第67回『上海に戻って敗戦間近』
忙しい毎日を送るが、
中国人女性がトイレに行くと、
なかなか帰って来ない。
それも十人も行くと満員なのに、
二十余名も居らぬ家での用便の時に、
皆と話し合い乍らの癖が出るのであろう。
日本人と違い、
目を離すとサボル。
それが当然と思い込んでいる。
在郷軍人の訓練も激しさを増す。
飛行場の滑走路建設に、
トラックの送り迎えで、
度々奉仕の呼出し。
もう完成間近。
滑走路は遥か直線に伸びる。
通行の道路も広く。
緊急の場合は軽飛行場の滑走路に使用するとか。
この建設の奉仕に行き、
疲れて休憩をしょうと立ち話をしていると、
そこの者達働けと怒鳴られる。
休憩と反論すると、
煙草を手に持たぬと指摘される。
それからは煙草を拝借して休憩に入る。
一度、
敵飛行機の来襲を受ける。
空を見上げる足下に機銃弾が落下する。
慌てて防空壕に逃げ込むが、
敵の飛行機は遥かに飛び去った後。
敗色、
濃厚になる。
昭和二十年の初春。
上海在住の現地除隊者、
兵役の第二国民全員の、
再徴兵検査が施行される。
私も甲種合格と決定するが、
再度の検査の結果、
第二乙種合格となる。
心臓弁膜症。
甲種合格者に召集令状が来る。
連日、
見送りに多忙を極める。
殆どの独身者、
出征の後始末を依頼する人が無い。
入隊には私財は持ち込めない。
貯金をはたいて、
友人に歓送会を依頼する。
ヘンテコな送別会を模様する。
連日に渡り、
紅口公園で集合して隊列を整えて、
万歳の声を後に勇躍出発する。
その数、
噂によると数万人と。
残る者も逐次、
十日間の軍事訓練の召集令状を受け、
直ちに入隊をする。
私も入隊をする。
野原の中のやっと雨漏りしない程度の廃屋で、
訓練を受ける。
まず、
軍装を整えるが、
私の班が最後になる。
服は身に合わず、
靴は大きく銃は古い傷物が並ぶ。
皆は困り果て、
遂に上官に報告相談をすると、
軍隊は着るもの履くものに全部身を合わせ、
お前達に合う様に造って無いと言われる。
私は服はどうにか大きいなりに着られたが、
靴は大きくて靴の中で足が運動会している様で、
変わりがないから辛抱する。
訓練の時に、
気をつけー!!
の号令で姿勢を正すが、
足下がどうにもならん。
上官見て見ぬ振りをする。
これで訓練中実に助かった。
昼の厳しい訓練で、
夜は前後の記憶がない程に熟睡する。
蚊帳は吊るが、
蚊は出入り自由らしい。
朝目覚めると所嫌わず、
刺された後が無数ある。
短期間だから猛特訓が続くが、
それはそれなりに体力は付いていくものと、
理解する。
明日は最終日の訓練だ。
昨夜より降り続く雨。
整列。
前の田畑は湖水に変貌する。
今日の訓練は、
敵の戦車に肉薄して手榴弾を投げ付ける。
全身は泥水で目も開けられぬ。
訓練終了する。
訓辞は好評。
さぁ除隊だ。
濡れた衣服は良く洗い、
所定の縄に吊るせ。
洗わなくても雫は垂れる。
靴はそのまま脱ぎすてる。
銃の手入れは入念にする。
最後の訓辞で十日間の小遣いを受け取る。
国から戴く金銭は初めてと、
開けてみてビックリ。
なんと全額で三円少々。
記念に持って帰ろう。
入隊すると、
自分が使える時間は寸秒も無い。
人格が変わり除隊すると聞くが初めて経験して頷けた。
夕暮れと共に幌を掛けた軍のトラックに押し込まれて、
何処かへ連れて行かれる。
私語は一切禁止。
行く先も不明で停車と同時に整列。
前の者に遅れをとらず進め。
階段で停止。
待つと程なく重い物を手渡される。
次から次と手渡しで階上に挙げる。
何だろう。
どこかの私語で、
どうも砲弾らしい。
こんな所に何の為に…。
疑問だらけでトラックに乗せられ帰る。
翌日、
皆と話し合えど不審残る。
又しても、
トラックが迎えに来る。
幌の隙間より見ると、
フランス租界を走っているらしい。
命令は殆ど同じ。
その帰り、
皆の話しを総合すると、
エレベーターの者は、
どうも高射砲らしい。
階段の者は砲弾らしい。
あの高層建築の屋上に備え付けてと疑問が残る。
最後の決戦場か…。
沖縄が壊滅状態らしい。
日本の都市は、
粗方空漠で壊滅らしいと、
中国人からの話しで聞き、
話し合う。
それ以上は自問自答で済ます。
どう話し合っても結果が出ぬ。
中国人女性がトイレに行くと、
なかなか帰って来ない。
それも十人も行くと満員なのに、
二十余名も居らぬ家での用便の時に、
皆と話し合い乍らの癖が出るのであろう。
日本人と違い、
目を離すとサボル。
それが当然と思い込んでいる。
在郷軍人の訓練も激しさを増す。
飛行場の滑走路建設に、
トラックの送り迎えで、
度々奉仕の呼出し。
もう完成間近。
滑走路は遥か直線に伸びる。
通行の道路も広く。
緊急の場合は軽飛行場の滑走路に使用するとか。
この建設の奉仕に行き、
疲れて休憩をしょうと立ち話をしていると、
そこの者達働けと怒鳴られる。
休憩と反論すると、
煙草を手に持たぬと指摘される。
それからは煙草を拝借して休憩に入る。
一度、
敵飛行機の来襲を受ける。
空を見上げる足下に機銃弾が落下する。
慌てて防空壕に逃げ込むが、
敵の飛行機は遥かに飛び去った後。
敗色、
濃厚になる。
昭和二十年の初春。
上海在住の現地除隊者、
兵役の第二国民全員の、
再徴兵検査が施行される。
私も甲種合格と決定するが、
再度の検査の結果、
第二乙種合格となる。
心臓弁膜症。
甲種合格者に召集令状が来る。
連日、
見送りに多忙を極める。
殆どの独身者、
出征の後始末を依頼する人が無い。
入隊には私財は持ち込めない。
貯金をはたいて、
友人に歓送会を依頼する。
ヘンテコな送別会を模様する。
連日に渡り、
紅口公園で集合して隊列を整えて、
万歳の声を後に勇躍出発する。
その数、
噂によると数万人と。
残る者も逐次、
十日間の軍事訓練の召集令状を受け、
直ちに入隊をする。
私も入隊をする。
野原の中のやっと雨漏りしない程度の廃屋で、
訓練を受ける。
まず、
軍装を整えるが、
私の班が最後になる。
服は身に合わず、
靴は大きく銃は古い傷物が並ぶ。
皆は困り果て、
遂に上官に報告相談をすると、
軍隊は着るもの履くものに全部身を合わせ、
お前達に合う様に造って無いと言われる。
私は服はどうにか大きいなりに着られたが、
靴は大きくて靴の中で足が運動会している様で、
変わりがないから辛抱する。
訓練の時に、
気をつけー!!
