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森本FP事務所のQ&Aブログ

資産運用・保険・住宅ローンの疑問・質問にお答えしています。

【設例】 45歳会社員の女性で一人暮らしです。
65歳時に定年退職を迎える予定です。
住宅ローンの返済があり、貯蓄は少なく、積立投資を行う余裕もほとんどありません。趣味の旅行にもお金を使いたいです。
65歳から公的年金だけで暮らせるのでしょうか。

なお仕事は楽しく、やりがいもあるので、長く続けられたらいいなと思っています。どう考えたらよいでしょうか。

【回答】 ご質問にお答えします。
結論から言うと、仕事が好きなら、何らかの形で75歳まで働く計画を今から立てておくことをおすすめします。

公的年金制度は、少子化と長寿化が進み、正直、現行のまま維持するのが難しくなっています。

制度自体が無くなることは考えにくいですが、あくまで家計を補助するものになるということです。

無理に高い給付水準を維持しようとすると、消費税の税率をものすごく上げなければなりません。

また、年金保険料を上げると、現役世代の負担が重くなり過ぎます。

なので、65歳から公的年金だけで悠々自適の暮らしができるというシナリオは、政府として、早めに撤回した方がよいのではないかと個人的には思っています。

江戸っ子は宵越しの銭を持たない、といいますが、ある世論調査(※1)によると、貯蓄なしと回答した世帯が全世帯の4分の1ほどあります。

政府を信じて、私的年金の準備をまったくせずに65歳を迎え、結局、働かなければ生活できないとなると、ハシゴを外される形になります。

一時期、老後2000万円問題が大きな騒ぎになったのも、世の中用意周到な人ばかりではないことを示しています。

とはいえ、公的年金の問題に薄々気付いている人は多いです。

漠然とした不安から消費を抑える人が増え、企業もお金を内部にため込むので、不景気が続くという悪循環に陥っています。

日本は、本来は経済的に豊かな国で全体として見れば、それほど悲観的な状況にありません。

年金問題の解決策のひとつは、個人的には、65歳をリタイア時期の標準としないことだと考えています。

少子化と長寿化は、必ずしも政府の責任ではなく、ある意味自然に起きたことなので、問題点を正直に伝えるたびに、ネットで炎上してしまうのは少し気の毒です。

要するに、公的年金を支える人と受取る人のバランスが変化する以上、受取る側の給付を減らさないと、制度として成り立たないということです。

もちろん、65歳でリタイアしたい、お金のために働きたくない、心の余裕を持ちたい・・と考える場合は、ご自身で必要な資金をしっかりと計算して、私的年金を準備すれば大丈夫です。

問題は65歳時にリタイアを予定しているのに私的年金を準備できていないケースです。

その場合は、例えば、65歳から74歳まで手取り200万円程度の仕事を継続できれば、インフレや運用率などは考慮せず、200万円×10年で老後2000万円問題は解消します。

また、制度上は、繰り下げ受給の選択もあります。

75歳まで受給開始時期を繰り下げると、現行のルールでは、65歳時からの受給開始に比べ、年金額は+84%の増額となります。
(但し、年金に所得税・住民税が課税されてしまう等の注意点がある)

職種にもよりますが、75歳まで働くのは非現実的な話ではないと思います。

実は、私自身も75歳までFPの仕事を継続する計画です。

健康であることが大前提ですが、65歳以降もお元気で働いている方は、直近の統計データ(※2)でも4人に1人の割合でいらっしゃいます。

また、65歳から69歳に限ると、2人に1人が就業しているとのこと。

もちろん、個人差はあるので、健康上の理由で働けなくなってしまった場合は、公的な支援を受けてもらう選択なども想定されます。

まとめますと、
・65歳から公的年金だけで暮らすのはおそらく難しい
・75歳まで働くのがこれからの基本と理解した方がよい
・趣味などに使える余暇も確保しつつ、健康で長く楽しく働ければ、年金の不安は解消する
というアドバイスになります。

※1 金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査」
※2 総務省統計局「労働力調査」
 

【設例】 30代・女性です。
あるFPさんから投資信託という言葉を教わり、投資信託って何ですか?と質問したら、中身は株などで運用します、と説明されました。
株って何ですか?

