続・功夫電影専科 -134ページ目

続・功夫電影専科

香港映画を始めとした古今東西のアクション映画の感想などを書き連ねています。


一代天嬌/萬世天嬌
英題:Revengeful Swordswoman
製作:1979年

●嘉凌(ジュディ・リー)主演の本作は、『太極八蚊』『黒名單』と同様の「辻斬りの旅」的な作品だ。
嘉凌は王侠に超スパルタな修行を受けていた。この王侠は嘉凌の両親を殺した仇敵であり、剣士の聞江龍と知り合った嘉凌は一矢報いようと動いた。しかし嘉凌と王侠の決闘のさなか、毒蛇に襲われそうだった嘉凌を王侠がかばった。嘉凌の復讐を手助けしようとした聞江龍によって王侠は死すが、今わの際に王侠は意外な告白をする。
実は、嘉凌の両親は王侠ではなく別の悪党によって殺されたというのだ。嘉凌の両親の使用人だった(?)王侠は、是が非でも嘉凌が復讐を遂げられるような腕前になるようにと、敢えてああいう指導をしていたという。王侠を弔い、聞江龍から謝罪の便を受け取ると、嘉凌は仇討ちの旅に出発した。
道中、おっちょこちょいな投石男と出会った嘉凌は彼を同行させるが、仇討ち相手を探ろうとする彼女の前には次々と敵が現れる。心配した聞江龍が影ながら彼女をエスコートしているが、彼とは別にたびたび嘉凌を助ける謎の覆面男がいる。果たして覆面男の正体は?そして、嘉凌の仇討ちは成就するのか?といった感じで物語は展開されてく。
本作は特に凄いスターが出ているわけではないが、他の「辻斬りの旅」系作品と違い、立ちはだかる敵の数が多いのが特徴だ。黒幕も含めると総勢10人以上もの敵が嘉凌と闘い、有名どころでは董力(トン・リー)、高飛(コー・フェイ)、嘉凱、王折生などが次々と登場する。
武術指導はテロップが無かったため不明だが、アクションに関してはなかなか面白く、武侠片なのに武打アクションがわりと多め。個人的に1番の収穫は嘉凌で、本作の彼女はちょっと『新桃太郎』を髣髴とさせるボーイッシュな姿で登場し、アクションでは高い蹴りを放ったりして見応えのあるバトルを繰り広げている。これまであまり彼女のアクションで「これは!」と思ったものに巡りあう事が出来なかっただけに、嬉しい驚きを感じることができた。
また、「辻斬りの旅」系作品は性質上ストーリーが薄くなりがちだが、この作品ではそういった事態になっていない点は評価できる。ストーリーは後半から種明かしになるにつれて解りにくい展開が続き、オチもそんなにビックリするようなものではなく、盛り上がりには欠けているものの、嘉凌のアクションが心行くまで堪能できる一本。
「辻斬りの旅」系作品の探求は、まだまだ続きそうです。


怪客
英題:The Karate Killers/Stranger from Canton/Stone Cold Wu Tang
製作:1973年

▼B級功夫スター、白彪(バイ・ピョウ)の主演作である。白彪はいろんなところに顔を出している人で、日本でも『Gメン75』の香港ロケに楊斯と共に参加したり、主演作の『アムステルダム・コネクション』がリリースされている。
そんな彼の初期の主演作がこの作品で、当時大ヒットを記録していた『ドラゴン怒りの鉄拳』の影響を受けた作りになっている。だが、脚本を倪匡(イ・クオン)が担当しただけあって、それなりにオリジナリティのある作品に仕上がっているところは評価できる。

■本作は抗日作品ではなく、『ワンチャイ/天地大乱』みたいに清朝が敵として登場する。革命派を一網打尽にしようと、清朝はしつこくメンバーを追っていた。アメリカ帰りの風来坊・白彪は、功夫道場を隠れ蓑にしている革命派の魯俊谷たちと出会うが、次々と革命派のアジトを襲撃され、メンバーはほとんど全滅してしまう。残された白彪と魯俊谷は誤解からぶつかり合うが、のちに協力して高岡たちと闘っていく事となった。
その後、白彪&魯俊谷は高岡との激しい戦いの末に満身創痍となり、いったんは引き分けで終わる。ところが高岡は用心棒として新たに馮毅(フォン・イー…思いっきり『怒りの鉄拳』な格好で登場)を呼び寄せ、まだ傷の癒えていない魯俊谷を倒してしまった。
高岡は殺害した魯俊谷の遺体を白彪に送りつけ、ヒロインを人質に取って挑発。怒りに燃える白彪はこの圧倒的に不利な条件の下、最後の闘いのに望むのだった…。