の号令で姿勢を正すが、
足下がどうにもならん。
上官見て見ぬ振りをする。
これで訓練中実に助かった。
昼の厳しい訓練で、
夜は前後の記憶がない程に熟睡する。
蚊帳は吊るが、
蚊は出入り自由らしい。
朝目覚めると所嫌わず、
刺された後が無数ある。
短期間だから猛特訓が続くが、
それはそれなりに体力は付いていくものと、
理解する。
明日は最終日の訓練だ。
昨夜より降り続く雨。
整列。
前の田畑は湖水に変貌する。
今日の訓練は、
敵の戦車に肉薄して手榴弾を投げ付ける。
全身は泥水で目も開けられぬ。
訓練終了する。
訓辞は好評。
さぁ除隊だ。
濡れた衣服は良く洗い、
所定の縄に吊るせ。
洗わなくても雫は垂れる。
靴はそのまま脱ぎすてる。
銃の手入れは入念にする。
最後の訓辞で十日間の小遣いを受け取る。
国から戴く金銭は初めてと、
開けてみてビックリ。
なんと全額で三円少々。
記念に持って帰ろう。
入隊すると、
自分が使える時間は寸秒も無い。
人格が変わり除隊すると聞くが初めて経験して頷けた。
夕暮れと共に幌を掛けた軍のトラックに押し込まれて、
何処かへ連れて行かれる。
私語は一切禁止。
行く先も不明で停車と同時に整列。
前の者に遅れをとらず進め。
階段で停止。
待つと程なく重い物を手渡される。
次から次と手渡しで階上に挙げる。
何だろう。
どこかの私語で、
どうも砲弾らしい。
こんな所に何の為に…。
疑問だらけでトラックに乗せられ帰る。
翌日、
皆と話し合えど不審残る。
又しても、
トラックが迎えに来る。
幌の隙間より見ると、
フランス租界を走っているらしい。
命令は殆ど同じ。
その帰り、
皆の話しを総合すると、
エレベーターの者は、
どうも高射砲らしい。
階段の者は砲弾らしい。
あの高層建築の屋上に備え付けてと疑問が残る。
最後の決戦場か…。
沖縄が壊滅状態らしい。
日本の都市は、
粗方空漠で壊滅らしいと、
中国人からの話しで聞き、
話し合う。
それ以上は自問自答で済ます。
どう話し合っても結果が出ぬ。
第66回『南京からの帰り道』
毎日作業場の掃除をする時に使うほうきが無い。
手製のほうきを僅かな暇を見い出して集めて作るが、
充分でない。
市販品を購入して持ち込むが、
營問で止められるを心配したが、
無事に持ち込めた。
部員、
ほうきを見て歓声を上げて喜ぶ。
こんな無責任なカ所があるのかと、
疑問に感ずる。
南京駅に炎天下並ぶ。
旅行社は多い。
乗車は、
まず日本人が乗り込み全員が着席を済ませてから、
中国人が乗り込むが既に座席は満席。
日本人には有難いが、
中国人には腹ただしい事だろう。
私の横に老夫婦が立つ。
早速席を譲り、
私は立つ。
直後直ぐに警備の兵隊さんの罵声が飛ぶ。
支那人に席を譲るな、と。
婦人は直ぐに立ち上がる。
弱い者に席を変わり、
何が悪いと言い返したくも、
場所が悪い。
私も直ぐに着席する。
発車直ぐ、
老夫婦に席を開けるが恐がり掛けぬ。
無理に座らせ私は立つ。
心の片隅で日本軍の政策は間違っている。
民衆の反感を受けて成功出来るか…。
汽車が進む程に田畑に野道に青い物が認められない。
白く茎だけが細く見える。
何故だろうか、
不思議な現象を見る。
間もなく、
イナゴを飛ぶを見る。
進む程に窓外にイナゴの大軍を見かける。
車内に電灯が点る。
進む程に窓外を飛ぶイナゴの姿も見分けられぬ。
軌道上で轢き殺すイナゴの油で、
車輪も空転を繰り返す。
車内も何処から入ったのか、
イナゴで騒ぐ。
頭に手に顔にと騒ぎを繰り返す。
イナゴの洪水の中を悲喜を乗せて列車は徐々に前進する。
窓外は一メートル前方のイナゴの識別も、
どうにか見える。
日本兵と農民が鍬をスキを振るい、
溝を掘るのに懸命だ。
あの溝にイナゴを誘い込み焼き殺すのであろう。
と勝手な推理をしつつ抜け出てホッと息つく。
何時しか目映い太陽に照らされて、
悪夢のようなイナゴの大軍を抜け出す。
被害は甚大だろう。
防ぎ様もない天然の猛威。
常に心して暮そう。
満州平野でネズミの大軍に遭遇した話しを聞く。
私の遭遇した感想はただ凄いの一言に尽きる。
こんな珍しい現象に再び遭遇する事はなかろう。
上海駅に安着をする。
老婦人の同伴者が手を取り、
是非、
家に来てくれと誘うが、
年寄りを労るのは当然ですと断り別れる。
会社に帰り報告する。
事務系と我々の出張手当の格差に驚く。
仕事をしたのは私だ。
公然と文句を言えど、
空振りに終る。
手製のほうきを僅かな暇を見い出して集めて作るが、
充分でない。
市販品を購入して持ち込むが、
營問で止められるを心配したが、
無事に持ち込めた。
部員、
ほうきを見て歓声を上げて喜ぶ。
こんな無責任なカ所があるのかと、
疑問に感ずる。
南京駅に炎天下並ぶ。
旅行社は多い。
乗車は、
まず日本人が乗り込み全員が着席を済ませてから、
中国人が乗り込むが既に座席は満席。
日本人には有難いが、
中国人には腹ただしい事だろう。
私の横に老夫婦が立つ。
早速席を譲り、
私は立つ。
直後直ぐに警備の兵隊さんの罵声が飛ぶ。
支那人に席を譲るな、と。
婦人は直ぐに立ち上がる。
弱い者に席を変わり、
何が悪いと言い返したくも、
場所が悪い。
私も直ぐに着席する。
発車直ぐ、
老夫婦に席を開けるが恐がり掛けぬ。
無理に座らせ私は立つ。
心の片隅で日本軍の政策は間違っている。
民衆の反感を受けて成功出来るか…。
汽車が進む程に田畑に野道に青い物が認められない。
白く茎だけが細く見える。
何故だろうか、
不思議な現象を見る。
間もなく、
イナゴを飛ぶを見る。
進む程に窓外にイナゴの大軍を見かける。
車内に電灯が点る。
進む程に窓外を飛ぶイナゴの姿も見分けられぬ。
軌道上で轢き殺すイナゴの油で、
車輪も空転を繰り返す。
車内も何処から入ったのか、
イナゴで騒ぐ。
頭に手に顔にと騒ぎを繰り返す。
イナゴの洪水の中を悲喜を乗せて列車は徐々に前進する。
窓外は一メートル前方のイナゴの識別も、
どうにか見える。
日本兵と農民が鍬をスキを振るい、
溝を掘るのに懸命だ。
あの溝にイナゴを誘い込み焼き殺すのであろう。
と勝手な推理をしつつ抜け出てホッと息つく。
何時しか目映い太陽に照らされて、
悪夢のようなイナゴの大軍を抜け出す。
被害は甚大だろう。
防ぎ様もない天然の猛威。
常に心して暮そう。
満州平野でネズミの大軍に遭遇した話しを聞く。
私の遭遇した感想はただ凄いの一言に尽きる。
こんな珍しい現象に再び遭遇する事はなかろう。
上海駅に安着をする。
老婦人の同伴者が手を取り、
是非、
家に来てくれと誘うが、
年寄りを労るのは当然ですと断り別れる。
会社に帰り報告する。
事務系と我々の出張手当の格差に驚く。
仕事をしたのは私だ。
公然と文句を言えど、
空振りに終る。
第65回『南京へ出張する』
戦局はよくないらしい。
当初は破竹の進撃で勇猛果敢な報道も、
最近は転戦に継ぐ転戦。
中国人は転戦ではなく、
敗戦で後退と話す。
我々は気分的に幾分か滅入る。
空襲警報も度重なる。
共同租界内はその度、
避難準備に忙しいとか。
英国租界内はのんびりと過ごす。
夜間の空襲、
高射砲炸裂花火のようだ。
一瞬、
目が眩む炸裂。
翌朝の新聞にその炸裂の瞬間の写真が載る。
敵機が落とした爆弾に、
我が高射砲の砲弾が命中する。
その炸裂の瞬間の写真だった。
警報も間隔が短くなった。
事務係と二人、
汽車に乗り込み草原を走る。
目を楽しませてくれる物は少ない。
期待の南京に安着する。
駅舎を一歩出て、
息を呑み目を見張る。
完全なる廃屋の都市南京を視る。
互いに砲弾を打ち合い、
空漠の結果がこれか。
道路のみ広く埃が舞う。
日が経ち整理されたと言えどこの惨劇。
新聞報道で一部を知るが、
