最近あるきっかけで、無償の愛とは一体何かと深く考えた。


 考えれば考えるほど分からなくなった。頭にこびりついて離れない命題が「男女の関係に無償の愛は存在するか?」ということである。目下の私の意見では否なのだが。存在する、と確信する人もあるだろう。それは、「無償」部分がどの程度か、によるかも知れない。


 男女間の無償の愛を考える時、いつも思い出す小説がある。モーパッサンの短編『椅子直しの女』である。初めて読んだのが中学3年だったので、詳細は忘れてしまったが、だいたいこんなストーリーだった。


 舞台は19世紀のフランス。あるジプシーの旅芸人の一座が、片田舎の薬屋に間借りしている。そこを拠点にして興行を打つためで、何ヶ月もの長期滞在となる。その一座に、醜く、若くもなく、何の芸もない女がいた。女は椅子などの家具を修理することを生業とし、他の団員が歌ったり踊ったり芝居をしたりする傍らで、地味に椅子を直してお金をもらっていた。一座の中でも厄介者的な存在だった。


 その女が薬屋の一人息子に恋をした。男も中年で、それほど魅力的ではなかったが、椅子直しの女は何故かその男に強く惹かれた。理由などなかったのだろう。しかし二人の間に接点は何も無く、家主と居候の一人と言う関係であったから、言葉を交わす機会もあるはずがなかった。女はひたすら、遠くからみつめるしかできなかった。


 ある日、椅子直しの女はたまたま庭に出ていた薬屋の息子と、一瞬目があった。男はその瞬間、さげすむような、汚い物を見るような目で女を睨んだ。しかし女はこの上も無く幸せだった。恋する男との、初めての接触だったからだ。幸せな気分はしばらく続いた。


 またある日、女は薬屋の息子と二人きりになった。女の方からは何も言うことはできなかったが、男が一言、言葉をかけた。「失せろ。うすのろ」と。女はその言葉を聞いた時、天にも昇る気持ちだった。愛しい男から言葉をかけてもらえたのだ。まさに幸福の絶頂にあった。


 物語はこの後、特にドラマチックな展開をすることもなく、淡々と終わっている。(終わり方は忘れてしまったが)女と男の間には何の進展も無く、結局一座が薬屋を離れることで、接点は完全に無くなってしまう。女と男の接触はたったの2回、それもロマンチックとはほど遠い有様だ。


 初めて読んだ時、何故か胸を打たれたのを覚えている。これももしかしたら「無償の愛」の一つの形ではないかと考える。相手に何も求めることなく、ただそこに存在するだけで幸せに感じる、徹底した自己完結愛。薬屋の息子は椅子直しの女を歯牙にもかけなかったばかりか、目障りなものとして扱った。女は男から何の恩恵も受け取っていない。完全な片思いだ。しかも報われない。


 やはり、無償の愛は片思いでなければならないだろう。それも相手に気持ちを伝えられたとか、少しでも笑いかけてもらえたとか、そういう甘酸っぱい思い出は一切なしの、どんなに相手がひどい態度を取っても、それを妄想力でポジティブに変換できる、病的なほどのパワーがなくてはならない。


 好いた相手とわずかな期間でも交際できたとか、1度でも肉体関係を持てたとしたら、相手から見返りを受け取ったことになるので、それはもう無償の愛とは言えない。あ、もちろん両思いも。


 相手から何も好意的なものを受け取らなくても、あまつさえ相手と金輪際会えなくなっても、尚も一途に相手を思い続けることこそが、男女の関係における無償の愛ではないかと思う。無償の愛は報われてはならないのだ。


 私の考え方だと、無償の愛ってストーカー行為に限りなく近いな・・・(笑)


 もちろん、相手が迷惑と感じたと認識したら、その時点で身を引かなければならないが。

朝起きたら熱が37.8℃あった。(-o-;)どうやら、風邪をひいたらしい。

友達と午前中から会う約束をしていたので、急いでキャンセルの連絡を入れた。そして、朝食の支度に起きることなく爆睡。そのまま9時ごろまで目を覚まさなかった。夫は勝手に仕事に行ったらしい。

ガンガンと痛む頭を押さえつつ、とりあえず牛乳だけ飲んだ。何か胃に入れないと薬が飲めないからだ。パブロンとにんにく卵黄を飲み、熱さまシートを額に貼って再び爆睡。

目が冷めると1時半。再び起き出し、おじやを作って食べる。食欲がわかず、半分くらいしか口に入れられない。依然として熱があったが、37.2℃くらいまで下がっていた。またパブロン飲んでベッドへ。床についた瞬間、眠くなる。