【回答】 ご質問にお答えします。
「株って何ですか?」は、実際に私がFPとして受けたことのあるご質問です。

とりあえず「株=証券会社で取引できる金融商品」というイメージまではあるかと思いますが、いかがでしょうか。

ただ、それだけだと「株=マネーゲームの道具」のような誤解を生みかねません。

株(株式)は、単なる紙や電子情報ではなく、日々の経済活動の根幹にあるものです。

株を理解するためには、商業高校などで習う複式簿記の知識があるとよいと思います。

複式簿記は、株式会社の経理部に勤める人などには必須の知識で下記2つの表で構成されます。

損益計算書
収益(売上) - 費用(仕入)= 利益

貸借対照表
資産 - 負債 = 純資産(正味の財産)

図式として単純化していますが、私自身は、金融経済について考える時に常に頭の中に思い浮かべる2つの表です。

会社の株を持つ人(株主)は、上記「純資産」の部分を持分として保有していることになります。

その持分が権利証のようになったものが株です。

そして、日々の経済活動で生み出される「利益」は「純資産」に組み込まれていきます。

なので、優良企業の株を持つと、毎年生み出される「利益」が「純資産」に加算され、保有する株の価値を引き上げ、一部は配当金として払い出されることもあります。

また、大手有名企業の株の多くは、証券取引所という場で取引されています。

将来的に得られる「利益」を見越して、その会社の「純資産」よりも高値で取引されることもあります。

実体から離れすぎると、バブルと呼ばれます。

短期間で売ったり買ったりもできるので、賭け事のようなイメージもあるかもしれません。

実際、「株には手を出すな」が家訓となっているご家庭もあると聞いたことがあります。

とはいえ、証券取引所に株を公開している企業(上場企業)で働く人々は、賭け事をしているわけではなく、現場やオフィスなどで現実に真面目に仕事をしています。

そして上場企業は基本的に事業活動で儲かっています。

赤字続きで純資産がマイナスの状況が続いた会社は、債務超過といって、上場基準を満たさなくなり、退場を求められることもあります。

上場企業の株を持つことは、真っ当な個人の経済活動であり、お金に働いてもらうことでもあります。

ネット証券等で誰でも買えますし、投資信託の形で持つこともできます。

ただ、実際に株を持つ人も、具体的な中身についてまで深くは理解できていないケースが多いと思います。

日本では「株とは何か」など金融経済の仕組みについて、学校で習う機会がとても少ないためです。

自動車の運転と同じで、構造を理解しているか、いないかは大きな違いです。

このことは政府や金融庁も課題と考えているようで、国民全員に金融経済を学べる機会を作るため、「金融経済教育推進機構」を今月設立し、今年の8月から本格稼働するとのことです。

国が推進する新たな枠組みなども有効活用し「株って何だろう」から学び始めるのもよいのではないでしょうか。
 

【設例】 20代・男性です。
今年7月に新紙幣が発行されるとの報道を見ました。偽造防止のための最新技術が導入されるとのこと。
ところでお金は紙なのに、なぜ価値があるのでしょうか。よく考えると不思議な感じがします。

【回答】 ご質問にお答えします。
お金の歴史をひも解くと、江戸時代は、大判・小判の時代で、金や銀などで鋳造された貨幣が主に使われていたと云います。

明治時代から本格的に紙幣が導入されましたが、当時、紙幣はあまり信用されなかったようです。

そのため明治政府は、兌換紙幣といって、金や銀と交換できるルールをつくりました。

昭和になると、そのルールも廃止。

今使っている紙幣を見ると、一番目立つ位置に日本銀行券と書いてあります。

もちろん、現在は、日本銀行券を日本銀行に持参しても、金や銀との交換はしてくれません。

では日銀はどんな資産を持っているかというと、大半が、日本国債です。

日本国債とは、日本政府が発行する借用証書のようなものです。

つまり、現代のお金の価値の裏付けは、「日本政府の信用」ということになります。

紙のお金(最近はほぼデジタル化されていますが)で色々な買い物ができるのは、日本国民全員が日本政府を信用しているからです。

日本政府の信用が無くなるとお金の価値も無くなります。

実際、日本でお金の価値がほぼ無くなったのは、第二次世界大戦後です。

具体的なエピソードとして、明治生まれの私の祖父は、終戦直後に「こんなもの価値が無くなった」と言って、お金を庭に投げ捨てたと父から聞いたことがあります。

当時、お金では何も買えなくなり、着物を農家に持参し、お米やみかんと交換してもらったそうです。

現代では、信じられない話かもしれません。

今の日本政府をどこまで信用できるのか。

もちろん、信用しないと生活できませんが、100%信じ切ってよいのかというとそうでもありません。

政府と日銀が連携すれば、際限なく、日本銀行券を発行することも可能だからです。

金(ゴールド)が市場ですごく値上がりしているのは、政府の信用が少し落ち始めていることも背景にありそうです。

この傾向は、米国や欧州などの政府についても同じことが言えます。

近頃、米国の大手IT企業の株式に大量のお金が集まっているのは、ある意味、政府より信用できると判断されているのかもしれません。

お金の価値の本質を理解することは、どんな資産運用を選択すればよいかの判断基準にもなると思います。