日本の大都市もこんな状態なのであろうか。
炎天下、
埃にまみれて部隊に入る。
広い隊内、
人も疎らに歩く。
部屋に落ち着く。
風も入らぬ狭い部屋の片隅に、
藁蒲団が積み上げてある。
広げると大小の地図を描く。
大は寝小便か。
小は汗の地図か。
食事は残飯給食とか…。
その夕食を受け取り飯ごうを開けると、
結構なご馳走が入る。
将校待遇と話す。
翌日、
作業場へ案内されて、
全員の紹介も済むが、
兵隊さん、
寄り添い手持ち無沙汰で、
立ち話をしている。
聞くと毎日がこの状態です。
片隅に無造作に計器類が積み上げている。
会社からの社命は、
計器類の様々を見習って来いとの事だが、
彼等の話しを総合すると、
殆どが計器類の製造には無関係で、
販売か事務員、
責任者の将校に教えを頼むと、
良いようにしろと言われる。
早速、
皆と話し合い、
修理の計器類を作業台に並べて、
ドライバーの持ち方から教える。
そんな毎日が続く。
習って来いでは無く、
教えている。
新兵さん、
腹が空いて目が回りそうと話す。
私達は勝手に飯ごうに入られれる。
新兵サンに食の用意をしているから、
夜半に来いと伝える。
新兵サン、
夜半に無言で来て、
用意の飯ごうをの中味を噛まずに、
涙を流して飲み込む。
親が見ると泣くであろう。
連絡で營内を歩くと、
隊伍を整え作業の帰りであろうか、
歩調を取れ、
上官に敬礼。
辺りに人無く私一人。
慌てて答礼をする。
私の帽子が将校に似る。
でも、
気持ちの良いもの。
便所の取り出し口で、
僅かに糞を置き、
自制の蝿叩きで蝿を炎天下で採っている。
聞くと、
上官の命令で、
命令された数だけ採る。
ただ今、
現在、
日本はどんな立場に置かれておると叫びたい。
活気が見られぬ營内。
前に軽飛行場がある。
飛行機のエンジン修理のテストをしている。
相手は独り話し相手が欲しい。
見に行くと話しは長くなる。
飛行機の爆音高らかに、
今日はテスト飛行らしい。
褌一つの身軽さで乗り込んでいる。
階級は分からぬ。
ここだけは活気が感じられる。
休日の日、
近くの孫文を祭る、
中山陵へお参りに行く。
噂ではこの下は火薬庫らしい。
市街には見るもの無く、
不案内で早々に帰る。
毎日の暑さだけが身にこたえる。
当初は破竹の進撃で勇猛果敢な報道も、
最近は転戦に継ぐ転戦。
中国人は転戦ではなく、
敗戦で後退と話す。
我々は気分的に幾分か滅入る。
空襲警報も度重なる。
共同租界内はその度、
避難準備に忙しいとか。
英国租界内はのんびりと過ごす。
夜間の空襲、
高射砲炸裂花火のようだ。
一瞬、
目が眩む炸裂。
翌朝の新聞にその炸裂の瞬間の写真が載る。
敵機が落とした爆弾に、
我が高射砲の砲弾が命中する。
その炸裂の瞬間の写真だった。
警報も間隔が短くなった。
事務係と二人、
汽車に乗り込み草原を走る。
目を楽しませてくれる物は少ない。
期待の南京に安着する。
駅舎を一歩出て、
息を呑み目を見張る。
完全なる廃屋の都市南京を視る。
互いに砲弾を打ち合い、
空漠の結果がこれか。
道路のみ広く埃が舞う。
日が経ち整理されたと言えどこの惨劇。
新聞報道で一部を知るが、
日本の大都市もこんな状態なのであろうか。
炎天下、
埃にまみれて部隊に入る。
広い隊内、
人も疎らに歩く。
部屋に落ち着く。
風も入らぬ狭い部屋の片隅に、
藁蒲団が積み上げてある。
広げると大小の地図を描く。
大は寝小便か。
小は汗の地図か。
食事は残飯給食とか…。
その夕食を受け取り飯ごうを開けると、
結構なご馳走が入る。
将校待遇と話す。
翌日、
作業場へ案内されて、
全員の紹介も済むが、
兵隊さん、
寄り添い手持ち無沙汰で、
立ち話をしている。
聞くと毎日がこの状態です。
片隅に無造作に計器類が積み上げている。
会社からの社命は、
計器類の様々を見習って来いとの事だが、
彼等の話しを総合すると、
殆どが計器類の製造には無関係で、
販売か事務員、
責任者の将校に教えを頼むと、
良いようにしろと言われる。
早速、
皆と話し合い、
修理の計器類を作業台に並べて、
ドライバーの持ち方から教える。
そんな毎日が続く。
習って来いでは無く、
教えている。
新兵さん、
腹が空いて目が回りそうと話す。
私達は勝手に飯ごうに入られれる。
新兵サンに食の用意をしているから、
夜半に来いと伝える。
新兵サン、
夜半に無言で来て、
用意の飯ごうをの中味を噛まずに、
涙を流して飲み込む。
親が見ると泣くであろう。
連絡で營内を歩くと、
隊伍を整え作業の帰りであろうか、
歩調を取れ、
上官に敬礼。
辺りに人無く私一人。
慌てて答礼をする。
私の帽子が将校に似る。
でも、
気持ちの良いもの。
便所の取り出し口で、
僅かに糞を置き、
自制の蝿叩きで蝿を炎天下で採っている。
聞くと、
上官の命令で、
命令された数だけ採る。
ただ今、
現在、
日本はどんな立場に置かれておると叫びたい。
活気が見られぬ營内。
前に軽飛行場がある。
飛行機のエンジン修理のテストをしている。
相手は独り話し相手が欲しい。
見に行くと話しは長くなる。
飛行機の爆音高らかに、
今日はテスト飛行らしい。
褌一つの身軽さで乗り込んでいる。
階級は分からぬ。
ここだけは活気が感じられる。
休日の日、
近くの孫文を祭る、
中山陵へお参りに行く。
噂ではこの下は火薬庫らしい。
市街には見るもの無く、
不案内で早々に帰る。
毎日の暑さだけが身にこたえる。
第64回『無題(後半の話は兵隊さんの話ですあしからず)』
我が社の就業員、
そのほとんどが大学出。
在郷軍人の招集の日、
将校姿で長剣を吊り行く後より、
木銃担いでのこのこと付いて行く。
中国従業員、
私に何故剣を吊らぬかと不審がる。
剣道の装具もある。
剣道の段取りもある。
初めは皆に玩具にされるが、
日と共に上達して、
剣道の試合にも出る。
負けて元々面白く教えを請う。
米兵来れば1人でも殺そうと頑張る。
余る時間を活かして使う。
おかげで楽しく日が送れた。
納入の部品、
粗悪品が多い。
注文先に行き内部を見せてもらう。
ガタガタの旋盤で仕事をしている。
日本ですと、
探してもこんな旋盤はない。
洋服を脱ぎ、
悪い箇所の修理をする。
何とか前より動きは良いが、
製品向上には程遠い。
でも其処で働く従業員、
「今までの人は文句だけ言って、
機械も触りもしなかった。」
と感心しきり。
でも、
その後、
製品の誤魔化しが無くなる。
悪友に住所も知らせず、
夜遊びも中止で相手も無く、
いつしか工場の片隅で、
製品向上の工具を作る。
ある夜、
夜半も過ぎる頃、
部屋に帰ろうと、
機密品置場の横を通る目に、
チラリ火の光り。
暗幕の僅かな隙間より小さく燃える。
備え付けの半鐘を乱して皆に知らす、
戸口を開けると空気が入り、
一気に燃え上がる。
皆の協力で一部を焦がして鎮火する。
この時、初めて私の夜なべを皆は知る。
翌朝、
社長が現場に来て礼を言う。
私の無報酬の夜なべを公然となる。
軍属だから、
軍の経営の酒保にも出入り出来る。
呑んで食って支払いは民間の三分の一程度で、
実に安い。
友達も誘いよく行く。
片隅で呑んでいる兵隊さんは、
奥地よりの慰安休暇中。
無理に割り込み話相手に花を咲かす。
最初は嫌な顔して返事も面倒くさそう。
この支払いは全部します。
安心をして十分に呑んでください。
酔うほどに何時しか、
兵隊さんの戦地の自慢?話に陥る。
疲れて、
行く先不明の行軍の道端に、
全裸の女性の屍を見る。
誰が差したか、
股に野草の花が揺れる。
狭い路地で強姦の最中に、
2階より長い竹槍で田楽差しに戦死する。
掃討作戦で屋内に突入すると、
少女がいる。
直ちに強姦する。
片隅でその子の両親であろう、
