友人帳の最初の1ページ、誕生秘話に隠された、レイコさんとその友人の出会いと別れの物語。
このお話に感想を述べるのは、どうにも無粋な気もするのですけど!
でも語りたいことはいっぱいあるので書きます……ここからネタバレ感想。
すれちがいの寂しさと救いと
もう、そんなのさあ……ほんのちょっとしたすれ違いでしかないのに……。
レイコさんも蒼子ちゃんもお互い友達になりたくて、どちらの気持ちにも障壁なんかなくて、ただちょっとタイミングが合わなかっただけなのに!
ままならない……本当に、何かがもう少しだけかみ合っていたら……。
一緒にお花畑を見てほしかった……。
それを目の前で見ていて全部を知っているのに、間を取り持つこともできず、どうしようもないままお別れを見守ったソラノメの苦しさもつらい。
でも、ソラノメが二人の心を知って寄り添ってくれたこと、レイコさんにもきっとそれが伝わっていたこと、そのかかわりが「友人帳」として続いていったこと、時を超えて夏目くんに伝わったこと。
それはきっと、救いだったと思います。
寂しすぎるのでこの先はずっと「でもきっと、そこにも救いがあったはず!」という話をします。
……そうせざるをえない、切なさに溢れた物語です。
レイコさん
根が良い子なんだよなレイコさんもさ……。
蒼子ちゃんと親しくなる前から、ボディガードとして一緒にいてあげてるし。
それをやって感謝されるわけでもなく(そもそも妖怪が見えない人に理由は話せないし)、むしろ気味悪がられるリスクしかないのにしれっとそういうことできるの、強いよね。
たぶんレイコさんも色々ひどい扱いをされていて、それから身を守るために、心が硬質なんて言われる自分の守り方をして、でも人のために動く気持ちはちゃんと残しているんですよね。
お腹空かせてたのって、レイコさんもやっぱり、遠慮なく食べられる環境じゃなかったのかなぁ、成長期なのにな。
照れ隠しで飴を噛み砕くレイコさんかわいい。
あとかけっこで具合悪くなっちゃった蒼子ちゃんへの、「無茶をされるのは迷惑よ」って言い方!
そういうちょっと複雑なかわいらしさを蒼子ちゃんが好意的に受け止めてくれてて、たぶんそれがレイコさんにも伝わっているのが嬉しいです。
蒼子ちゃんが「夏目レイコ」の話をした時に間髪入れずに名乗ろうとしたところも、蒼子ちゃんに隠しごとをしたくなかった気持ちが見えますし、蒼子ちゃんのことほんとに気に入っていたんだろうなぁ。
(それで嫌われるなら早いうち、って気持ちもあったのかもしれませんけど)
あーーーーもう、そこで名乗れていれば!!!!
もう色々、色々タイミングさぁ!!!!
飴の時も名乗れそうな瞬間あったよね!? まあそこで名乗ちゃうと勝負が始まらないんだけど!
で、そんな交流の中でも、レイコさんは心にずっと予防線を張っています。
「今なら、まだ大丈夫。私のことを知って態度を変えられたとしても、いつものことだと思える」
蒼子ちゃんのことを好きになっているのも、傷つかないために距離を取っているんだってことも、全部ちゃんと自覚してるんだよなレイコさん。
あと自分のためだけじゃなくて、蒼子ちゃんのために身を引かなきゃいけないかもしれない、ってことも考えてますよねレイコさん。
かけっこの後、「同級生にも少し話しかけられるようになってきた」っていう話を聞いているところの雰囲気の硬さが切ないです。
そんな風に達観するくらいに、ままならなさを何度も何度も繰り返してきていて、諦めも、いちいち心を乱さないくらいに自分の一部になっています……。
ただ、いつもならもっとすぐに、淡々と諦めるような気もするんですよ。
今までのレイコさんのイメージって、諦めたんだってことを自分に言い聞かせるためにあえて蒼子ちゃんを待たないし、花畑にも行かない……なんとなく、そんな印象でした。
でも今回レイコさんは、ソラノメの「わざと負ける気か?」という言葉(蒼子ちゃんとの関係性を終わらせるのか?という問いかけですよね)にも迷いを見せましたし、すれちがって別れてしまった後も、二日の間、蒼子ちゃんを待ちました。
最後には、蒼子ちゃんの代わりかのようにソラノメを連れて、花畑を見に行って。
諦めなきゃいけないことはわかっていて、でも諦めきれなかった二日間の揺らぎ……。
あと一日!!
それが、あとたった一日だけ長ければ!!!
