【設例】 年収600万円の30代・会社員。
住宅ローンの返済、子どもの教育費などがあり、手取の中で家計をやりくりするのが大変です。
NISAやイデコなどによる資産形成も難しい状況です。
父母や祖父母からの経済的支援も受けられません。
この状況をどう打開していけばよいと思われますでしょうか。
【回答】 ご質問にお答えします。
家計の状況を拝見しましたが、いまは辛抱の時かと思います。
節約などで頑張って、住宅ローンや教育費の負担が重い時期を通過して、その負担分をまるまる貯められる時期がくれば、挽回できるケースが多いと思います。
とはいえ、年収600万円の現役世代の税・社保負担が重すぎるのは確かだと思います。
特に社保の負担が重いです。
会社が折半で負担している分も、実質的には本人負担と捉えると、年収600万円で、その約3割が社会保険料なので、年間で約180万円の負担です。
(会社側は、人件費として約690万円を計上)
そのほか、所得税・住民税も差し引かれると、手取額はさらに目減りします。
なぜそんなに負担しなければならないのかというと、社会保障制度の給付の側が増え続けているためです。
具体的には、厚労省が作成した図解「給付と負担について」がわかりやすいです。
図解をみるとわかりますが、社会保障の給付は、年間140兆円と巨額で、主に現役世代が負担する社会保険料と税金でまかなわれています。
現役世代にも子育て支援の給付はありますが、そのまま保育・教育等サービスに消えていくイメージです。
そこで今導入が議論されている「給付付き税額控除」は、中低所得の勤労者世帯と、子育て世帯の負担軽減もねらいとしているようです。
困り気味の現役世代の負担を軽減することは、少子化対策においても差し迫った課題と考えられています。
ただ、負担軽減の財源をどうするかで政府は今、頭を悩ませている模様です。
インフレが進行する現時点では、国債を増発してまかなうと、インフレを加速させてしまう可能性があるからです。
そこで、高齢者世帯の給付を少し減らさせてもらう方向性なども考えられているようです。
具体的に、医療費の自己負担を原則1割から3割に上げさせてもらうべきではないか、といったことが今議論されています。
年金の給付については、今後、たとえば公的年金に対する課税強化なども考えられます。
年金受給世帯にも所得税・住民税をもう少しだけ負担してもらう方向性です。
ただ、実際そこまで踏み込める政治家は、なかなかいないかもしれません。
選挙で高齢者世帯の支持を得られないためです。
また、年金を減らされると現実に生活が成り立たない、という切実な状況にある高齢者世帯も少なくないと思います。
一方で、金融資産が潤沢な高齢者世帯については、給付を少し絞らせてもらう必要があるのかもしれません。
ここまで書いて、2009年頃にJALが経営危機に陥った時のことを思い出しました。
あの時は、高待遇の企業年金制度が再建の足かせでしたが、最終的にJALは、OBの皆さんに年金3割減の条件を呑んでもらい生き延びることができました。
その後、稲盛和夫さんなどの尽力もあり、今も元気にJALの航空機は飛んでいます。
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長々と書きましたが、社保負担の重さは、正直、個人レベルでは何ともしがたい問題です。
ただ、現在、政府の主導で設置された「社会保障国民会議」では、現役世代の社保負担軽減などが議論されているようです。
今後の議論の動向として、高齢者世帯の保有資産を行政が把握したうえで、給付を調整する方向性なども考えられているようです。
具体的には、金融所得(利子、配当など)からの逆算で、大まかな保有金融資産を把握する案などがあるようです。
少しでも良い方向に向かうことを願いながら、今は辛抱の時かと思います。
【設例】 17歳の高校生の子を持つ親です。
うちの子は高卒でブルーカラーの就職を考えているようです。
親としては大卒でないと不安ですが、高卒だと生涯収入はどう変わるのでしょうか。
【回答】 ご質問にお答えします。
高卒だと一般的に平均年収で100万円から150万円程度下がると考えられています。
ただし、あくまでこれは過去から現在までの傾向です。
たとえば米国では、一昨年あたりから「ブルーカラービリオネア」という言葉が使われ始め、現場のお仕事にも注目が集まっています。
ホワイトカラーの仕事がAIなどに置き換わる一方、現場職の人材が不足しているため、むしろ長い目でみてブルーカラーの方が高収入を期待できるのではないかと予測されているためです。
実際に、名門大学で学んだ後、会計士として働いていた人が、職業訓練校で学び直し、配管工に転職したら、月収が3倍になったという米国内のエピソードが昨年少し話題になりました。
配管工、とび職、電気工事士など、比較的高度な専門技能を必要とする職種は特に期待値が高いようです。
米国で起きたことは、日本でも時間差で起こりうるので、今見えている状況だけで判断しない方がよいと思います。
もちろん、ホワイトカラーの仕事がなくなるわけではありませんが、本社業務やシステム開発など、驚くほど少人数でこなせる時代が来るかもしれません。
なお、18歳から働き始めれば、その分、大卒よりも早めにお金を貯められるアドバンテージはあると思います。
ひとつの仮定として、こんなシナリオを考えてみます。
・18歳から自宅通勤で年200万円ずつ貯められると仮定
・大学進学資金として親が準備した200万円は子に贈与すると仮定
→ 23歳時点で合計1000万円が貯まる
・23歳から家を出て自立し、その後の収支はトントンで推移すると仮定
・そのうえで上記の1000万円を40年計画、年利回り7.2%で複利運用できると仮定
(補足:年7.2%は、約束された利回りでは全くないが、直近10年でみると長期分散投資により実現可能な数字だった)
