続・功夫電影専科 -100ページ目

続・功夫電影専科

香港映画を始めとした古今東西のアクション映画の感想などを書き連ねています。


「リアル・ファイト ~最強の鉄拳伝説~」
原題:CONFESSIONS OF A PIT FIGHTER
製作:2005年

●またも本物の格闘家を起用した格闘映画だが、今回はちょっとだけ安心できる要素がある。この作品の監督は、あのアート・カマチョなのだ。カマチョといえば無数の作品でスタント・コーディネーターとして活躍している人で、この度の特集でも彼の仕事のひとつである『テロリスト・ウェポン』を取り上げたばかりである。本作以外にも幾つか監督作があるということで、とりあえず変に身構えず見ていたのだが…。
結論から言うと、この映画は『ザ・スコーピオン キング・オブ・リングス』と『パウンド』の相の子だ。要するに殺人を犯して服役した主人公が、弟を闇の闘技場で殺されて敵討ちのために単身乗り込むという話である。
何というワンパターン……もとい、お約束なストーリーだろうか。この時点で見る気がかなり削がれたが、それはまだ序章に過ぎなかった。なんと本作は上記のようなストーリーラインをなぞっておきながら、またもや色恋沙汰へ走る展開に陥ってしまうのだ。香港映画だと物語の中に挟まれる色恋沙汰はノリと勢いで押し切ってしまうから、特にこれといって気にならない。問題なのはマーシャルアーツ映画での恋愛模様で、作品によっては壊滅的につまらない物も存在している。もちろん本作はその壊滅的につまらない部類に入るもので、主人公のヘクター・エチャバリアと恋仲になったヒロインが最終的に彼を裏切るというとんでもないオチが付くのだ。
否、これはそのヒロインに限った話ではない。どうやらカマチョは終盤でドラマ作りが面倒臭くなったらしく、クライマックスでヒロインや死んだ弟の妻などといった各キャラの結末を、なんとも投げやりな終わらせ方で締めている。これが取るに足らないサブキャラとかならまだ良いが、肝心のボスまであんなテキトーな死に様では…アルバート・ピュンの域には達していないが、この辺りのカマチョ演出には誰しも首を捻らざるを得ないはずだ。
恐らくカマチョは、「ドラマを充実させて他とは違う格闘映画を目指そう」と思っていたのだろう。個々のキャラクターに自らの内面を語らせたりするなど、頑張って重厚なドラマを作ろうと試みた痕跡がそこかしこに見て取れる。だが格闘映画は最強の仇敵との戦いがメインイベントでなければならないのに、何故かラスボスのクイントン・ランペイジ・ジャクソンだけキャラの掘り下げが行われておらず、その扱いもまるで重要視されていない。
一方で格闘シーンは監督自身が殺陣師ということもあってか、平均的なボリュームは維持している。しかし動きのバリエーションが少なく、余計な画面効果とバストアップばかりのカメラアングルが酷いため、語るべき点は何も無し。あっさり裏切るヒロイン・あっさり死ぬボス・あっさり目の扱いを受ける仇敵の三点セットに加え、乾いたラブストーリーと10分で飽きが来る格闘シーンが見たい人は、ぜひ本作をオススメ致します(萎


「パウンド」
原題:STREET WARRIOR
製作:2008年

●かつて軍人として活動していたマックス・マーティーニは、上官をシバいた罪で除隊処分にされて故郷に戻ってきた。顔なじみのヴァレリー・クルスとの挨拶もそこそこに弟夫婦の元へと向かったマックスだが、そこで弟がボロボロの昏睡状態になっていることを知り、愕然とする。弟の妻が言うには、大金を稼ぐために非合法の闘技場へ出場した末にこうなってしまったと言う。さっそくマックスは調査を開始し、ニック・チンランドが支配する格闘イベントへと単身乗り込んだ。
そこではマックスを含めて8人の闘士がおり、トーナメントで優勝の座を巡って激しい戦いが繰り広げられるのだった。このトーナメントで優勝した者には、高額の賞金と不敗の王者シドニー・J・リューフォ…というかハート様(どう見ても『北斗の拳』のハート様にしか見えません・笑)への挑戦権が手に入る。このハート様が弟に重傷を負わせた宿敵で、加えて弟の妻が人質に取られたため、嫌がおうにもマックスは闘いに勝たなければならなくなってしまう。数々の死闘を越え、いよいよ最後のハート様と闘うマックスだったが、そこには意外な結末が待ち受けていた…。

