エンジン:C30A型 水冷Ｖ型6気筒DOHC24バルブ
最高出力:280PS/7,300rpm
最大トルク:30mkg/5,400rpm
総排気量:2,977cc
ボア×ストローク:90mm×78mm
圧縮比:10.2対1
燃料供給装置 電子燃料噴射式(ホンダPGM-FI)
燃料タンク:70L
サスペンション形式
・Fダブルウイッシュボーン式
・Rダブルウイッシュボーン式
ブレーキ形式
・Fベンチレーテッドディスク
・Rベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ
・F205/50ZR15
・R225/50ZR16
ボディサイズ: L4,430×W1,810×H1,160mm
ホイールベース:2,530mm
トレッド:1,510/1,530mm
車重:1,230kg
1990年代初頭、ホンダは既に市場に「NSX」という革新的なスポーツカーを送り出していた。この車は、そのバランスの取れたパフォーマンスと、F1で培われた技術を民間車に応用するというコンセプトで注目されていた。しかし、ホンダはさらなる高性能を求める声に応える形で、NSXの更なる進化形として「NSX Type R」の開発に踏み切った。このモデルは、より軽量で、よりシャープな運動性能を持ち、レーストラックでの使用を想定した、まさにストリートレーサーの域を超えた存在である。
1990年代は、自動車産業において技術革新が急速に進んだ時期であり、特にスポーツカーのセグメントでは、高性能化とともに、環境規制への適応が求められていた。ホンダ NSXはその先駆者として、アルミニウムボディの採用など、軽量化技術の開発に大きな影響を与えた。この時代のモータースポーツへの関心の高まりと共に、ホンダはNSX Type Rを通じて、技術の限界を押し上げ、ドライバーに究極の運転体験を提供することを目指した。
NSX Type Rの開発では、軽量化が最優先課題であった。そのため、内装をはじめとした数々の部分が見直され、不要な装備は徹底的に削除された。例えば、標準モデルに搭載されていたエアコンやオーディオシステムはオプション外とされ、純粋な走行性能に特化。車体の各部にはカーボンファイバーやアルミニウムが惜しみなく使用され、その結果、車両重量は大幅に軽減された。また、エンジンとトランスミッションは、より高いパフォーマンスを発揮するように専用設計され、高回転までスムーズに吹け上がる特性が追求された。
NSX Type Rの開発には、ホンダの中でも特に熟練したエンジニアたちが集められた。その中心人物は、F1などのモータースポーツで培われた経験を持つエンジニアであり、彼らの知識と技術がこの車の開発に大きく貢献している。特に注目すべきは、シャーシとサスペンションの設計に関わった技術者たちで、彼らはレーシングカーに匹敵するレベルの走行性能を市販車に落とし込むことに成功した。
NSX Type Rは、その軽量化とエンジン性能の向上により、驚異的な速さと機敏なハンドリングを実現している。エンジンは3.0リットルV6 DOHC VTECを搭載し、最大出力は280馬力を誇る。このパワーユニットは、特に高回転域でのレスポンスが鋭く、ドライビングの歓喜を一層引き立てる。トランスミッションは5速マニュアルが組み合わされ、精密なギアチェンジが可能であり、ドライバーは常に最適なドライビングコンディションを保つことができる。
ホンダ NSX Type R（NA1）は、単なる高性能車を超え、ドライバーと一体となることを可能にするマシンとして設計されました。この車は、その開発過程で示された技術的な極致と、走行時の感動的な体験が、自動車としての役割を再定義するものであったと言えるでしょう。
車両の設計思想は、「ドライバーに最高の運転喜びを提供する」というものでした。そのため、性能のみならず、運転中の感覚、つまり「ドライビング・フィール」に対しても徹底的にこだわりました。NSX Type Rのステアリングやペダル操作、シフト感など、すべてにおいてドライバーの意のままに操ることができる設計が施されています。これにより、ドライバーは車との一体感を感じながら、限界を楽しむことができるのです。
また、NSX Type Rは、その希少性と高性能が相まって、コレクターズアイテムとしての価値も非常に高いです。生産台数が非常に限られているため、市場に出回る機会は少なく、そのたびに車両の価値が見直されることがあります。このような背景もあり、NSX Type Rはただの車ではなく、一種の文化的遺産としても位置づけられていると言えるでしょう。
NSX Type Rの影響は、後のホンダ車にも大きな影響を与えました。この車によって確立された軽量化技術や高性能エンジニアリングの哲学は、その後のモデルにも引き継がれ、ホンダのスポーツカーラインナップを一層強化する基盤となりました。これにより、ホンダは高性能スポーツカー市場において独自の地位を築くことができたのです。
総じて、ホンダ NSX Type R（NA1）は、自動車技術の粋を集めた結果生まれた、時代を超えて愛され続けるモデルです。その精神は、今後も多くの自動車愛好家やエンジニアにとって、インスピレーションの源となり続けることでしょう。そのすべてが、ホンダの挑戦的なスピリットと、ドライビングの楽しさを追求する姿勢の表れであると言えます。