山田英司の非officialブログ 利用客の多い武道駅 マニアックだからホントに迫れる

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武術、格闘技関係の書籍を作りながら、budo-stationという武術道場も主宰。取材や、日常の武術に関するエピソードや気づきを日々綴っていきます。
このブログでは、皆が興味を持つ武術や格闘技の話題に、肩の凝らないマニアックさで迫っていきます。


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大晦日のメイウェザー対那須川天心戦はよくも悪くも格闘技界の話題を集めました。

アウトボクシングをして、軽くエキジビジョンで流すと思ったメイウェザー選手が突然打ち合いに転じ、あっさりと那須川選手をKO

アウトボクサーのイメージの強いメイウェザー選手ですが、もともとは攻撃的なハードパンチャーでした。しかも、その身体操作や戦略はボクシングの常識と外れた極めて武術的なもの。

中国武術界でも攻撃的な李書文の戦闘法とそっくりなのですが、当然ボクシング界ではそんなことに気づく人はいません。

中国武術マニアだからこそわかるその秘密を公開しましょう。


これまでこのブログでは冲捶の身体操作や、打開の捨身法などを紹介してきました。

これらは分かりやすく中国武術の身体操作や戦闘法を伝える為のものですが、実際の戦いにおいては、それらを知ってるだけでは使えません。

相手がいつ飛び込んで来て、何をしてくるかわからない状況で自分の身体を、適切な位置に移動し、かつ素早く強い攻撃を返す。


こうした戦闘法とセットでなければ、どんな強力な発勁を身につけても宝の持ちぐされ。

要するに型はできても組み手に弱いタイプになってしまいます。

中国武術修行者の多くの悩みもここですね。


彼らだってマジメに練習し、強くなりたいのです。でも、そのポイントが分からない。

では、何が必要か?

先に答えを書いてしまいましょう。

それに必要なのは歩法です。

しかし、この歩法ほど多くの人に誤解されてるものはない。

今回はこの問題に迫ります。


私の八極拳オンラインクラスでは、基本の段階でこの歩法と発勁法を先に学びます。

昔は秘伝や大切な実戦の要領を後になって教えたりしていましたが、初心の時に正しく身につけておけば、後に楽だからです。


ですから拳功房の生徒は皆、何の躊躇もなく、組み手に移行したり、試合で活躍したりしています。

さて、まず歩法の誤解を解きましょう。

空手でも剣道でもボクシングでも、動く時の基本を摺り足にしています。

摺り足は平らな地面や試合場では有効ですが、足場の悪い場での戦いを想定する武術では、むしろ摺り足は危険と考え重要視しません。

濡れた地面の上で摺り足などしたら滑ってしまいますね。


武術では、もっと多様な足の使い方をします。

八極拳では、足裏の踵を精、湧泉穴は気、つま先近くを神とし、精、気、神の三才を使いこなすことを「血の気」と言い、実戦武術家として名高い蘇昱彰先生は、これらの気の活用を重要視します。


具体的に説明しないと分かりにくいでしょう。

八極拳オンラインクラスの第四回配信予定の「架式と勁動」では、陳家太極拳の楼膝拗歩を例に私が解説しています。


この動作は楊式や24式にも取り入れられている有名な動作ですが、源流の陳家溝では、前足裏で前方を蹴り、その足を踏み下ろしつつ、手刀や掌、前腕、肘などで相手を打つ豪快な技です。


ポイントは前足を踵から着地し、次につま先側の足裏を着地した際に一気に後ろ足の纒絲勁をきかせ、前足と反対の手(拗歩)に力を伝えます。この時、後ろ足が少し前に寄ります。八極拳でもこのような歩法を小八極などでじっくりと練ります。


