恵比寿物語
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井伏鱒二と町田康

 井伏鱒二の寒山拾得が面白かった。各地を転々としながら自分の書いた絵を売っている男がいるんだけれど、彼の絵は旅先で泊った宿の掛け軸の模写で、模写しては次の旅先で売り、その旅先でも絵を模写してまた次の旅先で売るということを繰り返している。つまり、小手先で絵を描くという技術はあるけれど、自らの発想はない。そんな男とその男を訪ねた友人が、床の間に飾ってあった寒山拾得の絵を模写する。絵描きはやはりうまい。友人は掛け軸の寸法がうまくとれず、余白が出来てしまい、そこに何となく船かなんかをかいてごまかす。
 と、なんだかいい加減な二人なんだけど、酒を飲んだときに、二人で描いた寒山拾得の真似をする。

 ちなみに寒山拾得というのは寒山と拾得という二人の僧の名前で、乞食同然の格好をしながら奇声を発したり歌をうたったりしていたといわれている。そのおかしなエピソードのおかげか、絵の題材として好まれていたようなのだけれど、それがまぁニッタリと笑っているのだ。

 そこでインチキ絵描きとその友人は「げらげらげら こうだ」「いや こうだ げらげらげらげら」とやり合う。酔っ払いのやりそうなこと。でも、確実に真剣にやっている。阿呆なことを真剣にやっている。その滑稽さがたまらなく面白く読めた。

 で、しばらくこのお話が頭に残っていて、ある日ふと自分の本棚をあさって久々に町田康のくっすん大黒を読んだら、笑いの表現で「げらげらげら」というのが出てきた。あれ?と思って読み進める。そうして読み終わって、あぁ、くっすん大黒って寒山拾得をモチーフにしてるのねと気づいた。そういえば くっすんだいこく かんざんじっとく なんか響きも似てるしね。

 かといってじゃぁまるぱくりかといえばまったくそうじゃないし、くっすん大黒もそれはそれでとても面白い。それどころか、自分の解釈と時代感でここまで持っていくのはさすがだなぁと思う。そして、私はこの種の笑いがたまらなく好きらしい。

 こういう発見も本を読む楽しみ。明日もジャンルを選ばずに何かを読もう。

梅雨空の鳥

オフィス内は禁煙なので

煙草とライターと携帯灰皿を持って

非常用の外階段に向かう

重い扉に小さなつっかえをして外に出ると

夕方らしく学生たちの帰宅姿が4階分下に見える


ちゃっちゃとどこからか鳥の鳴く声がする

どこだろうと見回したけれどどこにもその姿が見えない


ふわふわと煙をくゆらせながら

その見えない鳥の姿を想像する

煙草の箱ぐらいの大きさで

ラピスラズリみたいな深い青い色で

尾の先は赤松のような茶色

嘴は黄色がいい


と良く見ると

向かいのオフィスでタンクトップ姿の小太りのおっさんが

ゴムと鉄で出来た椅子のようなものを回している


ちゃっちゃっちゃ


回る度に音がする


まだ二、三口吸えるはずの煙草をもみ消して

非常から日常の世界へ戻る


あのおっさんは今

窓から飛び出して鳥になったのかもしれない

スイーツ番長の本が上梓!

年末も押し迫った寒空の下、番長とともに関東全域スイーツ求めて右往左往。

昨年、虫歯糖尿貧血上等で取材した血と汗と涙の結晶がついに形になりました。


スイーツ番長の至高の10大スイーツ/スイーツ番長
¥1,365
Amazon.co.jp

有難いことに巻末に名前まで載せていただき

関係者の皆様に感謝感激でございます。


先日別の取材でGODIVAのバレンタインコレクションに行ってきましたが

この本に携わらせていただいていたお陰で

文章をまとめやすかったです。


コクやキレ、風味や口どけ、スイーツにはスイーツなりの表現方法があって

それを頭にいれるのに、最初は苦労しましたね。



スポンジケーキの喉ごし



なんて聞いた時には

スポンジなんて、喉でコモッコモいうから紅茶とかで流すもんだろ


と思っていましたが、実際本当に美味しいケーキを食べると

喉ごしがいいんですよねぇ。


喉ごしとはビールの賛辞、甘いもんにゃ使わんよ

なんていう固定概念が覆り、またひとつ経験を積み、

大人の階段を上りました。


おとなっていうか、もはやババアの階段の域にはいってきましたけどね。



とりあえず書店に並んでいる事に対する純粋な嬉しさを抱えつつ、

今日はジビエ祭り。


たっぷりの肉を喉ごしのいいビールで流し込んできます。




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