【設例】 50代前半の男性です。
少子化が進み、公的年金制度が今後も本当に成り立つのか疑問があります。
公的年金制度は、将来どのようになると思われますか。
【回答】 ご質問にお答えします。
昨年(令和7年)の出生数は約67万人と、昭和48年の約209万人と比べ3分の1にまで減少しており、公的年金の「世代間扶養」の仕組みは確かに難しくなりそうです。
特に40代・50代のいわゆるロスジェネ世代が65歳以上になると、より厳しくなるはずです。
65歳から公的年金だけで生活できる給付水準を維持しようとすれば、若者の社会保険料負担が重くなり過ぎます。
なので同世代間の支え合いも今後必要になると予想しています。
安心材料は、今のところ日本国民全体としては、世界的に見てかなりのお金持ちだということです。
日本の個人金融資産(2386兆円)を総人口で単純に割ると、国民一人当たり約1900万円となり、ロスジェネ世代が引き継ぐ相続財産もそれなりに大きいです。
理にかなった変更を行うことで、公的年金制度の維持は可能と思われます。
・具体的にどのような状況が想定されるのか
少子化がこのまま進んだ場合、端的に言って、公的年金の額は減ることになると思います。
物価の上昇に対して、公的年金の額が追い付かない状況もこれに含まれます。
国債の増発とか、GPIF(年金資金の運用を行う公的機関)の運用益である程度まで穴埋めするとしても、過度な期待はできません。
65歳からの受給額が下がるため、政府としては、なるべく長く働いて、状況により繰下げ受給を選択してください、と呼びかけるのではないかと思います。
たとえば受給開始時期を65歳から75歳まで繰り下げれば、現行のルールで年あたりの受給額は184%までアップします。
また、消費税の増税も将来的に議論されるかもしれません。
消費税は、現役世代だけでなく、リタイア世代にも負担してもらえるという理由からです。
今現在でも、OECDという国際機関から日本は消費税を段階的に18%まで引き上げるべきと勧告を受けています。
もし本当に消費税18%が実現してしまったら、老後の生活はさらに厳しくなります。
なので、今40代・50代の人たちは、70歳とか75歳まで働く状況を今から想定して準備しておくか、自分年金づくりに取り組むことが重要になりそうです。
・老後までに資産形成が上手くいかなかった場合や、高齢で働くのが難しくなってしまった場合はどうなるのか
仮にそうなってしまった場合も、国から見捨てられることはないと思います。
健康で文化的な最低限度の生活は、日本国憲法で保障されているからです。
その意味では、過度な不安は持たなくて大丈夫かと思います。
とはいえ、老後の取崩し生活に入り、貯蓄の底が見えてくると、さすがに不安になります。
いろいろと頑張っているのに、家計のやりくりが厳しくなる世帯は、将来的に必ず出てきます。
誰にでも起こりうることなので、やはり一定の支援策は必要になるのかと思います。
・具体的にどんな支援策が考えられるのか
報道によると、中低所得の勤労者については、野党も参加する国民会議で「所得連動給付」の2029年度からの本格導入が合意された模様です。
ただ、この「所得連動給付」は、あくまで勤労者が対象で、年金受給者は働いていなければ対象外とのこと。
年金受給者については、将来的に「資産連動給付」、すなわち貯蓄が底をつきかけている世帯の支援策を中心に議論した方がよいのではないか、と個人的には思っています。
逆に現役世代に「資産連動給付」はそぐわないと思います。
資産形成期にあるにもかかわらず、意図的に資産を減らす行動につながるためです。
ここでは、75歳以上をイメージしますが、従来のような住民税非課税世帯を対象とした給付ではなく、「資産連動給付」を導入すれば、保有する金融資産が1億円でも対象になるといったケースがなくなり、支援策に矛盾がなくなります。
本当は、今からでも貯蓄が底をつきかけている高齢者世帯の支援は議論した方がよいのかもしれません。
最近は特に物価高の影響で家計が苦しいはずだからです。
