【設例】 20代、共働き夫婦です。
近々子どもが生まれる予定で7千万円のマンション購入を検討しています。
購入の場合は、返済期間50年のフルローンを予定していますが、完済時期が70歳代になってしまうため、将来的にマンションは売却することを想定しています。
この選択は、妥当と思われますでしょうか。
【回答】 ご質問にお答えします。
まず金利について、もし変動金利で組む場合は、金利が上昇した場合の負担増を考慮しなければなりません。
変動金利で7千万円を借りて、金利は仮に当初1.5%として、実際には、半年ごとに金利の見直しがありますが、便宜上、5年後にいきなり3%に上昇するシナリオを考えてみます。
なお固定金利は、市場の金利上昇予想などを反映し、現時点ですでに適用金利は3%を超えています。
変動金利も、実際にどうなるかはわかりませんが、5年後に3%まで上がるくらいの想定が無難と思います。
その場合、気にしなければならないのは、月々の返済額の内訳です。
具体的な計算は、下記となります。
当初5年間:月々16.6万(1か月目:利息8.8万、元本7.8万)
6年目から:月々20.7万(61か月目:利息16.3万、元本4.5万)
※125%ルールの適用あり
このシナリオの場合、当初5年間は、元本の返済がある程度まで進みますが、6年目以降は、利息ばかり払い元本がなかなか減りません。
元本が減らないことは、マンションがなかなか自分たちのものにならないことを意味します。
上記の通り61か月目は、利息だけで月々16.3万ですから、賃貸で月々16万程度を払うのとあまり変わらない話になります。
要するに、大家さんに16万を払うか、銀行に16万を払うかの違いだけで、払ったお金が資産にならないという意味では同じなわけです。
また購入の場合は、購入時の諸費用が掛かり、月々のローン返済とは別に、管理費・修繕積立金、固定資産税の負担も生じます。
但し、購入の場合は、税制面で住宅ローン減税、住宅取得資金贈与の特例を使えるメリットはあります。
上記の試算で、なんとか返済を続けられる見込みとして、将来的に売却を決断した時の売値がものすごく重要になります。
つまり、将来売却を前提とすると、自宅マンション自体が、投資商品のような位置づけになるわけです。
当然ですが、売却後に住む家も確保しなければなりません。
もちろん賃貸と購入、どちらが必ず有利とはいえません。
中古マンションの相場が想定より高く上昇することもありえますし、また住宅ローンの変動金利が下がるシナリオも、ありえなくはありません。
他にも、50代くらいで相続財産が突然入り、まとまった額の繰上げ返済をできてしまうなど、人生にはいろいろなことがあります。
ただ、ここでお伝えしておきたいのは、金利が上昇する時代に入ると、かつてのゼロ金利時代に常識化したフルローンの選択は、慎重にならざるをえないということです。
金融機関側のリスク管理上の都合もあり、今後は頭金を入れたうえで住宅ローンを組む流れが一般的になる可能性もあります。
・・・
ここまでの考え方を整理すると、購入なら将来的に自分たちのものになるから得、賃貸だと自分たちのものにならないから損と、直感だけで思い込まない方がよい、ということです。
仮に賃貸なら、金利上昇に伴う負担増は、大家さんに引き受けてもらえるとも考えられます。
大家さんから家賃値上げの打診が来たとしても、交渉が上手くいかなければ、引越すことも、購入よりは簡単にできます。
そもそもローンを完済している大家さんもいて、その場合は、借主・貸主ともに金利上昇の影響を直接受けることはありません。
なので、当面は賃貸で過ごし、たとえば10~15年後あたりの住宅購入を目指して、頭金づくりの積立投資をするのも、臨機応変な対応ができる意味で、わるくはない選択と思います。
一方で、親から資金贈与を受けられるケースなどは、早めに購入するメリットは大きいかもしれません。
最後に補足ですが、住宅の購入or賃貸は、もちろん、お金の損得だけでは計れない要素もあります。
購入と賃貸、どちらを選んでも、それぞれが貴重な人生経験になります。
ここではあえてお金の面だけで一般的な考え方を書いてみました。
【設例】 30代・駆け出しのFPです。
最近起業したばかりで、少しずつFP相談を受け始めているところです。
経験上、FP相談で気を付けた方がよいポイントなどはありますか。
【回答】 ご質問にお答えします。
最近特に気を付けていること。
それは、特定の立場の人や特定の商品・サービスの悪口は言わない、ということです。
FP相談の経験を積んでいく中で、必ず守らなければいけないルールと実感するようになりました。
なぜ良くないのかというと・・・人の悪口は、自分に返ってくるからです。
対象となる人がいないところで悪口を言っていたら、自分も見えないところでは言われているのかな、と不安にさせてしまうと思います。
たとえば、商品販売にかかわるFPに近付いてはいけないとか、特定の金融商品や保険商品について選んではいけないものと決めつけるのは、よくないと考えています。
私自身、FP相談内で思わず口にしてしまうこともありますが、そんな時は、まだまだ修行が足りないな、と反省をします。
仮に自分なら選ばないな、と思う選択であっても、ひとつでも長所を見つけて説明するよう今は心掛けています。