次に目が覚めたのは4時前だった。頭痛が治ったので熱を計ると36.9℃。なんとか平熱だ。これなら仕事に行けると思い、身支度して仕事に出た。

多少体はふらつくものの、なんとか普段通り仕事をこなし、帰宅。熱も下がり、体のだるさも大分取れ、かなり元気になった。そうなると俄然、食欲がわいて来る。

深夜12時近くだと言うのに、トルティーヤチップスなんか食べている。(チーズ味)

この分だと明日は元気だろう。一日で治った珍しい風邪だった。

 今日の昼頃、名古屋駅西側のビックカメラの裏にある、ミニストップに寄った帰り。店の前の交差点で、男がタバコの空き箱をポイ捨てした。間髪入れず、通りすがりの正義感の強い人が「こんな所に捨てるな!拾え!」と注意した。捨てた男(派手なアロハを着てサングラスにパンチパーマのチンピラ風。しかし身長160センチ以下、肩幅狭し。)はビビッた様子で軽く頭を下げながら、自分が捨てた空き箱を拾いに戻った。注意した人が強面だったのだろう。


 そのチビンピラ(チビのチンピラ。私が命名)は、自分よりも上背のある、子牛のような体格の女を連れていたのだが、女の前で叱られたのがよほどバツが悪かったのか、歩きながら後ろを振り返り、舌打ちを繰り返していた。連れの女も一緒になって振り返り、仏頂面を作っていた。


 私はその二人のすぐ後ろを歩いていた。するとチビンピラはおもむろに、さっき拾ったタバコの空き箱をくしゃっと潰し、何食わぬ顔で再びポイ捨てした。さっき注意されて面子(?)がつぶされたと思ったのか、女の前でいきがった所を見せたかったのか。(道路にゴミをポイ捨てするのがカッコいいと思っているのか?)それにしてもバカな男だと思った。


 私はここで、ちょっとした悪戯心を起こした。チビンピラの捨てたタバコの空き箱を拾い、彼と子牛女の後を追った。そして二人が信号待ち(赤信号ではちゃんと止まるらしい)している二人の横にぴったり並んで、これ見よがしにタバコの空き箱を掲げて見せた。


 チビンピラと子牛女は気づいたらしく、こちらをチラ見している。私は何気なく横目でチビンピラを見て、にっこり微笑んでやった。チビンピラはバツの悪そうな顔をして目を反らした。子牛女は眉間に皺を寄せてこっちを睨んでいる。私は視線の端で女を捉えた。若いかと思ったらけっこう年がいっているようだ。40過ぎと見た。


 何か因縁をつけられたら、「ゴミが落ちていたので拾ったんです」と言うつもりだったが、何も言って来なかった。信号が青に変わるまでの間、チビンピラはどんな気持ちだっただろうか。捨てても捨てても、自分の所に戻って来るタバコの空き箱。私の嫌味を、理解しただろうか?少しは良心が痛んだだろうか?(それはないだろうな)


 どっちにしても、ヤツが意識した時点で私の勝ちである。( ̄ー ̄)


 タバコの空き箱をどうしたって?もちろん、ちゃんとゴミ箱に捨てましたとも!

地元のイオンにある、カフェコムサのランチ。

アボカドと明太子のパスタがとにかく美味しいのだ。既にもう2回食べに行っている。(一人で)(^_^)v




アボカドのとろりとした食感と、明太子のプチプチ感が何とも…。味付けはあっさり塩コショウ。

 なぜマルミと絶交したくなってしまったのか。心を病んだマルミが、母親との癒着などで病が悪化し、色々あったが結局いい人がみつかって結婚、子供もできて幸せになり、万事メデタシの結末になったのだから、祝福してあげてもいいはずだ。しかし私はマルミと付き合いたいと思わなくなってしまった。どうしてか。


 はっきりこれといった理由はないのだが・・・しかしとにかくあの時は、マルミに振り回されて疲れ果て、これ以上はゴメンだという気持ちになった。端的に言えばマルミを嫌いになってしまった。マルミは私のことを嫌いになった訳ではないから、もしかすると私は随分薄情な人間かも知れない。


 マルミを思い通りにしたかった訳ではない。親身になってアドバイスしていたが、私の言うことを100%受け入れて欲しいとは思わなかった。それはマルミが決めることだ。恩に着て欲しかった訳でもない。過剰に感謝されると却って恐縮する。


 では私はマルミに一体何を求めていたのか。きっと「共感と理解」ではないだろうか。マルミに自分のことを分かって欲しかったのだと思う。当時私にも悩みがあった。マルミの相談に真剣に応えていれば、いつか私の相談にも乗ってくれるだろうと思っていた。「情けは人のためならず」と言う言葉を信じていた。マルミのことが好きだったので、これでもっと気持ちが通じ合えると期待していたのかも知れない。一生懸命には一生懸命で返してくれるだろうと。


