その時、近くのテーブルに有名なお笑いのTさんが座った
それに気付いたえりかさんはいきなり
「だぁれだ?」
Tさんに目隠しをした
「こらえりか失礼だぞ!」
さすがの兄貴も驚いて叱ったが
Tさんはすかさず
「僕の心を盗んだ涙の君」
「覚えていてくれたの?」
「覚えてるで。彼氏とはうまいこといってるか?」
「紹介しますね」
兄貴も僕もTさんとは初対面ではない
「あれ?森村社長とLuijiさんやないですか。お久しぶり」
「その節は彼女がお世話になったそうで…ありがとうございました」
「え?あの時の涙の主は社長?社長あきませんで…夜中の電車で泣かせる様なことしたら…抱きしめよか思いましたで」
えりかさんは、Tさんにも指輪を見せて嬉しそうに話をした
「そうか…祝いせなあかんな…何が欲しい?何でも言うてみ」
「うーん…じゃぁボ○ボ」
「ボ○ボか…それはちょっときついな(笑)」
「冗談ですよ。何も欲しい物はないです」
「ええから言うてみ」
「じゃぁ二つでも?」
「ええよ。何?」
「一つ目は、知り合いにとっても幸せなカップルがいると心の隅で覚えていてもらう権利。二つ目は、その事をネタにして喋らないと言う約束」
「うーん…どっちも難しいなぁ(笑)」
「じゃぁ何も要らない…」
「わかった。解かった。約束する」
打ち合わせがあるからとTさんは店を出ていき、すぐに真っ赤なバラの花束がえりかに届いた
“婚約おめでとう Tより”
カードが添えられていた
えりかは花束を抱え
店の前を歩いていくTさんに
「Tさーん」
と声をかけた
Tさんは後ろ向きのままタバコを持った手を上げた
えりかはTさんの後を追い、前に回って花束を差し出し
「Tさん、カードだけで“おめでとう”はだめよ…ちゃんと口で言ってくれなきゃ淋しい…」
Tさんは花束を受け取り
「涙の君、婚約おめでとう」
改めてえりかに花束を渡した
「嬉しいTさん…ありがとう」
花束を受け取りえりかは駆け出した
「走ったらあかん!ゆるいけど坂道やで!」
「シン!止めて!」
聞き終わる前に俺は飛び出していた
「シン!」
そう言いながら、まるで映画のワンシーンの様にえりかが胸に飛び込んできた
「不思議な人ね…社長が変わったのも解かるような気がするわ。あの歳で無防備で危なっかしくて、私でも守ってあげなきゃと思うかも…でも何故か母に守られてた子供の時のように落ち着くというか…きっと社長は心を守ってもらってるんでしょうね」
二人を見ていたライターの先生までがそう言って笑っていた
「まったく…俺がいなかったら又病院へ逆戻りじゃないか!気をつけてよ…本当にもう!」
兄貴は怒っているのか喜んでいるのか…
「僕もお祝あげなきゃね。何がいい?」
「じゃぁ…心にサインを頂けますか?」
「またそれなの?」
「だって、Luijiさんにサインをもらう度に幸せになれるんだもの…二人の名前でお願いします」
「じゃあ並んで。兄貴、えりかさん婚約おめでとう。Luiji」
まだ撮影があるからと仁希達は移動して行った
テラスで海を見ていた
ゆっくりと時が流れる…
美しくて穏やかな海だ
<えりかの場合>
ずっとそばにいてね
私は世界一幸せよ
<真珠の場合>
ずっとそばにいるよ
俺はこの世で一番幸せだ
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