続・功夫電影専科 -136ページ目

続・功夫電影専科

香港映画を始めとした古今東西のアクション映画の感想などを書き連ねています。


「カンフーキッド4/SF大冒険悪ガキ三人衆」
越時空的小子/跨越時空的小子/飛越時空
Young Dragons Kung Fu Kids IV/Kung Fu Kids III
1987

▼『カンフーキッド』以降、同じ顏正國・左孝虎・陳崇榮らメンバーによって次々と続編が作られ、日本においても第一作を皮切りに、『カンフーキッド2/悪ガキ6人衆(老少江湖)』『カンフーキッド3/飛びだせ!悪ガキ三兄弟(苦兒流浪記)』『カンフーキッド続集(好小子第2集)』などが公開された。本作は年代的に見ると日本に登場した最後の『カンフーキッド』といえる。なお、本作以後も続編は作られ、第6弾までシリーズは続いていく。
とはいえ、シリーズといっても『カンフーキッド』の正当な続編である『カンフーキッド続集』以外は全て無関係の内容で、共通しているのは主演の3人と英題のみ。現在では第一作の『カンフーキッド』共々、まったく人目に触れられる事はなくなってしまっている。私は好小子特集を組むに当たって近所のレンタルショップに走ったが、残念ながら第一作と中古落ちの本作しか発見できませんでした…が、これが面白いから侮れません(笑

■時は清朝。左孝虎演じる霍元甲(!)の道場が、各地の道場を荒らしまわっている日本人の挑戦を受けた。左孝虎の父が日本人の挑戦に受けて立つも、直前に手傷を負っていて勝てる見込みは薄い。そこで左孝虎は父の変わりに闘うべく、修行のために仙人のもとへと向かったが、仙人の手違いで現代の香港に飛ばされてしまう。
てなわけで、舞台は現代へと移る。キャンプに来ていた顏正國と陳崇榮の兄弟は、そこで左孝虎と出会う。最初は弁髪姿の左孝虎を「おかしな奴だ!」と相手にしなかったが、左孝虎が過去の人間だと知ってびっくり仰天。しかも張沖(ポール・チャン)率いる組織の陰謀にぶつかり、左孝虎を現代に送り返そうとする発明家の呉大維(デビッド・ウー)ともども、一大パニックに巻き込まれていくのだった。

▲異邦人が現代に現れ、そこから巻き起こる騒動を描いた本作は、ありがちな展開ながらほんわか楽しいものでした。ストーリーにアラが多く、捻ろうとしたオチも弱いですが、個人的にはかなりお気に入りの部類です。
特に本作で1番大きな特徴は、第一作から二年が経ち、成長した3人のアクションにある。以前よりちょっぴり大人びた風体になった3人だが、背が伸びたおかげか功夫アクションも成長。武術指導は本シリーズおなじみの林萬掌が担当し、相変わらずのデンジャラスなスタントは健在だ。
更に、現代劇と功夫片の両方が楽しめる欲張りな構成となっており、ラストには日本人のボスで龍天翔(ショウブラで後期の張徹作品に出演した功夫スター)が出ているところも、功夫映画ファンにとっては嬉しいところである。
また、第一作でおデブの陳崇榮以外あまりキャラ立ちができていなかった点が、左孝虎を異邦人にするということで解消しているのも評価できるポイント。キッズ向けとしても楽しく、功夫映画ファンの鑑賞にも堪えうる、まさしく「もっと評価されるべき」作品なだけに、このまま埋もれてしまうのは非常に残念なのだが…。


