■質問内容
Q1.
今回採卵をする予定ですが、旦那さんも採卵日に精子を採るんですが、採卵に合わせて旦那さんは禁欲を何日した精子を採るのがベストなのか教えて下さい。
Q2.
体外受精で採卵当日に受精させるのに精子は採卵当日より2,3日前に古い精子は捨てて、 新しい精子で受精させるほうがいいですか? それとも、古くても、新しくても関係ないですか?
■当院からの回答
精子は約3か月のプロセスで精巣において造られています。
1日でも数千万の精子が造られていると考えられますが、人によって色々と条件や基本的な成績が異なりますので、一概には云えません。
一般的に あまりに長い射精間隔は精子を造る能力が下降し、長期に保管された古い精子の割合が増えてしまう可能性があります。
したがって1週間以上あけた方が良いということにはなりません。
体外受精採卵の予定であれば、濃度が極端に低い方でなければ0〜2日の禁欲期間の方がよいかも知れません。
かえって1週間以上の射精間隔はよくないと思われます。
通常法IVFでは、1つの卵子に数万の良好運動精子を一緒(媒精)します。顕微授精ICSIでは、1つの卵子の細胞質内に運動性がある正常形態精子1つを注入します。
禁欲期間(射精と射精の間隔)が長くなると、酸化ストレスにさらされることにより、精子のDNA損傷率(遺伝子のダメージ)が増加すると考えられます。
このため採卵周期には0〜2日の禁欲期間、また、タイミング法や人工授精周期では排卵日以外にも、2〜3日の禁欲期間が精子改善に繋がる可能性があります。
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禁欲期間延長により酸化ストレスによるDNA損傷が増加する
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体外受精では通常法&顕微法とも禁欲期間は0-2日間が望ましい
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禁欲期間の短縮により、胚盤胞形成率、良好胚盤胞率が良好になる期待がある
精子DNA損傷が受精卵に及ぼす影響を検討した報告(Fertil Steril 2019; 112: 483)では、精子DNA損傷を示す指標として精子DNAフラグメント(SDF)を使用し、培養成績、妊娠成績を前方視的に検討した結果、精子DNAフラグメントが多い場合には(SDF>=30%群)では、胚発生率と着床率が有意に低下し、流産率が有意に増加しています。
下記の体外受精と禁欲期間の関係を検討した報告も
禁欲期間は短い方が良いといえます。
禁欲期間について以下の記事もご確認ください。