一方、金融資産が潤沢な高齢者世帯は金利上昇の恩恵を受けています。
たとえば、3000万円の貯蓄があり、税引後1%の利息を受け取れるとすると、年30万円が給付金代わりになります。
つまり、高齢者世帯で支援の必要性が高いのは、金融資産が少なめの世帯ということです。
・金融資産が少なめの世帯をどうすれば把握できるのか
マイナンバーと紐づけて、すべての国民の資産状況をきめ細かく把握し、プッシュ型で給付金を配れるのが理想ですが、そのような仕組みの実現は、遠い将来の話かもしれません。
もし近未来に実現可能な方法を探るなら、個人的には自己申告制だと思います。
一例として、失業保険も勤労収入が無いことを自己申告することで給付金を受け取れる制度です。
老後に入り、手元資金が心もとなくなってきた段階で、金融資産が無い、あるいは、少ないことを自己申告してもらい、マイナンバーと銀行口座の紐づけを了承の上、給付金を受け取れる仕組みであれば、いちおう実現可能なはずです。
ただし、モラルの問題が生じます。
たとえばタンス預金とか、金庫にある貴金属などは、自己申告がなければ行政側で把握できません。
その場合も、ご本人の口座の動きを見させてもらえば、派手な生活をしていないとか、たくさんお金を持っていないことは大体わかるような気がします。
それにロスジェネ世代が65歳以上になる頃には、いちいち人の目でチェックしなくても、おかしな口座の動きがあれば、瞬時にAIから報告があがるような仕組みを作れるかもしれません。
もし不正受給が発覚した場合は、失業保険のルールと同じように「3倍返し」のペナルティ適用などが考えられます。
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まとめますと、少子化の進行により、下の世代が上の世代を支える「世代間扶養」の仕組みは、どこかで限界を迎え、「同世代間の支え合い」も必要になるのではないか、ということです。
具体的に言うと、全体としては公的年金の目減りを受入れて、本当に困っている世帯や困り気味の世帯については、上乗せの給付金等で支援する形です。
ただ、支え合いの仕組みの支える側に回る人がいなければ、社会保障制度は成り立ちません。
その意味でも、手元資金が比較的潤沢な方は、今からしっかり資産運用に取り組んだ方がよいと思います。
たとえば海外の債券や株式で運用すれば、もちろん価格変動リスク等を伴いますが、外国企業などのもうけの一部を利息や配当、値上がり益として、国内に取り込める可能性があります。
いろいろと簡単ではありませんが、ゲームと同じで簡単にクリアできない課題があるからこそ、人生は面白いといえます。
未来において、どうしたら上手くいくかを考える方が楽しい時間を過ごせると思います。
【設例】 20代の子を持つ親です。
少子化が進み、2025年に日本で生まれた日本人の赤ちゃんは、約67万人と10年連続で過去最少を更新したとのこと。
少子化問題は「静かなる有事」ともいわれていますが、FP視点でどのような要因が考えられるでしょうか。
【回答】 ご質問にお答えします。
FP視点としては、現役世代の次の3つの負担の重さが少子化の要因と考えています。
住居費・教育費・社会保険料
1.住居費
たとえば東京23区内の新築マンションは、平均価格で1億円を超え、パワーカップルのようなご夫婦でないと、なかなか手の届かない水準になっています。
都心を回避したとしても、子どもを育てるためには、ファミリータイプの住居を確保しなければなりません。
仮に3LDKくらいの住居とすると、1LDKなどの単身世帯用と比べて、少なくとも1千万円、地域によっては、2千万、3千万…と上乗せして購入しなければなりません。
そこが大きなネックになっているとみています。
月1万円程度の児童手当では、とてもまかなえません。
2.教育費
大学進学費用が特に重いです。子ども一人あたり数百万円のイメージです。
最近になり、多子世帯の大学無償化枠も拡充されましたが、よく調べると、3人以上の子どもの同時扶養が条件になるなど複雑で、ぴったり当てはまらないと支援の対象にならないようです。
