のと鉄道の秘密
特急花嫁のれん1号で和倉温泉にやってきました。
和倉温泉はJR西日本とのと鉄道との境界駅…といいたいところですが、実は単純にはそういい切れないのです。
というのも、JR西日本七尾線は津幡~和倉温泉間に対し、のと鉄道七尾線は七尾~穴水となっており、
七尾~和倉温泉間で両者が重複しているのです。
この区間は共用となっており、前回書いた通り特急をJR西日本が、普通列車をのと鉄道が運行しています。
ちょうど穴水行きののと鉄道普通列車がやってきました。
数人の乗客を乗せると1両編成の普通列車は穴水方面へと発車していきました。
のと鉄道は七尾~穴水を運行する第2種鉄道事業者。
第2種鉄道事業者とは線路などの設備を持たず、運行のみを担当する事業者のこと。
この場合、線路などの設備を実際に保有している事業者を第3種鉄道事業者といいます。
例えば、おおさか東線の場合第2種鉄道事業者がJR西日本、第3種鉄道事業者が「大阪外環状鉄道」という会社。
長崎本線江北~諫早間の場合、第2種鉄道事業者がJR九州、第3種鉄道事業者が佐賀・長崎鉄道管理センターとなっています。
このように運行と設備保有とを別の事業者が行うことを「上下分離」といいます。
それでは、第2種鉄道事業者であるのと鉄道に対して第3種鉄道事業者となるのはどの事業者でしょうか?
その答えはなんとJR西日本。
なぜこんなことになっているのでしょうか?
それは、七尾線の歴史に関係しています。
のと鉄道は第3次特定地方交通線に指定された能登線(穴水~蛸島間)を運行するために設立された第三セクター。
このとき七尾線は今よりも長い津幡~輪島間の路線で、全線をJR西日本が運営していました。
転機が訪れたのは1991年、七尾線津幡~和倉温泉間が電化されたとき。
この電化の見返りに、非電化のまま残る和倉温泉以北の引き取りをJR西日本が要求し、のと鉄道が運行することとなりました。
この際、設備をJR西日本から買い上げるより借用するのが妥当とされ、設備はJR西日本所有のまま運行のみがのと鉄道に移管されました。
これが現行まで至る第2種鉄道事業者・のと鉄道と第3種鉄道事業者・JR西日本体制のはじまり。
なお、その後収支が悪化し、七尾線のうち穴水~輪島間が2001年に、そしてのと鉄道生え抜きの能登線が2005年にそれぞれ廃止となり、現在では七尾~穴水間のみが残されています。
跨線橋から穴水方面を眺めます。
運行会社は違っても線路はすべてJR西日本のもの。
なかなか面白い光景です。
改札の外へ出てきました。
この和倉温泉駅、実は2021年3月ダイヤ改正でみどりの窓口が廃止、2022年3月ダイヤ改正より無人駅となっており、みどりの窓口設置駅からたった2年で無人駅にまで転落したというちょっとかわいそうな駅。
ただ、代わりにみどりの券売機プラスが設置されているので指定券などの発行は引き続き可能です。
もともと窓口だったところには営業終了の案内がありました。
ただ、当面の間サンダーバード20号が発車する午前10時頃には七尾駅から駅員が1名出張してくるようです。
駅舎の外に出てみました。
和倉温泉駅。
有名な温泉地・和倉温泉の最寄り駅です。
ただ、ここから温泉までは少し離れていくのでバスを利用するのが一般的。
能登ミルクジェラート
ということで温泉街の中心までバスに乗車します。
乗るのは北陸鉄道の子会社、北鉄能登バス。
和倉温泉のバスターミナルに到着です。
和倉温泉は七尾湾に面する温泉地。高級旅館が海沿いに立ち並んでいるのが特徴的です。
今回は和倉温泉の温泉街をぶらぶら歩いてみようと思います。
まずやってきたのはこちらのお店。
「能登ミルク」。
世界農業遺産である「能登の里山里海」で育った乳牛から絞ったミルクのみを使用したジェラートのお店です。
新たな和倉温泉の名物となっているこのジェラートを食べてみることにしました。
いっぱいあって目移りします。
どれにしようかな~
