
「D&D/完全黙秘」
原題:給[父巴][父巴]的信/赤子威龍/英雄
英題:My Father Is a Hero/The Enforcer
製作:1995年
●前回紹介した釋小龍とは色々な意味で対照的な、謝苗(シェー・ミャオ)の出演作です。
90年代の好小子で一番変わったのは大陸系の人員が多くなった事ですが、これは好小子に限った話ではありません。90年代はワイヤーアクションなどの発展で功夫スターではない人でも水準以上のアクションが演じれるようになりました。
これに加え、時代の流れによって熟練したスターたちも次第に姿を消していき、凄いアクションを演じられる人材はそれこそ大陸系の李連杰(リー・チンチェイ)のような人材ぐらいしかいなくなってしまったのです。
そんな中において、釋小龍と謝苗は好小子というジャンルを守り通した功労者であったといえますが、この2人の日本における評価は真っ二つに別れています。謝苗は本作と『新・少林寺伝説』で李連杰と共演したことにより、多くの功夫映画ファンに名を知られるようになりました。
ところが、釋小龍は日本でリリースされたほとんどの出演作が、有名俳優のスター映画として宣伝されるという憂き目に遭っているのです。これらの作品はスター映画として問題のあるものが多く、知名度という点では謝苗が先んじる結果となってしまいました。
しかし、香港でスターとして成功していたのは釋小龍の方だったという事はあまり知られていません。釋小龍と謝苗では出演作の数が倍近く違い、本作も当初は謝苗ではなく釋小龍が共演の候補に挙がっていたと言われています。
このように現地での知名度は日本と真反対だった謝苗ですが、彼のポテンシャルは釋小龍に引けを取ってはおらず、二度も李連杰との共同主演作が作られたことからも実力の高さが伺えます。
本作は李連杰による潜入捜査アクションで、敵には李連杰と同じ大陸系の于榮光(ユー・ロングァン)、その手下には盧惠光(ロー・ワイコン)や倪星(コリン・チョウ)が並び立ち、ヒロインは梅艷芳(アニタ・ムイ…本作での役名は方逸華!)が担当していますが、謝苗はそんな濃いメンツに負けず劣らずの活躍を見せています。
また、元奎(コリー・ユン)と元の七小福コンビが振り付けた殺陣は迫力満点で、ラストのヨーヨーアクションやジャケット拳法などはその極み。元奎は監督も担当しており、いつもなら見せ場を欲張って作品そのものが散漫な出来になってしまうところを、シリアスな雰囲気でまとめあげていました。
…さて、そんな正反対の道を進んだ釋小龍と謝苗ですが、彼らはその後『血濺獅王陣』(あの石天龍も出演)と『黒道少林』(『カンフーハッスル』の行宇も出演)の2本で合流しています。あまり詳しい情報は解りませんが、いずれこれらの作品もいずれ見てみたいと思っています。
そんなこんなで70年代、80年代、関連作品、そして90年代の好小子系列を探ってきましたが…この続きは次回の特集最終回にて!

「ビビアン・スーの恋しくて…」
笑林小子
SHAOLIN POPEYE/SHAOLIN POPEY
1993
▼90年代を向かえ、香港・台湾の映画界は、現代的なオシャレ系映画の出現やワイヤーを駆使した古装片の登場と、大きなうねりを見せていた。この時期、好小子系列の作品は『少林キッズ(小醉拳)』や『少林活寶貝』などがあり、特に『少林活寶貝』は『フル・ブラッド』に出演していた蔡宇が主演し、劉家輝や王龍威や郭振鋒といった豪華な面子が共演している(残念ながら未見)。
そんな中、かつて『カンフーキッド/好小子』をヒットへと導いた台湾の大御所、朱延平(チュー・イェンピン)が新たな好小子を羽ばたかせようとしていた。それが本作で重要なキャラクターとして登場する釋小龍(シク・シウロン)だ。ただ、日本での彼の扱いはというと…(後述)。
■林志穎(ジミー・リン)はサエない高校生だが、ある日同級生のビビアンに一目惚れしてしまう。ところが彼女には既に彼氏がおり、その彼氏は林志穎が通う学校の教頭の息子で、しかもすっごく嫌なヤツだった。目の上のタンコブである彼氏の嫌がらせにもめげず、何度もビビアンにアプローチをかける林志穎。しかし力の差は歴然で、ビビアンの目の前で彼氏とのケンカにもボロ負けしてしまう。
その後、傷心の林志穎は父の転勤で大陸へと引っ越した。そこで林志穎の弟・[赤β]劭文(役名が周星馳!)は少林寺の釋小龍(役名が李連杰!)と出会い、[赤β]劭文の進言で林志穎は功夫の特訓を受けることになった。
少林寺にホームステイし、過酷な修行を経た林志穎はたくましく成長。再びビビアンたちのいる町へと戻った。ところが、ビビアンの彼氏と彼の父である教頭がよからぬ話をしているところを聞いてしまった林志穎は、教頭たちに目を付けられてしまう。
林志穎は揉め事の解決にと行われた野球対決で見事にリベンジを果たすが、腹の虫がおさまらない教頭親子が彼らの前へ現れた。教頭は用心棒のマーク・ホートンらを引き連れて林志穎たちを捕らえようとするが、釋小龍たちの登場で形勢は逆転!あとはビビアンとの恋の行方だけど…?
