森本FP事務所のQ&Aブログ

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資産運用・家計・ライフプランの疑問・質問にお答えしています。

【設例】 40代・女性です。
政治の状況が変わり、給付付き税額控除の導入が本格的に検討されるとの話を聞きました。
給付付き税額控除とは、どういう制度なのでしょうか。
わかりやすく教えてください。

【回答】 ご質問にお答えします。
給付付き税額控除は、話題になっているけど、なんだか難しい、消費税減税の方がシンプルでわかりやすいのでは?
という意見も多いようですが、基本的な考え方は、そんなに難しくないと思います。

まず「税額控除」の意味ですが、すでにある制度では、住宅ローン控除が有名です。

ただし住宅ローン控除は、所得税から控除しきれない場合は、住民税からも一定の計算で控除できるなど、説明が少しややこしくなります。

ここでは説明上、所得税からのみ税額控除を受けられるシンプルな制度を想定してみます。

税額控除は、仮に20万円とします。

その税額控除の制度では、例えば源泉所得税を10万円しか払っていない人だと、年末調整などで10万円の還付金は受けられますが、残りの10万円を受取る権利は消えてしまいます。

そこで「給付付き」という案が出てくるわけです。

上記の例では、残りの10万円も給付金として税の仕組みから受取れます。

元々ある、税の手続き(年末調整または確定申告)に組み込めば、新たな事務コストも従来の給付金に比べれば少なくなると考えられます。

役所が給付金のためだけに個別に対象者を抽出して郵便物を送り、返信用封筒で申請してもらうといった面倒さはありません。

また、給付付き税額控除の利点は、給付の対象者をきめ細かく絞り込めるところです。

従来の給付金は、全国民一律か、住民税非課税世帯かのほぼ二択しかありませんでした。

例えば、年金暮らしで収入は少ないが、金融資産は1億円持っているというケースでも給付金を受取れるので、単純にその世帯の貯蓄が少し増えるだけという不思議な施策になりがちでした。

実際に住民税非課税世帯として給付金を受け取ったことのある年金暮らしの方(例えば、遺族年金受給者など)の中には、
「もらえるのはありがたいけど、本当に困っている人がいたらそちらに回した方がよいのでは?」
といった感想を抱いている方も少なくないとみられます。

新たな枠組みの給付金は、個人的には、例えば、人々の暮らしに必要不可欠な仕事なのに、報われにくいエッセンシャルワーカーの方々に行き渡る感じがよいのではないかと考えています。

具体的には、医療、介護、保育、清掃、小売、物流などの業界で働く方々です。

これらの業界は、時給制のパート、アルバイトで働く方も比較的多い傾向にありますので、上手く制度設計をすれば、社会保険の“働き損”の壁(いわゆる年収の壁)問題も緩和または解消できるかもしれません。

例えば、一定以上の勤労所得がある人に対象を絞って、給付する案もありえるのではないかと個人的には考えています。

“働き損”の壁を“働き得”の壁に変換する、というわけです。

具体的な制度設計は、これからとのことですが、就労意欲が高まるような制度設計にもできると思います。

今後の議論の行方を見守りたいと思います。
 

【設例】 30代・女性です。
この前の参院選挙で政府からの給付金の話がありました。
物価高対策として実施されるのでしょうか。
仮に実施されないとしても、消費税の減税など期待できますか?

【回答】 ご質問にお答えします。
現金給付の公約は、確かにありましたが、その後自民党の総裁選挙があり、いったん立ち消えになったようです。

仮に実施できたとしても、全国民一律の給付金は元々一人2万円という話でした。

消費税の減税は、多少は可能性がありますが、税収全体を大きく減らす改正はおそらく難しいのではないか、と個人的にはみています。

というのも、政府の借金がすでに1000兆円を超えていて、さらに今後、少子高齢化の中で公的年金の給付など続けていかなければならず、財政的にかなり厳しいからです。

巷でよくいわれる政府が国債を増発し、その国債を日銀が通貨(円)を発行して市中から買入れる方法も、市中に通貨があふれすぎてインフレ(物価高)が加速してしまう可能性があります。