 しかしそれは間違いだと気づいた。その頃からマルミが嫌になってしまったのだと思う。マルミには人の悩みを受け止める度量はなかった。病気のせいではなく、元からそういう人間だったのだ。私はマルミに期待し過ぎたのだ。マルミを、対等な大人として見てはいけなかった。誰かの庇護をいつも必要とする、幼くて頼りない子供だと思わなければいかなかったのだ。。私はマルミを大人として扱い、そのように接して来たから、もしかすると私の言葉はマルミには鬱陶しかったかも知れない。「夏ばこさんは厳しいことばかり言う」と、心の中では私を敬遠していたのかも知れない。


 マルミはきっと、自分にとって心地良い言葉、慰めになる言葉のみを欲していたのだろう。私はそれが読めなかった。人の相談には甘言だけではなく、時には苦言も呈するべきだと言うのが私の信条で、マルミの相談に乗った時もそのスタンスで接していた。基本的に、誰の相談に乗る時も同じである。優しいことを言う時もあれば、厳しいことを言う時もある。それは相談内容とか、相手の状態による。気をつけているのは、こちらが感情的にならないことだ。きつい言葉ときつい口調は違う。


 しかし、苦言など何の役にも立たないと思っている人は案外多い。耳の痛い言葉は聞きたくない、ひたすら自分を肯定して甘やかして欲しいと思っている人は、痛いところを突くと逆ギレしたりする。相談に乗る方も万能ではないので、相手の意に反する言葉を発してしまうこともあるだろう。それが気に入らなければ従わなければ良いだけの話で、怒ると言うのは違う気がするのだが・・・。


 マルミの一件で、人間関係の難しさ、相談に乗ることの厄介さが骨身に沁みて、それ以降人の相談に乗ることを躊躇するようになってしまった。しかし私も余程のうっかり者なのか、マルミの件に似たケースがあと2件あるのだ。何故か私は心の弱い人に見込まれやすいようだ。後の二人も心療内科に通院歴のある人たちである。しかも完全に病気と言うわけではなく、ちょっと「心が風邪をひいた」状態の。その時も私は細心の注意を払って接したつもりだったのだが、結局後味の悪い結果となってしまった。


 それ以降本当に懲り懲りして、人の相談に親身になるのを控えるようになった。今までは感情移入し過ぎていたたと思う。人の心の痛みとか傷に敏感に反応してしまう私は、つい話を親身になって聞いてしまう。そしていつのまにか人の痛みとか傷が自分のもののように思えてしまうのだ。だから疲れ切ってしまう。相談した方にしてみれば、私がここまで疲れるとは想像だにしていないだろう。向こうに悪気はないのだ。私の考え過ぎがいけないのである。知らず知らず、不安定な人に振り回されるとこちらまで疲弊してしまうから、いつしか傷つかないように、できるだけ心の浅い部分で人と付き合うようになった。寂しいことだが仕方がない。人に期待するのはやめた方が、穏やかに生きられると思ったのだ。


 結局私は人と密な関わりを求めているのだと思う。しかしその求め方が上手ではない。甘え下手なので、まず誰かに甘えてもらってから、その見返りに、と言う形でしか甘えることができない。それでいつも肩透かしをくらってしまう。書いてて情けなくなるが、私はこういう人間なのである。何の気負いもてらいもなく、誰かと親密になれる人が、本当に羨ましい。記事タイトルの「散々な人々・散々な私」と言うのは、相手も大概おかしかったけど自分もどっこいだ、と言う意味である。


 残り二人のエピソード、マルミのことを書いていたら当時を思い出して気が滅入ってしまい、書く気が無くなってしまった。なのでまたの機会にしたいと思う。(あとの二人もけっこう物凄いです。乞うご期待)

 相談者は59歳の未亡人。30歳次女の、離婚問題で悩んでいると言う。


 相談者の娘は7年前に結婚した。そして5年ほど前からセックスレスになり、3年前に寂しさから浮気をしてしまった。そこで揉め、話し合って一旦は元の鞘に戻ったがセックスレスは変わらず、また他の男に走ってしまった。今度は離婚を真剣に考えていると言う。夫の方は最初怒り狂って慰謝料300万出せとか喚いていたが、今は落ち着いて(?)5円でいいとか(何故5円・・・?)離婚する前に二人で旅行しようとか、何だか離婚しようとしているとは思えない行動で、相談者の娘もそんな夫の態度にほだされかかっているように見える・・・一体娘夫婦は本気で離婚を考えているのか、それともこのまま行くのか、(相談者は娘が離婚すべきだと思っている)離婚するとしたらどちらに非があるのか・・・気になって眠れないと言う。


