「今日のお礼に食事でも」
ということになりホールを出た
「ちょっとトイレに」
と行ったえりかが、なかなか戻ってこないので先生が様子を見に行ってくれた
「どうしたの?気分でも悪い?」
「大丈夫です。真珠さんが食べろ食べろって言うものだから、ついつい食べてたら食べ過ぎて胃をこわしたみたい」
「えりかさんおめでた?」
「まさか!」
「なぁんだ。でもなかなか健康診断なんてしないから一度病院へ行った方がいいわよ」
「そうですね…来週にでも行ってみます」
「顔色が悪いけど大丈夫?気分でも悪い?」
「大丈夫きっとお腹がすいたのよ」
「じゃあ予約もしたし早く行こう」
このホテルのレストランは、景色もいいし料理も美味しい
しばらくオフだという仁希とも、久しぶりに食事や酒をゆっくり楽しんだ
えりかも、食事をしたら顔色も良くなってきたので安心したが
「胃の調子が悪いみたいだから“一度病院へ行った方がいい”と言っといたわ」
と先生が言っていたのが気になっていた
皆が帰ってから
「今度でいい」
と嫌がるえりかを
「診察がまだあるから」
と病院へ連れて行った
色々検査をし先生に呼ばれた
「少し胃が荒れていますが心配ないでしょう。お薬の方は産婦人科の方で」
「あの…何か悪い結果が…?」
「大丈夫だと思いますよ…これを持って産婦人科の方へ行って下さい」
とファイルを渡され指示に従った
問診、検査の後俺も呼ばれた
お腹の辺りのエコーを見ながら
「ちゃんと覚えておられないのではっきりした日が分からないですけど、春くらいでしょうか?」
「解かりますか?これが心臓」
モニターの中に小さな何かが写っていた
俺はまだ理解出来ていなかった
「……えっ?まさか?」
「おめでたです」
「……えりか?」
「シン…パパになるのよ…ううん、もうこの子のパパよ」
「俺がパパ?」
涙が止まらなくなった
「お父さんの方が心配ですね。帰られて病院が決まったら連絡下さい。お大事に」
診察室を後にした
「えりか結婚しよう。式を挙げよう。式は明日がいい。あのホテルの庭で夕日の中で挙げよう。そうだ仁希にも電話しよう」
俺は思いつく事をすべて並べ立て電話をした
ホテルにも無理を言い、明日夕焼けの中で式を挙げたいのでと準備を頼んだ
<真珠の場合>
“明るい太陽の下で”と誰でも思うかもしれないが、俺達は、病室でお互いの大切さを思った時も、プロポーズをした時も、家族が増えたと聞かされた今日も、綺麗な夕焼けの中だった
「俺はずっと一人で生きていくんだと思ってたのに、えりかと子供…俺は一人じゃないんだよね」
「まだまだ増えるのよ…子供が結婚して孫が出来てひ孫が出来て…子供が独立しても、シンのそばには嫌だって言ってもずっと私がいるわ」
「シンが食べろ食べろと言うからすっかり中年太りになってしまったわ」
と文句を言っていた少しふっくらしたお腹が愛しくてならなかった
「シン名前考えてね」
「えりか…それ仁希に付けてもらってもいいかな?」
「どうして?自分で付けたいでしょ?」
「俺達、仁希のお陰でこうして幸せになれた。そんな俺達よりももっと幸せな子になって欲しいから、仁希に名付け親になってもらいたいんだ。解かってもらえるかな?」
「そうね。私達、仁希さんにサインをもらう度に幸せになってきたものね…あのLuijiさんが名付け親なんてそれだけでこの子は幸せよ」
次の日、仁希に電話した
仁希達が泊っているホテルに偶然 T さんも泊っていて、先生と三人で遅い朝食を摂っているところだと…
「えりかさん調子悪いんだって?病院へは行ったの?大丈夫?」
「食べ過ぎで胃を荒らしたみたいだ。それで頼みがあるんだけど…夕方ここのホテルで式を挙げるから立ち会ってくれないか?」
「式って?」
「結婚式だよ…俺達の」
「結婚式?食べ過ぎで何でいきなり結婚式なんだ?」
「気分が悪かったのは胃が荒れてたせいなんだけど、パパとママが結婚してないと…」
「パパとママって?誰が?え?兄貴まさか?」
「そうそのまさか…」
「そうかー。兄貴良かったな…おめでとう」
「ありがとう。仁希それでもう一つ頼みがあるんだ…この子の名付け親になってくれないか?」
「何言ってるんだよ兄貴。そんなの駄目だよ…兄貴が付けるべきじゃないか」
「俺達はお前からいっぱい幸せをもらった…その俺達よりもっと幸せな子になって欲しいから、お前に名付け親になって欲しいんだ…えりかも解かってくれた」
「仁希さんお願いします。私達、仁希さんにサインをもらう度に幸せになったわ…この子にも、生まれて初めてのサインを仁希さんにお願いしたいの…この子の心にもいっぱいサインして幸せにしてやって欲しいの」
「でもな…そんなこと…」
「頼むよ!」
「よし解かった。飛びきり幸せな名前を考えるよ」
「ありがとう」
「おめでとう。私達も立ち会っていい?」
先生やTさんの声も聞こえた
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