「カンフーキッド/好小子」
好小子
Kung Fu Kids/Young Dragons Kung Fu Kids
1985

●功夫映画に一石を投じた黄一龍の存在。しかし彼に継ぐ後進が成されなかったことで、次なる好小子たちの登場はしばしのブランクを挟む事になった。本作は日本でもそこそこヒットした作品で、好小子の系列を決定的に形作るきっかけとなった記念すべき作品でもある(ちなみに、本作にはそれとは別にもう1つの大きなポイントが存在するが、それは後述)。
顏正國・左孝虎・陳崇榮の三人兄弟は、怖いおじいちゃんの陳慧樓(チェン・ウェイロー)のもと、山奥で暮らしていた。ある時、三人は陳慧樓と別れたおばあちゃんを探して町に行く事を決意する。初めての大都会に山育ちの三人は行く先々で大騒動を引き起こすが、なんとかおばあちゃんと再会を果たした。だが、三人を利用しようとしていたマフィアに妹をさらわれ、三人は単身組織へと立ち向かっていくのだった…と、物語はこんな感じだ。
本作で一番画期的だったのは、あくまで引き立て役に徹していた黄一龍(『三毛流浪記』は主演だが、クライマックスは王虎に持って行かれる)の立ち位置から一歩進んで、完全に好小子が主役となっている点にある。
幾多の功夫猛者と渡り合った黄一龍を引き合いに出すまでも無く、子供が功夫アクションをするならまず第一に求められるのが肉体的なポテンシャルである。本作に於ける顏正國ら三人の活躍ぶりはかなりのもので、十分良い動きをしている(やられ役のスタントも含めて)。
アクロバティックな動作と柔らかい体を駆使していた黄一龍のスタイルに対し、三人の場合はヌンチャクアクションや李小龍のパロディなど、現代的な味付けを加えたものを構築している。残念ながら殺陣はややバリエーション不足にも思えるが、これだけやってくれれば十分だろう。なお、武術指導を担当した林萬掌は本作の監督である朱延平(チュー・イェンピン)の作品に多数参加。倉田保昭の『悪漢列伝』では危険なスタントを交えたアクションで彩っている。
そして先述したが、本作にはある特異な特長がある。
もともと、彼ら三人の登場以前に日本で公開された功夫映画は、そのほとんどがジャッキーの影響下にあった。サモハンやユンピョウもジャッキー人気のあおりで日本に紹介され、似たようなことは李小龍の登場でフィーチャーされた王羽や倉田保昭、李連杰の登場で便乗して主演作が日本公開された劉家輝にも言える。これは以前『香港麻薬捜査官』の項でも語った話だが、本作はそれらとは違う、完全に新しい形式の作品として紹介された功夫映画なのだ。
ジャッキーが日本を席巻していた当時、ジャッキーの影響下ではない状態で日本でブレイクした功夫映画は、キョンシーと『少林寺』の李連杰と本作しかいない。そう考えるとこの作品、かなり希有なものだと思えてくる。
それでいて彼らがその後ヒットに恵まれなかったのは、本作の公開以降日本でリリースされた続編がビデオスルーだった事など、色々要因が考えられる。今では時代のアダ花と化している本作。しかし好小子系列の作品では間違いなく傑作であり、以後の好小子に路を作った作品として、再評価されるべき時ではないだろうか。


大武士與小[金票]客/大武士與小票客
Hero of the Wild/Heroes of Shaolin
1977

▼前回触れた黄一龍は、どちらかというと独立プロを渡り歩いた好小子だったが、逆に大手から羽ばたいた好小子も存在した。それが本作の主役である丁華寵だ。彼はショウブラで『紅孩兒』『八道樓子』『馬哥波羅』などの張徹作品に出演している。
以後、丁華寵は独立プロで活躍していくが、1960年生まの彼は1964年生まれの黄一龍よりも年上である。本作の撮影当時は17歳ぐらいだったと見られ、好小子とは言い辛い…というか、はっきり言って本作は好小子系列の作品ではないのだが、黄一龍と同年代のスターで、彼意外にもこのような人がいたということを知って頂きたく、敢えてこの特集に取り上げる次第であります。