今回も新作の裏社会闘技場モノだが、こちらは『ザ・スコーピオン~』に比べて随分と普通な作品だ。「俺には家族が居るんだよ…」と話したファイターが次の試合で即退場したりと、ストーリー展開等についてはいつもの如しといった感じで、特に拾い所はない。ただ、前回の『ザ・スコーピオン~』は恋愛ドラマと格闘アクションのバランスが崩れていたのに対し、こちらは恋愛も格闘もきちんと振り分けられており、ストーリーのテンポも良かったので最後までサラッと見ることが出来ました。個人的には、本作と『ザ・スコーピオン~』とどっちを見るか聞かれたら、迷わず本作を選ぶかと思います。
一方の格闘アクションは安定した作りで、各個のキャラクターとファイトスタイルもきちんと描き分けられているし、キャラ的にもいい奴が多かったので好印象。ラスボスのハート様がメタボ体型で凄まじく嫌な予感がしたが、ちゃんと動けているように撮れていたのでこちらも合格だ。ファイト・プロデューサーはあの『NO RULES/ノー・ルール』と同じ人だが、本作では道具や武器で程よくアクセントを効かせているため、無個性で終わった『NO RULES』から進歩している様子が伺える。こちらも『NO RULES』と本作のどちらを見るかと言われれば、本作に挙手したいところである。

ただ、本作で気に食わなかったのはラストバトルに至るまでの展開だ。マーシャルアーツ映画は最後の戦いでいかにスカッとした気分を味わえるかで、視聴後の感想もだいぶ違ってくる。もちろん重いラストであっても面白ければそれでいいのだが、本作では少々こじれた点が見られた。
上記の粗筋を見た人は、最後にマックスとハート様が壮絶な戦いを繰り広げ、ニックはムショにぶち込まれるだろうと予想するはず。ところが中盤で弟が意識を取り戻してしまうので、弟の仇討ちというマックスの目的が揺らいでしまう。そのため「ハート様は実は悪くない奴だった」というフォローがされているが、そのためにマックスVSハート様のバトルはあっという間に終わってしまうのだ(しかもマックスはハート様を説得しようとしていたため、完全に無抵抗なまま)…あれだけ最強の敵として煽っておいたのに、この仕打ちは無いよ!(涙
その後、マックスの説得によって改心したハート様はニックに詰め寄るが、武術の達人だったニックによってハート様はあっさり死亡。なんと、真のラストバトルはマックスVSニックという顔合わせだったのだ。確かにニックが強い事は劇中でチラッと触れられているが、最後の敵として立ちはだかるにはキャラが弱いんじゃないか?ここでの日本刀VSトンファーというウェポンバトルはそれなりに見られたが、どうもこのへんの展開が私は釈然と出来ません。『ザ・スコーピオン~』もそうだったけど、どうしてみんなゴチャゴチャした結末にしちゃうんだろうかなぁ…?


「ザ・スコーピオン キング・オブ・リングス」
原題:SCORPION
製作:2007年

●今回は特集という事で、普段はあまり紹介する機会のない新作もいくつか取り上げてみよう。本作はK1ファイターのジェロム・レ・バンナが出演している事がウリになっている作品だ。しかしこの手の「本物の格闘家が出演!」という売り文句は、マーシャルアーツ映画ではあまり信用できないキャッチコピーの代表格として有名だ。
確かに格闘家は身体能力が高く、またネームバリューも無名のスタントマンよりは遥かに大きい。だが映画の格闘シーンというものは乱暴な言い方をすると「技斗」であり、現実の格闘技とは全く異なることを忘れてはならない。また、「本物」をウリにする場合は格闘家の起用によって生まれるリアリティも狙いなのだろうが、リアリティと素晴らしい格闘アクションの間には、容易にイコールを書けないのが現実である(特にその点が最も顕著なのはドン・"ザ・ドラゴン"・ウィルソンだろう。キックボクシングのチャンプとして毎回「本物」をウリにしているが、ドン作品の出来は皆さんもご存じの通り)。
もし本物の格闘家を起用するのなら、まず必要なのは格闘家を強く見せられる演出力である。いくら生きのいい素材があっても、料理人の腕が未熟ならたちまちクズ料理になってしまうものなのだが、マーシャルアーツ映画では中々これが上手くいっていない。特にプロレス上がりの役者などを使った場合、よくパワー重視の木偶の坊スタイルに陥ってしまう事が多く、これが「本物」の価値観を失墜させる一因になっているのだが…。