おののき見つめて、
終了後の後始末をしている。
悪いと思うが数分後の俺の命は、
誰が保障してくれる。
子供連れが通る。
引き倒して強姦をする。
等々こうして落ち着いて座り話しますが、
後悔の一言に尽きます。
戦闘中の気持ちは別です。
でも語り合う我々も明日はどうなる。
現地で除隊して、
映画館で映画を鑑賞中、
隣に座る日本女性に手を掴まれ、
驚く。
除隊兵を連れて軍の詰め所へ。
女性、
この男に過日の戦乱の時、
強姦されたと訴えられるが、
相手多数で記憶無しで放免される。
兎に角。
何処の国の兵隊も、
同じ事の繰り返しで、
女性の思いも寄らぬ災難か。
これが戦場です。
戦場はまっぴらです御免です。
そのほとんどが大学出。
在郷軍人の招集の日、
将校姿で長剣を吊り行く後より、
木銃担いでのこのこと付いて行く。
中国従業員、
私に何故剣を吊らぬかと不審がる。
剣道の装具もある。
剣道の段取りもある。
初めは皆に玩具にされるが、
日と共に上達して、
剣道の試合にも出る。
負けて元々面白く教えを請う。
米兵来れば1人でも殺そうと頑張る。
余る時間を活かして使う。
おかげで楽しく日が送れた。
納入の部品、
粗悪品が多い。
注文先に行き内部を見せてもらう。
ガタガタの旋盤で仕事をしている。
日本ですと、
探してもこんな旋盤はない。
洋服を脱ぎ、
悪い箇所の修理をする。
何とか前より動きは良いが、
製品向上には程遠い。
でも其処で働く従業員、
「今までの人は文句だけ言って、
機械も触りもしなかった。」
と感心しきり。
でも、
その後、
製品の誤魔化しが無くなる。
悪友に住所も知らせず、
夜遊びも中止で相手も無く、
いつしか工場の片隅で、
製品向上の工具を作る。
ある夜、
夜半も過ぎる頃、
部屋に帰ろうと、
機密品置場の横を通る目に、
チラリ火の光り。
暗幕の僅かな隙間より小さく燃える。
備え付けの半鐘を乱して皆に知らす、
戸口を開けると空気が入り、
一気に燃え上がる。
皆の協力で一部を焦がして鎮火する。
この時、初めて私の夜なべを皆は知る。
翌朝、
社長が現場に来て礼を言う。
私の無報酬の夜なべを公然となる。
軍属だから、
軍の経営の酒保にも出入り出来る。
呑んで食って支払いは民間の三分の一程度で、
実に安い。
友達も誘いよく行く。
片隅で呑んでいる兵隊さんは、
奥地よりの慰安休暇中。
無理に割り込み話相手に花を咲かす。
最初は嫌な顔して返事も面倒くさそう。
この支払いは全部します。
安心をして十分に呑んでください。
酔うほどに何時しか、
兵隊さんの戦地の自慢?話に陥る。
疲れて、
行く先不明の行軍の道端に、
全裸の女性の屍を見る。
誰が差したか、
股に野草の花が揺れる。
狭い路地で強姦の最中に、
2階より長い竹槍で田楽差しに戦死する。
掃討作戦で屋内に突入すると、
少女がいる。
直ちに強姦する。
片隅でその子の両親であろう、
おののき見つめて、
終了後の後始末をしている。
悪いと思うが数分後の俺の命は、
誰が保障してくれる。
子供連れが通る。
引き倒して強姦をする。
等々こうして落ち着いて座り話しますが、
後悔の一言に尽きます。
戦闘中の気持ちは別です。
でも語り合う我々も明日はどうなる。
現地で除隊して、
映画館で映画を鑑賞中、
隣に座る日本女性に手を掴まれ、
驚く。
除隊兵を連れて軍の詰め所へ。
女性、
この男に過日の戦乱の時、
強姦されたと訴えられるが、
相手多数で記憶無しで放免される。
兎に角。
何処の国の兵隊も、
同じ事の繰り返しで、
女性の思いも寄らぬ災難か。
これが戦場です。
戦場はまっぴらです御免です。
第63回『転勤する』
軍属として転勤する。
所在地は英国租界内。
日本人従業員男女併せて四十名程。
中国人従業員二百名程。
私は営業部で現場との連絡係りで、
勤務時間、
日本人のみ午前九時就業。
午前十一時より午後一時迄食事の時間で休業。
午後三時終了。
聞いて驚くこの戦時下に、
こんな会社があるのかと疑った。
部屋は相部屋だが八畳の間で広い。
食事は会社持ちで結構贅沢な食事。
中国人従業員は午前八時就業。
午後十二時より午後一時迄食事の時間。
午後四時終了。
給料を受け取るまでは心配したが、
給料は民間並でホッとする。
日米開戦で物価異常に高騰して、
中国貨幣は使用禁止で、
変わりの日本軍発行の軍票を使用する。
昭和十八年頃の紙幣は、
一万円札、
五千円札、
一千円札と並ぶ。
日本人の月給も最低でも三百万円は受け取る。
中国人は日給で百万円そこそこを月末に受け取る。
軍属は手当てが付いても…詳しくは知らぬが、
百万円位か。
軍属並であると生活が出来にくい。
会社は米国マリン(水兵)の宿舎を日本人が使う。
敷地も広くてテニスコートも二面ある。
私の仕事は計器類の修理組み立てだが、
各種の部品造りに追われ、
中国人が納入する製品の良否を検査する監督責任に納まる。
これはめずらしく最初は目をパチクリとする。
作業終了すると駅の改札口宜しく並ぶ従業員を、
一人一人、
頭髪の中、
弁当箱の中、
靴を脱がして中を調べる、
衣服のポケットの中、
胸を触り、
股を開かせて検査は終了する。
これを一人一人、
毎日インド人が男女別に検査をする。
その立ち会いに一週間に一度、
現場の者が立ち会う。
この屈辱的行為を平然と受ける中国人の心理は、
どうしても理解出来ず。
インド人は家族と共に会社の片隅で生活をしているらしい。
門衛としても働くが、
お祈りの時間は他を顧みず熱心に行なう。
又、
警官の大半はインド人。
仏教のインドでも人種の差別があるらしい。
中国にも人種の差別はある。
上海市で働く下層労働者は、
揚子江の北より揚子江を南に渡り来た者達はほとんどだ。
家で働く者に聞くと、
その殆どが北より来る。
クリー(下層労働者)、
アマ(お手伝い)、
黄包車(人力車)、
散髪屋の労働者、
兎に角下層で働かされている。
中国は賭けで始まり賭けで終る。
工場の昼の休憩時間に娯楽施設を倍増しても、
賭けは止めぬ。
喧しく指導すると、
その競技に熱中するが、
例えば卓球をワァワァ騒ぎやっている。
ピンポン玉、
次を打つか打たぬかで賭けている。
硬貨の裏表は序の口、
この点、
助からぬ民族と思う。
私も時間に余裕が出来たのでラケットを振り、
テニスを習う。
やれば面白い。
三時に仕事を仕舞い、
私は前衛専門で頑張る。
ラケットを下げて他流試合にも行く。
友達も増えて、
フランス租界にも行き、
家庭に紹介されて訪問して親しくなる。
互いに母国語と上海語と、
手振り感情を交ぜて話す。
一度、
酔う程に便所は何処と聞くと指を指す。
開けると奥さん料理の最中、
横に水洗便所があるが、
奥さん横にいる。
奥さん笑みを含めて、
紐を引けと手振りで示す。
引くとピラミッド型の布が落下する。
これで安心だが、
匂いは残ると心配すると換気扇がある。
他国人との付き合いも何かを覚えて楽しさが増す。
所在地は英国租界内。
日本人従業員男女併せて四十名程。
中国人従業員二百名程。
私は営業部で現場との連絡係りで、
勤務時間、
日本人のみ午前九時就業。
午前十一時より午後一時迄食事の時間で休業。
午後三時終了。
聞いて驚くこの戦時下に、
こんな会社があるのかと疑った。
部屋は相部屋だが八畳の間で広い。
食事は会社持ちで結構贅沢な食事。
中国人従業員は午前八時就業。
午後十二時より午後一時迄食事の時間。
午後四時終了。
給料を受け取るまでは心配したが、
給料は民間並でホッとする。
日米開戦で物価異常に高騰して、
中国貨幣は使用禁止で、
変わりの日本軍発行の軍票を使用する。
昭和十八年頃の紙幣は、
一万円札、
五千円札、
一千円札と並ぶ。
日本人の月給も最低でも三百万円は受け取る。