とはいえ、日本という国全体がお金に困っているわけではありません。

戦後の焼け野原になった時代とは異なり、今のところ国民はお金持ちです。

具体的に、日銀の資金循環統計によると個人金融資産は、全体で2239兆円(2025年6月時点)もあり、国民一人当たりに換算すると約1800万円です。

ここで理解したいのは、次の関係です。

・誰かの負債は、誰かの資産

・誰かの支出は、誰かの収入

今のところ政府の負債(約1千兆円)の大半は、同時に国民の金融資産(約2千兆円)の一部でもあります。

もうひとつ重要な着眼点は、誰かの支出は、誰かの収入です。

例えば、企業の支出は、個人の収入、個人の支出は、企業の収入という流れがあります。

卵が先か、ニワトリが先かの議論もありますが、景気が良くなるためには、民間部門のお金が上手く回転する必要があります。

ここでは話を単純化するため、国内だけでお金が回っていると仮定しますが、例えば、企業が設備投資や研究開発、雇用を増やしたりして、魅力的な商品、サービスを開発。

個人消費が活発になり、企業の売上が増えて、雇用も増える、賃金も上がるといった好循環が理想です。

とにかく民間がたくさんのお金を持っているので、民間部門のお金の好循環が始まると良い傾向になります。

また、お金の好循環が生まれるためには、投資も必要です。

例えば、株式投資が増えて、株価が上がると、新しくプロジェクトを始めたい企業が資金調達をしやすくなり、お金が動き始めます。

では、そのプロジェクトが失敗したらどうなるのかです。

新たなチャレンジをして失敗すると、確かにその企業は場合により倒産してしまうかもしれません。

ですが、国全体としての好循環は続きます。

というのも、誰かの支出は、誰かの収入ですから、仮に失敗したとしても、その支出がどこかに蒸発してしまうわけではなく、外注先など、誰かの収入になるからです。

失敗したその挑戦者も、失敗経験という財産が増えます。

つまり仮に失敗しても、自然環境を大きく破壊しない限り、国全体として無駄にはならないわけです。

失敗しても、再チャレンジできる環境があれば成長を続けられます。

例えば、高度経済成長の時代は、松下幸之助さんや本田宗一郎さんみたいな挑戦者たちがいて、活気にあふれていました。

まとめますと、政府からの全国民一律の給付金は、あまり期待しない方がよい(あっても一人2万円など)、消費税の大幅な減税もおそらく難しい。

一方、民間部門にはたくさんのお金(個人金融資産2239兆円など)があり、そちらで経済を回すのが現実的ということです。

具体的には、民間企業で働く、株式投資をする、起業をする、などの方法が、政府からの給付金よりも大きな収入を期待できるルートとして考えられます。

今後の家計を考える上での参考になれば幸いです。

 

【設例】 40代・女性です。
ある勉強会で長期分散投資の考え方を学びました。
時間を味方につける資産運用は確かに上手くいきそうと思いました。
いまのところ全くの初心者ですが、どのような形で始めるのがよいでしょうか。
中立的な視点のアドバイスをお願いします。

【回答】 ご質問にお答えします。
長期分散投資の考え方は、色々な場所で勉強会が開かれていて、NISA(ニーサ)やiDeCo(イデコ)の拡充をきっかけに、日本でもだいぶ浸透してきたようです。

長期分散投資を始めるにあたり選択できる金融商品(サービス)は、個人的には、大まかに2つのグループに分かれると考えています。

Aグループ
インデックス型の投資信託、ETF(上場投資信託)、個別株式など

Bグループ
アクティブ型の投資信託、ファンドラップ、ロボアドバイザーなど

Aグループは、ネット証券でご自身で取引したい人向けの金融商品、Bグループは、プロに依頼(相談)したい人向けの金融商品(サービス)という位置づけです。

Aグループは、要するに素材です。いわゆるDIYのイメージでネット証券でご自身で仕入れて組み立てることが可能です。

Bグループは、素材の仕入れから組み立てまでプロにお任せする、あるいは、プロと相談しながら組み立てるイメージです。

Aグループは、最近は特にローコスト化が進み、ネット証券の活用により手数料は、ほぼゼロに近づいています。

一方、Bグループは、プロのサポートを受ける前提なので、もちろん会社ごとに異なりますが、運用資産額に対して年1%程度の手数料が上乗せされることが多いです。

日本では、年1%の負担というと、めちゃくちゃ高い印象になりがちですが、米国などでは、比較的普通に受け入れられているようです。

というのも、例えば米国の政策金利は、今だと4.5%なので、要するに年4%程度の資産運用は、当たり前にできる世界です。

年1%を負担しても、それを上回る成果やメリットを期待できると考える人が一定数いても不思議ではありません。

一方、日本は、当たり前に運用できるレートがほぼ0%の時代が長く続いたので、年1%の負担は重く感じやすいです。

とはいえ、過去20年くらいを振り返ると、日本でも長期分散投資の取り組みで結果的に年4%超の運用は十分可能でした。

長期分散投資の考え方が、今後も広く普及すれば、プロに依頼(相談)するBグループを選ぶ方は増えてくるかもしれません。

ただし、Bグループは運用の巧拙やアドバイスの質で成果やメリットは大きく変わるので、選ぶのは少し難しい部分もあります。

実際、FP相談でお話を伺うと、既にスタートしている方は、Aグループのインデックス型を選んでいるケースが多いです。

まとめますと、プロに依頼(相談)したい人は、年1%程度の手数料負担となることが多い。

自分でできる人は、ほぼ0%の手数料に近づいている、ということです。

AグループとBグループは、そもそもの性質が異なるので、単純比較が難しい場合もありますが、それぞれの特色をよく理解して、ご自身に合った選択をしてみてはいかがでしょうか。

いずれにしても、商品(サービス)自体をやみくもに信じるのではなく、長期分散投資の考え方を知り、学んだことが原点にあると忘れないでください。

あくまで金融商品は「素材」なので、その「素材」をご自身の運用計画にしたがい「組み立てる」感覚が大事という意味です。