病室のドアが開いた
「えりかさん…今までどこに?」
彼女も苦しんでいたのだろう…やつれてしまっていた
ベッドのそばに座らせると
兄貴の手を握り
「どうしてこんな事に…ごめんなさい…お願いだから起きて」
泣きながら何度も何度も繰り返した
「仁希…来てくれてたのか…忙しいのに毎日すまない…えりかの夢を見ていたよ…“起きて”って泣いてるんだ…おかしいだろ?」
「兄貴夢じゃないさ…ほら」
「えりか…?」
「何やってるのよ…こんなになって…馬鹿なんだから…ごめんなさい…本当にごめんなさい」
「人の事言えるのか?こんなにやつれて…ご飯食べてたのか?ちゃんと寝てないんだろ?俺こそごめん」
「私もっとわがままになる…自分のことしか考えない」
そう言ってkissをした
「こら仁希の前だぞ…」
「仁希さんの前だろうと構わない」
そう言って、kissする二人から目をそらし出て行こうとした時
「仁希助けて…」
兄貴が叫んだ
えりかさんを片手で支えていた
彼女は気を失ってしまったみたい
あわてて抱き上げソファーに寝かせた
兄貴は
“さっきまで生きる気力を無くしていた人か?”
と思う位の勢いで駆けつけた看護士さんに
「食べてないだろうし寝てないだろうし…えりかを助けて!」
「とにかく検査して処置をしますから…貴方も早く治さないと」
と怒られていた
検査を終え、えりかさんが帰って来た
「この前は君、次は真珠、今度は彼女。どうなっているんだ?まったく」
I先生は、しばらく点滴で様子を見ること、眠ってないみたいだから軽い薬を使っている事、水分を充分に摂らせる事を告げ
“病室は○号室に…”
「駄目だここに置いて。目が覚めた時俺がいないと不安がるから…俺の横でいい」
「あのなぁ…いくら個室とはいえここは病院。ホテルじゃないんだぞ。信じられないが、さっきまでお前も生きる気力もない病人だったんだから…彼女の看病は駄目だ」
「俺はもう大丈夫だから…本当にそうしてくれ頼む」
「しかたないなぁ………治療を有効に進める為に特別に許可するか…」
「仁希頼めるか?」
僕はえりかさんを抱き上げた
「ぅん?誰…?」
「僕だよお姫様」
「Luijiさん…?」
「はい姫の指定席」
兄貴の横に寝かせた
「抱きあげたのは俺じゃないって解かったの?」
「もちろん…」
「Luijiに抱かれた気分はどう?」
「女優さんになったみたい…」
「女優さんか…幸せだった?」
「とっても…でもここの方がいい…」
そう言うとすぐ軽い寝息が聞こえた
「あらあら本当に安心できる指定席みたいね」
看護士さん達に冷やかされたが、俺にとってもここは指定席だ
水分を充分に摂らせるようにと言われたけれど飲まないので、俺は水を口に含みえりかに何度も飲ませた
「やだ…そんな事…恥ずかしい…でも私の指定席は社長の腕の中。社長のそばでないと何も出来ない」
そう言って笑った
<真珠の場合>
もう何も迷わない
えりかがいないと俺は生きる気力も出ない
えりかも同じだと良く解かった
もう何があっても離したりしない
次の日から俺は、少しずつ食事も出来るようになり点滴も外れ、やがて退院し仕事にも復帰した
えりかはまだしばらく入院しなくてはならないので、夜は病院に泊まる事にした
部屋もハウスクリーニングを頼み綺麗にしたし後は退院を待つだけだ
「そろそろいいか…退院しても。あまり遠くは無理だけど、療養を兼ねて旅行でもしてきたらどうだ?」
I先生が勧めてくれたのでそうする事にした