左手で膝を払いつつ(楼膝)左踵を着地させ、


次に左つま先も着地。


この体重移動に合わせ、一気に後ろ足を寄せ、纒絲勁をきかせ、右掌を打ち出す。これが昔の太極拳の発勁法です。


さて、こうした動きを生かすには、摺り足は不向きです。

蹴りありのムエタイのような競技では、こうした動きは相性がいいのですが、蹴りなしのボクシングのような競技では、ステップは摺り足中心になるものです。

しかし、そのボクシング界において、踵から踏み出すような武術の動きを大大的に取り入れた選手がいます。


そう、それがメイウェザー選手です。

メイウェザー選手の右ストレートは独特のフォームから放たれます。

まず、左足を踵から前にノッシと出し、つま先を着地させるや否や後ろ足を寄せ、そのバネを使って右ストレート。

あまりにウェイトが乗り、勢いでメイウェザー選手は右足を前に出し、右足前で相手をプッシュしてしまいます。

太極拳では体を崩さぬため、右足の踵は浮かしませんが、基本的な身体操作は楼膝拗歩と同じです。


メイウェザーの踏み込み。前足は踵から着地。


前足のつま先が着地したら素早く後ろ足を寄せ、



全身のバネを効かせ、右ストレート。一発でKOです。




メイウェザー選手はこうした血の気にあたる動きを最大限に生かす為、摺り足ではなく、踵からノッシノッシと歩きます。

このボクシング界の常識を覆す歩法と発勁法をフルに活かしたメイウェザー選手の戦闘法は、ボクシング界では最新の理論だったのでしょう。だれもメイウェザー選手に土をつけることができず、5050勝、無敗のままで5回級制覇という歴史的偉業を達成したのです。


もちろん、メイウェザー選手の血の気や発勁法の共通点はこれだけではありません。

八極拳と言えば冲捶。

冲捶のポイントは躔歩や闖歩と呼ばれるつま先を中心に踵を推しだす動作。これが八極拳で多用されることは有名ですね。

オンラインクラスの中では、勁と架式を繋ぐ練習として、躔歩練習も紹介しています。



弓歩で両踵を浮かし、



両踵を前に推しだしつつ馬歩になる基本練習。冲捶の勁の基本です。


では、冲捶を行う時の躔歩はどのような歩法から行いやすいのでしょうか?

多くの修行者がここで迷いますね。

その答えの一つをメイウェザー選手が示しています。

そう、摺り足ではなく、前足をノッシノッシと踏み出す。もし、相手が出てきたら、この瞬間、後ろ足を少し寄せれば強烈な右ストレートのカウンターが打てるわけです。

しかし、打てるのは右ストレートだけではなく、同じ動作から左の強烈なフックも放てるのです。

これが冲捶の躔歩と同じ足裏の使い方をしています。


メイウェザー選手は前足を踵からつけ、つま先を着地すると同時に左手を下げフックの準備。しかし、上体も捻らず、肩も引かないこの蓄勢は相手にとっては反応しづらい動作。実際このフォームからは強烈な右ストレートを打てるわけですから、相手はフックを予測しにくいのです。

しかし、この姿勢からつま先中心に踵を浮かせて体を移動させるとノーモーションで強烈にウェイトの乗ったフックが打てます。

ほぼ冲捶ですね。



左足を踵から着地。



つま先を着地させる時に左手を下げる。しかし相手にはフックを予測しづらい。


そこからつま先中心に両踵を回し、同時に左フック。相手には突然パンチが飛んでくるように思えます。


実はこの躔歩の動きには、ノーモーションで強烈なパンチを放てるだけでなく、もう一つのメリットがあります。

それこそが、今のメイウェザー選手が得意とするカウンター。

それも昔のカウンターのように避けてから打つのではなく、相手のパンチと同時にフックを放ち、自分の立ち位置は微妙にずらす。

そう、これが捨身法。まさに李書文が得意にしていた戦法です。

躔歩で身体を半身に切る時、自分の身体はわずかに外にポジションが変化します。

実は先日の那須川選手とのフィニッシュシーンでメイウェザー選手はこの捨身法のカウンターを使っています。

ダウンを奪われ起死回生の一撃を狙いワンツーを狙う那須川選手の右ジャブに、メイウェザー選手は冷静に躔歩を使った左フックをテンプルにカウンターします。

こんなタイミングで合わされたらさすがの那須川選手も避けられません。


那須川選手の右ジャブに両踵を浮かせ、体を捻り




突然左フックのカウンターをかぶせる。見事にテンプルを捉えています。



メイウェザー選手を破るには旧来のボクシング理論では無理ですね。

もはやその身体操作のレベルは武術の達人並み。いや、それ以上かもしれません。

こんなバケモノと勇敢に戦った那須川選手は立派ですが、我々も打撃格闘技の究極に近い動きを見られたのはラッキーでしたね。



八極拳のより深い身体操作を知りたい人はこちら


http://budo-station.jp/page-2793/


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