過去記事の修正 92
クラシック編
昨日のアメバのメンテナンスには大慌てです。せっかくアップした記事が吹っ飛んでしまいました。大慌てで修正復活です。
この協奏曲のヴァイオリン・パートには3種の異稿が存在しますが、通例は改訂版といえる1808年の初版譜が弾かれます。このテツラフのデビュー直後の1988年録音は、至るところで耳慣れぬ音が鳴る手書き譜に依拠しつつ、普段耳にするヨアヒムやクライスラーのカデンツァではなく、ベートーヴェン自身のピアノ編曲版を元にした自作を弾いています。こういうところにテツラフのこだわりを感じます。ちなみに今回比較に「artenova」録音も聴き直してみましたが、ジンマンとの演奏はピッチも違いますし、より解釈が現代的になってメリハリが利いています。
なにが面白いかって、このブランデンブルク協奏曲にしろ、含まれるメインの第5番は初稿による演奏になっています。つまりは真っ当なアプローチではないんですな。ホグウッドはモーツァルトの交響曲全集でも異稿を積極的に取り上げ、序曲やセレナードなどもシンフォニーとして採り入れ、収録作品は偽作も含めて実に71曲に達し、かつてない規模でモーツァルトの交響曲全集を完成しています。ここでも、当時の演奏スタイルを徹底的に検証して、録音当時は存在しなかった初稿での第5番を世に問うたのでした。
従来はワルターの演奏がスタンダードといわれる中で、昔からヨッフムやザンデルリンクなどのちょっと鈍重な感じの演奏を好んでいました。最近はそうでもありませんが、このアーノンクールの演奏はワルターの軽やかさとは違う、冒頭からスッキリした響きが体中にしみこんでくるような、爽やかな「田園になっています」。改めて楽譜を確認すると、ベートーヴェンの指定はアレグロ・マ・ノントロッポ♩=66の指定です。ところがアーノンクールはこの指定を無視しています。また、ピアノでの開始が指示されていますが、最初聴いたときいつもの視聴レベルでアンプのボリュームを設定したのですが、やけに音が小さく始まるのでびっくりしました。多分アーノンクールはピアニッシモぐらいで開始しています。
この録音は放送音源であるようですが、録音場所と時期からいって「アスコーナ音楽祭」での収録でしょう。イタリア四重奏団にとっては、ここに収録されているドヴォルザークの「アメリカ」はこの年にセッション録音された曲目であるというです。そういうことではかなり弾き込んだ演奏ということが出来ますし、尚かつ、セッションとは違うライブでの緊張感がこの演奏にはあります。
ラトルといえばベルリンフィルのシェフになる前はバーミンガム市交響楽団のシェフを18年続けていました。その彼もキャリアの初期のレコーディングは別のオーケストラを振っています。ここでも、若干25歳にして名門のフィルハーモニア管弦楽団を向うに回してなかなかの怪演を披露しています。この録音時ラトルは若干25歳です。そして、日本ではこの録音でデビューしています。EMIのデジタル初期の録音で、最初レコードで登場した時は演奏はともかく、録音の悪さで不評を買っていました。録音レベルが低いというかダイナミックレンジを広くとったことが災いしてレコードではこの録音の真価は発揮できなかったのでした。
ジャケットは使用契約の切れたフィリップスのロゴの替わりにデッカのロゴに変わっていますが、以前にも書きましたがオリジナルと同じデザインです。まあ、「ステパン・ラージンの処刑」の表記も追加されてはいますけれどもね。ただ、この解説書の裏面は面白いことにフィリップスのロゴもそのままにその「ステパン・ラージンの処刑」のジャケットが採用されています。解説書の中はオリジナルオランダ盤の解説がそのまま縮小収録されていますし、さらにご丁寧に、CDのバックには、2枚のレコードのジャケットがオリジナル仕様で印刷されています。タワーレコードのこだわりが感じられます。
録音は1987年、多分コンサートにも使っているガルス・ホールでの録音でしょう。この一連の録音は決して悪くありません。適度のホール残響があってなかなかバランスの取れた響きです。ナヌートの演奏も、そこらのぽっと出の指揮者とは違う安定感があります。長年手塩に育てて来たオーケストラだけあって長所も短所も知り尽くしているのでしょう。決して一流のオーケストラではありませんが、指揮者と一体感のある演奏を繰り広げてくれます。
デッカの録音で、尚かつこのCDが「ザ・デッカ・サウンド」の中に収められたということは、エポック・メーキングな一枚であることは確かです。レコード時代の表記では1959年録音というされていましたが、このセットのデータでは1960年4月になっています。とはいっても、ステレオ初期には変わりありません。最新の録音とは比べ物になりませんが、それでも、デッカ・ツリーを使った奥行きのある響きは充分現役盤として通用します。
ここで聴くクリーヴランド管弦楽団の演奏の上手いこと、まさにセル時代を彷彿とさせるアンサンブルの透明感です。また、デッカの録音が優秀です。録音はこのオケの録音でよく使われるマソニック・オーディトリアムのもので残響は少なめですが、その分透明感のあるクリアな響きで録れています。カラヤンはステレオではウィーンフィルと2度、ベルリンフィルと一回セッション録音をしています。手元に有るのは1979年のベルリンフィルとの録音です。新世界の方はDGとEMIに録音をしていますが、この8番に関してはベルリンフィルはEMIにしか録音を残していません。ここが残念なところです。何故かというと、これがあまり褒められたものではないからです。手元に有るCDはかなり以前のもので最近のリマスター盤ではないので何ともいえませんが、録音レベルも低く70年代を代表する様な冴えない録音です。ドイツ・エレクトローラの手になる録音ですが、ほとんど話題にもならなかったように思います。
アシュケナージは晩年、ロイヤル・ストックホルムフィルと新しい全集を録音しましたが、これは彼が指揮活動を本格化し出した後、1970年代後半から1980年代にフィルハーモニア管と完成したものです。まあ、この後フィルハーモニア管弦楽団の音楽監督になれるかと思いきやシノーポリにかっさらわれてしまい、泣く泣くロイヤルフィルに移るのですが、このシベリウスはそのフィルハーモニアとの置き土産みたいなもんですわな。この頃のアシュケナージは精力的にシベリウスを録音しています。交響曲全集をはじめ、管弦楽作品、ひいては声楽作品も録音しています。新たにレオ・フンテクの編曲のバージョンも追加しました。