八極拳の秘伝技を分析 その一 誰も知らない寸勁の戦闘法と体得法 | 山田英司の非officialブログ 利用客の多い武道駅 マニアックだからホントに迫れる

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このブログでは、皆が興味を持つ武術や格闘技の話題に、肩の凝らないマニアックさで迫っていきます。

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新シリーズはさらにマニアックになります。

八極拳オンラインクラスでは、一握りのマニアにしかわからないような秘伝を毎月公開していますが、その中でも一般の人にも多少興味のありそうな話題を選んでいきます。

一回目は、多くの人に誤解されがちな武壇八極拳と寸勁の戦闘法、その習得法について説明して行きましょう。



「寸勁」や「発勁」という言葉を日本に紹介し、広めたのは言うまでもなく松田隆智先生。相手に電話帳や鉄板などを胸に持たせ、寸勁で一瞬に勁を伝えるパフォーマンスはテレビでも何回かやられてました。


ユーチューブでも紹介されている、プレステージで寸勁を見せる松田先生。鉄板に右拳を当て、


体内に勁を浸透させます。



こうした松田先生のパフォーマンスの影響が強すぎたのか、寸勁とは相手の胸に拳をつけてから打つもの、という誤解が広まってしまいました。

「実戦でどうやって拳を相手の胸まで持っていくのか?」とか「ただ推してるだけじゃないか」などの批判や疑問の声も随分聞いたものです。

なにしろ、当時、寸勁なんて松田先生しかやっていなかったのでしょうがありませんね。


しかし、実際に松田先生から寸勁を学んでいた弟子たちは、こうしたパフォーマンスはあくまでも八極拳の一部である、ということは認識していました。


実際、私がこうしたパフォーマンスついて質問すると、松田先生は、「中国武術を知らない連中には、少し粉薬を嗅がせておく必要があるんだ」とのこと。

松田先生自身も、あくまでもパフォーマンスとしての寸勁表現として行っていたわけですが、一般の武術ファンまで届くわけがありません。


では、本当の寸勁の戦闘法はどんなものなのでしょうか?

今回、八極拳のオンラインクラスで小八極の套路解説を行いましたが、その第1動作に既に答えがあります。

小八極を正しく伝承されると、そんなことまで理解できてしまうのです。


最初の動作は、蹲歩雙伸。腰を落として両拳を前に落とすだけの簡単な動作。

何も説明を受けなければただの始まりの姿勢ですが、正しく学ぶと、この一動作に先の疑問の答えが全てあります。


小八極の始まりの動作。腰を落として両拳を前に。つま先は30度外に開くが膝は開かないのがポイント


この蹲歩雙伸には、八極拳全体の戦闘法が隠されています。

使い方は簡単。聞けばなーんだ、と思いますが、聞かねば思いつかないでしょう。


実戦や護身では両手を下げた状態から始まることが多いですが、もし相手が攻撃的な構えをとったら、その瞬間、下から両手を相手のガードの中に入れてしまう。

ただこれだけです。


武術的に言えば、相手の内門に手を入れる。もしくは相手の球門体を制することを意味します。

ここに手が入れば寸勁だけでなく、冲捶も献肘も自由自在。八極のほとんどの技が入ります。

相手が構えて、自分は自然体。


下から両手が簡単に入る。


そこから手を引かずに打てば寸勁。



さて、こうした理屈を知らねば寸勁は使えませんが、知ればすぐに実戦に使えるというわけでもありません。


蹲歩雙伸の姿勢に意念が必要です。意念を用いることで、戦いの準備姿勢が整います。


内家拳では、良く内三合と言う言葉を使います。心、意、気、力などを合わせる意味です。ここでは、「前に出る」という意を心に持つことで気の運動エネルギーが発動し、身体が動く、という意味で寸勁などを行うには必要な意念です。


具体的に言うと、蹲歩雙伸の姿勢で相手に両手を押さえられ、その手が離れたら、パッと身体が前進する準備ができていなければなりません。蹲歩雙伸はまっすぐに立ってるだけなのに、前進するアイドリング状態を保つと言うことです。

相手に両手を押さえられ、


手を離されたらパッと前へ行ける。



その準備は蹲歩雙伸の姿勢に既に隠されています。両つま先が外に向くのに、膝が正面に向くと言うことは、脚の内側に重心をかけることになります。川嶋先生が理論化した脚の無反動化が最初から行われているわけです。

だから「前へ行く」と言う意念が体の動きにまで繋がるのです。


さて、こうした内三合を保ち、相手と手を接触した場合、相手の手が自分の手から離れた瞬間、発勁が放てます。

もし、手が相手の身体に近ければ寸勁となり、遠ければ長勁となる。

寸勁は狙って打つのではなく、結果としてなるだけです。ここを誤解しないでくださいね。

相手の手が離れたら、


そこから発勁。近ければ結果として寸勁になります。



以上が寸勁の戦闘法の基本ですが、レベルが上がるとこれだけでは現実には対応が難しい。相手も同じことをやってきたら勝負がつかなくなるからです。

そこで太極拳のように、相手の腕に接触しながら、自分から相手の隙を作り出していくような化勁が必要になります。

この時も崩した位置から手を引かず、拳を打ちこまねばならぬ為、近ければ結果的に寸勁となります。

相手の手を引き崩しつつ、


そこから螺旋の寸勁。陳家太極拳などでも使われるオーソドックスな寸勁。



型とは、一種の記録媒体ですので、門派の技術、戦闘法、鍛錬法、発勁法、健康法など様々な情報が詰まっています。

小八極はまさに八極拳の情報が最も分かりやすく詰まった型。

オンラインクラスでは、それを解き明かしていくので、これ以上ないマニアックさになります。今回のマニアックな解説、あなたはついてこれましたか?



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