 パーソナリティの加藤諦三・・・「あなたに関係ないことなんだから、あんまり首を突っ込まないことですね」

 

 回答者の高中弁護士・・・「どちらに非があるって、そりゃ娘さんの方でしょう。貞節を守るって言う、結婚の基本原則を破ったんだから」


 相談者にとっては、ニベもない回答だったろう。何だか不満そうだった。彼女としては、もう少し娘の気持ちを汲んだ答えを期待していたのかも知れない。しかし、現実はこんなものだ。


 「あなた、娘さんに戻って来て欲しいと思ってるでしょ?」と加藤諦三。


 「いいえ、そんなこと思ってやしません」



 いや、思ってるって。



 誰が聞いても思ってると言うだろう。


 「あなたね、寂しいんですよ。ご主人亡くなってお一人でしょう。娘さんが側にいたら、安心だと思ってるでしょう。でもね、夫婦のことは夫婦にしか分からないんですよ。ましてや夫婦生活のことなんて、プライバシーでしょう。親といえども、首を突っ込んでいい領域じゃないですよ。離婚するしないは娘さんの判断に任せておいたらいかがですか?」


 うん、加藤先生、今日もバッサリ。( ̄ー ̄)

episode1 マルミ 続き


 「誰かいい人いないですかねぇ」これが、マルミの口癖になった。先日の一件もあってマルミに軽い不信感を抱くようになった私は、もう以前のようにマルミに過剰に気を遣ったりすることはなくなった。言葉をかける時も腫れ物に触るような感じではなく、けっこう率直にズバリ核心を突くようになった。「いや、今そんなこと言ってたらダメでしょう。しばらく恋愛はやめときなよ。それより早くちゃんとした仕事みつけて、社会復帰する方が先じゃない?」マルミの状態も良くなって来ているし、まぁ大丈夫だろうと思って言った。「そうですねぇ・・・でも私もうすぐ30になるし」やはり彼女は、早くいい人をみつけて結婚してしまいたいらしかった。また確実に同じことの繰り返しだろうに・・・。マルミのように、自分の全てを丸投げして相手に何もかも面倒をみてもらいたい女に、魅力を感じる男がいるはずないだろうにと思った。


 ところが、いたのだ。


 たまたま何ヶ月かマルミを訪ねない期間があった。仕事も忙しかったし、マルミの状態も良くなっていたし、向こうから「話を聞いて欲しい」と言う連絡もなかったのだ。ある日、夫が「そういえばマルミちゃんどうしてる?」と聞いてきた。彼もけっこうマルミのことは心配だったらしい。「さぁ・・・最近連絡取ってないから。元気にしてるんじゃない?」「電話してみたら?また落ち込んでるかも知れないよ」確かにマルミの状態には波がある。夫の言うことももっともだと思い、マルミの携帯にかけてみた。


 「もしもし」「あ、夏ばこです。元気かなと思って」「元気ですよう・・・うふふ」なんだか妙にテンションが高い。隣に誰かいるような気配を感じる。「誰かいるの?」「あ、はい。えへへ」「取り込み中みたいだね。切ろうか」「あっ別にー・・・」「ところで今何してるの?」「区役所でバイトしてますよ」「へー区役所。区役所のどこ?受付?」「えーと・・・うふふ」「何?どこなの?」「あ、いや言わない方がいいかなーと思って」「何それ?どういう意味?」「何でもないです。また電話しまーす」妙な後味の悪さを残して、電話が切れた。一体何なのだ。隣にいたのは、ひょっとして男か?


 しばらくして、マルミから電話がかかってきた。「夏ばこさん、この間はどうも」「うん、いいよ。で、今何してるの?」「区役所のー、総務でバイトを始めたんですぅ、3ヶ月前から」「ふうん、仕事は順調?」「そこでえ、いい人みつけちゃったんですぅ!」・・・は?正直またか、と思った。またマルミのいつもの依存かと。しかし次のマルミのセリフに、私は仰天した。「今一緒に暮らしてるんです!」


