第87回『戦後すぐぐらいの大阪』
車内で漫画本を出して見ている。
大学生らしい。
公衆の中で漫画本を読む。
それが大学生。
大正生まれの私には不思議に思う。
我々が小学生時代に、
漫画本を読むのは親に隠れ内緒で読んだ。
大人に見つかると、
怒鳴られて叱られた。
それでも少年少女雑誌には漫画も載る。
何と変われば変わるものと驚く。
戦時中、
国民は総動員で召集令状を受け取らぬ者は、
大会社等に徴用され会社の宿舎に寝泊りをする。
敗戦と同時に全員解放され、
故郷に一斉に帰るから、
交通機関は未曾有の混雑。
それに加えて、
皆はリュックを背負う。
駅に入る列車は、
どの列車も鮨詰め状態。
待っていると何時乗れるか心は焦る。
貨物列車も引用する。
心は焦る。
貨物列車も引用する。
心は焦る。
貨物列車に無理に乗り込むと、
豚がブウブウと迎える。
豚と仲良く同車。
かたや牛の貨物列車に同伴して生まれ故郷へ。
留守を守る家族達突然の帰郷で、
嬉しく迎えるが、
サテ、
食糧難に悲鳴をあげる。
田舎は何とか食いつなぐが、
都会は食い物も無く、
空襲で焼け残った衣類や珍しい物を持って、
田舎に買出しにリュックを背負い行く。
田舎の農家の人たちのご機嫌を取り、
泣き付き手に入れた食い物を背負い、
満員列車に押し込められて乗り込む。
列車内騒然と、
浮き足立つ闇商人の一斉取調べ。
早朝より必死な思いで、
やっと手に入れた、
家族の今夜の食料の米も、
米の移動証明無く、
家族の命綱の食料も遠慮会釈も無く没収されるが、
走る列車内、
逃げ口も無いが、
中には荷物と共に飛び降りて、
難を逃れる闇屋もいるが、
殆どの者は言い訳聞かれず、
命の食料を没収の憂き目。
家では家族が今夜のご飯を楽しみに待つ。
中には幼い子供に持たすが、
それもはかない一時逃れ。
雨の日。
二階の窓より眺める目に、
道路の中程に馬糞が盛り上がる中に、
一握りの米が散乱する。
一粒々を拾い手の平に置く。
全部を拾い立ち去る。
あの米食べるのであろうか。
水で洗えば知らぬ人は米と見るだろう…。
平和の人々の想像を絶する食料捜し。
米と交換出来る何かを持つ者はまだ幸せ。
空襲で全部を焼かれて、
逃げ出した人々は人の捨てた残り物を漁る。
子供の躾どころか、
食い物捜しに目の色を変える親達。
こうして毎日は過ぎ行く。
大学生らしい。
公衆の中で漫画本を読む。
それが大学生。
大正生まれの私には不思議に思う。
我々が小学生時代に、
漫画本を読むのは親に隠れ内緒で読んだ。
大人に見つかると、
怒鳴られて叱られた。
それでも少年少女雑誌には漫画も載る。
何と変われば変わるものと驚く。
戦時中、
国民は総動員で召集令状を受け取らぬ者は、
大会社等に徴用され会社の宿舎に寝泊りをする。
敗戦と同時に全員解放され、
故郷に一斉に帰るから、
交通機関は未曾有の混雑。
それに加えて、
皆はリュックを背負う。
駅に入る列車は、
どの列車も鮨詰め状態。
待っていると何時乗れるか心は焦る。
貨物列車も引用する。
心は焦る。
貨物列車も引用する。
心は焦る。
貨物列車に無理に乗り込むと、
豚がブウブウと迎える。
豚と仲良く同車。
かたや牛の貨物列車に同伴して生まれ故郷へ。
留守を守る家族達突然の帰郷で、
嬉しく迎えるが、
サテ、
食糧難に悲鳴をあげる。
田舎は何とか食いつなぐが、
都会は食い物も無く、
空襲で焼け残った衣類や珍しい物を持って、
田舎に買出しにリュックを背負い行く。
田舎の農家の人たちのご機嫌を取り、