中国人は日給で百万円そこそこを月末に受け取る。
軍属は手当てが付いても…詳しくは知らぬが、
百万円位か。
軍属並であると生活が出来にくい。
会社は米国マリン(水兵)の宿舎を日本人が使う。
敷地も広くてテニスコートも二面ある。
私の仕事は計器類の修理組み立てだが、
各種の部品造りに追われ、
中国人が納入する製品の良否を検査する監督責任に納まる。
これはめずらしく最初は目をパチクリとする。
作業終了すると駅の改札口宜しく並ぶ従業員を、
一人一人、
頭髪の中、
弁当箱の中、
靴を脱がして中を調べる、
衣服のポケットの中、
胸を触り、
股を開かせて検査は終了する。
これを一人一人、
毎日インド人が男女別に検査をする。
その立ち会いに一週間に一度、
現場の者が立ち会う。
この屈辱的行為を平然と受ける中国人の心理は、
どうしても理解出来ず。
インド人は家族と共に会社の片隅で生活をしているらしい。
門衛としても働くが、
お祈りの時間は他を顧みず熱心に行なう。
又、
警官の大半はインド人。
仏教のインドでも人種の差別があるらしい。
中国にも人種の差別はある。
上海市で働く下層労働者は、
揚子江の北より揚子江を南に渡り来た者達はほとんどだ。
家で働く者に聞くと、
その殆どが北より来る。
クリー(下層労働者)、
アマ(お手伝い)、
黄包車(人力車)、
散髪屋の労働者、
兎に角下層で働かされている。
中国は賭けで始まり賭けで終る。
工場の昼の休憩時間に娯楽施設を倍増しても、
賭けは止めぬ。
喧しく指導すると、
その競技に熱中するが、
例えば卓球をワァワァ騒ぎやっている。
ピンポン玉、
次を打つか打たぬかで賭けている。
硬貨の裏表は序の口、
この点、
助からぬ民族と思う。
私も時間に余裕が出来たのでラケットを振り、
テニスを習う。
やれば面白い。
三時に仕事を仕舞い、
私は前衛専門で頑張る。
ラケットを下げて他流試合にも行く。
友達も増えて、
フランス租界にも行き、
家庭に紹介されて訪問して親しくなる。
互いに母国語と上海語と、
手振り感情を交ぜて話す。
一度、
酔う程に便所は何処と聞くと指を指す。
開けると奥さん料理の最中、
横に水洗便所があるが、
奥さん横にいる。
奥さん笑みを含めて、
紐を引けと手振りで示す。
引くとピラミッド型の布が落下する。
これで安心だが、
匂いは残ると心配すると換気扇がある。
他国人との付き合いも何かを覚えて楽しさが増す。
第62回『中国へ帰って参りました』
工場の近くに、
上海事変の折の激戦地、
八字橋がある。
橋のの袂に大きな銀杏の木がそびえたつ。
この木の頂上より目測して、
砲弾を我が軍に打ち込み苦戦に陥れたとか。
その先に新公園がある
広い草原に海軍の忠霊塔が聳え立つ。
四、五階建ての高さはある。
日本人ハイキングを兼ねて良く遊びに来る。
もう少し足を伸ばすと、
陸軍の表忠塔が聳える
もっと先には肉弾三勇士の碑が立つ。
在郷軍人、
近日訓練に狩り出されて戦闘訓練に、
実弾訓練にと鍛えられる。
実数は知らぬが数万人と噂が高い。
突然、
憲兵本部より、
私に午後一時に出頭しろの命令があったと、
連絡がある。
皆は心配してくれるが全然心当たりがない。
民衆の最も恐れる憲兵隊本部。
空虚な気持ちで本部へ行き。
姓名を告げると、
「其処で待っとれ。」
小学校の教室の広さ。
中央に取調べの机が無造作におかれている。
窓を閉め切り、
中は蒸し風呂のようだ。
室内には四方グルリと、
腰の高さに太い竹をめぐらし、
その竹に片手手錠で直立不動の姿勢で立たされている者。
片足立て、
両手を挙げている者。
這う姿勢で苦悶の汗を流す者。
小さな箱に押し込められて苦悶に耐えている者。
様々な姿勢で拷問に耐えている。
五、六十名か。
竹刀を持ち辺りを油断なく見据えて、
違反者を見ると罵声と共に所嫌わず竹刀が食い込む。
罵声と悲鳴が交差する地獄絵巻そのまま。
中央では机を叩きビンタで取り調べ続行中。
女性を箱椅子に腰掛させ、
取り調べるが、
その中央に穴を開けて下に蝋燭を立てる。
自白しない強情な女には、
蝋燭に点火して徐々に肉体に近付けて火攻めにするとか。
呼ばれて机の前に立つ。
全員は上半身裸で階級は不明。
「まあ座れ。この時計はお前のか。」
見れば私の腕時計。
何故ここに?
お前の所のボーイに不審な点があるから連行すると、
この時計を持つ。
私の部屋の柱に掛けてあった時計です。
「よし持って帰れ。」
立ち上がると、
「ちょっと待て。
この男お前に預けるから連れて帰れ。」
何時までかと聞くと、
「命令だ、連れて帰れ。」
喫茶店でお茶を飲みながら、
「お前はスパイか?
逃がさぬ様に監視を言いつかったが、
とても十分な監視は出来ぬ。
逃げようと思えば逃げろ。
今日は監視があると思うから明日以降にしろ。」
と男に伝える。
連れて帰り、
皆には、
「こいつ俺の時計を盗み連行された。」
と報告する。
二、三日してボーイは姿を消す。
当分の間、
呼出しに怯えるが遂に呼出しなし。
いい加減な憲兵の命令。
何時とはなく忘れる。
早朝、
母の呼び声で目覚める。
夢か、
そのまま事務所でいると、
電報が来る。
受け取ると私宛。
『今朝母死す。』
電報を手にしたまま放心状態で時間を過ごす。
貧しさに耐えつつ、
私を擁護して力付けていただいた母も死んだか。
その秋、
会社の慰安旅行で蘇州に遊ぶ。
鉄道の沿線は大地の起伏と大小の沼を結ぶ、
クリークが流れる中を小舟に乗り、
何百羽のアヒルを追う。
一人網で何かを狙う以外に人影を認めず。
人家も無し、
その中を汽車は走る。
悠久な大陸。
中国は広大だ。
蘇州駅に着く。
古びた田舎の感じ。
豊作を暗示の稲穂が垂れる。
クリークの農道を歩み、
通りに出る。
タクシーを雇い、
名所古跡を回る。
視るのも多くだが心は寂しく皆の後に続く。
寒山寺の鐘突き堂にに入る。
突き賃を支払い、
この鐘の音、
祖国の母に届けと力を込めて突く。
上海事変の折の激戦地、
八字橋がある。
橋のの袂に大きな銀杏の木がそびえたつ。
この木の頂上より目測して、
砲弾を我が軍に打ち込み苦戦に陥れたとか。
その先に新公園がある
広い草原に海軍の忠霊塔が聳え立つ。
四、五階建ての高さはある。
日本人ハイキングを兼ねて良く遊びに来る。
もう少し足を伸ばすと、
陸軍の表忠塔が聳える
もっと先には肉弾三勇士の碑が立つ。
在郷軍人、
近日訓練に狩り出されて戦闘訓練に、
実弾訓練にと鍛えられる。
実数は知らぬが数万人と噂が高い。
突然、
憲兵本部より、
私に午後一時に出頭しろの命令があったと、
連絡がある。
皆は心配してくれるが全然心当たりがない。
民衆の最も恐れる憲兵隊本部。
空虚な気持ちで本部へ行き。
姓名を告げると、
「其処で待っとれ。」
小学校の教室の広さ。
中央に取調べの机が無造作におかれている。
窓を閉め切り、
中は蒸し風呂のようだ。
室内には四方グルリと、
腰の高さに太い竹をめぐらし、
その竹に片手手錠で直立不動の姿勢で立たされている者。
片足立て、
両手を挙げている者。
這う姿勢で苦悶の汗を流す者。
小さな箱に押し込められて苦悶に耐えている者。
様々な姿勢で拷問に耐えている。
五、六十名か。
竹刀を持ち辺りを油断なく見据えて、
違反者を見ると罵声と共に所嫌わず竹刀が食い込む。
罵声と悲鳴が交差する地獄絵巻そのまま。
中央では机を叩きビンタで取り調べ続行中。
女性を箱椅子に腰掛させ、
取り調べるが、
その中央に穴を開けて下に蝋燭を立てる。
自白しない強情な女には、
蝋燭に点火して徐々に肉体に近付けて火攻めにするとか。
呼ばれて机の前に立つ。
全員は上半身裸で階級は不明。
「まあ座れ。この時計はお前のか。」
見れば私の腕時計。
何故ここに?