 なんと。3ヶ月前にバイトを始め、そこで出会った区役所の男と意気投合し、交際を始めたと言うのだ。マルミによると、顛末はこうだ。バイトを始めてすぐ、男に声をかけられ、デートに誘われた。初デートで男のアパートに連れて行かれ、部屋の掃除をさせられた。(エッチはなし)2回目のデートでマルミの母親に会わせたら、すぐに気に入られ、付き合うことになった。男は結婚願望が強かったらしく、3回目のデートでプロポーズらしきものをされ、マルミも承諾した。双方の親に話すと、一緒に住めばと言われたので男のアパートで同棲することになった。マルミはバイトを辞め、今は専業主婦をしている。半年後に東京ディズニーランドで挙式の予定で、その前に北海道へハネムーンに行く予定だと言う。更になんと、マルミは妊娠していた。マルミの母に、結婚する気なら避妊はまかりならんと言われたので、避妊を一切しなかったと言う。(どういう理屈だ?)「彼のお母さんからも『子供はまだ?』って毎日電話がかかってきて・・・すごく焦ってたんですけど、やっとできました!今3ヶ月です!」


私は最初に思ったこと・・・「なんてインスタントなんだろう」要するに、バイトで入った役所でたまたまものすごく結婚願望の強い男に出会い、家事能力を試され(最初のデートでいきなり掃除させる男って・・・)、合格したのでそのままの流れで同棲、親に子作りをせっつかれ籍も入れてない内から子作りに励み、めでたく妊娠、ここまでの所要期間が約3ヶ月。これでいいのか?いや、マルミ的にはこれでいいのだろう。彼女はやっと、母親に代わる安住の場所をみつけたのだ。相手の男はとにかく一刻も早く嫁が欲しかったんだろうし、お互いのニーズが見事に合致した例だろう。


 私は何だか馬鹿馬鹿しくなった。今までの悩みっぷりは一体・・・私の尽力は一体・・・母親から自立したいだのナンだのって、全てポーズか。恋人とうまく行かないとか、結婚話が壊れるとか、その度におかしくなるのは、安いドラマの悲劇のヒロインを気取っていただけか。本気で心配した私が馬鹿みたいだ。アホらしい。


 マルミは、今までどおり母親にべったり依存して生きることだろう。そして旦那にも。本当の幸せが何かなんてこの先一度も考えず、標準的に二人ぐらい子を産み、旦那の稼ぎで専業主婦をやり、ママをやり、子供がある程度育ったら母親に面倒をみてもらってパートにでも出かけるかも知れない。そしてそのままオバサンになり、のほほんと何も考えず、年を取るに違いない。結婚という制度に逃げ込み、愛があるのかないのか分からない状態でもとりあえず夫婦としての体裁を整え、子供ができて家族となったらそのまま流れで一生安泰で暮らす・・・それがマルミの描いた最良の幸せの形だったのだろう。電話の向こうのマルミの、天下を取ったような勝ち誇ったような声のトーンとテンションの高さが、如実にそれを物語っていた。


 私は、マルミと縁を切ることにした。もう彼女は私が何を言っても、聞く耳を持たないに違いない。これからどんどん傲慢になって行くであろう彼女と、これ以上付き合っても楽しくない気がした。マルミに私はもはや必要ではない。


 私の判断は正しかった。マルミはその後も電話をかけて来て、結婚式に出てくれと言ってきた。なんだかんだと理由をつけて断ったのだが、その後も何かと連絡を取ってきた。やはり彼女はどんどん感じが悪くなって行った。「私って幸せでしょう」とことさらにアピールし過ぎと言うかなんと言うか、自分は幸せなんだから何を言っても何をしても好意的に見てもらえる、と言う魂胆がにじみ出るような独特の感じ悪さなのだ。「幸せ礼賛病」とでも言おうか。マルミはもう、人の気持ちどころか人の都合も分からない。最初からこんな嫌なヤツだったのか?


 正直、マルミの一件には疲れ果てた。そして何も得るものがなかった。見返りを期待してアドバイスした訳ではもちろん無いが、それにしても甲斐が無さ過ぎた。マルミの一件で、人の悩みの相談に乗る難しさを痛感した私である。正直これで懲りたつもりだったのだが、似たようなエピソードがあと二つもあるのだ。つくづく私って・・・。

 episode1 マルミ 続き


 それから、坂を転がるようにマルミの状態は悪くなって行った。彼とは結局別れてしまった。彼がマルミの母親に根を上げたのと、彼の両親がマルミを「精神病持ち」と批判し始めたのが原因だった。二人とも、親の意見や態度に左右されて好きな人を諦めたわけだ。要するに子供だったのだ。マルミは、彼との結婚も考えていただけにひどくショックを受け、家から一歩も出られないほどの状態になってしまった。


 私はマルミのことが心配で、何度か連絡を取ってみたが、母親が「娘は人に会える状態ではない」と言ってシャットアウトしてしまう。実際、誰にも会いたくない様子だったのでしばらく静観することにした。自宅に引きこもっている間に、母親の干渉が一層強くなり、ますます依存度が高くなるのは明白だったが、他人の私にはどうすることもできなかった。


