恵比寿物語 -3ページ目

だまされる女

泣いた女が バカなのか
だました男が 悪いのか


どうせ私を だますなら
死ぬまでだまして 欲しかった


と、これは昭和に流行った

西田佐知子の東京ブルースという歌。


時代は変われど男と女

そんなに事情は変わっていないかもしれない。


先日の玉置浩二と青田典子の結婚

怒りに燃える石原真理。

他人事だと懲りない奴らと笑えるけれど、

自分はそんな風にならない、絶対に大丈夫って言える?



男の未来は7分後 女の未来は7年後


そんなに好きではなかったけれど、

「一生君を大事にする。」

彼のその言葉を信じて、付き合い始めることにした。

それから3カ月後、彼の浮気が発覚し、事もあろうに別れを切り出された。

一生大事にするって言ったのに、彼は大うそつきだったわ!

私彼に騙されたのよ!


そういう話をたまに聞くのだが、私はいつもこう答える。


彼はその時は嘘をついていない、騙してなんていないのよ、と。


男のいう一生というのは、一生をかけても良いぐらい

の「今」なのである。 そうして今手に入れられたら、

そのままの気持ちが持続するのはせいぜい7分と思った方がいい。


ところが女のいう一生というのは、そのまま一生であって

そのくせリスクや損得を考えて、まぁ7年ぐらいは愛されると高をくくる。


そうして彼から別れを切り出されたときに、

愛されている自分の立場が上だと思っていた

プライドを傷つけられた、まさに飼い犬に手を噛まれたということで怒りが倍増、

騙されたということになるのである。


女の嘘は愛嬌になる


合コン終了後、自分の男友達とメールアドレスを交換した女がいる。

それを見てあなたは男友達に苦言を呈す。


あの子、男の前だと全然態度ちがうのよ。

普段は部屋も言葉づかいも汚いのに、

私きちょうめんなんですぅなんていって

気をつけた方がいいわよ。


さて、その話を聞いた男はどう思うか。

人の悪口を陰で言う女はいやだなであって、

態度が違う女は別にいいんじゃない?と思う。


女はコミュニティで生きてる。

なので、嘘をついてでも自分だけが得をしたいという

行動に対して怒りを覚える。

しかし男は一人で生きていかなければいけない。

時に孤独で不安になる。

だから、どんな嘘であれ自分に好かれるために向けられているものであれば

可愛いと思うのである。



嘘の距離感の違いを理解する


男の前で態度を変える女は、

遠い未来の約束も出来ないのに 

一生大切にすると言ってしまうのと同じである。

半分本気、半分嘘なのである。

だから男は自分も許してほしいという無意識もふくめて

そういう女を可愛いという。


嘘と騙すとは似ているようで違う。

嘘は瞬間に起こることで、騙すのは未来を含む。


男の嘘は女の言う騙すに値するほど深いものではない。

その違いを心に刻んでおかなければならない。


だまされるかどうか、それは最終的にあなたが何を望むかで変わってくる。

本気で一生彼と一緒にいたいと思ったら、

彼の言葉だけにあぐらをかくのではなく、

自分で先回りをして行動していかなければならない。

7分を7年に変えるのは女の腕次第なのである。


あなたを愛しています。

そう彼が言った瞬間は、決して嘘ではないのだから。


夜の自転車

今日は飲みすぎてしまった。


お会計はいくらだったのか、そもそもちゃんとお金は払ったのか

あれ、どうやって店をでたんだっけ

そう思いながら自転車を漕いでいる。


蛇行しながらよろよろと坂を上りきると、

目が乾くほどのスピードで坂を下る。

何かのCMソングが頭の中を何度も流れる。


坂を下りきって右に曲がる。

すると急にペダルが重くなった。

誰かが後ろに乗ったらしい。


「私もうどこにも行かないよ。

真っすぐ家に帰るだけだから。」


「嘘よ

これから 行くところあるんでしょ。」


「まっすぐ帰るってば。」


「嘘よ

