戸、酒初心者には少し理解が難しい

 

 

土田 生酛 純米吟醸の価格&どこで買える?

 

土田 生酛 純米吟醸」の参考価格は、720mlで税込1,780〜2,140円ほど。1800mlは3,500〜4,000円台が一般的な相場です。土田酒造は公式オンラインショップ「cart.homare.biz」を運営しており、ここから直接購入することもできますが、人気銘柄ゆえに在庫が動きやすいので、確実に手に入れたい場合は取扱酒販店を覗くのが定石。土田酒造は特約店制を採用しており、群馬・首都圏を中心にしっかりとした酒販店で取り扱いがあります。

 

 

楽天市場やAmazonでも取り扱いがあり、地方在住の方でも比較的入手しやすい銘柄。ただし、生酛特有の「複数本ある仕込桶をブレンド調整せずに瓶詰め」というロット差を楽しむ造りなので、できれば回転の早い専門店で買って、新鮮な状態で味わうのがおすすめ。冷蔵庫保管が必須(要冷蔵5℃以下)なので、夏場はクール便対応をしている店舗を選ぶと安心ですニコニコ

 

 

土田酒造は「土田 生酛」のレギュラー以外にも、「土田 山廃」「土田 シン・ツチダ」「誉国光」など、無添加・蔵付き酵母路線の銘柄を多数展開しています。気に入ったら、ぜひ蔵の世界観を広く味わうのもおすすめ。川場村まで足を運ぶ機会があれば、蔵見学も対応している(要問合せ)ので、土田酒造のオフィシャル体験を肌で感じてみるのも醍醐味ですウインク

 

 

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