一番の気懸りだった天候は曇り。
スタートは10時と遅目。前日エントリーし、スタート地点すぐ
そばに宿泊していた私達(スポーツクラブから参加の四人
ほぼ初対面)はレースを控えているとは思えない程だらだらと
しかし抜かりなくストレッチをしつつ過ごしていた。
9時になりやっと部屋をあとにしスタート地点へ。
先頭には緊張漲る入賞候補のランナー達も控えていたのだろうが、
4時間以上ランナー達のスタートは、ただの歩行者天国かのような
思い思いにてんでに歩き出すだけだ。
20K付近で湾内に正午のサイレンが響きわたる。
時計を見る習慣がないので、「2時間経ったんだな」と
初めて時間を意識する。程なくハーフ地点を通過したので
まずまずのペースと知る。
山間部で後ろから「○○さん(何故か下の名)」と声を掛けられる。
細かなアップダウンでかなり消耗していた時だったので
「そーだよ!」と投げつけるように返事。
また「○○さん(今度は苗字)」と再び声が。
「そーだよ(怒)!」訳もわからず振り返ると、そこには系列会社の
偉い人が。グループ内の走友会の代表で、投擲の種目で全国3位
というアスリートでもある。
(やばい)と思いつつもにこやかに
「今日は参加されなかったのですか?」と打って変わって
丁寧に尋ねる。「うん。応援だけだよ」
さすがに他のランナーを鮮やかに抜き去り、ばっちり写真を
撮ってくれた。熊でなくて良かったけど、Hさん、あんな所で
待ち伏せしていないで欲しい。
海岸線と2つの橋を廻るコースは地元の私でも惚れ惚れする
美しさである。
しかし美しいのは地上ばかりではなかった。曇りから陽射しが
強くなってくると、太陽の周囲に大きな虹の輪ができた。
淡い色合いだが大変美しい。そばにいた2、3人には伝えたが、
どの位の人が気付いただろう。
しばらくして晴れ渡ると虹は消えてしまった。
かなりの間、練習会でお馴染の石川遼似君と抜きつ抜かれつ
していたが、ある時「もうだめ、さようならあ」と宣言して先に
行ってもらう。
しかし、残り5Kで奇跡が。
脳内にエンドルフィンだかドーパミンだかが分泌されたらしく、
突然軽快に走れるようになり、もう最後なのでそのまま走り抜ける。
遼君にも追いついて抜いてしまう。
4時間前後のゴール付近は歩いている人の方が圧倒的に多い。
その中をすいすい走るのは快感だ。
ゴールでは最後のスパートまでできた。
体調の悪い中での参加だったので完走さえすればいーや、
と思っていたのだが、終わってみればそれなりの成果があった。
前回のマウイでは途中足に痙攣が起きて1時間程走れず、
歩いたのがとても悔しかったので、その後研究してカリウム
ナトリウム不足が有力だったので塩を意識して摂った。
今回はエイドに用意されていて良かった。
タイムは亀級だが、一度も歩くことなくゴールでき、満足だ。
翌日はのんびりプールで過ごす。
当分フルマラソンはいいや、とレース中、レース直後は思ってたけど…
この大会は第1回だが実は前身のハーフの大会があった。
その時に足湯で出会った野村萬斎似の青年に
「フルを走ってみたらいいですよ」と勧められ、初心者だった私は
「他人事だと思って気楽に言うなよな」と心中思ったけど、
今はしみじみその言葉の意味がわかる。
あの青年は今回の大会に出場していただろうか。