■凧揚げを楽しむ丁華寵と師匠の元に、かつて師匠に敗北した陳星(チェン・シン)が現れた。勝負の末に師匠は死に、丁華寵は仇討ちを試みるが軽くいなされてしまう。
「仇を取りたいのなら俺と付いて来い」と呟く陳星に、丁華寵は追従した。陳星は旅の武芸者で、丁華寵の拾った犬を殺したりと非情な顔を見せる一方で、傷付いた丁華寵を看病したり、売られそうになった娘さんを助けたりと、その行動は要領を得ないが…。
陳星と丁華寵は相反しながらも同じ道を進み、丁華寵は陳星に教えを受けるが、仇討ちは忘れていなかった。だが、幾多の敵が襲い来る中で、いつしか仇討ち相手に情を感じ始めていた丁華寵…それは、陳星も同じだった。一方、陳星と対立している黄正利(ウォン・チェン・リー)の一派は、羅烈・ユンピョウ&元奎・龍君兒と、次々に刺客を送ってくる。どうやら陳星とは、大きな因縁のある相手らしい(英語吹替えだと細部に関しては不明)。
そして、ついに黄正利の登場となったが、さすがの陳星でも黄正利には苦戦し、敗北してしまう。そこで丁華寵が立ち上がり、陳星に代わって強豪たちと闘おうとするのだが、突然として龍君兒らを鬼面の刺客(冒頭でも陳星と接触)が殺害!続いていよいよ最後の決戦に挑もうという陳星と黄正利の間にも鬼面の刺客が割り込み、黄正利をも屠った。果たして、この鬼面の刺客の正体は!?
…って、残っている疑わしい人物は1人しかいないんですがねぇ(苦笑

▲丁華寵のアクションセンスは、本作に登場する数多の猛者を相手にしても引けを取らないものだった。流石に本作を好小子系列としてカウントするかどうかは微妙なところだが、若干17歳(推定)にしては結構な頑張りようではなかっただろうか。ルックスもそれなりに決まっているし、その後ブレイクしなかったことが不思議である。
また、ストーリーもアクションも凝った内容の本作は、単なる復讐劇に終わらないようなものになっている。丁華寵と陳星の一筋縄ではいかない顛末や、鬼面の刺客の正体も含めて、なかなか独創的な作品となっているのも評価できる。ここらへんは脚本に参加した倪匡(イ・クオン)の労力だろうか。
そして、本作には『詠春興截拳』同様に、なんとなく呉思遠(ン・シーユエン)の匂いが感じられるのだ。陳星・黄正利・武術指導も兼ねているユンピョウと元奎と袁信義の存在…その他にも、一部過去の呉思遠作品でも見たロケ地があったり、単なる功夫片に終わっていない物語の構成などなど、呉思遠の関与があったと思しきポイントがいくつか確認できるが…?


「秘法・睡拳」
「スリーピング・モンキー・睡拳」
睡拳怪招
Sleeping Fist
1980

●元祖"好小子"として『神腿鐵扇功』でその実力を見せつけた黄一龍は、続いて呉思遠と同じ独立プロの高寶樹(カオ・パオ・シュ)導演の『翡翠狐狸』に、また同年には協利電影の『臭小子』という作品にも出演したとされている。
彼自身の出演作は多くないが、その少ない活躍期間の間に呉思遠・高寶樹・そして協利電影と、独立プロながら一流どころと仕事が出来たのも、彼のバネの効いた京劇系のアクロバティックアクションと、何よりも好小子たる者に不可欠であったチャーミングな愛らしさがモノを言わせたからだといえるだろう。
そんな彼の出演作の中で、個人的にいちばん好きなのがこの作品だ。当時最盛を迎えていたコメディ功夫片の亜流作品で、袁小田が出演していることでも知られるこの作品。ここで黄一龍は梁家仁(リャン・カーヤン)と共に主演格として抜擢され、のびやかでやんちゃなキャラクターを生き生きと演じている。
浮浪児の黄一龍は、ある日ひょんな事から秘密捜査官の梁家仁と知り合う。彼は高雄(エディ・コー)を追っており、危険な任務のため、一時はくっついてくる黄一龍を追い払おうとした。
そんな彼らの前に高雄の魔の手が迫り、ピンチに陥る梁家仁と黄一龍。そのとき、彼らを窮地から救ったのは、その場に居合わせた秘法・睡拳の達人である袁小田だった。彼らは袁小田に弟子入りし、腕をみがくために睡拳の修業へと打ち込む…。
亜流作品であるが、この作品はなかなか評価できる。
梁家仁たちと袁小田の交流や、『酔拳』もどきではない独自性のあるストーリーで、単なるありきたりなコメディ功夫片には終わっていないのだ。睡拳という拳法はいささかムチャな気もするが(笑)、それをビシッと表現している梁家仁の腕も見事である。
そして忘れていけないのは黄一龍だが、『神腿鐵扇功』などのように途中退場することもなく、きっちりともうひとりの主役として勤め上げている。もちろんアクションでも頑張っており、好小子作品と見ても何ら差し支えない活躍を見せている。これ以後、彼がぱったりと活動しなくなってしまったのが悔やまれる所であるが…(一説によると黄一龍は武術指導の方へ転向したと言われているが、真偽の程は不明)。
当時の功夫片における"好小子"は彼の独占であるといえる。それは後続が続かなかったためでもあるが、同世代に彼と同じような好小子が出現しなかったのも理由の1つだ。だが、独立プロを渡り歩いた好小子である黄一龍に対し、大手ショウブラを古巣とする好小子もいたのである。