他に給付型奨学金などもありますが、条件をよく調べる必要があります。
これから親になろうとする人が、大学進学までの費用負担を考え、お子さんをあきらめてしまうケースはあるのかもしれません。
3.社会保険料
30代までの会社員の社会保険料は、平均的な給与の場合、会社負担分と自己負担分の合計で年収の約30%です。
また、消費税など税金の一部も、社会保障費に充当されており、税・社会保険料を合わせた国民負担率は、2026年度の見通しで45.7%にもなります。
そのため現役世代の手取収入が少なくなり、経済面の見通しから結婚に進めない状況があるのかもしれません。
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では、少子化問題の解決策はあるのでしょうか。
現状、政策として提示されている解決策は、夫婦共働き、いわゆる2馬力の働き方です。
ただそれだと、子どもをどこかに預けなければならず、仕事・家事・育児で自分の時間が取れなくなるため、なかなか大変です。
他にもし解決策があるとしたら、個人的には「昭和モデル」を採用することだと思います。
まず、子だくさんだった昭和の時代は、上記の問題にどう対処していたのか、そして令和の今どんな解決策があるかを考えます。
1.住居費の負担軽減
昭和の時代は、公営住宅が「団地」として大量供給されました。
昭和モデルにならい、令和の今、子育て世帯向けの公営住宅を大量供給するのも一案かと思います。
それにあと10年ちょっとで日本の人口は、約1千万人の自然減となる見込みです。
人口減少に伴い、空家も増えるはずなので、政府の予算で古い住宅に耐震補強を実施し、部屋のリフォームをしたうえで子育て世帯向けに手頃な家賃で貸し出すのはどうかと考えます。
また、現物給付であれば、親の遊興費等に流用される心配もありません。
2.教育費の負担軽減
昭和の時代は、中卒・高卒が標準の学歴でした。
今は、男女とも4年制大学に進学するケースが増えており、親の負担が重くなっています。
また、子どもが社会に出るのが遅くなるため、晩婚化も進み、晩婚化は次の世代の少子化にもつながります。
そこで昭和モデルを採用し、あくまで高卒を標準の学歴とするのはどうかと考えます。
企業の採用活動で、学歴による門前払いをしないルールを設ければ、少し変わってくるのではないでしょうか。
偏差値の話でいえば、高校にも難関校はあるので、採用側もそれで学力は測れます。
もちろん、昭和の時代も大卒を目指す人はいましたし、大学は必要ですが、全員ではなく、行きたい人がいく場所であってもよいかもしれません。
あるいは、大学を社会人でも学べる生涯学習の場とする方向性もあると思います。
3.社会保険料の負担軽減
昭和の時代は、社会保険料が今よりも安かったです。
現在の社会保険料は、上に書いた通り約30%、国民負担率でみると約45%ですが、昭和45年から昭和60年あたりまで、社会保険料は10%から20%程度、国民負担率は25%から35%程度で推移していたようです。
つまり昔は、年収の10%から20%程度が今よりも多く手取りとなっていたわけです。
ちなみに昭和の時代に介護保険制度はなく、消費税もありませんでした。
その分、年金・医療・介護などの社会保障は、手薄になります。
手薄だからこそ「自分で子どもを持たなければ、老後は誰が面倒を見てくれるのだろう」という思いが少なからずあったと推察します。
今は「老後は国が面倒を見てくれる」という感覚なので、「だったら、子どもはいいね」となっているのかもしれません。
昭和モデルを採用するなら、社会保障制度は、「老後の悠々自適を支える制度」から「最低限の生活保障」に変えていく必要があると考えます。
・・・
いろいろと書きましたが、昭和モデルに回帰することは、もしできるとしても一朝一夕には難しく、現実には困難な部分もあります。
なので、お子さんを持ちたいご家庭は、やはり個人で工夫を考える必要があります。
多くのFPは、上記3つの負担をどうまかなうかの工夫を一緒に考えています。
