今回の旅のラストを飾る観劇、愛してやまないオペラとは、エーリヒ・ヴォルフガング・コルンゴルト/死の都でした。ライプツィヒに続いてコルンゴルト2連発。ゼンパー・オーパーで観る死の都、めっちゃ楽しみです!

 

 

Semperoper Dresden

Erich Wolfgang Korngold

Die tote Stadt

 

Musikalische Leitung: Dmitri Jurowski

Inszenierung: David Bösch

Bühnenbild: Patrick Bannwart

Kostüme: Falko Herold

Licht: Fabio Antoci

Dramaturgie: Stefan Ulrich

Chor: Jörn Hinnerk Andresen

 

Paul: Burkhard Fritz

Marietta: Manuela Uhl

Frank&Fritz: Christoph Pohl

Brigitta: Tichina Vaughn

Juliette: Tahnee Niboro

Lucienne: Grace Dorham

Victorin: Khanyiso Gwenxane

Graf Alert: Timothy Oliver

Gaston: Florian Damm

 

Sächsischer Staatsopernchor Dresden

Kinderchor der Sächsischen Staatsoper Dresden

Sächsische Staatskapelle Dresden

 
 

 

(写真)夜にライトアップされた美しいゼンパー・オーパー

 

 
 

第1幕。ほとんど廃墟と言っていいような部屋の中、背景に”MARIE”の文字。写真、ベッド、花などマリーの遺品が多数ある部屋です。マリーの絵は金髪で笑顔ですが、うつむいています。指揮者はウラディーミル・ユロフスキさん。冒頭はごくごくゆっくりの出だしで入ります。フリッツとブリギッテの充実のやりとり。フリッツは車椅子です。

 

部屋にパウルが入ってきてから、オケがどんどん速くなり活気づいていきます。パウルのマリー述懐の歌。ブルクハルト・フリッツさんの素晴らしい歌!死してなお、ここまで想ってもらい、マリーは幸せですね。背景には沢山のマリーの投影もありました。

 

マリエッタが登場。運動靴を履いて、一見、小ギャル風?、過去の舞台で観たマリエッタとは一味違う印象です。リュートの歌は、小型のリュートを持ちながら。マヌエラ・ウールさんの素晴らしい歌に早くも涙…。パウルとの2重唱になるところでまた涙…。しかしパウルは、マリーの写真を抱きしめてマリエットにはなびかず。悲しそうな表情のマリエッタ。

 

(参考)コルンゴルト/死の都より「リュートの歌」(マリエッタの歌)

https://www.youtube.com/watch?v=kR8QGWv_IMA (5分)

バルセロナ・リセウ劇場の公式動画より。スーザン・アンソニーさんのマリエッタ、トレステン・ケールさんのパウルの素晴らしい2重唱。

 

マリーの幻影が登場する場面は、舞台の背景に髪をなびかせるマリーが投影されます。パウルは跪き、手にマリーの写真を抱きます。感動的なシーン。しかし、パウルは思い詰めた様子で少しおかしい?そして、最後、パウルが「マリエッタ!」と叫ぶ場面では、何と!パウルが錯乱して、マリエッタの首を絞めてしまい…!オケの迫力も凄い!この急展開!第2幕以降は、いったいどうなるのでしょうか?

 

 
 

第2幕。マリーが背景に映し出される幻影のシーンから。私はマリーの歌詞は、「ほかの女があなたを誘うわ。よく見るのよ、見るのよ、見極めるのよ。」と思っていました。ところが、ゼンパー・オーパーの字幕では「見極めるのよ」の部分の英語訳が”realize”になっていました。別の意味も成り立ちそうに思えてちょっとドキッとしました。

 

マリーの幻影は最後、ガイコツになって、それがさらに多数のコウモリになって飛び去っていなくなるショッキングな映像。この辺りもオケが大迫力でした。シュターツカペレ・ドレスデンのオケから、マチネで聴いた渋い響きは感じません。コルンゴルトの陶酔的な音楽が、温かみのある何とも言えない魅惑の響きで伝わってきます。

 

マリエッタは酒瓶を片手に赤の下着姿で出てきて、ガイコツに抱かれてあの世へと旅立ちます。第1幕のセットが横に割れて、正にあの世の世界のような幻想的な雰囲気に。立ちながらガイコツに抱かれるマリー。死と乙女を思わせます。パウルにも魔物が迫り、パウルは恐怖に逃げ出します。

 

マリエッタの仲間たちは赤と白の市松模様のコメディアン衣裳でとてもいい感じ。そして、マリエッタはガイコツに肩車されて、何と!天使の羽根をつけて再登場してきました!やっぱり今日のキーワードは「天使」だったのか!あるいは堕天使なのか?舞台にはガイコツに加え、怪しげな魔物が出てきて、非常に象徴的な舞台。

 

ピエロの歌が始まる前、マリエッタの歌にチェロが合わせるところでもう涙涙…。そして大好きなピエロの歌。クリストフ・ポールさんがもうたっぷり歌って感動的、涙止まりません…。ワルツの場面では、マリエッタが、まずピエロと、続けてパウルと踊ります。天使の姿のマリエッタがパウルと悲しげに踊りを踊る非常に感動的な場面!もはや号泣するほかありません…。とどめは8人のソプラノによる陶酔的なヴォカリーズ!超感動の瞬間!今思い出しても涙が出てくる素晴らしいシーン。

