前後編の後編!三春家の儀式の解決編です。
的場さんと名取さんと夏目くん、そして三春家の政清さん、それぞれが抱える信条や強さや弱さが少しずつ重なり合う優しい着地でした。
ここからネタバレです。
一つ目
一つ目ちゃんがかわいい!
出てきた時には恐怖でしかなかったたどたどしさが、気づいたときには可愛さに変わっているの、いつものことながらお見事です。
「わたしもないてた、こわい~~」
……かわいい。
政清も三春家ももう存在しないと理解できないこと……健気な一途さと表裏一体の「話の通じなさ」はずっとあるんですけど、それを怖く感じなくなっているのは、たぶん夏目くんが理解を諦めていないからですよね。
「もうここにはいなくなっちゃったんだ、もう返せないんだ」
レイコさんが返せなくなってしまったたくさんの約束やすれ違いを、大切に抱えている夏目くん。
その寂しさを受け入れる難しさも苦しさも、たぶん誰より知っている夏目くんだからこそ、今、目の前にいる一つ目にまっすぐ本気で向き合えるし、きっと一つ目にもそれが通じたんだろうと思います。
名取さんが一つ目の事情を汲んでくれているのも嬉しいですね。夏目くんの影響かな、名取さんも妖怪に対してずいぶん丸くなりましたよね……。
的場さんの強さ
「祓い屋をやめたいと思ったことはないのですか?」
前回夏目くんが同じ台詞を言っていましたが、それとは違い名取さんのこの言葉には、的場さんを責めるような響きがありました。
強さを追い求めることで払わなければいけない犠牲。
政清さんが恋人を遠ざけたような、的場さんが右目狙いの妖怪に襲われ続けるような業を、夏目くんに背負わせることをなんとも思わないのか、と責めるかのように。
でも的場さんは、平気でそれを背負えるんですよね。
強い人が背負うことが当然だとも思っているし、背負うと決めたからには弱音なんか吐かない……というか、弱音なんか吐く必要がないくらい自分が強いと知っている。
そして、的場さん以外の強者(夏目くんや、さんざん煽っているのを見るにおそらく名取さんも)は同じようにそれを背負うべきだという強硬さのようなものもあったりして。
それに対して名取さんや夏目くんが示したのは、その重さを分け合って背負うという道でした。
「真の重みは私などにははかり知れません」
「重いものも、ひとりでなければと」
的場さんが歯牙にもかけていない重さ。
弱い人が強い人のこと気遣うのは失礼みたいな風潮って存在しますし、それゆえに強い人は孤独を背負うことになりがちですが、名取さんも夏目くんもそんなの関係なく、的場さんが背負うものの重さを当たり前に理解しようとしてくれています。
「元気出してください」
「的場」には必要ないと、周囲の人もおそらく的場さん自身も思っていただろう愚直な気遣いを、何の気負いも迷いもなくまっすぐ差し出してくる夏目くん。
「ちゃんとお迎えしようっていう気持ちが届けば」
強さをぶつけあい、騙しあうのではなく、気持ちを届かせることで妖怪たちと付き合ってきたのが夏目くんです。
的場さんから見たら甘いし危ういだろうやり方ですけど、夏目くんはそこに生まれる温かさを知っているからこそ、「羨望しているのではないか」なんて思うのかもしれません。
棒々頭巾も三春家に恩を感じているようなこと言っていましたし……「強い者に手を出して制御できなかった」というだけではない心の通い合いが、そこにもあったと信じたいです。
「お前は自由なのだ」
政清さんが一つ目に告げた「お前は自由なのだ」という言葉は、弱いものへの優しさではあるのですけど、同時に、重荷を共に背負うのを許さないということでもあります。
政清さんは、自分より弱い者に頼れない人でした。一つ目にも、そして、恋人にも。
その結果、自分も苦しんで、一つ目を暴走させることにもなって……。
的場さんはそういうヘマはしなさそうではありますが、でもやっぱり、もうちょっと人に弱さを見せられるようになった方が良いと思うな!
「菓子でも買いに行ってるんじゃ」とか疑われてるあたり、七瀬さんには可愛いところ見せられているんでしょうかね……。
「お前は自由なのだ」に話を戻すと、この言葉を受け取る側から見た時、寂しさはあれど決して突き放すだけの言葉ではないんですよね。
一緒に何かを背負うことは許されなかったけれども、心をかけてくれたことには変わりありません。
「好きに生きるがいい」
恩を返したいのに返せない自分の弱さや苦しさに溺れず、そこに込められた優しさをちゃんと受け取るのには、心の強さが必要です。
「こんな、なんにもできないわたしを」にシンパシーを感じてしまう、同じ無力を抱え続けている夏目くんが、その温かさを一つ目に告げられるのは、すごく嬉しいことだなと思います。
こども扱い
これは今回だけの感想というわけじゃないんですが、妖怪たちが夏目くんのこと「人の子」呼びするの、優しいなって思うんです。
一つ目が夏目くんのこと「こども」って呼ぶのもそうなんですけど。
こどもって、無力で無責任であることを許される存在で、無力であってもそこにいて良いと、当然のように思われて良いものなので。
夏目くんがそこから抜け出そうとする、いわば大人になりたがるのは、年齢的にも生い立ち的にも当たり前だとは思うものの……。
無力でもいいのだと、理由なんか必要なく庇護され大事にされる存在なんだという実感を、こどもとしてもうちょっとの間、受け取ってほしいなとも思います。
名取さんが夏目くんを妖怪から遠ざけようとするのも、そういうところちょっとありそうですよね。
的場さんは、大人とか子供とかじゃなくて力の有無で責任を負うべきというタイプなのでガンガン来ますけど。
でも一方で、名取さんの「居合わせたからには役目を果たそう」と、ちゃんと一緒に背負おうとしてくれる姿勢もまた嬉しかったりします。
的場さんと枇杷
「こんなちっぽけなこともうまくまわりはしない」
的場さん!
そんなこと言ってくれるんですね!?
ちょっと絆されてくれました???
的場さんの中に「うまくまわってほしい」って気持ちがあって、的場さんにとっての「うまくまわる」っていうのは、依島さんの好意の通りに名取さんが美味しい思いをしてそれがちゃんと依島さんに伝わることで、自分が美味しいものを食べてしまったことを残念だとか思っちゃって……。
かわいいな!?
枇杷をずっと食べてみたいと思っていたのもかわいい。
的場さん……っていうか静司くんも喜んで良いんだよ!?
依島さんが周一くんや静司くんを喜ばせたいと思ってるタイプかはよく分からないけど……。
「とおかんや」でも先生にまでお菓子出してくれてたし、人に食べ物出すのは好きなのかな。
というか、周一くんの「変な顔」を見てるはずなのに、枇杷をお駄賃にして用事を頼んだのね依島さん。
ところで、的場さんが名取さんを呼ぶ「名取」って言い方、的場家当主として名取家当主を呼んでいる感じなのかなと思って聞いていたんですけど、夏目くんに枇杷の話している時は、親しい同輩を呼ぶような言い方でしたね。
今だって一緒に枇杷食べても良いと思うよ……。
その他
・穴に落ちた時、一つ目ちゃんはあえてクッションになってくれたのかなぁ
・名取さんの紙落としかっこいいね!
・名取さんに「元気出してくれ」って言われた夏目くんの笑顔すごく良いですね!
気遣いを贈りあうことの温かさが、的場さんにも伝わっているといいね。
・「殺気立った妖に抱きついたりするからだ」と言いながら、止めずに夏目くんにやりたいようにやらせる先生の信頼。