前々から各所で予告していたとおり、"好小子"特集をお送りしたいと思います。
…とはいえ、いきなり"好小子"と言われてもピンと来ないでしょうが、"好小子"とはキッズ向け功夫映画『カンフーキッド/好小子』のタイトルの事で、すなわち今回の特集はカンフーキッズ系の作品を辿っていく事が目的なのです。よって、この特集では演者である子役たちのことを総じて"好小子"と呼称していきます。
今回私がこの特集に着目したのは、ひとえに普段は香港映画サイトで取り上げられる機会の少ない好小子作品を、一度総ざらえしてみたいと考えていたことに起因します。現在ではほとんど注目されることの無くなったこれらの作品を見てみることで、あまり知られることの無かった功夫映画の側面を見てきたいと思っています。

まず、今回は好小子の始まりについて迫っていきたいと思います。
いきなり身も蓋もない事を言うが、今のところ私が調べた限りでは、「功夫映画で大人顔負けの活躍をする子役=好小子」が一番最初に登場した作品は何なのか不明だ(爆
まだスクリーンが白黒だった頃の武打片にそういうキャラクターは登場していたかも知れないが、そもそも70年代ごろまで香港・台湾の映画界には好小子を動員せずとも、きら星のようなスターが活躍していた。だからこそ誰もその隙間産業に目を向けることはなかったのかもしれないが、ただ1人だけ違う視点を持っている男がいた。それがあの呉思遠(ウン・シー・ユエン)だったのだ。
彼はショウブラから独立した後、低予算でも迫力満点の作品を輩出していた。予算がない分アイディア勝負だった呉思遠は、革新的な作品作りを要求されることになるのだが、そこで目に付いたのが"引き立て役"という役職だった。
主役を奮い立たせたり作品を明るくする存在として、引き立て役はある意味重要なポジションといえる役どころだ。しかし、単にそれだけで終わらせていいものなのだろうか。呉思遠は、そこで引き立て役である若輩の少年たちに、アクションで主人公のサポートを務めさせることを思いついたのである。
まず呉思遠は『必殺ドラゴン/鉄の爪』で梁小龍(ブルース・リャン)の従者として韓國材・呉明才・孟海らを活躍させた。このときの彼らのアクションは功夫映画ドキュメンタリー『死闘伝説TURBO!』で見ることが出来るが、梁小龍を助けて南宮勳と闘う彼らのアクションは素晴らしい。梁小龍を助けて縦横無尽にバク転を繰り返す彼らの姿に、度肝を抜かれた人は少なくない筈だ。
この後も『帰ってきたドラゴン』『無敵のゴッドファーザー』などで韓國材や孟海たちは活躍していくことになるが、間違いなく彼らこそが"好小子"の原点、そして現在にまで至る"好小子"系列の礎を成したのは呉思遠なのだと言えよう(ちょっと大袈裟?)。
そんな呉思遠も時代に合わせて様々な作品を作っていくのだが、呉思遠は韓國材たち以降、好小子を送り出すことはなかった。また、当時は歐弟(『三毛流浪記』)、林小虎(『詠春截拳』)といった子役が功夫映画にも出ていたが、功夫をメインのウリにはしていなかった。そんな中、呉思遠は『神腿鐵扇功』で韓國材や孟海のような逸材と遭遇する。そこで呉思遠と出会った少年こそが、元祖"好小子"である黄一龍だった…。