そんなわけで、私は本作を見る前はかなり不安だったのだ。フランス映画ということで知っている役者は皆無だし、「本物」の投入と暗い感じのパッケージも不安を煽る材料となった。
ストーリーはよくある裏社会の闘技場モノで、ケンカで人を殺してしまった元格闘家のクロヴィス・コルニアックが、麻薬組織の口利きで非合法の闘いに立ち向かうという話だ。クロヴィスはそこで娼婦のカロル・ロシェーヌと出会って恋に落ちるのだが、本作は格闘シーンよりもこの恋愛模様の方に尺を割いている。こっちとしては思春期の中学生みたいな態度でアプローチするクロヴィスとかどうでもいいのだが(苦笑)、余計なサブプロットが作品の進行具合を阻んでいるのはどうにかして欲しかったところだ(特に潜入捜査官の部分が余計で、あのオチはいくらなんでも酷い)。
肝心の格闘シーンだが、こちらはK1みたいな総合格闘技タッチで綴られており、寝技や組み技が多用されている。これはこれで力強い感じが出ているが、印象としてはちょっと地味。主人公はタイ式キックボクシングの選手だったという設定があるが、蹴り技はあまり使用しないので派手さも控えめだ。さて問題のジェロム・レ・バンナだが、彼は表の世界の格闘家としてクロヴィスに立ちはだかる最後の強敵として登場。ただし彼自身は悪役ではなく、腕を折られても試合を続行したり、カロルの窮地を知って試合を抜けようとするクロヴィスを見送るなど、少ないカットでフェアなファイターぶりを見せている。
格闘アクションはさすがにクライマックスという事で見せてくれるし、クロヴィスとジェロムが見せる一進一退のバトルはそれなりに面白く、本作における「本物」は面目躍如の役割を果たしていたといってもいい筈だ。しかしこのラストバトルはカロルの危機を知ったクロヴィスが途中で試合を放棄してしまい、かなり中途半端な形で中断(!)。カロルがいる売春組織のボスのところへクロヴィスが向かい、グダグダな形で事件は決着してしまう。
この売春組織ボスのところに強敵がいたらまだマシだったかもしれませんが、特に何も起こらないまま終わってしまうのはどうにも…っていうか、最後の対決なんだから、ちゃんと決着つけてから終わってくれよ!(爆


「サンダー・ウォリアーズ」
原題:Kill and Kill Again
製作:1981年(77年?)

▼今回特集で取り上げる作品の中で最も古いタイトルである本作は、珍しく空手をメインに据えて製作された映画だ。マーシャルアーツ映画に出てくる武術は基本的に見栄えが重視されており、キックボクシングやテコンドー系の足技中心の殺陣か、シンプルな拳闘スタイルが多い。そんな中で合気道を取り入れたセガール映画や、カポエイラを使った『オンリー・ザ・ストロング』などの作品が微々たるも存在し、現在では柔術アクションの『レッド・ベルト』なんて物まで作られている。

■ジェームス・ライアンは空手の達人で凄腕の諜報員だが、そんな彼の元に謎の美女アンライン・キリエルが現れる。
彼女が言うには、洗脳薬を作り出してしまった発明家の父が誘拐されたため、助け出して欲しいという。敵は自らを「古代の神」と名乗り、洗脳薬を利用して一個師団を作り上げたマイケル・メイヤーだ。支配された街アイアンビルに本拠を構えるマイケルの下には多くの兵士と用心棒が控えている。そこでライアンは空手家のスタン・シュミット、元プロレスラーのケン・ガンプ、軽業のノーマン・ロビンソン、口八丁のビル・フリンら仲間を集結。キリエルも同行して敵地への潜入作戦が始まるのだった…こちらの情報が敵に筒抜けであることも知らずに。
敵地に向かう道中でジェームスたちは幾度も刺客に襲われるが、次々と突破して目的地のアイアンビルに到着する。このまま作戦は順調に進行するかと思われが、中心部に辿り着いたところで敵に正体がバレてしまう。捕まった一行のうち、ジェームスだけはマイケルに各施設を案内され、そこで発明家の博士と接触。密かに洗脳薬の解毒剤を入手して事態の打開を図る中、憎きマイケルはジェームスたちを闘技場で始末せんと企む。幾重にも交錯する思惑の中、最後の闘いが幕を開くが…。