▲本作は邦題の通り、日本でもブレイクしたビビアン・スーをフィーチャーしているが、タイトルのようにビビアンの恋物語というわけではない。出番も多いとはいえないし、ビビアンファンからすればちょいと納得がいかないかもしれない。
しかし、内容はシンプルな恋愛コメディで、明るく楽しく見ることが出来る。また、『シティー・ハンター』でジャッキーが「ストリート・ファイター」の実写版をやっていたが、本作でも似た感じの格闘ゲームのキャラに登場人物が扮して寸劇を繰り広げる場面がある。他にも『ホーム・アローン』の劣化コピーみたいな場面があったりするなど、さすがは近年『カンフー・ダンク!』なんか作っちゃう朱延平。ある意味王晶(バリー・ウォン)もびっくりのパクリっぷりだ(爆
そして肝心の釋小龍だが、本作を撮影した当時の年齢はなんと5歳(!)。もしかすると歴代最年少の好小子と思われる。あとこれは余談だが、釋小龍は私より1つ年下です。なんだかちょっと親近感が湧いてきちゃったりなんかしちゃったりして(笑
そんな彼は河南省出身の武術家一家の出で、本作ではワイヤーなどを織り交ぜたバトルを披露し、幼いながらもかなり頑張ったアクションを見せている。過去の好小子にあったようなアクロバティックな動作はそんなに見られないものの、台湾での人気は中々のものだったらしく、本作も続編が製作されている。
このほかにもビビアンは可愛いし、[赤β]劭文はちょっとウザいけど(爆)演技でも頑張っているし、作品自体も取り立てて酷い出来というわけではなかった。それなのに、本作は日本ではまったく注目されていない。それはひとえに、本作がビビアンをフューチャーして売り出された事が起因していると思われる。
実は、釋小龍の出演作は他にも日本に登場している。『ビビアン・スーのパイレーツの逆襲(黄金島歴險記/超級中國龍)』『金城武のチャイナ・ドラゴン(中國龍)』『ビビアン・スーのロマンシングドラゴン(龍在少林)』がそれだ。
当ブログでも『ロマンシングドラゴン』を紹介した事があり、これ以外には『アルティメット・バトル/忍者VS少林寺』という作品もある。が、ご覧のようにビビアンや金城くんをメインの売りとしており、釋小龍の名前はどこにも無い。釋小龍はこの売られ方ゆえに日本で認知されにくくなっているものと思われるが…う~ん。

「クロオビキッズ」
原題:3 Ninjas
中文題:忍者小英雄
製作:1992年
▼70年代、80年代、キョンシー系と、好小子たちを追いかけていよいよ90年代へと突入するわけだが、ここでちょっと寄り道だ(なんか最近こんなのばっかでスミマセン(爆))。
この本作はアメリカ産の好小子作品…言わば、『カンフーキッド/好小子』のアメリカ版である。けっこうヒットした作品のようで、シリーズ化されて『クロオビキッズ/日本参上!』『クロオビキッズ/夏休み決戦!』『クロオビキッズ/メガ・マウンテン奪回作戦』などが作られている。
この作品、『カンフーキッド』とは年代的に開きがあり、どちらかというと『ホーム・アローン』の影響下にある。しかし『カンフーキッド』と似通った要素をいくつか持っており、好小子系列の作品としてここに紹介する次第である。
■夏休みにニンジャであるおじいちゃん(ビクター・ウォン)の元で修行に励んでいたマイケル・トリーナー、マックス・エリオット・スレイド、チャド・パワーの三人は、ニンジャとして実力をつけていた。
夏休みが終って学校が始まったが、父親のアラン・マクレーはFBIの仕事であまりかまってくれず、学校ではいじめっ子が幅をきかせていた。そんな時、彼らの父親が追っている麻薬ディーラーのランド・キングスレーは、邪魔なアランを脅そうと3人の息子の誘拐を計画する。
ランドはビクターとはかつての同門であり、マイケルたちはおじいちゃんが悪人ではないかと疑うようになってしまう。結局、彼らは乗り込んできたランド一味に捕らえられるが、果敢にも脱出しておじいちゃんと共に逆転へと転じるのだった…。