でもね、レイコさんが「でもちょっと楽しかったわ」って、お別れの苦しさではなく一緒に過ごした時間の楽しさの方を心に残してくれたこと、ソラノメが泣いてくれたこと(レイコさんの心が映ったのかな、だとしたらレイコさんはそれが分かってたかな…分からないふりをしてたかな)、蒼子ちゃんと一緒に花畑を見たかった気持ちを、ソラノメが言葉にしてくれたこと。
蒼子ちゃんと一緒にお花畑を見たいって、夢で望んでくれていたこと。
レイコさんの中で、悲しい思い出ではなく、楽しくて美しいひとときとして心に残ったなら、この出会いはきっと、優しい楽しいものだったと思います。
……いやもちろん、蒼子ちゃんと一緒にお花畑見てほしかったに決まってるんだけどさ!
セピア色で描かれる思い出の中の、青い花の鮮やかさがまた胸に迫ります。
蒼子ちゃん
蒼子ちゃんも底抜けに良い子です!
良い子しかいないんだこのお話!!
最初に「少しお話しませんか」って勇気を出して声かけて「いやよ」って断られてしまって(ほんとに取り付く島もない!!)、ショックを受けたような顔を見せた後に笑顔で「ええ、ごめんなさい」って言える……。
完璧か!?
自分の希望はちゃんと伝えたうえで押し付けはせずにレイコさんを尊重する、そのバランスが素晴らしいんですよ。
「いやよ」の理由を聞くことはせず、でもきっと理由があるんだろうなで納得できていそうな感じがとても大人、だけどかわいらしい無邪気さに溢れていて。
レイコさんのかわいいところや楽しいところを喜んで笑ってくれて、全面的な好意を向けてくれて、それがレイコさんにもきっと伝わっていたんだろうって思えるのが嬉しいです。
「夏目レイコ」の評判を聞かせてくれたのも、純然たる気遣いなんですよねー……。
「とても怖いことを言ったり、ケガをさせられた子もいるって」
レイコさんにケガしてほしくなかっただけなんだよね!!!
ちなみにそのケガさせたのって、たぶんレイコさんじゃなくて近くにいたなんかの妖怪だと思うんですけど!
最初は石の投げ方からしていかにも不慣れな感じだったのに、黙々と石投げの練習をして、レイコさんとの約束(勝負に負けたら名前を教える)にのっとって友人関係を築こうと努力した蒼子ちゃん。
そして……すれちがってしまった引き際にも、レイコさんへの気遣いが見えます。
勝負に勝って、「夏目レイコ」の名前を聞かされて「帰りなさい」と言われた時。
何かを言おうとして、でも重ねて「帰りなさい」と言われて、ごめんなさい、と引き下がったのもたぶん、自分を拒絶したレイコさんの気持ちを汲んで(実際には蒼子ちゃんへの不器用すぎる気遣いだったんだけど)、今は引き下がろうっていう配慮だったと思うんです。
もしそれが最後になるってわかっていたならちゃんと食い下がったんだろうな蒼子ちゃん。
季節がひとつ変わる頃までレイコさんを待って、それきり来なかったことも。
体の弱さからして寒い中待つのは無理というのもあったんでしょうけど……。
ただ、たぶんもうレイコさんが来ないってわかったら……どこかの時点から、それ以上待つともう、目的がレイコさんのためじゃなく、自分の罪悪感を薄めるために変わってしまうと思うんです。
蒼子ちゃんは、それはしませんでした。
「思い出すために時々来る」みたいなこともせず、傷つけてしまった結果を受け止めて受け入れて、その先の人生をしっかり生きたのではないかなと思います。
とても良い子なのできっと幸せな人生だったでしょうけど(レイコさんと同世代ならまだまだ存命だったりするかも)、守永という名前の通り、レイコさんとの思い出も、永く抱えてくれていたら良いなぁ。
ソラノメ
四方谷の大オバケこと、ソラノメ。
目の下に貼ってある紙の読めそうで読めない感じすごく気になるんですけど、あれ多分「そらのめ」って書いてあるんだろうな……羽みたいなのと目みたいなの……。
ものすごく良い声&時々出る声芸が最高ですね!
「悪いやつだったらどうしよう」「うっわ、めんどくさ」のところもそうですし、初めてレイコさんに会ったときの「な゛」とか「え゛」とか「あー……」みたいな声もすごく好き。
「ひとりは心地よい、あの人の子はそれを知っているのだ」
最初はそんなシンパシーからレイコさんに興味を持っていたのに、だんだんと二人が友人になることを応援するようになっていくソラノメ。
あの二人を見ていたらそれはそうなる!
「話さぬほうが悪いだろうか」
二人を見ていただけでもこんなに切ないのに、もしかしたら介入できるかもしれなかった、こうなる前にレイコさんに何かを伝えられるかもしれなかった立ち位置のソラノメは余計に苦しいですよね……。
一人を好んでいたはずのソラノメが、蒼子ちゃんと一緒にレイコさんを待って、声が届かないのも承知でずっと蒼子ちゃんに話しかけ続けたことを思うともう!!
