■質問内容
Q1.
分割胚までにはなるのですが、その後の胚盤胞への発育が不良の場合、卵子の老化・受精そのものの異常・精子の質の問題が考えられると書かれていたものを見たのですが。精子の質の問題の場合は、精子精密検査を受けることで異常があるかどうか分かると書かれていたのですが、こちらでも精密検査が可能なのでしょうか?受けることで良好胚盤胞が育つのであれば、その検査も検討して今後の治療に望みたいと思っています。
Q2.
採卵数のわりに良好胚盤胞が少ししかできません。 良好胚盤胞を得るために何かできることがありますか? また年齢も関係あるのでしょうか?
■当院からの回答
受精卵の発育は、卵子だけでなく、精子の影響も十分に考えられます。
精子は、洗浄濃縮したあと、スイムアップで良好運動精子を集めます。
通常法では、1つの卵子に数万の精子を媒精しますが、顕微授精では1つの精子を選んで卵子細胞質内に入れることになります。
いくら精子の検査を行っても、結局、その精子を顕微授精に使用することはできません。なので、顕微鏡下で精子を大きく拡大して形態観察するIMSIしかないのが現状です。
- 胚盤胞は凍結できており、良好胚盤胞率がやや低い程度ですので、まずは侵襲の少ないDNA損傷を減らす試みとして、男性の抗酸化作用があるサプリメント内服や禁欲期間短縮が推奨されます
- DNAの損傷率は、精巣内精子が射出精子より低いとされていますが、TESE(精巣内精子採取)+ ICSIが有効とされてるのは、射出精子が数十から数百程度のような高度乏精子症(クリプト精子)の場合です。精子濃度が1000万/mlを超えている場合、TESE+ICSIの効果は示されていません。
- 奇形精子が多い場合、IMSI(イムシー) が推奨されます。
精液の精子全体のDNA損傷を防ぐことを考えましょう!
もちろん、「分割胚以降の発育が上手くいかない原因は精子である」と断定はできません。 卵子のために胚発育がうまくいかない場合もありえるのです。
適度な運動、バランスのとれた食事、血流を悪くすることはしない、関係・射精はあったほうがよい、ストレスを溜めない、といったことに気をつけましょう!
★ 精子のDNA損傷率が受精卵に及ぼす影響について
精子DNAフラグメント(SDF)が受精卵に及ぼす影響を検討した報告(Fertil Steril 2019; 112: 483)では、精子DNAフラグメントが多い場合には(SDF>=30%群)、胚発生率と着床率が有意に低下し、流産率が有意に増加しています。
Fertil Steril 2015; 104: 1382
射出精子による反復ICSI不成功⇒TESE(精巣内精子採取)+ ICSI(顕微授精)がおすすめ
高度男性不妊で成果の出ていない方にはTESE精子による顕微授精が有用であることを示しています。射出精子では平均TUNEL陽性率24.5%でしたが、精巣精子では4.6%であったことよりDNA損傷は、射出精子より精巣精子の方が損傷が少ないことが明らかになっています
Fertil Steril 2013; 99: 1867
極少精子症の方では、射出精子より精巣精子を使用する方が顕微授精の妊娠率が良いことを示しています。
3)Fertil Steril 2013; 100: 62
奇形精子が多い場合には、IMSIがおすすめ
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