今年が生誕100周年のフェデリコ・フェリーニ監督の映画をご案内している、フランツの「家で過ごそう」シリーズ。第7回目は不朽の名作として名高い、「道」(La Strada)です!

 

 

道(La Strada

(1954年公開)

 

監督・脚本:フェデリコ・フェリーニ

製作:カルロ・ポンティ/ディノ・デ・ラウレンティス

脚本:トゥリオ・ピネッリ/エンニオ・フライアーノ

撮影:オテッロ・マルテッリ

音楽:ニーノ・ロータ

 

ザンパノ:アンソニー・クイン

ジェルソミーナ:ジュリエッタ・マシーナ

綱渡り芸人:リチャード・ベイスハート

 

 

 

(写真)本作品のDVDの表紙。可愛らしいジェルソミーナ(左)とワイルドなザンパノ(中央)。

 

(参考)この映画のワンシーン。ザンパノがジェルソミーナに初めて芸を教えるシーン。

https://www.youtube.com/watch?v=zagGwSec4JE (3分)

※FIRMAUROの公式動画より

 

 

 

私はフェリーニの他の作品は映画館かDVDで観ましたが、この「道」を初めて観たのは、NHKのBS放送、名画シリーズか何かでした。初めて観た時はよく分からないこともあるフェリーニですが、この映画は最初からスッと入るともに、大いに感動した映画でした。

 

 

有名な作品ですが、物語のあらすじをごく簡単に。子沢山の貧しい家の長女のジェルソミーナは母親が得た金銭と引き替えに、旅芸人ザンパノに連れて行かれます。芸をしながらザンパノと旅を続ける、ジェルソミーナの、そしてザンパノの悲喜こもごもの物語です。

 

 

 

冒頭のキャストの字幕が展開する場面で、流れるニーノ・ロータの音楽が素晴らしい!マスカーニのオペラ、カヴァレリア・ルスティナーナの冒頭の音楽の盛り上がりを連想させる、心を打つ音楽に痺れます。

 

最初にジェルソミーナがザンパノと出会う場面。ジェルソミーナの上目遣いにうつむく表情、そして涙目の悲しげな表情にキュンとします!「カビリアの夜」でもご紹介したジュリエッタ・マシーナの演技って本当に凄い!ものの5分で涙涙…。

 

 

ジェルソミーナはザンパノとともに旅芸人の世界に入ります。悲しげなジェルソミーナですが、ザンパノから帽子を被されて、一瞬楽しそうにする表情がいい!(上記の映像) 芸人への憧れは秘めているようです。

 

そして大勢の観衆が見守る中、いよいよジェルソミーナが寸劇をします。どうなるのか?ドキドキしましたが、結構受けている!何だかホッとするシーン。

 

 

芸の披露が終わって、夜の食事のシーン。あ~!ジェルソミーナが赤ワインを一気飲みしちゃった!(笑) その喜びの表情がとてもいい。お会計の時にザンパノが、「ぶどう酒を2本くれ!」と???そして麦わらボトルを2本もらって店を出るザンパノ。何だかいい感じ。

 

ちなみにそのお店にはワインは1種類しかなく、銘柄などもちろんありません。現代ではレストランで100種類以上の銘柄が並ぶワインリストもありますが、何かワインの、ぶどう酒の根源的な喜びを大いに感じる、非常に印象的なシーンでした。

 

 

ザンパノが運転するバイクの荷車に乗って、ジェルソミーナは旅を続けます。とある結婚式を盛り上げるため、ザンパノの太鼓に合わせて、ジェルソミーナが踊るシーン。うん、いい感じの踊り。ジェルソミーナの成長ぶりが何だか嬉しい。

 

サーカスの一座に合流したザンパノとジェルソミーナ。綱渡り芸人が小さなヴァイオリンを弾いて、それにジェルソミーナがトロンボーンを合わせるシーン。上手くできて、ジェルソミーナがこの映画の中で、初めて人に認められるシーンにホロリとさせられます。

 

 

そりの合わないザンパノと綱渡り芸人は大げんかになり、ナイフを持ち出して追いかけたザンパノは警察に連行されます。その夜、無口なザンパノと違って、おしゃべりな綱渡り芸人とジェルソミーナの本音のやりとりは、非常に見応えがありました。何も役に立たない、と悲嘆するジェルソミーナに、綱渡り芸人はこう言います。