泣き付き手に入れた食い物を背負い、
満員列車に押し込められて乗り込む。
列車内騒然と、
浮き足立つ闇商人の一斉取調べ。
早朝より必死な思いで、
やっと手に入れた、
家族の今夜の食料の米も、
米の移動証明無く、
家族の命綱の食料も遠慮会釈も無く没収されるが、
走る列車内、
逃げ口も無いが、
中には荷物と共に飛び降りて、
難を逃れる闇屋もいるが、
殆どの者は言い訳聞かれず、
命の食料を没収の憂き目。
家では家族が今夜のご飯を楽しみに待つ。
中には幼い子供に持たすが、
それもはかない一時逃れ。
雨の日。
二階の窓より眺める目に、
道路の中程に馬糞が盛り上がる中に、
一握りの米が散乱する。
一粒々を拾い手の平に置く。
全部を拾い立ち去る。
あの米食べるのであろうか。
水で洗えば知らぬ人は米と見るだろう…。
平和の人々の想像を絶する食料捜し。
米と交換出来る何かを持つ者はまだ幸せ。
空襲で全部を焼かれて、
逃げ出した人々は人の捨てた残り物を漁る。
子供の躾どころか、
食い物捜しに目の色を変える親達。
こうして毎日は過ぎ行く。
第86回『戦後すぐの大阪』
闇市が大阪の至る所で盛況を極める。
中でも大きいのは大阪駅前の闇市。
天幕を貼り、
狭い通路は人で埋まる。
茶碗の縁の欠けた物から、
数年も過ぎる雑誌類、
横には西洋ドレスの結婚衣装が並ぶ。
日常欲しい物は、
何でも金さえあれば買える。
巷では何を買うにも、
購入切符が入り用。
切符を持参しても商品が無い。
何時入るか知れぬ切符片手に、
市中を彷徨い探す。
日本橋を歩くと、
B29の残骸が道の片側で人目を引く。
通天閣周辺の新世界も焼け野原で、
空爆の激しさを物語る。
街角に二階建が二件だけが、
取り残された様に建つ不思議。
目に入る建物は掘っ立て小屋が多い。
歩く者は多いが、
大衆は何処に住んでいるのであろう。
中国の南京の惨状が目に浮かぶ。
殺し殺されて、
住居は無惨な廃屋に。
敗戦直後の国内の状況は知りませんが、
私が大阪に出る時、
宇野駅で列車に乗り込むと既に満席。
窓際に腰掛けていると激しく窓を叩く。
当時は入り口より乗り込むより、
窓から入れば素早く席が取れる状態。
兄は朝鮮人だから相手にするなと言う。
その内に窓を開けて乗り込んでくる…。
私は思わず、
そいつの足を持ち、
突き落とすと、
多数が押しかけて、
窓の外は口々に罵り奇声を挙げるが、
私は敗戦直後、
中国で散々な敗戦国日本人であるが為に、
嫌な事に直面しておる。
彼等に弱みを見せると図に乗り無謀を働くが、
相手が強いと手出しはせぬ。
兄の制止も聞かず、
高飛車に出る。
相手は隣へと移動する。
私は大声でヨボ(朝鮮人)等に負けるなと叫ぶ。
汽車は発車する。
敗戦前、
上海で中国人を苛める者の殆どが朝鮮人。
俺は朝鮮人だと弱者で心卑しい国民性。
幾分か落ち着いた時。
兄はお前も強くなったと驚く。
敗戦国日本、
気力も敗戦か。
常に虐げられた国民は、
強い者には集団で襲うが、
逃げると増長するが彼らの予想に反して、
高飛車に出ると離散する心理を掴めば、
彼らは弱い。
中でも大きいのは大阪駅前の闇市。
天幕を貼り、
狭い通路は人で埋まる。
茶碗の縁の欠けた物から、
数年も過ぎる雑誌類、
横には西洋ドレスの結婚衣装が並ぶ。
日常欲しい物は、
何でも金さえあれば買える。
巷では何を買うにも、
購入切符が入り用。
切符を持参しても商品が無い。
何時入るか知れぬ切符片手に、
市中を彷徨い探す。
日本橋を歩くと、
B29の残骸が道の片側で人目を引く。