どんな商品・サービスにも、売れる商品を作ろうとか、喜んでもらえるサービスを作ろうとか、作った人たちの想いは少なからずあるはずです。
その選択についての長所、短所を丁寧に説明するよう意識しています。
ただし、明らかに詐欺的な要素のある選択肢などは、理性的な忠告を行います。
理性的な批判は、もちろん必要です。
また、手数料が高い商品・サービスも悪く言われがちですが、実際、その商品や担当者が合っている人もいるわけですし、料金に高い・安いがあるのは、たとえば飲食、宿泊等のサービスも同じです。
どんな商品・サービスも、価格と価値を天秤にかけて選ばれています。
すべての消費者が騙されて買わされているわけではありません。
社会全体の視点で見れば、経済的余裕のある方が付加価値の高い商品・サービスを選ぶことで経済効果を生み出していると言えます。
高給取りの金融機関の社員も、その分、多額の税金や社会保険料を国に収めることになり、税収等を通じて国全体が恩恵を受けています。
ただ、意図的に誤認させるような本当に悪質な金融営業の事例も報道等で時々見聞きすることがあり、注意は必要です。
一方で最近は、AIにお金の相談をする人も増えているようです。
日々進化するAIが、さまざま選択の長所・短所を瞬時に表示してくれるので、判断材料として少なからず役立っているようです。
もちろん、FP側も業務でAIを活用しています。
私自身は、特に調べもので活用していますが、作業時間が圧倒的に短縮されていると実感します。
一人では忘れていたポイントなども気付かせてくれる役割となっています。
ただ、AIを使いこなすには、質問の仕方に少し工夫が必要なように思います。
ある程度の予備知識がないと、的確な回答を引き出しにくいです。
個人的な体験としては、専門分野以外のPC周辺機器の選択でAIを利用し、失敗したことがあります。
家電量販店のものすごく詳しい店員さんと話しているかのような説明を受けて、通販でその商品を買ってみたのですが、こちらで事前に想定した使い方が難しかったという経験があります。
おそらく質問の仕方が上手くなく、実際にその商品を使ったことのある人であれば、すぐに気づく初歩的な落とし穴に気付けませんでした。
他にも、医療情報の収集で、AIの回答やネット検索だけではわからなかったことが、お医者さんに聞いて初めてわかったという経験もあります。
なのでお金の相談も同様、一般の方が単独でAIを利用するよりも、特に重要な判断については、FPと一緒にAIを利用する形式の方がよいのではないかと考えています。
・・・
最後に、これからFP相談業を始める方にお伝えしたい内容を整理します。
正直、私自身、相談経験が少ない頃は、相談時間の途中で何らかの不満があって帰られた方も、100名に2名くらいの割合でいらっしゃいました。
たまたまその方の機嫌がわるかった可能性もありますが、話し方で配慮が足りなかった可能性もあります。
経験から言えるのは、商品やサービス、選択肢の欠点ばかり指摘するより、長所を探す方が楽しく、聞く方も心地よいということです。
一方、過去の相談経験の中で、90分あっという間に時間が過ぎました、と感想をいただいたこともあり、これは成功だったなと感じる瞬間でした。
ここでふと思い出したのは、相談実務のイロハを教わったFPの先輩が、自分はFP相談サービスでディズニーランドを目指している、と話していたことです。
当時は、言っている意味がよくわからなかったのですが、いまだに記憶に残っており、ニュアンスとしては、わかるような気がします。
FPに相談して良かった、楽しかったと思ってもらえるFP相談サービスを提供できるのが、やはり理想と思います。
そんなサービスをFP業界全体で作っていけたらと思います。
【設例】 50代前半の男性です。
少子化が進み、公的年金制度が今後も本当に成り立つのか疑問があります。
公的年金制度は、将来どのようになると思われますか。
【回答】 ご質問にお答えします。
昨年(令和7年)の出生数は約67万人と、昭和48年の約209万人と比べ3分の1にまで減少しており、公的年金の「世代間扶養」の仕組みは確かに難しくなりそうです。
特に40代・50代のいわゆるロスジェネ世代が65歳以上になると、より厳しくなるはずです。
65歳から公的年金だけで生活できる給付水準を維持しようとすれば、若者の社会保険料負担が重くなり過ぎます。
なので同世代間の支え合いも今後必要になると予想しています。
安心材料は、今のところ日本国民全体としては、世界的に見てかなりのお金持ちだということです。
日本の個人金融資産(2386兆円)を総人口で単純に割ると、国民一人当たり約1900万円となり、ロスジェネ世代が引き継ぐ相続財産もそれなりに大きいです。
理にかなった変更を行うことで、公的年金制度の維持は可能と思われます。
・具体的にどのような状況が想定されるのか
少子化がこのまま進んだ場合、端的に言って、公的年金の額は減ることになると思います。
物価の上昇に対して、公的年金の額が追い付かない状況もこれに含まれます。
国債の増発とか、GPIF(年金資金の運用を行う公的機関)の運用益である程度まで穴埋めするとしても、過度な期待はできません。