お前の所のボーイに不審な点があるから連行すると、
この時計を持つ。
私の部屋の柱に掛けてあった時計です。
「よし持って帰れ。」
立ち上がると、
「ちょっと待て。
この男お前に預けるから連れて帰れ。」
何時までかと聞くと、
「命令だ、連れて帰れ。」
喫茶店でお茶を飲みながら、
「お前はスパイか?
逃がさぬ様に監視を言いつかったが、
とても十分な監視は出来ぬ。
逃げようと思えば逃げろ。
今日は監視があると思うから明日以降にしろ。」
と男に伝える。
連れて帰り、
皆には、
「こいつ俺の時計を盗み連行された。」
と報告する。
二、三日してボーイは姿を消す。
当分の間、
呼出しに怯えるが遂に呼出しなし。
いい加減な憲兵の命令。
何時とはなく忘れる。
早朝、
母の呼び声で目覚める。
夢か、
そのまま事務所でいると、
電報が来る。
受け取ると私宛。
『今朝母死す。』
電報を手にしたまま放心状態で時間を過ごす。
貧しさに耐えつつ、
私を擁護して力付けていただいた母も死んだか。
その秋、
会社の慰安旅行で蘇州に遊ぶ。
鉄道の沿線は大地の起伏と大小の沼を結ぶ、
クリークが流れる中を小舟に乗り、
何百羽のアヒルを追う。
一人網で何かを狙う以外に人影を認めず。
人家も無し、
その中を汽車は走る。
悠久な大陸。
中国は広大だ。
蘇州駅に着く。
古びた田舎の感じ。
豊作を暗示の稲穂が垂れる。
クリークの農道を歩み、
通りに出る。
タクシーを雇い、
名所古跡を回る。
視るのも多くだが心は寂しく皆の後に続く。
寒山寺の鐘突き堂にに入る。
突き賃を支払い、
この鐘の音、
祖国の母に届けと力を込めて突く。
第61回『内地の様子』
これからの内地のにおける行動を書き提出する。
ボーイ、
荷物を持って私の後に従う。
本社にて上海会社の成績を報告していると、
警官が来訪する。
「Y居るか。」
「私です。」
外地の様々を話すなと口止めされる。
これかの予定を聞く。
家に帰り離れで母を見舞う耳に、
「Y居るか。」
「私です。」
予定を聞き口止めして帰る。
滞在一週間、
行く先々で罪人扱いで精神的に参る。
国内は徹底した配給制度で早くも木綿物は見当たらぬ。
お前の着衣全部を脱いでおいて帰れ。
殆ど置いて、
身軽くなった身を夜汽車の座席でまどろむ頃、
ふんわりと列車が浮き上がる。
台風の来襲。
新聞では山口県目下台風が通過中。
岡山で列車進行打ち切り。
裏日本回りの列車に乗り込む。
短いトンネルの連続で、
初めはその都度わからず窓の開け閉めに専念するが、
中止をして荒れ狂う海面を不安な気持ちで眺める。
駅に停車をする。
国防婦人のタスキを掛けた多くの婦人達が、
お疲れさまと笑顔で炊き出しのムスビを差し出す。
良きかな日本の国情。
有難く戴く。
ほんのりと塩味が舌に解ける。
停車毎に労りと慰めの言葉を掛けられる。
流れる汗を拭いていると、
隣に座る人が、
「それは木綿のタオルですか?珍しい。」と、
手に取って見る。
日用品もここ迄不自由しているのか。
良かったら差し上げますと手渡す。
長崎に着く。
流れる汗を流そうと銭湯を探して汗を流す。
今度は気楽な二等に乗り込む。
初めて知人を頼り上海に行く娘さんを両親より預かる。
船内の風呂は海水だから石鹸の泡立ちが無い。
夜半に客船停止する。
近くに敵潜水艦潜行の気配あり。
真っ暗闇の船内で指定の場所で、
浮き袋を身に付けて、
預かった娘さんを片側に息を凝らして解除を待つ。
数時間、
いやもっと短かったかな。
再び快適なローリングを繰り返し、
洋上を船は進む。
船に乗り込む時に話し相手になった人が、
仕切と何かを探している。
ニヤリを笑い。
話すには、
あの緊張の真只中に隣に女がいる。
手を出すと手応えあり。
そのまま今生の名残りと関係を結んでいたらしい…。
あの緊張の最中に…この男、
余程の度胸の持ち主なのか、
匂いを頼りに探すが遂に断念する。
人間絶対絶命でも希望は捨てては駄目と教わる。
娘さんを相手に渡して、
日は短くも安堵の上海に帰る。
洋上の戦線新聞報道より、
余程せっぱ詰まっているのかしらん。
往復、
敵潜水艦の脅威に晒される。
ともあれ、
懸命に仕事に励む事。
母も安心したのか安堵の日々を送るとか。
ボーイ、
荷物を持って私の後に従う。
本社にて上海会社の成績を報告していると、
警官が来訪する。
「Y居るか。」
「私です。」
外地の様々を話すなと口止めされる。
これかの予定を聞く。
家に帰り離れで母を見舞う耳に、
「Y居るか。」
「私です。」
予定を聞き口止めして帰る。
滞在一週間、
行く先々で罪人扱いで精神的に参る。
国内は徹底した配給制度で早くも木綿物は見当たらぬ。
お前の着衣全部を脱いでおいて帰れ。
殆ど置いて、
身軽くなった身を夜汽車の座席でまどろむ頃、
ふんわりと列車が浮き上がる。
台風の来襲。
新聞では山口県目下台風が通過中。
岡山で列車進行打ち切り。
裏日本回りの列車に乗り込む。
短いトンネルの連続で、
初めはその都度わからず窓の開け閉めに専念するが、
中止をして荒れ狂う海面を不安な気持ちで眺める。
駅に停車をする。
国防婦人のタスキを掛けた多くの婦人達が、
お疲れさまと笑顔で炊き出しのムスビを差し出す。
良きかな日本の国情。
有難く戴く。
ほんのりと塩味が舌に解ける。
停車毎に労りと慰めの言葉を掛けられる。
流れる汗を拭いていると、
隣に座る人が、
「それは木綿のタオルですか?珍しい。」と、
手に取って見る。
日用品もここ迄不自由しているのか。
良かったら差し上げますと手渡す。
長崎に着く。
流れる汗を流そうと銭湯を探して汗を流す。
今度は気楽な二等に乗り込む。
初めて知人を頼り上海に行く娘さんを両親より預かる。
船内の風呂は海水だから石鹸の泡立ちが無い。
夜半に客船停止する。
近くに敵潜水艦潜行の気配あり。
真っ暗闇の船内で指定の場所で、
浮き袋を身に付けて、
預かった娘さんを片側に息を凝らして解除を待つ。
数時間、
いやもっと短かったかな。
再び快適なローリングを繰り返し、
洋上を船は進む。
船に乗り込む時に話し相手になった人が、
仕切と何かを探している。
ニヤリを笑い。
話すには、
あの緊張の真只中に隣に女がいる。
手を出すと手応えあり。
そのまま今生の名残りと関係を結んでいたらしい…。
あの緊張の最中に…この男、
余程の度胸の持ち主なのか、
匂いを頼りに探すが遂に断念する。
人間絶対絶命でも希望は捨てては駄目と教わる。
娘さんを相手に渡して、
日は短くも安堵の上海に帰る。
洋上の戦線新聞報道より、
余程せっぱ詰まっているのかしらん。
往復、
敵潜水艦の脅威に晒される。
ともあれ、
懸命に仕事に励む事。
母も安心したのか安堵の日々を送るとか。
第60回『昭和十七年なり』
日米戦争が激しさを増す。
昭和十七年に入り日毎に物価高騰する。
民衆生活い追い詰められて路頭に迷い投げ出される。
痩せ細り、
幽鬼の様に路頭を彷徨う人達を多数見かけるようになる。
捨ててもおけず僅かだが小銭を与えるが、
その数、
日毎に増大して一個人の微細な援助は焼け石に水で中止する。
日と共に幽鬼の連中増大底知れず。
慣れると恐ろしい。
友達と歩く時、
前方より来る幽鬼を見て、
何時まで持つと、
彼等の生死を掛けたりする。
