中部山岳地帯を水源とする犀川と千曲川は長野盆地で合流し

新潟県に入ると信濃川と呼ばれ、新潟平野を貫流して日本海へ注いでいる。

(河川法上千曲川は信濃川に含まれその長さは367㎞とか。

日本最長で三大河川の一つとして数えられている

信濃川下流に架かる国道7号線の道路橋梁である萬代橋、

東大通、萬代橋通や征谷(まさや)小路を結び

新潟駅前から万台シティーを経て古町へ至る

メインストリートの一部を形成している。

(因みに萬代橋は国の重要文化財に指定)

 

ホテルの大浴場で旅の疲れを癒やして部屋に戻り、

体調を整えてFと待ち合わせ玄関を出る

秋の日は釣瓶落とし

既に夜の帳が降りてネオンが煌めいている。

「かつて古町は賑やかでしたが今は駅前界隈へ移ったそうです。

居酒屋を予約してるので古町まで歩きましょう」

Fが今晩の予定を説明しながら東大通を進む。

「ああ、ええよ。駅前は人出も少なく淋しそうやしな……」

萬代橋を渡り閑散とした路地に入り暖簾を潜る、

予約した小部屋に入り係員からメミュー表を渡される。

地元料理に詳しいFがページを捲りながら「のっぺ」を見付け

2人前注文して生ビールで乾杯。

 

 

刺身の活け造りなど海や山の幸を酒の肴に談笑していると、

角切りした里芋などガラスの大皿に盛り付けたのっぺが出て来る、

恐る恐る味見してみるとアッサリして美味い。

のっぺは新潟の郷土料理で家庭の好みで味付けが大分違うとか。

手酌で冷酒を嗜みながら学生時代に遡る、

神戸三宮の歓楽街を二人で闊歩して警察官に間違えられ、

またダンスパーティーで楽しんだことなど思い出話で盛り上がり

ほろ酔い加減で古町花街をそぞろ歩く。

二人の共通項は遊び好きなのかも知れないと一人苦笑し、

心地良い秋の夜風に吹かれた。

 

 

Fは懐かしげに場所を確かめ歩いているが、

両サイドでひとけのないシャッター街が目立ち余りに淋しく、

ふと「滅び行く地方都市」のフレーズを思い出しながら追従する。

「酔い覚ましにこのまま歩いて帰ろうか?」

タクシーに乗る程でもなく提案するとFも頷く。

「それじゃあ、このまま八千代橋回りで帰りましょう」

明日は午後の飛行機便で帰阪するだけなので特段予定はない。

ホテルに戻りFと朝食の待ち合わせ時刻を決め、

二人でエレベーターに乗り2階で別れ9階へ。

「苗場ドラゴンドラ疲れ」にそぞろ歩きが加わり足腰が重たい、

歩数計を確かめると約2万歩を刻んでいる。

直ぐ寝具に着替えベッドに横たわる。

 

翌朝五時前に起床し洗面用具携え大浴場で寛いだ後、

電気マッサージ機で全身の筋肉を解し部屋に戻る、

睡眠は十分足りてすこぶる快調だ。

朝食のため2階へ降りてバイキング会場でFと合流、

それぞれ好みの食材を選びテーブルに置いて椅子に座る。

「今まで食べた料理の中で一番美味い気がするなあ」

「バイキングだけに郷土料理が一番多いかも知れませんネ。

ところで次回の旅行は何処にしましょうか?」

「敢えて言うなら北海道やけど何処でもええよ――」

「それなら伊勢神宮の参拝ですね、熊野古道の散策も兼ねて……」

「伊勢神宮なら何時でもOK、時期はあんたの都合で決めてくれ」

伊勢神宮参りは初めてなのか安心して大きく頷く。

朝食を済ませ別件で階下に降りるFを見送りながら別れ、

部屋に戻り河川敷の散歩をする準備を整える。

 

8時過ぎにホテルを出て新潟駅に向かう大勢の通勤客とすれ違いながら、

流石県庁所在地だと思いつつ急ぎ足で東大通を北へ歩く。

 

 

1986年萬代橋架橋百周年に設置された記念碑で、

明治19年に初代萬代橋が架橋された位置を示唆している。

当時は木造で長さは2倍以上の782㍍、幅は1/3で

訓読み「よろずよはし」の呼称で親しまれていたとか。

現在の萬代橋の長さは307㍍、道路幅は広く22㍍。

夕べ広い歩道で夜景を楽しみながら歩いたのを思い出し、

『新潟ブルース』(作詞山岸一二三)を口ずさむ。

 

♪想い出の夜は霧が深かった 今日も霧が降る萬代橋よ……

幸せの夜を二人過ごしたね いつか寄り添った古町通り……

 

萬代橋をのんびり歩いて渡りホテルオークラの玄関を逆行し、

河川敷に降りてスマホを構える。

頑丈な石造りの萬代橋は美しい六輪連続アーチが特徴的で、

右端の高層ビルディングは新潟メディアシップ。

(橋が長すぎ写真の構図取りが難しくてネ)

 

 

花崗岩や御影石で覆われ橋は風格が高く、洗練された雰囲気がある。

中央の建物はコンサート会場やホテル及びテナントが混在する

複合ビルディングの朱鷺(とき)メッセとか。

 

 

河川敷の「やすらぎ通」を南下して八千代橋を渡り、

再び河原に降りて北へ歩き元の東大通へ戻り、

色付き始めた銀杏並木を見上げながらホテルの部屋へ直行。

チェックアウトは11時まで、

急いで帰り支度を整えフロントで精算を済ませ三連泊したホテルを出る。

事前に策定したスケジュールは粗方消化したものの、

未だ未だ初心者なので幾つか訪れたい場所がある。

慌ただしく挙行した新潟ツアーの4日間、

瞬く間に過ぎたような感じがするし、とっくの昔の出来事のような……、

そんな錯綜する感覚が胸の中を去来する。

万代口ターミナルで新潟空港行き路線バスに乗車して座席を確保し

車窓から流れる景色をのんびり眺め、

また新潟ツアーを画策したいと思いつつバスに揺られた。

 

―― 完 ――

 

(写真撮影日は10月26日の夜と27日の午前中)