こんにちは。行政書士もできる往年の映画ファンgonzalezです。
訪問ありがとうございます。
近年とみに漫画原作物の映画化が多い。のは、アイディアの行き詰まりに起因するからなんだろうか。それとも、原作が素晴らしい、面白い、感動する、等々なので、これを実写化すれば良い興業が打てる。との胸算用に基づくのか。
理由はともあれ、自分が気になるのは原作に愛着ある人からの反応だ。
『ホットロード』『ジョジョの奇妙な冒険』『銀玉』『氷菓』など数多の作品群である。
中には全く知らない原作も多いのだが、これもまたその一つ。
『海街diary』 (‘15) 127分
梗概:鎌倉に住む三人姉妹の出奔した父親が、三番目の妻の元で死亡。山形県の葬儀に赴いた三人は、二番目の妻の娘すずに遭う。彼女は父の連れ子なので、今の母とは血縁関係にない。
姉妹の長女は、すずを引き取ることを提案し、すずも応じる。かくして三人姉妹+すず(異母姉妹)の日常生活がスタートする。
是枝作品(監督・脚本・編集)のうえ豪華キャスト。カンヌ映画祭での上映もなされたフィルムとなれば、ここはどうしても食指が動くというものだ。でも、127分は長いな~。と案じつつ鑑賞・・・。
ゆったりとした時間が流れる日常に伏流する各自の秘密や蟠りに伴う緊張。微笑ましく見える姉妹関係に生じる亀裂。これらを慌てずにゆっくりとスリリングに描出していく。
こうしていつも通りの是枝節ともいうべき「家族」関係へのアプローチが静かに炸裂する。
それでも少々長過ぎのような気もするが、これは鑑賞者の捉え方一つでその良し悪しは決するだろうな。
個人的に印象深いパートなんだが、前半部で父親の葬儀後すずを交えた四人が揃って眺望の良い高台から景色を眺める。長女に抱かれ感謝の言葉に涙するすず。
次いで、後半部では長女とすず二人だけが鎌倉の眺望の良い高台から景色を眺める。長女から実母の事をもっと話していいんだよ、との声掛けに涙するすず。優しく包み込む長女。
その後半部では非対称の相似形の二人が、非対称の相似形の反復シチュエーションにて、それぞれの親に起因する緊張感を伴う屈託を越えた交流を果たす。
相似形というのは、二人とも幼少時より親の問題を観て育ち、自分がしっかりしなきゃと大人のような演技をしつつ、しっかり者の印象を振りまかざるを得ない環境下で成長。
非対称であるのは、綾瀬はすずの母の元へと出て行った父親に。すずは綾瀬の父と一緒になった母親に。それぞれの屈託があることがこの場面で表明される。
加えて、前半では四人が画面向かって左向き。後半では二人が右向き。
やはり考え抜いた脚本であり編集なんだろうなと改めて感じ入る。
あと、突出した美しさの構図がある。
長女が自宅の階段を拭き掃除している画だ。まるでフェルメールの絵画の如く、差し込む光線の具合と幾何学的に分割された画面には思わず見入ってしまった。
さて、俳優陣に目を向けると、是枝組常連の樹木希林が僅かな出演時間であるが存在感たっぷりだ。
独特の凄みを放つ。
劇中では、夫が家を出てから自分も別の男性と一緒になったという役どころ。
すずの義理の母役、中村優子がほんのちょっとの出番だったが、ある意味ドスの効いた芝居を披露してくれた。上手いなあ。
加瀬亮があまりにもフツーの銀行員(次女の上司)に扮しており、『アウトレイジ』二部作でのインテリヤクザと大違いのギャップに感心。役者だね。
遅ればせながら主人公四姉妹も紹介しておくと、長女:綾瀬はるか、次女:長澤まさみ、三女:夏帆、四女:広瀬すず。
中でも綾瀬と広瀬が主役のポジション。
綾瀬にしてみれば、結構珍しい役柄なんじゃないかな。出て行った父、亡き母、に代わって親の代理的地位にいるしっかり者なんて。でも違和感なく演じ切ったと思う。
広瀬は自分と実年齢が近い女子中学生役ということで演じやすかったかというと、それはどうか分からない。ちょっとした心の機微の表現なんかには苦労したかも知れないし。
前述の通り親の大人の事情に翻弄され、若いのにしっかりしていると評判の娘を実生活で演じ続けなければならなかった役どころ。
思春期の女子には重苦しい体験であろうことは想像に余りある。
そんな影を無きもののように振る舞う姿は哀れを誘う。快活な女子サッカー部員だが、どこか儚げな雰囲気だ。
是枝監督もよくぞこの子を起用したな。キャスティングは成功だろう。
ちなみに彼女、実姉の広瀬アリス似であることが良く分かった。もう、ところどころでその表情がふと似ていたりして。余談だが、いいよね、広瀬アリス。
一方、派手な男関係が目立つ次女に扮する長澤だが、思いのほか上手い芝居をするのには驚いた。
最近の彼女の演技にお目にかかる機会が無かったので、良い経験をさせてもらった。『花燃ゆ』は観なかったし。
しっかし彼女、ホントに美しい女優だな、と再認識。『ロボコン』(’03)の時から役者としても随分と成長したものだ。
超個性的美的センスの持ち主、三女の夏帆は年齢的にすずに最も近い役。妹ができて嬉しそうだ。
彼女も『天然コケッコー』以来よく見かける女優だが、今回別人のようでこれまた驚きだ。
*竹輪カレー美味い* *サッカー用具店の店長と*
劇中、彼女のとある身振りも前後半二回繰り返される。そこに四人の中ではちょっと浮世離れした異端の存在感が滲み出る。良いキャスティングだったと思う。
付け足すようだが、すずのサッカー仲間に扮した前田旺志郎。彼も是枝監督の『奇跡』(’11)に出演していた。
直近だと昨年の配信ドラマ『福屋堂本舗-Kyoto Love Story-』でも中学生役で佐々木望や早見あかりらと共演。いつもきれいどころと一緒になる子だ。
ところで、自分は原作の漫画は読んだことないが、その分過剰な思い入れなく観られてそこは良かった。原作を知る人は賛否あるだろうが、知らない人なら気楽に鑑賞できよう。
本日も最後までお付き合い下さりありがとうございました。
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