Q

初回ロング法で卵巣刺激を行い採卵12個、そのうち成熟卵8個に顕微授精(ICSI)し、受精7個、採卵後3日目での良好分割胚4個で、胚盤胞4個(4AA・3CB・3BC・4CB)が凍結できましたが、良好胚盤胞は1個のみでした。

 

夫の精子所見は精子濃度1000万/ml以上ありましたが、精子無力症(前進精子率<5%)と奇形精子症(精子正常形態率2-3%)でした。

 

このような場合、

1)禁欲期間短縮して顕微授精を再度試みる

2)TESE(精巣内精子採取術)を行って凍結保存した精子を使って顕微授精する

 

どちらの方法が、良好胚盤胞が多く得られると考えられますか?

 

A. 

今回の体外受精培養成績は下記のように総括されます。

  • 採卵率:36.4% (12/33)
  • 成熟率:66.7% (8/12)
  • 受精率:87.5% (7/8)
  • 良好分割率:57.1% (4/7)
  • 胚盤胞率:57.1% (4/7)
  • 良好胚盤胞率 14.3% (1/7)

採卵率は低率(平均70%前後)ですので、

  1. ロング法からアンタゴ二スト法に変更する
  2. 採卵決定日のトリガーをhCG注射に加えて、GnRHアゴニストスプレー併用のダブルトリガーを試みる

これらの変更は考えられます。

また、Day3分割までの発育状況は良好でしたが、その後の胚盤胞までの胚発育がやや失速した状態ですので、

  1. 精子因子の影響(精子のDNA損傷率が高め)の可能性はあります
  2. 胚盤胞は凍結できており、良好胚盤胞率がやや低い程度ですので、まずは侵襲の少ないDNA損傷を減らす試みとして、男性の抗酸化作用があるサプリメント内服禁欲期間短縮が推奨されます
  3. DNAの損傷率は、精巣内精子が射出精子より低いとされていますが、TESE(精巣内精子採取)+ ICSIが有効とされてるのは、射出精子が数十から数百程度のような高度乏精子症(クリプト精子)の場合です。精子濃度が1000万/mlを超えている場合、TESE+ICSIの効果は示されていません。
  4. 奇形精子が多いようので、IMSI(イムシー) が推奨されます。

【参考資料】

1)Fertil Steril 2015; 104: 

1382射出精子による反復ICSI不成功⇒TESE(精巣内精子採取)+ ICSI(顕微授精)がおすすめ

 

高度男性不妊で成果の出ていない方にはTESE精子による顕微授精が有用であることを示しています。射出精子では平均TUNEL陽性率24.5%でしたが、精巣精子では4.6%であったことよりDNA損傷は、射出精子より精巣精子の方が損傷が少ないことが明らかに

 

2)Fertil Steril 2013; 99: 1867

極少精子症の方では、射出精子より精巣精子を使用する方が顕微授精の妊娠率が良いことを示しています。

 

3)Fertil Steril 2013; 100: 62

奇形精子が多い場合には、IMSIがおすすめ