▲本作には『カンフーキッド』と類似するポイントがいくつかある。
3人の好小子が主役で、うち2人はあまりキャラ立ちができておらず、残った1人がその2人によく弄られるという構図(『カンフーキッド』でいえば陳崇榮が、本作ではチャド・パワーがそれに当たる)。ヌンチャクの多用やクライマックスでの連戦、祖父に修行を受けた等々…『カンフーキッド』から影響を受けているのではないかと思われる一致が散見されるのだ。
個人的には『ホーム・アローン』的な作品はあまり好きではない。というのも、やられ役となるマヌケなコソ泥(本作でそれに相当するキャラが登場するのは中盤のみ)よりも、それとは別個に登場する悪ガキが胸糞悪く、倒されるべき悪が倒されてもその悪ガキがのさばったままというのが好きではなかった。
『ホーム・アローン』だと上の兄貴たちがヤな感じだったし、同シリーズの『3』は散々主人公をケナしていた姉と兄が、終盤で手のひらを返したかのように「よくやった!」と言うのにも違和感を感じた。だからと言って「悪ガキもいっしょに逮捕されちまえ!」とまでは言うつもりではないのだが(爆)、本作はそこらへんの決着をきっちり付けていたので好印象を持つことができた。
また、アクションに関しては色々とうるさそうなハリウッド作品にもかかわらず、作中で子供たちが繰り広げる格闘アクションはなかなかのもの。さすがに『カンフーキッド』にまでは及ばないが、ノンスタントでアクロバティックなアクションを見せたりして頑張っている。
そして、それとは別に大人たちが披露するアクションは、マーシャルアーツ映画として見ても楽しめる出来だ。クライマックスのビクターVSランドの一騎打ちは(ビクターはさすがにスタントを多用していたが)、結構いいバトルだったので意外に思ったほどである。
ちなみに本作は『カンフーキッド』と同様に日本で劇場公開されたのが第1作のみで、それ以降の続編はビデオスルーとなり、現在ではレンタルショップの片隅でホコリをかぶって置いてある。そこまで符合してもらわなくてもよかったと思うのだが…(苦笑

「新・桃太郎」
捉鬼雜牌軍
The Child of Peach
1987
●日本でキョンシーがブームを巻き起こした時、二匹目のドジョウを狙って『キョンシーズ』のスタッフが作ったのがこの作品である。どちらかというと前回紹介したようなキョンシー映画より、こちらの方が好小子作品としては面白いが、特にメインで取り上げられてはいないため、今回も特集の番外として紹介する次第であります。
桃太郎は桃太郎なので基本となるストーリーは皆さんご存知の通り。桃から生まれた桃太郎が犬・猿・雉を引き連れて鬼が島で鬼退治…という話だが、そのまんま映画にしてもあっという間に終わってしまう。そこで本作は色々と脚色をしているのだが、オリジナルを踏まえて見てみると「なるほど」と思うような独自の設定が組み込まれている。
だが、子供に見せるにはちょっと微妙な場面もあったりするのが台湾映画(苦笑)。ばっちいシーンやえっちいシーンのほか、残虐なカットもあったりするから油断できないのだ。
特に過激なのが残虐シーンで、劇中鬼たちは村や城などを襲撃し、家を燃やして人々を虐殺しまくるという場面がある。子供向けにしてはちょっとハードじゃないか?と思うところだが、本来童話などでは触れられない鬼の"悪事"を描くのは画期的な事だし、実際に鬼が悪事を働くのであればこうなるだろうという描写をそのまんま具現化したワンシーンとして興味深いものがある。
主演はボーイッシュな魅力に定評のある林小樓(リン・シャオロウ)だが、好小子特集として本作を取り上げているので、今回は犬・猿・雉を演じている3人の好小子にスポットを当ててみたいと思います。