基本の「能登ミルク」、そしてテレビで紹介されたという杏仁×マンゴー×ブラッドオレンジの「宙(そら)」にしてみました。
能登ミルクは優しい甘さ、宙は3種類の味が混ざり合っていいハーモニーを奏でていました。
この日も暑い日。
街歩きに備えていい清涼剤となりました。
源泉公園
和倉温泉の温泉街を歩いていきます。
遠くに見える大きな建物は加賀屋。
花嫁のれんのアテンダントさんの研修も担当している、言わずとしれた高級旅館です。
続いてやってきたのは弁天崎源泉公園。
和倉温泉の歴史を再現した公園だそうです。
その名の通りここは和倉温泉の源泉のある場所。
公園の隣には源泉から汲み上げた温泉を貯める貯湯槽が設置されています。
和倉温泉はナトリウム・カルシウム塩化物泉。
毎分約1400Lのお湯が湧き出しています。
湧き出した温泉はここで集められ、各旅館に引湯されているのだとか。
貯湯槽の隣には船の形をした飲泉場。
熱いお湯を舐めてみると少ししょっぱい味でした。
源泉公園の中には他にも手湯だったり、
水琴窟だったりと面白スポットがいくつか点在しています。
水琴窟の軽やかな音を聞くと暑さを少し忘れられそうな気がします。
涌浦乃湯壺で温泉卵!
さて、次は温泉の恵みを「食」で体感しましょう!
源泉公園の近く、湯元の広場にある「涌浦乃湯壺」にやってきました。
ここでは温泉たまごをつくることができます。
しらさぎのブロンズ像が目印。
ちなみにこの像は怪我をしたしらさぎが傷を癒やすのを見て温泉を発見した…という、2つ前の記事でご紹介した山中温泉のものと似た開湯伝説にちなむもの。
(山中温泉の伝説は特急しらさぎの名前の由来となりましたが、そのしらさぎは2015年まで和倉温泉にも乗り入れていました)
さっそく近くのお店で卵を買ってきました!
あとはこれをお湯につけるだけ…
……
空きが、ない!
私の前に来た観光客が大量に卵をお湯に突っ込んでいたためスペースがありませんでした…
…というか、市販の卵を卵パックに入ったまま突っ込んでいますねこれ…
案の定熱湯でパックのプラスチックがふにゃふにゃになり、取り出すときに卵がこぼれ落ちたりと悲惨なことになっていました…
このブログをお読みの方はぜひ、卵パックそのままではなくネットに移し替えて茹でることをおすすめします。
前の観光客がてんやわんやしながらも引き上げ、そしてなぜか私がお湯の中に残された卵の破片を取り出す羽目になった後で卵を温泉へ漬けます。
(なんで前の人の尻拭いしなきゃいけないのか…と自問自答しながら(笑))
待つこと15分。温泉たまごの完成です!
とろっと半熟に仕上げることができました!
塩化物泉なのでほんのり塩味が付いて美味しいですね~
温泉の恵みを堪能することができました。
食べ終わったあとは海沿いを散策。
向こうに見える陸地は能登島。
面積46.78km²の島で、のとじま水族館などの観光名所もあるとか。
本土とは2本の橋で接続されています。
次にやってきたのは「ル・ミュゼ・ドゥ・アッシュ」というスイーツショップ。
ここでスイーツタイムといこうと思いましたが…
人気店なだけあって満員!
ケーキだけ買って帰ることにします。
お店からも七尾湾の景色がきれいに見えました。
ここでたべたかったなぁ…
足湯でのんびり
最後にやってきたのは和倉温泉総湯。
といってももう温泉に入る時間はないので足湯に入ります。
短い時間でしたが、歩き疲れをいやすことができました。
近くには飲泉場も。
…なにこのキャラ?
和倉温泉バスターミナルから駅に戻ります。
帰りのバス車中からは立ち並んでいる温泉旅館を眺めることができました。
いつかは泊まりに来てみたい…
和倉温泉駅に戻ってきました。
続きます。
★乗車データ
北鉄能登バス 和倉線 和倉温泉バスターミナル行き 和倉温泉駅(12:43)→和倉温泉バスターミナル(12:47)
北鉄能登バス 和倉線 七尾駅行き 和倉温泉バスターミナル(15:24)→和倉温泉駅(15:29)
※2022年7月17日乗車