【設例】 30代・男性、投資の初心者です。
2024年から始まる新NISAに関連して、ネットでたくさん記事や動画を見かけるようになりました。
それを見て、まずは現行NISAから始めたいと思っています。
注意点がもしあれば教えてください。
【回答】 ご質問にお答えします。
新NISAに関し、私も時々ネットの記事や動画を参考にしていますが、制度自体の解説は、たいへん参考になるものが多いです。
一方、投資そのものの解説で少し気になっているのは、下記の2点です。
1.ファンドのおすすめが結論になっている
2.ほぼほぼ右肩上がりで増えていくような前提になっている
1について
何を選べばよいかわからない人は、とりあえず、インデックスファンドを選んでおけば無難という話までは良いと思うのですが、ファンドの話のみにとどまってしまうと、初心者の方は特に、「わかりました。じゃあインデックスファンドをただ買えばよいのですね。」という理解になりがちです。
貯蓄家から投資家に移行する段階の方は、特に、コストが安い、という点は心に響きやすいようです。
とはいえ、インデックスファンドは、決してリスクの低い金融商品ではありません。
国内外の株式型インデックスファンドは、2008年には急落で評価額が-50%前後になったこともあります。
-50%前後になった当時は、「値下がりしましたが、どうしたらよいでしょうか」という質問がネットのQ&Aにたくさん来ましたし、
「事前に聞いていた話が間違っていた」とご自身なりに判断し、売却してしまう人も少なくありませんでした。
他にも、長期投資を解説した書籍のレビュー欄がいわゆる炎上状態になる、週刊誌がまだまだ下がると不安をあおる、FPの中にも、「残念ながら私たちのアドバイスが間違っていました」と、記事に書いてしまう人が出てくる、といった当時の状況を思い出しました。
また、さらにまずいのは、値下がり局面で売却してしまったら、上昇後に再開しようという気持ちにはなりにくいことです。
それぞれ失敗を認めたくない気持ちがあるからです。
損失を確定させたうえで、回復局面でも利益をとれません。
つまり、投資リスクの管理方法や考え方について、ほとんど説明しないまま単純にファンドのみをおすすめしてしまうと、のちのち大惨事になる可能性が高いということです。
なので、個人的には、ファンド選択の話の前に、「計画」と「メンタル」の話に言及しないと、不完全なアドバイスになると考えています。
これは例えば車の安全運転についての説明に似ています。
ペーパードライバーの方は特に、車種にこだわりたくなる傾向がありますし、そのお気持ちもよくわかります。
ですが、車種以前に、「運転計画」と「メンタル」が安全運転に欠かせない要素であることは、ベテランドライバーなら知っています。
まず、「運転計画」は、車の仕組みや運転技術について、より深く学ぶ。事前に地図を開いて、ルートや所要時間を入念に確認する、といった作業です。
今の時代は、カーナビがあるとはいえ、この作業は必須です。
「メンタル」の部分は、例えば、ベテランドライバーに助手席に乗ってもらうと、ずいぶん安心感がでると思います。
免許取り立ての頃は、私もそうでしたが、運転に不慣れで不測の事態が起こると慌ててしまい、交通事故につながりやすいです。
実際、運転経験の少ない年齢層ほど、事故を起こしやすいという統計データもあるようです。
逆に少し慣れてくると、スピードの出し過ぎで事故を起こすケースなどもあります。
投資の世界でいえば、例えば、レバレッジ投信など、短期で必要以上のリスクをとってしまい、大事故につながるケースに似ています。
長期投資における安全運用も、車の運転と同じで、要素の大部分を占めるのは、事前の「計画」と「メンタル(感情のコントロール)」と覚えていただくとよいと思います。
ちなみにファイナンシャル・プランナーは、その名の通り、お金の計画をサポートする専門家です。
「計画」は、税制や社会保障制度などを含む、さまざまなお金の知識をもとにライフプラン・シミュレーション(お金の流れの試算)を実施し、
それをもとに、個別のリスク許容度をふまえて投資可能資金を割り出す。毎月いくらを投資で積み立て、何年後までにいくらを目指すのか。
目標利回りをどうして、株式と債券の割合はいくらずつで、リバランス(配分の見直し)をどのようなタイミングで実施するか。
具体的な数字で書き起こし、継続的なモニタリングを行い、出口戦略も想定する、などなどの作業をお手伝いします。
さらには、安全運用の伴走者として、「メンタル(感情のコントロール)」についてのサポートも実施します。
安全運用で最も重要な「計画」と「メンタル」についてまで言及してくれる記事や動画は、いまのところ私が見た中では、とても少なかったです。
もちろん、これまでに株価が絶好調だった局面もあるのですが、投資リスクがあることを十分理解し、安全運用を目指して、事前の計画をしっかりと立てることをおすすめします。