 半年ほどして、突然マルミから連絡があった。大分元気になったので会いたい、と。今、市立の美術館の受付係のアルバイトをしていると言う。紹介してくれる人があって、結婚を前提に交際を始めた男性もいるとのこと。会いに行ってみると、見違えるほど元気になったマルミがいた。美術館の同僚の紹介で知り合った40代の男性と、順調に交際しているらしく、相手の男性のことを詳しく話してくれた。花農家を経営している人で、年の離れたお姉さんが二人いて、私はそのお姉さんたちに娘のようにかわいがってもらっている・・・このまま順調に進めば、半年以内に結婚するかも知れませんと、幸せそうに告げた。


 お母さんとはどうなっているのと聞くと、母は以前のように干渉してくることはなく、私の判断を尊重してくれています、と言った。余りにも遅い親離れ子離れだが、ようやくマルミは自立できそうだった。これから徐々にお母さんと距離を置いて自立できるといいね、とアドバイスした。29歳の女性が、母親にしがみつかれたまま新しい幸せをつかめるとは、私には到底思えなかった。


 これで何もかも順調に行くかと思いきや・・・またもや嵐があった。マルミは花農家の男性との結婚を、白紙に戻してしまったのだ。あんなに幸せそうだったのに一体なぜ、と聞いたら、相手の男性が私のことを真剣に思ってくれているのか確信が持てなくなったからだと言う。付き合い始めの頃は、結婚しても農業の手伝いは一切しなくていいと言われていたのに、交際が進むに連れて風向きが変わって来て、少しは手伝ってくれるんだろうねと言うようなことを言われるようになり、更に向こうのお義母さんの干渉も出てきて、私の母も話が違うと怒るようになって、私もだんだん嫌になってきて・・・やめたと言うのだ。


 まぁ、結局は縁がなかったのだろうが、それにしてもママゴトのような恋愛だなと思った。相手が花農家を経営していると分かった時点で、そこから起こり得る様々な可能性を考慮してから、結婚を考えるのが普通だと思う。相手は嫁に来て欲しいからいいことを色々言うだろうが、家族経営の零細農家が人手を欲してないはずがないのだ。嫁が無賃の労働力として期待されるのは、火を見るより明らかだと思うのだが。そのことも全て分かった上でマルミは男性と交際を始めたと思っていたのだが、違ったらしい。

 

 せっかく良くなりかけていたのに、マルミはまた元のひきこもりに戻ってしまった。ここで私は気がついた。マルミは結局のところ、自分が安住できる環境を作ってくれる相手を探し求めているだけで、それが上手くいかないと鬱になるのだと。マルミに前向きな考えは何一つないのだと。だから失敗から学ぶことができず、似たようなパターンでまた同じ挫折を繰り返す。母親からは離れたようでちっとも離れていない。


 何故マルミはこうなのかと考えてみた。そして、ある時はたと気づいた。彼女は自分を被害者だと思っている。意地悪な世間のせいで心を病んでしまった、かわいそうな被害者。おそらくマルミの中には、その考えがベースにあるのだろう。「かわいそうな人」には、自分で道を切り開く力は無い。代わりにあるのは、周りに助けてもらって当たり前と言う傲慢な考えだ。


 やや辛らつな見方だが、私の見解は当たっていると思った。そして、そんな考え方では却って心の病気も治らないし、本当の意味で幸せを掴むことはできないような気がした。当たり前のことだが、自分以外の他人が常に自分に良くしてくれるなんてあり得ないからだ。マルミは軌道修正する必要がある・・・私は痛感した。


 しかし、夏ばこさん私どうしましょう、一体どうしたらいいんでしょうと、涙ぐんで相談して来るマルミに、どんな言葉をかけたらいいのか分からなかった。私が考えていることをそのまま伝えたら、ショックでまた引きこもりになってしまうに違いない。マルミには苦言を受け止める強さはないからだ。とにかく焦らないことだよ、焦って幸せになろうとしないで、自分ができることを一つ一つこなして行ったらいいんじゃない?結婚は、まだ先でいいよ・・・なるべくプレッシャーをかけず、優しい言葉で言ったつもりだ。


 それからしばらく、マルミは落ち着いていた。美術館でのバイトの傍ら陶芸教室にも通い始め、徐々に自分を取り戻しているようだった。彼女の勤める美術館が私の通勤路にあったため、仕事帰りによく様子を見がてら遊びに行き、一緒にお茶を飲んだ。笑顔で話してくれる時もあれば暗い顔の時もあったが、とにかく私と会えるだけの元気はあるようだった。