▲物語は革命派と清朝との戦いという一点に集中しており、緊迫感溢れる攻防戦が繰り広げられている。ほとんどノンスター作品であり、主演から敵役から脇役に至るまで派手なキャストではないものの、全体的に演出もアクションもすこぶる頑張っていて、無名の作品にしてはなかなか面白い。特に功夫アクションについては迫力満点であり、どちらかというと呉思遠作品っぽい肉弾戦に終始しているのがポイントだ(武術指導は陳少鵬)。
また、本作は『巡捕房』『龍虎門』などの監督である魯俊谷が重要な登場人物として活躍している。彼自身も役者としての出演作は多いのだが、羅維(ロー・ウェイ)や黄楓(ファン・フェン)などの役者としても活動している監督とは違い、きっちりとアクションもこなしている。彼は時に武術指導も担当する事があるらしく、そういう点ではジャッキーやサモハンの大先輩と言えなくもない。
単なる『怒りの鉄拳』フォロワーではない渋めの作品。こうなると同キャスト・スタッフで製作された姉妹作の『戦北國』も気になるところだが…?


飛鶴
英題:The Crane/Rivals of the Dragon
製作:1980年

●本作はモノホンの武術家、陳克夫(英名はジェフェリー・チャン)が出演している事でも知られている作品である。
陳克夫その人については詳しいサイトを見ていただくとして、陳克夫と共に主演としてクレジットされているのは、七小福の元(ユエン・タク)だ。七小福からショウブラに渡った元は、武侠片などに出演する傍ら、武術指導として大量の作品に関わった。武星としては『暗黒街/若き英雄伝説』で金城武やユンピョウと、『神話』でジャッキーと闘っている。そんな彼が本作の主演を任されたのは、やはり当時のジャッキー人気にあやかっての事だろう。
この作品、香港映画には珍しく全編に渡ってアメリカロケが行われている。アメリカロケ&ジャッキー関連のキャストといえば、ジャッキーの師・于占元が主演した『師父出馬』を連想してしまいがちだが、当方はまだ『師父出馬』を見ていないので何ともいえないところ。ストーリーはアメリカ在住の武術家・陳克夫が、押しかけ弟子の元らと共に黒社会の陰謀に巻き込まれ、悪の組織と闘っていくというものだ。
はっきり言って物語は特に面白いものでもないし、キャストも陳克夫と元以外は知らない俳優ばかり。全体的なアクションの出来ももっさりとしていて、やや迫力に欠けている。だが、見た目は普通のおじさんなのに結構動ける陳克夫や、七小福仕込みの身の軽さを見せる元のアクションは一見の価値アリで、ラストバトルでは陳克夫が貫禄のある立ち回りを見せていた。
まぁ、それ以外はさして語るべき箇所は無いのだが…。


七歩迷踪/七歩迷蹤
英題:Seven Steps of Kung Fu/Kung Fu of Seven Steps/Shaolin Raider Of Death
製作:1979年

▼巨匠・張徹(チャン・チェ)導演がショウブラザーズで送り出した最後期のスター、程天賜の主演作である。スターとして一本立ちする以前の程天賜は、張徹作品の端役や台湾映画などで脇役として活躍しており、日本では『クレージーモンキー・笑拳』でジャッキーと対戦している姿が確認できる。そんな彼が張徹にスターとして担ぎ出される以前の主演作がこの映画で、当時流行していたジャッキー風のコメディ功夫片である。