歩道に横たわる死骸、
増大の一途を辿る。
番号札を手に死骸の足に括り付けて歩く後ろより、
荷車を引いた二人が頭と足を持ち、
ヒョイと投げ込む箱の中に、
幾体もの死骸が折り重なる。
言葉も無く、
霊よ安かれと祈りを捧げる。
八月に入るも衰えず。
新聞の報道では上海地区だけで、
毎日の行き倒れが三百人余りと報じるが、
涼風肌に感ずる頃、
減少して人も忘れる。
戦争だけはしては成らぬと痛切に感ずる。
勝っても負けても、
ほんの一部の人達の利害に終始するのでは無かろうか。
餓死の死者の殆どは男性だった。
女性は強し…。
上海地区の在郷軍人、
訓練の為に集合。
夕刻より早朝に掛けて、
小休止で行軍を強要されて、
翌日、
足を引き摺り歩く邦人多数。
噂では近日中に全員の査閲があるらしい。
故郷の家より、
『母の病状悪化を辿る、見舞いに帰って欲しい』
との便りが続く。
皆は一度、
見舞いに帰れと勧めてくれるが、
召集令状を受けた身であれば、
我がままも許されぬ。
心は乱れるが、
査閲も無事終了する。
皆の勧めもあり、
内地出張名目で船に乗り込みむが、
伝染病発生で消毒終了迄待て。
一等で三人部屋。
皆と話し合いボーイのチップは同額にする。
夕食の時に、
ボーイの案内で部屋を出ると、
洋服を着て、
ネクタイを結べと靴を磨いてくれる。
慣れぬ雰囲気に多少まごつく。
テーブルの横に○○宮殿下着席する。
警備は厳重だ。
当人、
何もせずして用が足りるが、
さぞや退屈であろう。
殿下が箸を付けるのを見て、
全員、
頂きますで箸を取る。
茶碗を出すと、
体よく最後にされる。
同室の者達、
約束違反をしたのであろう。
翌朝食事の案内の折りにチップの増額をボーイに手渡す。
効果は覿面で待遇豹変する。
船はチップ次第だ。
楽しい船旅の耳に、
拡声器より流れる放送は、
『近くに敵潜水艦潜行の疑いがある。』
エンジンを止めて船は停泊する。
お互いに息詰まる思いで、
耳を澄ませて、
次の瞬間に身構えるが、
エンジン始動して神戸港に安着する。
昭和十七年に入り日毎に物価高騰する。
民衆生活い追い詰められて路頭に迷い投げ出される。
痩せ細り、
幽鬼の様に路頭を彷徨う人達を多数見かけるようになる。
捨ててもおけず僅かだが小銭を与えるが、
その数、
日毎に増大して一個人の微細な援助は焼け石に水で中止する。
日と共に幽鬼の連中増大底知れず。
慣れると恐ろしい。
友達と歩く時、
前方より来る幽鬼を見て、
何時まで持つと、
彼等の生死を掛けたりする。
歩道に横たわる死骸、
増大の一途を辿る。
番号札を手に死骸の足に括り付けて歩く後ろより、
荷車を引いた二人が頭と足を持ち、
ヒョイと投げ込む箱の中に、
幾体もの死骸が折り重なる。
言葉も無く、
霊よ安かれと祈りを捧げる。
八月に入るも衰えず。
新聞の報道では上海地区だけで、
毎日の行き倒れが三百人余りと報じるが、
涼風肌に感ずる頃、
減少して人も忘れる。
戦争だけはしては成らぬと痛切に感ずる。
勝っても負けても、
ほんの一部の人達の利害に終始するのでは無かろうか。
餓死の死者の殆どは男性だった。
女性は強し…。
上海地区の在郷軍人、
訓練の為に集合。
夕刻より早朝に掛けて、
小休止で行軍を強要されて、
翌日、
足を引き摺り歩く邦人多数。
噂では近日中に全員の査閲があるらしい。
故郷の家より、
『母の病状悪化を辿る、見舞いに帰って欲しい』
との便りが続く。
皆は一度、
見舞いに帰れと勧めてくれるが、
召集令状を受けた身であれば、
我がままも許されぬ。
心は乱れるが、
査閲も無事終了する。
皆の勧めもあり、
内地出張名目で船に乗り込みむが、
伝染病発生で消毒終了迄待て。
一等で三人部屋。
皆と話し合いボーイのチップは同額にする。
夕食の時に、
ボーイの案内で部屋を出ると、
洋服を着て、
ネクタイを結べと靴を磨いてくれる。
慣れぬ雰囲気に多少まごつく。
テーブルの横に○○宮殿下着席する。
警備は厳重だ。
当人、
何もせずして用が足りるが、
さぞや退屈であろう。
殿下が箸を付けるのを見て、
全員、
頂きますで箸を取る。
茶碗を出すと、
体よく最後にされる。
同室の者達、
約束違反をしたのであろう。
翌朝食事の案内の折りにチップの増額をボーイに手渡す。
効果は覿面で待遇豹変する。
船はチップ次第だ。
楽しい船旅の耳に、
拡声器より流れる放送は、
『近くに敵潜水艦潜行の疑いがある。』
エンジンを止めて船は停泊する。
お互いに息詰まる思いで、
耳を澄ませて、
次の瞬間に身構えるが、
エンジン始動して神戸港に安着する。
第59回『夏の小事件』
真夏の小事件。
暑い最中に生水は飲めず、
良く見かけるのが、
生の蓮根や胡瓜等を歩きながらかじる姿。
夜遊びで帰宅する時は道路の中央を歩く。
各家の軒下は家族び寝場所。
蒸し暑くて、
風通しの悪い家では、
とてもじゃないが寝られない。
私の工場付近は、
日本からの中小企業の進出で工場が点在する。
夏はお互いに誘いあい、
道路に縁台を出して夕涼みと洒落込む。
日本人の飼い犬は中国人に吠えたてるが日本人には吠えぬ。
中国人が飼う犬は日本人には吠えたてる。
日本人の火葬場の近くに中国人の墓場?がある。
立派な寝棺をそのまま大地に置く。
年月を経て寝棺が腐って人骨が散乱する。
その頭蓋骨を拾い持ち帰り、
油で磨き艶の出たのを部屋に飾る日本人もいる。
又、
生後間も無く死亡すると筵等ぶ包んで捨てるから、
犬の餌食になり、
食べるのを観る。
所変わると風習も変わる。
軍の命令で良く防空訓練を行なう。
我々は在郷軍人の服装に身を固めて、
木銃を持ち参加する。
警報鳴ると交通を遮断するが、
中々思う様には遮断出来ぬが、
軍服を恐れる心理を活用して怒鳴り付ける。
夜間に及び灯下管制中、
明かりが漏れる所がある。
注意に行くと、
倉庫より漏れている。
広い倉庫内中央に通路があり、
両側に小部屋が並ぶ、
どの部屋にも枯れ草が渦高く盛り上げている。
何に使うかと聞くと、
寝床との返事。
持ち物皆無の状態らしい。
明かりは蝋燭の明かりだった。
消してと言えば、
えらい剣幕で反抗をする。
負けずにやり返す。
中の一人が日本人は鬼畜も同然と食ってかかる。
自分達は紅口の繁華街で商売をしておったが、
ある日、
日本人が書類を示して、
今直ぐ持てるだけ持って出て行けと、
訳も分からず追い出された。
泣けど騒げど遂には取り合って貰えず、
この有り様だ。
何故、
善良な市民を追い出した。
一時騒然となる。
慰める言葉も無く、
無言で退散する。
聞いてはおったが、
上海事変の折り、
内地で食いつめた一発屋が、
大挙して戦乱収まらぬ上海に来て、
自分勝手に書類を創り軍に提出する。
軍は適当と認めると承認の判を押す。
これで書類は完璧。
その書類を示して何も知らない家族を追い出して、
一発屋は商売を始める。
噂には聞いておったが真実だったのか…。
何食わぬ顔で店主に収まる奴がいるのか。
市街の片隅に、
道路の軒下近くに、
飛行機が投下した爆弾の爆風をよける為の、
蛸壺を共同租界内に多数掘る。
日と共に何時しか中は人糞の山を築く。
今年の正月は和服姿で参拝する人達でごった返す。
ここが外地かと疑う。
上海神社は着飾った邦人で埋まる。
その余勢を借りて大挙、