 ある日、ふとした瞬間に、私の悩んでいることもマルミに聞いてもらおうと思った。私にだって悩みがある、と伝えることでマルミの気が楽になるかも知れないと思ったのと、マルミともっと双方向でコミュニケーションを取りたいという気持ちが芽生えたからだ。そこで思い切って言ってみた。「子供ができなくて悩んでるんだ」と。


 その時のマルミの反応を、私は忘れることができない。彼女はこう言った。「夏ばこさんもお母さんになられるんですねー」私はそれ以上話す気になれず、話題を変えた。『人の話を聞く』と言う意味を、マルミは理解しているのだろうか?この子は、本当に自分以外のことにまったく興味が無いのだな、と思った。


 私がマルミに対して感じた違和感は、その後思わぬ形で実証されることとなる。


(続く)

 

 


 この年になっても、まだ人間関係に煮詰まることがある。永遠のテーマか?人が二人いれば争いが起きるのは常としても、私は色々考え過ぎる。無用な気疲れを日々繰り返している気がする。若干人間不信気味でもある。忙しいと忘れているが、ちょっと暇になるとたちまちあれこれ嫌なことを思い出したりして、憂鬱になる。どうしようもないことはさらりと流せばいい・・・頭では分かっているのだが。人の中で生きているのだから、人間関係が快適であるに越したことはない。が、どうも私は他人と適度な距離を保って快適な関係を作ることが下手なようである。こうなったのはいくつか、原因となる出来事があったと思う。



 episode1 マルミ


 マルミは、結婚前に勤めていた会社の後輩である。私が寿退社するので、私の補充要員として採用されたのだ。年は私より4つ下だった。真面目で明るく、仕事もできるので私は気に入り、私が辞めて結婚してからも、時々会って食事などしていた。マルミの人懐こさが好きだった。


 何年か後、マルミは突然会社を辞めた。自律神経失調症で、心療内科に通院しているらしい。会社の仕事があまりにも激務なのと、待遇が悪かったので、とうとう心を壊してしまったというのだ。心配になり、私は会って詳しく話を聞くことにした。


 福福しかったマルミはひどくやつれ、顔は皺だらけでまるでおばあさんのようだった。一体どうしてこんなになってしまったのか?心を病んだ原因は結局仕事のストレスで、一時は昼夜の区別がつかず、不眠にもなったが、心療内科でもらった薬のおかげで大分よくなったという。今は自宅で静養しているとのことだった。マルミの両親は離婚しており、マルミは母親と二人暮らしだった。


 当時マルミには彼がいた。マルミの病気をいたく心配してくれる優しい男性で、マルミも彼を頼り切っていた。彼が心の支えだと。しかし、マルミの母親が交際にいい顔をしなかった。曰く、病気を治すのに専念するべきで、男にうつつを抜かしている場合ではない、と。


 どう考えてもおかしな理屈で、黙殺すればいいだけのことだと私は思ったが、母親ベッタリのマルミは母の言葉を無視できず、悩んでいた。つまり、彼を取るか母親を取るかである。そんな風に悩むレベルの問題ではないのだが、マルミは深刻に考え、悩んで悩んで母親を取った。彼に、母が会うなと言っているから会えない、と告げたのだ。


 彼に会えなくなったマルミは、再び憔悴して行った。私は、どう考えても誤った選択で、そんなにお母さんに気を遣わなくてもいいのではとアドバイスしたのだが、マルミはそれを受け入れられないようだった。落ち込んでどんどん痩せていくマルミをかわいそうに思う一方で、私はマルミの気持ちが理解できなかった。


 そうこうしている内に我慢できなくなったのか、マルミは彼と連絡を取り合ってしまった。そのことが母親にバレてものすごい勢いで怒られ、マルミは母親と大喧嘩をした。マルミの中で、母親より彼の存在が勝った瞬間だった。


 形勢が悪くなったマルミの母親は、私を味方につけようとしたのか、早朝7時に電話をかけてきた。母親は、マルミの彼のことを、会うなとこっちが言っているのに会うとはとんでもない男だとか、マルミは今までは私に何でも話していたのに急に話さなくなったとか、色々とぶつけてきた。私は内心「何言ってんだか」と思いながらも一応話を聞いたが、「28にもなるお嬢さんなんですから、放っておいていいんじゃないですか」と最後には告げ、電話を切った。明らかにあの母親は干渉しすぎると思った。


 マルミとマルミの母親は、密着親子だった。互いにべったりと依存し合い、無くてはならない存在として生きて来た。マルミの母親は20代で離婚して、以来ずっと独身である。一人娘のマルミが唯一の生きがいだったのだろう。娘の異性関係にはことさら厳しかった。だからマルミは、28歳になるまで恋愛らしい恋愛をしたことがなかったのだ。