まず犬役を演じた陳子強は、『キョンシーズ』でお馴染みのチビクロ役を演じていた人。成長後は甄子丹の『ヒート』にも出演しているが、ここではあの『カンフーキッド』の左孝虎も出演しているので、好小子ファンは要チェックの作品といえるかも。猿役の徐育達は本作以外だと『ドラゴン・キッズ』という好小子作品に参加している(こちらも特集で取り上げようと思ったが、近場で見つからず断念)。そして雉役の楊如球だが、この人だけは何故か本シリーズ以外での情報は掴めませんでした。
さて、そんな彼らのアクションを指導したのは趙中興率いる趙家班だ。
趙中興や趙家班については『ドラゴン特攻隊』の項でも取り上げたが、彼らはワイヤーアクションやスピーディーなファイトを得意としている。本作でもそれらを駆使した功夫アクションは見応え充分。功夫映画ファンとしては、クライマックスでの林小樓VS朱客(張徹作品などに出演したショウブラスター…本作では水の鬼に扮する)だけでも見て欲しいところ。
作品自体も、笑いありシリアスありのしっかりとした作りで面白い。『カンフーキッド』と合わせて見て欲しい作品です。

「幽霊道士」
原題:疆屍小爺
英題:Magic Story/Young Master Vampire
製作:1986年
●今回の好小子特集では、キョンシー映画は敢えて除外しています。その理由についてですが、必ずしも好小子自身によるアクションがあるとは限らないし、ホラーコメディだとファイトシーンが存在しない可能性もあるからです。
しかし、大きなムーブメントを起こしたキョンシー映画というジャンルは、子供をメインに据えた好小子作品と通ずるところがあるのも事実。という訳で、今回はちょっと寄り道して、キョンシー映画から1つだけ紹介いたします(とはいえ、あくまで寄り道ですので“番外編”扱いです)。
ある真夜中、キョンシーの家族の中からベビーキョンシーが行方知れずとなる。父・母・祖母のキョンシーは彼を探して街を徘徊。これによりキョンシーの被害者も多発していく。一方、吸血鬼の研究家である董驃(トン・ピョウ)は、助手(自分の娘と恋仲)と共に吸血鬼(キョンシーもその一種であるため研究対象)を調べていた。
しかし警備隊長の米奇とその部下である孫國明(ソン・コクミン)は、霊幻道士の火星(マース)と共謀し、キョンシーで一儲けをしようと企んでいた…。
てな感じのストーリーなんですが、ハッキり言って本作は『霊幻道士』と『霊幻道士2/キョンシーの息子たち!』のパクリです(爆
時代設定・キャラクターの立ち位置などは『霊幻道士』から、董驃のキャラやベビーキョンシーとキョンシー一家は『霊幻道士2』から拝借したもので、本作ならではという要素が何一つとして見えてきません(例外は祖母キョンシーぐらい)。
特に、米奇が演じる警備隊長は明らかに『霊幻道士』を意識しておきながら、非常に不快なキャラとなっていました。そもそも演じているのが米奇なので愛嬌のカケラも無く、キョンシー一家を惨殺してベビーキョンシーに何発も銃弾を撃ち込むなど、完全に外道と化しているので少しも笑えないのです。
登場人物たちの行動もメチャクチャで、ラストではさっさとベビーキョンシーを家族の元に返せばいいのに、逃げ回って右往左往しているうちにキョンシーが全滅するなど、本末転倒な結果となっています。
アクション面でもその優柔不断さは炸裂し、『霊幻道士』テイストなキョンシーとの追いかけっこで見どころとなるのはクライマックスの一戦のみ。本作では孫國明や火星の他に、祖母キョンシーを演じた黎強權(ベニー・ライ)が控えていますが、スタントの方も思い切りに欠けていました。
ブームに便乗しようとする下心が丸見えな珍作ですが、製作はなんとあの羅維(ロー・ウェイ)! もちろん妻の許麗華も一緒で、よくよく見るとキャストやスタッフにジャッキー映画にゆかりのある人物が多く見えます。
ひょっとしたら羅維は、キョンシーブームに加えてジャッキー人気にもあやかろうとしていたのではないでしょうか? ジャッキーに去られ、どうにかブームに乗ろうと四苦八苦している彼の姿を想像すると、なんだか切ない気持ちになってしまいます(爆