資産運用の勉強をすることも一つでしょうし、住まいについて工夫をすることも一つ。
それ以外にも、親子間の贈与による方法など、いろいろな工夫が考えられます。
FPは、お一人お一人が望む未来を実現するため、経済面での知恵を出し、伴走者としてお手伝いをしています。
【設例】 東京都在住40代自営業。家族は妻と子供1人です。
おかげ様で仕事は順調で、家計にも少し余裕が出てきました。
国の社会保障制度は、あまり当てにできなさそうなので、そろそろ自分でiDeCoに加入しようと思っています。
ところでiDeCoは、どこか新しい制度の響きがありますが、昔からあったのでしょうか。
【回答】 ご質問にお答えします。
iDeCoは昔からありました。2002年からです。
ただ、iDeCo(イデコ)と愛称が付いたのは、2016年です。
正式名称は、昔も今も「個人型確定拠出年金」です。
ちなみに自営業者(第1号)のiDeCo加入者は、2016年12月末の約7.7万人から2026年3月末の約40万人と約5倍に増えています。
その間、制度全体としては対象者の拡大などがありましたが、自営業者向けとしては、2016年から大きな変更はありません。
なので、単純に認知度が上がったのだと思います。
「個人型確定拠出年金」というお堅い名称も普及を阻む一因だったのかもしれません。
1.まず、名称が長い
どこで聞いた知識か忘れてしまいましたが、人間の脳は構造として、人の顔はほぼ無限に覚えられるが、人の名前を覚えるのは限界があるそうです。
実際、フルネームで人の名前を覚えるのは、意外と難しく、苗字だけしか思い出せないことも多いです。
芸能人でも覚えやすさを意識し、あえて下の名前だけで活動している人もいます。
それと同じで「個人型確定拠出年金」という言葉は、よほどの関心がないと、覚えにくいですが、iDeCo(イデコ)と短くすることで認知度を高められたのかもしれません。
2.専門用語が含まれている
「確定拠出」と「確定給付」の概念の違い、「企業型」と「個人型」の2種類あることなどを考慮すると、「個人型確定拠出年金」が正確な表現です。
ただ、専門知識がないと、やや馴染みにくく、一般の方には、なにやら難しい、自分には関係のない制度と認識されていた可能性もあります。
3.既にある知識と関連付けられない
人の名前を覚えるのに、たとえば有名人と同じ苗字だったりすると、関連付けて覚えられることがあります。
それと同じでiDeCoの名称は、既に2014年から導入されていたNISA(少額投資非課税制度)と関連付けて覚えやすかったのではないかと思います。
「個人型確定拠出年金」だと、どんな性質のものかイメージしづらいですが、既にNISAを知っている人であれば、性質が似たものとしてセットで覚えられる効果があったと思います。
・・・
他にも、お堅い名称として思いつくのは、今政府が導入を検討している「給付付き税額控除」です。
個人的には、きちんと整備した方がよい仕組みと考えていますが、上記と同じ理由で、世間一般には言葉の意味が浸透していないようです。
特に「負の所得税」の概念がわかりにくいです。
また「税額控除」と「所得控除」の違いなど、専門家でなければ馴染みが薄いマニアックな論点もあります。
なので個人的には、いっそのこと「ベーシックインカム」と表現すれば良いのではと思っています。
というのも、日本では「ベーシックインカム」の導入は困難だが、「給付付き税額控除」なら実現できるかもしれない、と昔から言われていた仕組みだからです。
報道されている通り、税額控除なしの「給付一本化」でまとまるのであれば、言葉の違和感もありません。
いずれにしても、ネーミングはすごく大事です。
たとえば東京都の「018サポート」も、ネーミングで上手く浸透した事例と思います。
また世の中には「独身税」とか「NISA貧乏」のように、伝わりやすさを意識して、短く表現できるネーミングの達人がいらっしゃるようです。
「給付付き税額控除」もiDeCoと同様、ネーミングの達人を探して依頼するとか、名称を公募するとか、何らかの工夫が必要になるのかもしれません。