■程天賜はおっちょこちょいだが功夫の腕前は達者な好青年。ヒロインの張正蘭とは良い仲で、師匠の嘉凱(茅瑛の『舞拳』でラスボスを演じた人)からは手厚く功夫の修行を受けたりと、充実した日々を送っていた。
ところがそんなある日、お寺でりんごをつまみ食いしようとした程天賜は、そこで奇妙なメダルを拾った。メダルを見た嘉凱は「これをどこで拾ったんだ!?」と顔色を変える。実はこのメダルは悪党の常山(チャン・サン)一味のメンバーの証であり、常山たちが再び動き出そうとしているのでは…と、嘉凱は危惧した。
嘉凱が予見したとおり、続々と町に異邦人達が現れ始める。幹部のリーダー格である龍飛(ロン・フェイ)、ヒゲ面の金銘(トミー・リー)、傘を武器にする徐永康、紅一点の林伊娃、槍使いの王折生らが、常山の腹心・劉立祖のいる屋敷に集結しはじめたのだ。
程天賜と嘉凱は敵の動向を探ろうと屋敷に潜りこんだりするが、動きを察知した敵方も程天賜たちへ接触を開始。龍飛たちに襲われて嘉凱が重傷を負うなど、攻撃は日増しに激しくなっていく。そこで嘉凱は更なる修行を程天賜に施し、来るべき決戦に備えた。次々と襲い来る常山一派の刺客たち。特訓のかいもあって、程天賜たちは順調に敵を倒していくのだが、ついにラスボスの常山が姿を現すのだった…。

▲ストーリーは特にこれといって深いものではないものの、シリアスになりすぎず、コメディ部分もくどくなりすぎない、さっぱりした仕上がりになっている(ちょっとコメディ色が足りないかな?)。本作の見どころはそのアクションにあり、地味だが技巧派揃いのキャストで締められた本作は、最初から最後まで怒涛の功夫アクションが続いていく。
特に、常山たちとの本格的な対決になる後半からは攻防戦に徹しているため、濃いバトルがひっきりなしに続くという、この手のファンにはたまらない構成になっている。まずはVS林伊娃を皮切りに、VS徐永康・VS金銘・VS龍飛&謎のモンゴルブラザーズ(笑)・そしてVS常山と、手を変え品を変えて繰り広げられる戦いはなかなか面白い。
主演の程天賜は『五遁忍術』でものびやかでアクロバティックなアクションを見せていたが、本作でも高度な技を次々と披露。嘉凱とのタッグバトルやウェポン戦なども難なくこなし、最後は台湾映画随一のキッカーである常山との一大バトルと、改めて程天賜の武打星としての実力を評価したいところである。


これまで、駆け足だが好小子について色々と触れてきた。
呉思遠作品から端を発し、黄一龍や丁華寵らが好小子系列の基礎を固めた70年代、顏正國らカンフーキッドたちが1つのジャンルとして成立させた80年代、マイケル・トリーナーら白人好小子の出現を挟み、90年代は釋小龍と謝苗の2人によって受け継がれた。
だが好小子系列の作品はそれぞれの最盛期が飛び飛びであり、大きく間隔が開いている。このように1つのジャンルとして継続していない分、好小子作品には通常の功夫片や武侠片、そして香港ノワールやコメディ作品のように、受け継がれて発展していく物が無いように思える(スタント技術については功夫片などの物で、好小子系列ならではの"継承"は存在していない)。
そればかりか、現在に於いてもキッズ向けという特異性ゆえに、あまり功夫映画ファンからも目を向けられていないのが現状だ。しかし、今回レビューした一連の作品(番外は除外)は、必ずどれも見どころがあり、また、主演を務めた好小子たちの頑張りようは賞賛すべきものだ。
キッズ向けであるという点に関しては賛否の分かれる所であるが、好小子たちが見せる可愛らしい表情と、打って変わって繰り広げられる功夫アクションの数々は、とても微笑ましいものばかりである。

そして、時代は2000年代を迎えている。
不況で元気のない香港・台湾の映画界にこれといった好小子たちは(私の知る限りでは)まだ現れていないようだが、この日本で先ごろ初の国産好小子片・『カンフーくん』が公開されたのは記憶に新しいことだろう。主演の新たなる好小子・張壮(チャン・チュワン)が、これからどんな活躍をしていくかはまだ誰にもわからない。だが、確実に好小子というジャンルそのものは彼へと「継承」されているのだ。
時代の隔たりがあろうとも、世代の開きがあろうとも、彼らの放つ輝きは決して衰えはしない…"好小子"たちよ、永遠なれ!