▲モノとしては『特攻野郎Aチーム』が『燃えよドラゴン』する話であり、古い作品なので演出もそうこなれてはいない。格闘シーンは少々型にはまりすぎてぎこちない面も見られるが、殺陣自体はコテコテの空手アクション風味。所々で炸裂するシャープな蹴りは一見の価値アリで、程よくアクロバティックな動作も加味されているので、それなりに見られるファイトに仕上がっていた。特にファイト・コーディネーターとしても名を連ねるスタンとノーマンの両氏は別格で、ジェームスと共に作品の底上げに貢献している。そこかしこに李小龍の影響が見られるのはご愛嬌だが、これはこれで面白いといえよう。
個人的には『キックボクサー5』でしかジェームスの格闘シーンを確認出来てなかったので、本作でジェームスのアクションシーンが見られただけでも満足でした。なお本作には『殺るか!殺られるか!!』なる前作が存在するのだが…お察しの通り、この作品も未だ発見に至っていません(爆)。前に本作が置いてあるショップで一緒にレンタルされていたのを確認しましたが、そのショップは現在ビデオを取っ払ってDVDオンリーの店になってしまいました。レンタルショップで中古ビデオが捌かれているのは悪くないが、もうちょっとビデオソフトも残して欲しいんだけどなぁ…マーシャルアーツ映画では特にその点が重要なので、ちゃんとして欲しいところであります。


「オンリー・ザ・ストロング」
原題:Only The Strong/Street Fighters
中文題:王牌至尊
製作:1993年

▼ビリー・ブランクス、ドン・"ザ・ドラゴン"・ウィルソンと来れば、やはりマーク・ダカスコス作品も紹介しなければならないだろう。という事で、今回は久々の(このフレーズ今回多いなぁ・笑)ダカスコス主演作である。
今更紹介するまでも無いが、マーク・ダカスコスは中国拳法やハプキドーを習得した本格派で、その精鋭なマスクと卓越した技量で幾つもの映画に足跡を残している。ここ最近はあまり格闘系の作品に顔を出しておらず、格闘アクションを期待しているファンには残念がられているが、本作はそんなダカスコスによる記念すべき最初の主演作だ。初主演ということだけあって、この作品におけるダカスコスの気合には並々ならぬものが感じられ、同時に傑出した作品となっている。

■ダカスコスは南米に駐屯していた軍人だったが、退役して生まれ故郷のマイアミに戻っていた。そこで昔の恩師に再会したが、ダカスコスの母校は『ショウダウン』よろしく荒れまくった学校になっていた。その際に不良のケンカをブラジル武術のカポエラを駆使して止めたが、これがきっかけでダカスコスはカポエラ講師としてスカウトされる事となる。教え子は学校でも札付きのワルばかりだったが、ダカスコスの教えによって少しずつ打ち解け始めていくのだった。
順調に進んでいくカポエラ課外授業。不良たちの公正に伴って「カポエラを全市で教えよう」という案が校内で持ち上がり、ダカスコスも合宿で生徒たちと親睦を深めていた。しかし教え子であるリチャード・コッカの従兄、パコ・クリスチャン・プリートが乗り出してきた事により、事態は思わぬ方向に進んでしまう。パコはギャングを従えるボスで、奇遇にもダカスコスと同じカポエラ使いだったのだ。邪魔なダカスコスを潰そうとするパコは、ダカスコスの同僚であるステイシー・トラヴィスや学校を襲撃し、遂には放火で生徒数名が命を落としてしまった。事件の原因として学校を追放されたダカスコスは、宿敵パコを一網打尽にせんと孤独な戦いを始めるのだが…。

▲マーシャルアーツ映画ミーツ学園モノと言えば、先程も名を挙げた『ショウダウン』が記憶に新しいところだが、あちらは「いじめられっ子の成長」をテーマにしていたのに対し、本作は「不良たちの公正」という正反対のテーマを描いている。
どちらも秀作である事に変わりは無いが、格闘アクションについては本作のほうに軍配が上がりそうだ。なにしろこの映画はカポエラという異色な格闘技を扱った点で惹かれるし、難易度の高いアクロバティックなアクションを演じきったダカスコスの技量も賞賛されるべき出来だ。もちろんドラマ部分が成功している事も大きく、不良たちとダカスコスが成長していく様子なども実に面白い。ダカスコスの出演作では、完成度についてはナンバー1と言ってもいいだろう(ちなみに格闘アクションにおけるナンバー1は『破壊王』)。
ところで『ショウダウン』もそうだったが、意外とマーシャルアーツ映画は学園モノと相性がいいのだろうか?実は日本にこの手の作品は豊富にあり、『ろくでなしBLUES』『新宿純愛物語』『男組』などの学園アクションが存在している。現在でも『クローズZERO』『ワルボロ』などがこの系譜を脈々と受け継いでいるが、マーシャルアーツ映画にもこういう学園バトルな作品はあるのか否か…ちょびっと気になるところである(あちらの国には「番長」なんて概念はあるのかな?)。