・上記の前提で複利運用の計算すると、10年で2倍、20年で4倍、30年で8倍、40年で16倍になる
(税金・手数料は考慮せず)
本当にこのシナリオ通りになれば、23歳時点の1000万円は、63歳時点で1憶6000万円になる、というわけです。
もちろん、実際のライフプランは、こんなに単純ではないので、頭の体操と捉えてみてください。
ちなみに、ビリオネアは、十億ドル長者(日本円で約1600億円)ですが、ミリオネアは、百万ドル長者(日本円で約1憶6000万円)です。
ブルーカラー・ミリオネアなら、ある程度まで現実味のある数字かもしれません。
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なお、人生に上とか下とか、勝ちとか負けとかはありません。
選んだ人生のコースで目的地を設定し、どう生きるかが大事なのだと思います。
その際、お金があればできること、なければできないことがあるので、その意味でお金に強くなることは大事です。
学歴はともかく、人間力さえあれば、どんな方法でも生きていけるし、経済的に成功をおさめることも可能と思います。
もちろん、ご本人の希望や覚悟があることが大前提ですが、高卒で手に職をつける道も、個人的にはわるくない選択と考えています。
また、法改正で男女雇用機会均等が重視される時代に変わったように、学歴だけで雇用機会に差を付けられることは、昔より少なくなる可能性もあります。
それに、少子高齢化が進むとすれば、なるべく18歳から働いてもらい、税金や社会保険料をおさめてくれた方が国としてもありがたいわけです。
そもそも10代で受験したペーパーテストの成績による学歴が、その先何十年も雇用機会に影響するのは理不尽な話です。
その人のその時点の能力で評価する方が合理的という考え方が広まっても不思議ではないと思います。
たとえば、プロ野球の世界でも、学生時代に必ずしも野球エリートではなかった選手が、育成契約からはい上がり、その後の実力でMLBで活躍したり、首位打者を獲得したりするケースが出ており、各球団とも無視できない状況です。
それと同じで、これまでの常識を疑い、頭をやわらかくしておくことは、ライフプラン設計や資産運用設計においても、ひとつの大切な思考法であると思います。
【設例】 30代・女性です。
NISA貧乏という言葉を最近知りました。
私の周りにもNISAをする人が増えていて、NISAは、やってみたいと思うのですが、なかなか踏み切れずにいます。
現状ではどちらかというと、元本割れのないものを希望していますが、具体的にどんな選択があるのでしょうか。
【回答】 ご質問にお答えします。
NISA貧乏は、SNS等で自然発生的に広まった言葉のようですが、おそらくNISAが絶対に得だと思って、がむしゃらに積立投資をしている様子を少しからかうように表現した言葉だと思います。
豊かさを目指すNISAに貧乏が組み合わさるので、コントラストが面白い表現です。
ちなみにFPとしては、NISA(ニーサ)やiDeCo(イデコ)の普及を推進する立場ですが、NISA貧乏は確かに良くないと思います。
経験や人脈を広げられる今を犠牲にして、老後に備えるというのは本末転倒な気がします。
単純な話で、何ごともやり過ぎは良くないということです。
今すぐに使えるお金や元本確保型の商品も一定の割合でバランスよく持っておいた方がよいですし、私自身もFPの立場でそのように案内しています。
なお、資産運用で最も難しいのが、さじ加減の部分です。
具体的に何を何割程度持つのが妥当かなどは、個人ごとに答えは違うので、FP事務所等でご相談されることをおすすめします。
では、円建て元本確保型の選択として、例えばどんなものがあるのかを見ていきます。
【Aグループ】
銀行預金
個人向け国債
MRF(マネー・リザーブ・ファンド)
【Bグループ】
利付国債
普通社債
貯蓄性のある保険
説明の便宜上、2つのグループに分けました。
Aグループは、中途換金で元本割れをしないタイプの金融商品です。
なお銀行預金は、銀行が破たんすると、ペイオフといって、元本1千万円までとその利息を超えるお金が戻らなくなることがあり、中途換金とは別の理由で元本割れをすることがあります。
また個人向け国債は、発行から1年間は原則として中途換金できません。
但し1年経過後に中途換金する場合、直前2回分の利子相当がペナルティとして差し引かれるだけで、当初の元本は割らない計算になっています。
MRFは、証券会社で購入できる金融商品で、普通預金相当の位置づけで使われたりします。
私の知る限り、MRFが過去に元本割れをしたことはありません。
Bグループは、満期まで持てば元本割れはしないが、中途換金で元本割れの可能性があるタイプです。
そのうち利付国債は、個人向け国債とは異なり、市場金利による価格変動があります。
金利が上がれば、債券価格は下がる、金利が下がれば、債券価格は上がる、という現象の理解が必要で、投資初心者の方に説明しても、すぐには理解してもらえないことが多いです。
普通社債も、金利と債券価格の関係は、利付国債と同じですが、政府が発行する国債とは異なり、一般企業が発行します。
もしも発行企業が経営破たんした場合は、一部または全部のお金が戻らないことがあります。
貯蓄性のある保険は、保険代理店などに相談すると、商品説明から契約手続きまで丁寧にサポートしてもらえる商品です。
一般的な債券投資は難しいと感じる方には、向いている選択かもしれません。
但し、保険商品は中途解約に伴う控除(手数料)が大きめなので注意が必要です。
なお、上記は一般的な金融知識の解説です。
個別具体的な商品説明は、ここではできないので、必要があれば金融機関の窓口等で詳しく説明を受けてみてください。
今回の内容を簡単にまとめると、NISA貧乏になるまで投資に資金をつぎこむのではなく、ご自身のライフプランを考慮し、元本確保型の金融商品もバランスよく組み合わせた方がよい、というアドバイスになります。