65歳からの受給額が下がるため、政府としては、なるべく長く働いて、状況により繰下げ受給を選択してください、と呼びかけるのではないかと思います。
たとえば受給開始時期を65歳から75歳まで繰り下げれば、現行のルールで年あたりの受給額は184%までアップします。
また、消費税の増税も将来的に議論されるかもしれません。
消費税は、現役世代だけでなく、リタイア世代にも負担してもらえるという理由からです。
今現在でも、OECDという国際機関から日本は消費税を段階的に18%まで引き上げるべきと勧告を受けています。
もし本当に消費税18%が実現してしまったら、老後の生活はさらに厳しくなります。
なので、今40代・50代の人たちは、70歳とか75歳まで働く状況を今から想定して準備しておくか、自分年金づくりに取り組むことが重要になりそうです。
・老後までに資産形成が上手くいかなかった場合や、高齢で働くのが難しくなってしまった場合はどうなるのか
仮にそうなってしまった場合も、国から見捨てられることはないと思います。
健康で文化的な最低限度の生活は、日本国憲法で保障されているからです。
その意味では、過度な不安は持たなくて大丈夫かと思います。
とはいえ、老後の取崩し生活に入り、貯蓄の底が見えてくると、さすがに不安になります。
いろいろと頑張っているのに、家計のやりくりが厳しくなる世帯は、将来的に必ず出てきます。
誰にでも起こりうることなので、やはり一定の支援策は必要になるのかと思います。
・具体的にどんな支援策が考えられるのか
報道によると、中低所得の勤労者については、野党も参加する国民会議で「所得連動給付」の2029年度からの本格導入が合意された模様です。
ただ、この「所得連動給付」は、あくまで勤労者が対象で、年金受給者は働いていなければ対象外とのこと。
年金受給者については、将来的に「資産連動給付」、すなわち貯蓄が底をつきかけている世帯の支援策を中心に議論した方がよいのではないか、と個人的には思っています。
逆に現役世代に「資産連動給付」はそぐわないと思います。
資産形成期にあるにもかかわらず、意図的に資産を減らす行動につながるためです。
ここでは、75歳以上をイメージしますが、従来のような住民税非課税世帯を対象とした給付ではなく、「資産連動給付」を導入すれば、保有する金融資産が1億円でも対象になるといったケースがなくなり、支援策に矛盾がなくなります。
本当は、今からでも貯蓄が底をつきかけている高齢者世帯の支援は議論した方がよいのかもしれません。
最近は特に物価高の影響で家計が苦しいはずだからです。
一方、金融資産が潤沢な高齢者世帯は金利上昇の恩恵を受けています。
たとえば、3000万円の貯蓄があり、税引後1%の利息を受け取れるとすると、年30万円が給付金代わりになります。
つまり、高齢者世帯で支援の必要性が高いのは、金融資産が少なめの世帯ということです。
・金融資産が少なめの世帯をどうすれば把握できるのか
マイナンバーと紐づけて、すべての国民の資産状況をきめ細かく把握し、プッシュ型で給付金を配れるのが理想ですが、そのような仕組みの実現は、遠い将来の話かもしれません。
もし近未来に実現可能な方法を探るなら、個人的には自己申告制だと思います。
一例として、失業保険も勤労収入が無いことを自己申告することで給付金を受け取れる制度です。
老後に入り、手元資金が心もとなくなってきた段階で、金融資産が無い、あるいは、少ないことを自己申告してもらい、マイナンバーと銀行口座の紐づけを了承の上、給付金を受け取れる仕組みであれば、いちおう実現可能なはずです。
ただし、モラルの問題が生じます。
たとえばタンス預金とか、金庫にある貴金属などは、自己申告がなければ行政側で把握できません。
その場合も、ご本人の口座の動きを見させてもらえば、派手な生活をしていないとか、たくさんお金を持っていないことは大体わかるような気がします。
それにロスジェネ世代が65歳以上になる頃には、いちいち人の目でチェックしなくても、おかしな口座の動きがあれば、瞬時にAIから報告があがるような仕組みを作れるかもしれません。
もし不正受給が発覚した場合は、失業保険のルールと同じように「3倍返し」のペナルティ適用などが考えられます。
・・・
まとめますと、少子化の進行により、下の世代が上の世代を支える「世代間扶養」の仕組みは、どこかで限界を迎え、「同世代間の支え合い」も必要になるのではないか、ということです。
具体的に言うと、全体としては公的年金の目減りを受入れて、本当に困っている世帯や困り気味の世帯については、上乗せの給付金等で支援する形です。
ただ、支え合いの仕組みの支える側に回る人がいなければ、社会保障制度は成り立ちません。
その意味でも、手元資金が比較的潤沢な方は、今からしっかり資産運用に取り組んだ方がよいと思います。
たとえば海外の債券や株式で運用すれば、もちろん価格変動リスク等を伴いますが、外国企業などのもうけの一部を利息や配当、値上がり益として、国内に取り込める可能性があります。
いろいろと簡単ではありませんが、ゲームと同じで簡単にクリアできない課題があるからこそ、人生は面白いといえます。
未来において、どうしたら上手くいくかを考える方が楽しい時間を過ごせると思います。