本当は行きたいんでしょ。」


行きたいところなんてない。まっすぐ帰りたい。


「あなたはどこに連れて行ってもらいたいの。」


「私はあなただから、あなたの行きたいところよ。」


私は知らない。私が何処へ行きたいかなんて。

家に帰って寝たい、それだけなのに。


と、突然ハンドルがぶれる。一瞬何かに乗り上げたらしい。

ハンドルがぐらぐらと揺れ、バランスを失う。

街の明かりが残像を残してぶれる。

転んじゃだめだ、転んじゃだめだ。


細かく蛇行を繰り替えして

なんとかバランスを取り戻した。


一旦自転車を停め、足をついて深呼吸をする。


あ、私行きたいところあった。


「1年前に行きたい。あの人がまだいた、あの世界に行きたい。」


「馬鹿ね、行けるわけないじゃないの。」


ふっと自転車が軽くなる。

頭にずっと流れていたのは

老夫婦が手をつなぎながら街をスキップしている

洗剤のCM曲だ。


振り返る。

私の自転車に荷台はなかった。

そうして、あの人って誰なのだろう。



今晩は雲がかかって月が見えない。

七夕の夢

氷がたくさん入ったアイスティーをストローで回し、

全体がミルクティ色に変わったので、

私は昨日の話を始めた。


多摩川がほど近い街の、路地裏にある

小さな出版社との打ち合わせが

予定より随分早めに終わった。

今日は会社に戻らずにそのまま直帰できる。

せっかく時間が出来たので

買いものでもして帰ろうかなと思う。


あの角を右に曲がると、小さな郵便局があって

その先を斜めに入ると、駅までの近道だったはずだ。

そう思ってその小道に入ると、前に来た時と風景が違う気がする。

なにより、こんなところに美容室なんてなかったはずだ。


そういえばここ3カ月ぐらい髪の毛を切っていない。

伸び放題の髪を一つに結えているだけ。

時間もあるし、久々に髪の毛でも切っていくか。

そう思って、ツタの絡まった一軒家の扉を開けた。

入口のモロッコランプが、こころなしかゆったりと揺れた。


店内は、お香が炊かれているのだろうか

甘くスパイシーな香りで包まれていた。

根元から髪全体に、強いパーマのかかった

長い髪の女性がゆっくりと振り向いて

ようこそ、と微笑みながら言った。


その店は椅子が一脚しかなく、

椅子の前に置かれている鏡は異様に大きい。

そういえば、どうしてこの店が美容室だと解ったのだろう。

入口には美容院を示す物が何もなかったのに。


こちらへどうぞ、と女性はその一脚しかない椅子を指した。

誘われるままに椅子にすわると、

その目の前の大きな鏡に呑みこまれそうな気がする。


「外暑かったでしょう。よかったら冷たいお茶のみませんか?」

そういって女性は、

金色の美しい模様の入ったグラスを

鏡の前にある小さなテーブルに置いた。


それを手に取り、一口飲む。

アルコールが入っているのだろうか、

一瞬喉が熱くなったかと思うと

突然意識が朦朧としてきた。

そうして景色がぐにゃりとゆがみ、

遠くで 美味しいでしょうという声が聞こえた気がした。

その声はリフレインを繰り返して、消えていった。


気がつくと私は砂漠の真ん中で

金色に輝く蛇と対峙していた。


どうしたいの?

蛇は薄いグラスを弾いたような、澄んだ声で聞いてきた。

どうしたいの?

私はどうしたいのだろう。

何を迷っているのだろう。

何かが私の中で声を上げようとしている。

蛇はしゅるしゅると足元に近づき

そうして脚から腰を這い上がり

ついに耳元でまでやってくると

どうしたいの?

と囁いた。


私は目を閉じ、声を絞り出すように言った。




カットとカラーとパーマをお願いします・・・。



目をあけると私は

シャンプー台の席に寝そべり、

頭を洗われていた。




と、くりくりにパーマのかかった毛とつまんで、

伸ばしながら私が説明すると、


そんな事言わなくても大丈夫だよ、

可愛いって、失敗じゃないって。


友人が言った。