(「『蒼子と私は』並んでレイコを待った」って表現いいですよね)
夏目くんに話せたことで、その後悔も少しは軽くなったのかな。
「あれがもう呼ばぬなら、返してもらっていいか、孫よ」
1期1話のひしがきのことも思い出すなぁ……。
名前を縛られてしまったからというだけではなく、レイコさんとつないだ縁そのものもきっと大事に思ってたんでしょうね。
友人帳
さて、そんな出会いから生まれた友人帳です。
結局、レイコさんにとって友人帳って何だったんでしょうか。
ソラノメの名前を教えてもらって、それきり二度と来なかったレイコさん。
勝負をしてひとときの縁をつないで、そうしてすぐに離れていく。
ひとつの縁に未練を残すでもなく、ここから長い縁を結べるかもという期待をするでもなく、「そういう繋がり方」を繰り返し続けたことには、どんな想いがあったんでしょう。
蒼子ちゃんとの縁がああいう形になったことを、これでいいんだ、これが自分に合っているんだって、体現しようとしていたんでしょうか。
我々が今まで見てきたレイコさんは、友人帳を得てからのレイコさんで。
あの物騒なお札まみれバットを持って、自分の強さをどう使って、何を諦めてどう遊ぶかをもう決めてしまっている姿で……。
今回は、その背後にある揺らぎの部分を見られる貴重なエピソードでした。
3期1話「妖しきものの名」で、仲良くなった「おばば」が人間ではなく妖怪だったと知ってレイコさんが気落ちするシーンがあって、人間の友人がほしいという希望がレイコさんの中に強くあるのが印象的だったのですが……。
この蒼子ちゃんとの縁を経て、その希望を持ち続けられていたのは嬉しいことだなと思います。
名前を返す時に友人帳の最初の一枚が開くシーンで、その後に増えていったページたちの重みが感じられるの良いですね……。
夏目くん
「こうして誰かの心を勝手に読むのは心が痛むか」
「あ、いえ、すみません」
心が痛むと思ってしまうことも、ソラノメに対してそれを思ってしまったことを謝るのも優しい。
心が硬質で読めなかったレイコさんに対して、ガードやわやわですぐ心を読まれてしまう夏目くん。
夏目くんがそう在れるのは、レイコさんが遺したもののお陰でもあるんですよね。
友人帳を介して先生との縁を結べたこと、そして名前を返す過程で様々な出会いを経験したこと。
大前提として、妖怪を見る力もレイコさんから受け継いだものですし。(大変なこともすごく多かったけど!)
そして夏目くんはまたひとつ、ソラノメが抱えていたレイコさんへの想いを受け取りました。
夏目くんの「はい、ありがとうございました」の声の硬さなぁ……。
「やっと伝えられた」その事実を孫として受け止めるのがここでの夏目くんの役割だから、自分の感傷を吐き出すようなことはしなくて、でも平静でいられないのは声ににじみ出てしまっていて。
まぁソラノメにはそういうのも全部伝わっているかもしれませんけど……。
涙を見せるのは、先生とふたりになってから。
「すごくきれいで、先生にも、見せたかったな」
レイコさんの「誰かといようと、ひとりだろうと」と対になるようでいて、でもレイコさんに反論しようとして言っているわけでは全然ないんですよね。
綺麗だと感じたのも先生に見せたいと思ったのも、きっとただただ素直に出てきた気持ちで。
それを思うことができている自分の境遇とか、蒼子ちゃんと一緒に見たかっただろうレイコさんの気持ちとか、色んな感情があると思いますけど、選ぶのは「先生にも見せたかった」という言葉なの、夏目くんだなぁ。
先生が「ふん」とだけ相槌を打つのもまた先生らしさです。
その他
・「それって大事なこと?」「さあな、人間にとっては知らん」
勝負の途中なのに先に名前を教えてしまうのは、妖怪にとっては重要な問題なんでしょうかね……約束に従って名前を縛られてしまうような存在にとっては。
・青い花、原作ではおそらくネモフィラなのを、放送時期の秋に合わせて種類を変えた……という話が大森総監督のXポストにありましたが、この花はエボルブルス(アメリカンブルー)でしょうか。
・青い花畑の夢でレイコさんと蒼子ちゃんがお互いに手を伸ばすシーン、OPアニメーションのレイコさんと夏目くんが手を伸ばすシーンを彷彿とさせます。
どちらにしても現実には存在しない場面ではあるんですけど……レイコさんの中に、蒼子ちゃんへ向けて、そして未来に向けて手を伸ばす気持ちがあったなら嬉しい。
・ED、こまりわらいのインストver.すごく良かった……。
・このエピソードを経てから次回オリガミの話で最終回なの素晴らしいですね!