 

 

この世の中にあるものは何かの役に立つんだ。例えばこの石だ。こんな小石でも何か役に立ってる。

 

 

涙を流すジェルソミーナが、渡された小石を見て笑顔になるシーン。ニーノ・ロータのテーマ曲がほのかに流れて、極めて感動的なシーン!そして訪れる綱渡り芸人との別れのシーンに、もう涙涙…。

 

 

さて、とても有名な作品でもあるので、これ以降の感想は控えましょう。ジェルソミーナがトランペットを吹く素敵なシーン。突如起きた悲劇的なシーン。あまりにも哀しくて切ない別れのシーン。そして、ひたすら不器用な男が最後に見せた改悛の念と号泣。とても哀しくも、どこか温かさや清々しさを感じさせるラスト!

 

 

 

いや~!久しぶりに観た「道」(La Strada)。名作は色褪せない。名作は何度観ても感動できる。さすがはフェリーニを代表する映画、もう圧巻でした!上記の感想はほんの一部ですが、本当に様々な感想、いろいろな思いを抱く映画でした。それこそ、「ぶどう酒」をお供に、友や恋人と語り尽くしたい、そんな映画だと思います。

 

 

一点、この映画では、貧しい旅芸人の厳しい暮らしが、リアリティを持って描かれます。これを見るに、温かい家の中でベッドで寝ることができる毎日、3食を食べることのできる毎日が、いかに恵まれていることか、大いに痛感させられました。

 

今日5月6日は、ちょうど緊急事態宣言の期日の日で、残念ながら延長となってしまいましたが、外出自粛がさらに続くことになり、モヤモヤされている方がいらっしゃったら、ぜひこの映画をご覧になることをお勧めします。(ただし、今しばらくはネットで!)

 

 

 

そしてこの映画を語る時、触れない訳には行かないのが、バンクーバー冬季オリンピックでのフィギュアスケート、高橋大輔選手のフリー。この「道」をテーマに、「道」の主題曲で演じたんです。

 

冒頭の4回転ジャンプの着地失敗は、技術点こそ引かれるものの、苦難の物語に即して、却って感動的ですらありました。そして魂の飛翔を大いに感じる、ラストの圧巻のステップシークエンス!この映画の世界を見事に演じていた最高の演技でした!

 

(参考)フリー全編を見ることのできる、2010年トリノの世界選手権で金メダルを取った時の高橋大輔選手の演技。4:35辺りからがニーノ・ロータの主題に乗った圧巻のステップシークエンスです!久しぶりに観て、熱いものが込み上げてきました。

https://www.youtube.com/watch?v=fcs_UVsf3QY (9分)

※LaRiservaSkating2の公式動画より

 

 

 

さて、7回に渡ってご紹介してきた生誕100周年のフェデリコ・フェリーニの映画、いかがだったでしょうか?拙い感想で本当に恐縮でしたが、少しでもフェリーニの映画の世界、さらには往年のイタリア映画の魅力を感じていただけたら嬉しいです。取りあえず今回でひとまず終了としますが、フェリーニの生誕100周年はまだまだ続くので、またどこかで残りの作品もご紹介できればと思っています。

 

 

(参考)2020.4.11 映画/カビリアの夜(フェデリコ・フェリーニ生誕100周年その1)

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12588899646.html

 

(参考)2020.4.14 映画/アマルコルド(フェデリコ・フェリーニ生誕100周年その2)

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12589663749.html

 

(参考)2020.4.17 映画/甘い生活(フェデリコ・フェリーニ生誕100周年その3)

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12590373189.html

 

(参考)2020.4.21 映画/青春群像(フェデリコ・フェリーニ生誕100周年その4)

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12591394162.html

 

(参考)2020.4.25 映画/世にも怪奇な物語(フェデリコ・フェリーニ生誕100周年その5)

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12592405058.html

 

(参考)2020.5.2 映画/8 1/2(フェデリコ・フェリーニ生誕100周年その6)

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12594178051.html

 

 

 

最後に、改めて懸命に治療に当たられている医療関係者のみなさまに心から感謝するとともに、新型コロナウイルスの早期の終息を強く願っております。外出自粛がもうしばらく続きますが、#おうちで過ごそう、もう少し頑張りましょう!(そして、イタリアも頑張れ~!)