 母から「自立」したいマルミは、私に就職の世話を頼んで来た。当時私の勤めていた会社に紹介してくれと。紹介するのは構わないが、果たしてマルミに激務の営業職が勤まるのか、私は甚だ不安だった。薬はもう飲んでいないとは言え、まだ心療内科に通院しているマルミである。いきなり営業ではなくて、まずはいつでも辞められるファストフードのウエイトレスなんかから始めた方がいいのではと言ったが、マルミは聞かなかった。


 とりあえず紹介して、マルミは私と同じ会社に入った。しばらくの間は頑張っていたが、やはり肉体的にも精神的にもキツ過ぎたようで、結局2ヶ月で辞めてしまった。当然紹介した私が責任を被り、マルミの担当は全て私がカバーする羽目になった。マルミのフォローでそれからの2ヶ月は、私にとっても相当にキツイものとなった。


 自信を無くしたマルミは更に落ち込み、同時に彼との間もしっくり行かなくなって来た。彼氏の方がマルミの母の干渉に根を上げ、距離を置くようになったのである。案外根性の無い男だった。よりどころを失くしそうになってマルミは一層不安定になっていった。


 この頃私は本当に頻繁にマルミに会った。私は、こうなった根本原因はマルミと母の癒着にあると思ったので、少し精神的に距離を置いたらどう?とアドバイスした。マルミはその意見に納得したのかしてないのか、曖昧に返事をするだけで、実際行動に移す気力はなさそうだった。この頃のマルミは本当に精神的に不安定で、とんでもない時間に電話がかかってきたり、そうかと思うと自分から会いたいと言ってドタキャンしたりしてきた。心療内科には相変わらず通っていたが、薬は服用していなかったように思う。その医院の治療方針なのか、あまり長い間薬は出さないらしかった。薬を飲み過ぎると薬に依存して、却って危険なのだそうだ。


 病気自体はもうほとんど治っており、後は本人の行動次第と言う見立てだったのだが、本人自身に自信が無いため、なかなか良くならないのかも知れなかった。


(続く)

 日付が変わったので昨日になってしまったが。


 相談者は30代男性。何年か前に妻が浮気をして家を出た。しかし結局相手の男と別れ、家に戻ったが夫婦仲がしっくり行かない。そうこうしている内に妻が再び男を作って家を出た。夫婦の間には娘がいるが、妻は娘を引き取る気はないと言っている。相談者が引き取って養育したいが、母親に捨てられた娘の顔を見ながら一緒にいるのが辛いので、躊躇している。自分の両親に任せたいと思ったが、両親はあまり乗り気でない様子。「罰を受けるつもりで子供をみる」と言っているので、子供の幸せのために良くないように見える。どうしていいか分からず、八方ふさがり。


 パーソナリティの今井通子は、「こうなった原因はあなたにあると思う。要するにあなたが奥さんをつなぎとめておけなかった」と言った。更に回答者のマドモアゼル愛は、「あなた自分にとって都合の悪い現実を認識する能力に欠けている。精神的に大人になれていず、未だに親に頼ろうとしている。自分の子供なんだから自分が主体になって面倒を見る気でいなければならない」と言う回答だった。


 う~ん今回も気持がいいくらいの一刀両断。


 相談者は途方にくれている感じだった。そんなこと言われるとは思ってもみなかった、という雰囲気だった。マドモアゼル愛の言う通り、自分に起こった問題を自分の問題として、受け止めきれていないのだろう。子供のことはこう言ったらなんだがかなりめんどくさい。めんどくさいことに蓋をして、見ないふりをしているうちに誰かが何とかしてくれると期待しているのかも知れない。だから子供のかわいそうな様子を見るのが辛いから一緒にいたくないなんて台詞が出て来るのだ。アホか。


 更にこの相談者、出て行った妻が2年後に帰って来ると思っている。妻を説得するのに2年ぐらいかけるつもりなのだと言う。


「奥さんもう帰って来ないよ」


 今井通子がキツイ一撃。そりゃそうだろう。以前にも一度出て行って、戻ってきたが結局また出て行ったのだ。猫じゃあるまいし、そう何度も戻って来るとは思えない。家を出た時に相応の覚悟はしているだろう。


 結論から言うと、相談者が不甲斐なさすぎなのだ。妻には出て行かれ、子供の養育もちゃんとやれそうにない。絵に描いたようなダメ男だと思う。幼稚なのだ。


 あ、言い忘れたが、マドモアゼル愛は男性である。(しかも中年の)