 

(参考)コルンゴルト/死の都より「ピエロの歌」

https://www.youtube.com/watch?v=cpxCjKe6jlQ (7分)

バリトン歌手Marcelo Lombarderoさんの公式動画より。テアトロ・コロン(ブエノスアイレス)の公演。ピエロの歌は2:30から。大好きなのは5:13からの8人のソプラノによるヴォカリーズ(この動画はやや小さくて聴き取りにくい)。かなり感傷的なピエロでしたが、歌のご褒美にマリエッタからキスしてもらうと、すぐに元気に!(笑)

 

ここであまりにも突き抜けて感動したのと、その後の舞台のめくるめく展開と音楽の融合に圧倒されたため、後はこと細かに覚えていませんが、マリエッタが天使の羽根を外してパウルと現実的なやりとりになったり、マリーの写真を燃やして凄い大きな声で叫んだり、幻想の世界と現実の世界が境界なしに入り交じって、めちゃめちゃ見応えのある舞台でした!ラストは長髪の金髪、マリーの姿をした沢山の女性たちが出てきてパウルを囲んで幕。象徴的で幻想的な第2幕、圧巻でした!

 

 
 

第3幕。オケがキレキレの前奏で盛り上げます。マリエッタは白地の下着にガウンを着てお酒を飲んで退屈そう。マリーの肖像画と対峙します。純粋な子供の祈りの歌。しんみり響くヴァイオリンも素晴らしい。感動で再び涙涙です…。楽しいことがないかと、再びピエロの歌を歌うマリエッタ。その後の大迫力の子供たちの歌”O Susser Heiland mein”、感動して、その声を全身で受けるパウル。背景には大きく巡礼が投影されます。巡礼は子供→大人→老人→十字架を背負ったキリスト→キリストと続いていき、意味深い並び。

 

ここでマリエッタの感動の歌!”Der Erste, der Lieb' mich gelehrt” これまで感動の歌や音楽がてんこ盛りでしたが、さらにここでこれも来るの?という感じ、私がこのオペラのマリエッタの歌で一番好きな歌です。マヌエラ・ウールさんの渾身の歌!めっちゃ感動しました!マリエッタはマリーの遺品の髪を見つけて、ムチのように叩いたりしますが、遂にマリーの肖像画をナイフで切り裂いてしまいました!そして、怒ったパウルに、そのマリーの髪で首を絞められて再び死にます…。

 

ここで舞台転換。第1幕で赤いバラの花が生けられたシーンに戻ります。マリーの絵も、マリーの髪ももとのまま。マリエッタが赤いバラを取りに来て、そのバラを胸に抱えて香りを胸いっぱいに嗅ぐ愛らしい姿。そして、部屋から去って行きます。最後、パウルが絨毯の下に隠していた、マリーの髪でできた十字架を取り出し、それを抱きしめて幕となりました。

 

 

何この超感動的な、最高の死の都!!!

 

 

シュターツカペレ・ドレスデンの魅惑の音といい、ブルクハルト・フリッツさん・マヌエラ・ウールさん始め傑出した歌手といい、ウラディーミル・ユロフスキさんの意欲的な指揮といい、象徴的かつ幻想的な演出といい、全てがものの見事に調和して、信じられないくらい素晴らしい公演となりました!!!

 

死の都は大好きなオペラ、これまで素晴らしい公演を2回観たことがあります。1つは2008年にウィーン国立歌劇場で観たウィリー・デッカーさんの演出、そしてもう1つが2014年の新国立劇場で観たカスパー・ホルテンさんの演出です。

 

どちらも非常にレベルが高く、思い出深い公演ですが、今回のドレスデン国立歌劇場の公演は、象徴性・幻想性では決定的と言っていいほど、大いなる感動を覚えました!2017年12月16日プルミエ、できたてホヤホヤの演出です。DVDが出たら、真っ先に買い求めたいと思います!コルンゴルト、最高!

 
 

 

(参考)コルンゴルト/死の都(今回の公演のダイジェスト)

https://www.youtube.com/watch?v=BWvIzuksKiY (3分)

ゼンパー・オーパーの公式動画より。この動画は今回の公演の状況をよく伝えています。こんなイメージでとても象徴的で幻想的で、そして感動的な公演でした。

 

(参考)2014.3.15 コルンゴルト/死の都(新国立劇場)

https://ameblo.jp/franz2013/entry-11801177617.html

 

 
 

さて、かなりの長編になりましたが、冬の旅行記の活動記録はこれで終わりです。後日にあと1本、旅行のまとめと振り返りなどの記事をアップして、旅行記は終了できればと思います。

 
 

 

 

(写真)終演後、オペラハウスの外に出ると、ライトアップされた美しいカトリック旧宮廷教会が目の前に迫ります。

 

 

(写真)ドレスデン中央駅に寄ったら、アルテマイスター絵画館のポスターが。とても魅了される絵です。

 

 

(写真)旅行も実質最終日、かなり疲れていたので、夕食は軽めに。でも、ドレスデンのビール、Radebergerだけは譲れません(笑)。今日のゼンパー・オーパーでの「天使」のコンサートとオペラは一生忘れないことでしょう。