英国租界に繰り出す。
下駄の音も高く闊歩する。
気分は上々。
暑い最中に生水は飲めず、
良く見かけるのが、
生の蓮根や胡瓜等を歩きながらかじる姿。
夜遊びで帰宅する時は道路の中央を歩く。
各家の軒下は家族び寝場所。
蒸し暑くて、
風通しの悪い家では、
とてもじゃないが寝られない。
私の工場付近は、
日本からの中小企業の進出で工場が点在する。
夏はお互いに誘いあい、
道路に縁台を出して夕涼みと洒落込む。
日本人の飼い犬は中国人に吠えたてるが日本人には吠えぬ。
中国人が飼う犬は日本人には吠えたてる。
日本人の火葬場の近くに中国人の墓場?がある。
立派な寝棺をそのまま大地に置く。
年月を経て寝棺が腐って人骨が散乱する。
その頭蓋骨を拾い持ち帰り、
油で磨き艶の出たのを部屋に飾る日本人もいる。
又、
生後間も無く死亡すると筵等ぶ包んで捨てるから、
犬の餌食になり、
食べるのを観る。
所変わると風習も変わる。
軍の命令で良く防空訓練を行なう。
我々は在郷軍人の服装に身を固めて、
木銃を持ち参加する。
警報鳴ると交通を遮断するが、
中々思う様には遮断出来ぬが、
軍服を恐れる心理を活用して怒鳴り付ける。
夜間に及び灯下管制中、
明かりが漏れる所がある。
注意に行くと、
倉庫より漏れている。
広い倉庫内中央に通路があり、
両側に小部屋が並ぶ、
どの部屋にも枯れ草が渦高く盛り上げている。
何に使うかと聞くと、
寝床との返事。
持ち物皆無の状態らしい。
明かりは蝋燭の明かりだった。
消してと言えば、
えらい剣幕で反抗をする。
負けずにやり返す。
中の一人が日本人は鬼畜も同然と食ってかかる。
自分達は紅口の繁華街で商売をしておったが、
ある日、
日本人が書類を示して、
今直ぐ持てるだけ持って出て行けと、
訳も分からず追い出された。
泣けど騒げど遂には取り合って貰えず、
この有り様だ。
何故、
善良な市民を追い出した。
一時騒然となる。
慰める言葉も無く、
無言で退散する。
聞いてはおったが、
上海事変の折り、
内地で食いつめた一発屋が、
大挙して戦乱収まらぬ上海に来て、
自分勝手に書類を創り軍に提出する。
軍は適当と認めると承認の判を押す。
これで書類は完璧。
その書類を示して何も知らない家族を追い出して、
一発屋は商売を始める。
噂には聞いておったが真実だったのか…。
何食わぬ顔で店主に収まる奴がいるのか。
市街の片隅に、
道路の軒下近くに、
飛行機が投下した爆弾の爆風をよける為の、
蛸壺を共同租界内に多数掘る。
日と共に何時しか中は人糞の山を築く。
今年の正月は和服姿で参拝する人達でごった返す。
ここが外地かと疑う。
上海神社は着飾った邦人で埋まる。
その余勢を借りて大挙、
英国租界に繰り出す。
下駄の音も高く闊歩する。
気分は上々。
第58回『街のいろいろ2』
日米開戦して、
欧米人が生活苦に陥ったのであろうか、
夜の街頭に立ち、
客を呼ぶ婦女子の姿を見受ける。
中国人の淫売婦の勢力圏内には入れず、
寂しい街頭に立つとか…。
友達と話し合い歩む時、
「あの異国人婦人、
昨夜遊んだ女だ。」と、
友達が声を掛けたが横を向く。
彼、
「偉そうに東洋人を見下げるが、
食いつめると何処の国も先ず女が身を売る。
もう一度抱いて辱かしめてやろう。」
年配の友人に、
「俺は随分と遊んだが一度として性病を貰わず。」
と自慢しておった。
その友人が、
ある日一人珍しく飲む姿を見る。
酔いが深まる頃、
彼が私に、
「聞いてくれ、
俺は何処の国の女と接する時でも、
何時如何なる時でも重装備をして接するが、
過日、
初々しい日本の芸者と遊んだ。
その結果がこれだ!
この歳で恥ずかしい…。
貴様の様に固いのも、
どうだかと半ば批判しておったが、
遂にはこの様だ。
女房にも嫌われ思い知った。」
と話す。
もう一人、
良く夜遊びする人が最近見かけなくなった。
偶然、
その奥さんに医院の前で会う。
顔を赤らめて、
「恥ずかしい。
夫婦してこの有り様です。」
と話すには、
夫がお土産(病気)を貰い帰り、
二人で医者通いです。
当時、
梅毒と癩病の混合三性病が蔓延しつつある最中でした。
一度、
私もその患者を見ましたが、
まだ二十歳代の青年の男根が半ば腐り落ち悪臭を匂う。
一度の過ちが終生の禍根を残す恐ろしい性病。
勢力アマバレ精魂掛けて働け。
軍の命令で六月上旬、
チブスの注射を街頭で行なう。
指定の場所に行くと、
長蛇の列が続く。
不思議な事に前の人の腰に抱きついて並んでいる。
炎天下日陰もなく並んでいる。
この謎は解けた。
強引な割り込みを防ぐ為だったが、
その強固な防御の中に割り込む奴がいる。
一時期、
割り込む奴を引き出して整列さすが、
焼け石に水と諦めて中止をする。
並んで注射を受けたが、
一本の注射針で幾人にも注射をしている。
医者に注意すると、
顔を挙げて私の顔を見て、
新しいのと取り替える。
無茶をするなと言いたいが、
この注射を一人の人が何回か繰り返して注射をして、
その注射済みの証明書を、
注射嫌いな人に売りつけている。
欧米人が生活苦に陥ったのであろうか、
夜の街頭に立ち、
客を呼ぶ婦女子の姿を見受ける。
中国人の淫売婦の勢力圏内には入れず、
寂しい街頭に立つとか…。
友達と話し合い歩む時、
「あの異国人婦人、
昨夜遊んだ女だ。」と、
友達が声を掛けたが横を向く。
彼、
「偉そうに東洋人を見下げるが、
食いつめると何処の国も先ず女が身を売る。
もう一度抱いて辱かしめてやろう。」
年配の友人に、
「俺は随分と遊んだが一度として性病を貰わず。」
と自慢しておった。
その友人が、
ある日一人珍しく飲む姿を見る。
酔いが深まる頃、
彼が私に、
「聞いてくれ、
俺は何処の国の女と接する時でも、
何時如何なる時でも重装備をして接するが、
過日、
初々しい日本の芸者と遊んだ。
その結果がこれだ!
この歳で恥ずかしい…。
貴様の様に固いのも、
どうだかと半ば批判しておったが、
遂にはこの様だ。
女房にも嫌われ思い知った。」
と話す。
もう一人、
良く夜遊びする人が最近見かけなくなった。
偶然、
その奥さんに医院の前で会う。
顔を赤らめて、
「恥ずかしい。
夫婦してこの有り様です。」
と話すには、
夫がお土産(病気)を貰い帰り、
二人で医者通いです。
当時、
梅毒と癩病の混合三性病が蔓延しつつある最中でした。
一度、
私もその患者を見ましたが、
まだ二十歳代の青年の男根が半ば腐り落ち悪臭を匂う。
一度の過ちが終生の禍根を残す恐ろしい性病。
勢力アマバレ精魂掛けて働け。
軍の命令で六月上旬、
チブスの注射を街頭で行なう。
指定の場所に行くと、
長蛇の列が続く。
不思議な事に前の人の腰に抱きついて並んでいる。
炎天下日陰もなく並んでいる。
この謎は解けた。
強引な割り込みを防ぐ為だったが、
その強固な防御の中に割り込む奴がいる。
一時期、
割り込む奴を引き出して整列さすが、
焼け石に水と諦めて中止をする。
並んで注射を受けたが、
一本の注射針で幾人にも注射をしている。
医者に注意すると、
顔を挙げて私の顔を見て、
新しいのと取り替える。
無茶をするなと言いたいが、
この注射を一人の人が何回か繰り返して注射をして、
その注射済みの証明書を、
注射嫌いな人に売りつけている。