苗場山は新潟県南部、乃至は長野県北東部の県境に位置する

標高2145㍍の火山で日本百名山の一つ。

群馬や長野並びに新潟の3県に跨がる上信越高原国立公園に属し、

殆ど特別保護地区に指定されている。

プリンスホテルのある苗場高原と山頂に広がる田代高原とを結ぶ

道程約5.5㎞、標高差約430㍍の日本最長の苗場ドラゴンドラ。

プリンスホテルに依る施設名称は「苗場-田代ゴンドラ」、

一般的な通称は「苗場ドラゴンドラ」と呼ばれ、

ドラゴンドラはシンガーソングライター松任谷由美に名付けられ

2001年12月21日に開業している。

(前からだとドラゴン、途中からだとゴンドラ。言い得て妙やね)

豊かな自然に囲まれアップダウンを繰り返し進む空中散歩、

迫力ある25分間を十分満喫できるロープウェイとか。

 

昨夜のニュースでは苗場山はかなり冷え込み初冠雪が記録されたとか、

昨日と同様早朝に起床し防寒体制など準備を整えホテルを出る。

予定より一本早い6時34分発の新幹線に乗車し

車窓から景色を眺めサンドイッチなどを食し簡単に朝食を済ませ

所要時分約50分で越後湯沢駅に着き下車する。

小さな駅と思いきや駅構内には飲食店や売店街が密に並び

周りにはホテル旅館の宿泊施設などが建てられている。

バスの発車時刻が近づきターミナルの停留所で待機し

列車が着く度に長くなる行列を見渡しながら

最後方で手を振る青いヤッケの部活の後輩Fを見付け一安心、

車内で隣席に座るFと挨拶替わりに会話を交わす。

「東京から意外と近いネ、2時間足らずで来れるやろ?」

彼は軽く頷きながら車内から快晴の空を見上げながら、

「それよりも今日雪が降らなくて良かったです……」。

バスは苦しそうにエンジンを吹かし九十九折りの山道を登り

標高900㍍の苗場プリンスホテルで一旦下車しシュネーから、

無料シャトルバスを利用して漸く山麓駅に辿り着く。

 

 

館内では平面のフロアーだけでなく階下にも伸びて続く長蛇の列、

流石見頃を迎えた時期だと驚きながら後方に並ぶ。

Fがチケットを買う前に二通りあることを説明し自分の願望も伝える。

「私は往復ともドラゴンドラで良いと思いますけどネ」

「事前に観光協会へ電話をして訊いたけど確か、

帰りは眺めが違う田代ロープウェイを勧めていたわ」

「ドラゴンは25分間だけど田代ケーブルは瞬く間に着きますよ」

「やはり乗車時間の長い方が楽しめるかもな、金額は同じだし」

チケットを買う待ち時間は意外と早く乗場へ移動し

二人で待機していると8人乗りのゴンドラが回りながら近づき

先に女性3人が上向きの席、我々は下向きの席に乗り込み

いよいよ待ち侘びた空中遊覧が始まる。

 

太陽に照らされキラキラ光る渓流が素晴らしい

 

 

山並みから突如現われたエメラルドグリーンの二胡湖(にここ)

赤く色付いた紅葉も視界に入り、期せずしてゴンドラで歓声が湧く。

 

 

既に見頃が過ぎているのか、茶褐色が目立つ紅葉に失望しながら

ゴンドラから見下ろすと山間に集落があるのを発見。

彼らは林業などで生計を立てているのだろうか。

 

 

秋色に染まる山々を縫うように走るゴンドラ、

空中散歩を楽しみ山頂駅に着き係員の誘導で下車する。

 

標高2145㍍の苗場山へ登るパノラマリフトを横目にレスランに入り、

餡子付きの団子餅を頬張り熱いコーヒーを啜りながら少休憩する。

晩秋を過ぎた気配が漂い初冠雪も記録する筈だと感じつつ、

窓から山頂で広がる枯れた芝生やススキを見渡す。

それにしても今日は小春日和に恵まれたとレストランを出て

遊歩道を進み「らくらくリフト」で田代ロープウェイの山頂駅へ。

田代湖も二胡湖同様、湖面はエメラルドグリーンに輝き佇んでいる、

カルデラ湖なので同じ現象なのだろう思いつつ下山する。

白樺と思いきや、係員がダケカンバと教えてくれた。

ダケカンバは森林限界を上回る高山帯で育つ寒さに強い樹木で

カバノキ科カバノキ属の落葉広葉樹。

漢字表記は岳樺で樹皮が薄く紙のように剥がれることから

草紙樺(そうしかんば)とも呼ばれているとか。

 

復路もドラゴンドラに乗り山麓駅に着きシャトルバスを利用せず

「風の散歩道」を歩き苗場プリンスホテルを目指し、

近くで二人の警備員に道順を訊き漸く路線バス乗り場に着く。

後から来た十数人の引率者からバス停ですかと問われ頷く。

「間に合って良かった。これでドラゴンドラに乗れるわね」

笑顔で手を合わせ喜んでいる。直ぐ間違えているのに気付き、

このバス停は越後湯沢行きです。シャトルバスはあちら――」

シュネーの方に手を伸ばし示唆すると皆で顔を見合せ、

「あら大変」と顔色を変え即行走り去る後ろ姿を見送りつつ、

確かに分かり難く迷うのも仕方がないかと気遣いながら苦笑する。

バス停「二胡田代前」通過時の車内はほぼ満員で、

Fの言う通り苗場ドラゴンドラの往復を選択して良かったと

胸を撫で下ろしながら無事越後湯沢駅前に着いて下車。

 

駅構内にある食堂街で昼食を摂り、その後土産物を陳列してある

売店を見て回って時間を潰し15時発の新幹線に乗車。

座席でスマホの充電器を取り出してコンセントに差込み

写真のチェックをしている間に新潟駅へ着く。

ホテルの入口で待ち合わせを18時ロビーと設定し

部屋で寛ぐためエレベーターに乗り9階のボタンを押し、

Fはチェックインの手続きをするためフロントへ出向いた。