通天閣周辺の新世界も焼け野原で、
空爆の激しさを物語る。
街角に二階建が二件だけが、
取り残された様に建つ不思議。
目に入る建物は掘っ立て小屋が多い。
歩く者は多いが、
大衆は何処に住んでいるのであろう。
中国の南京の惨状が目に浮かぶ。
殺し殺されて、
住居は無惨な廃屋に。
敗戦直後の国内の状況は知りませんが、
私が大阪に出る時、
宇野駅で列車に乗り込むと既に満席。
窓際に腰掛けていると激しく窓を叩く。
当時は入り口より乗り込むより、
窓から入れば素早く席が取れる状態。
兄は朝鮮人だから相手にするなと言う。
その内に窓を開けて乗り込んでくる…。
私は思わず、
そいつの足を持ち、
突き落とすと、
多数が押しかけて、
窓の外は口々に罵り奇声を挙げるが、
私は敗戦直後、
中国で散々な敗戦国日本人であるが為に、
嫌な事に直面しておる。
彼等に弱みを見せると図に乗り無謀を働くが、
相手が強いと手出しはせぬ。
兄の制止も聞かず、
高飛車に出る。
相手は隣へと移動する。
私は大声でヨボ(朝鮮人)等に負けるなと叫ぶ。
汽車は発車する。
敗戦前、
上海で中国人を苛める者の殆どが朝鮮人。
俺は朝鮮人だと弱者で心卑しい国民性。
幾分か落ち着いた時。
兄はお前も強くなったと驚く。
敗戦国日本、
気力も敗戦か。
常に虐げられた国民は、
強い者には集団で襲うが、
逃げると増長するが彼らの予想に反して、
高飛車に出ると離散する心理を掴めば、
彼らは弱い。
第85回『これからは番外編思い出すままに』
敗戦直後の日本国内の巷でよく見かけるのが、
若い娘が厚化粧をして、
昼の日中に得々とした態度で、
日本人を見下げる眼差しで、
進駐軍の兵士の腕にぶら下がり、
亦腕をくみ歩く姿。
それを世間ではパンパンと呼び、
さげしむ。
黒人の米兵士達、
田舎に行きチョコレート等をバラマキ、
民衆を集めて頃合はよしと、
若い女を横抱きに野原で強姦を繰り返す。
若い女が姿を消すと、
土足で家にあがり家捜しをして女を探す。
昭和十六年秋頃、
黄浦江の岸壁で別れを惜しみ、
米海兵隊員と上海のクーニャンが、
岸壁で別れのキスをする。
人目もはばからずお互い抱いて抱かれて、
号泣を挙げて、
人目もはばからず別れを惜しむ姿。
横目に眺めて何と浅ましいと見たが、
何処の国の娘も金と強者には勝てず。
男と違い、
女の武器を使えば先方よりなびく。
それが日米戦争の前奏戦だったのか。
何処の国民も戦争に負けると、
我々から眺めると地獄の日夜だが、
戦争で勝てば彼らには退屈凌ぎに過ぎぬ遊び。
軽快にジープが走る。
同乗の米兵、
街を歩く若い女性に投げキッスを贈る。
答えるとジープを止めて、
笑顔と共に娘を連れ去る。
これが敗戦国の偽りの無い姿。
腹が空いては生活も出来ぬ現状だから?
巷では失業者多数。
その救済に土木作業をする。
その日雇い、
日給が二円四十銭。
それを世間ではニコヨンと呼ぶ。
盛り土をモッコに入れて、
前後二人で担い運ぶが、
モッコの中には一握りの土が入る。
それを、
ゆっくりゆっくりな歩調で、
人目もはばからず作業をする。
片側では見慣れぬ、
大きな土運びの機械、
ブルドーザーがエンジンの音も軽快に、
一度に何百人もの土を一度で運び地均しする。
通行の人達立ち止まり眺める。
私が上海で飛行場建設の勤労奉仕で、
モッコを二人で担ぎ土運びをする。
その時分にはアメリカでは、
こうした機械で仕事をしておったのか。
若い娘が厚化粧をして、
昼の日中に得々とした態度で、
日本人を見下げる眼差しで、
進駐軍の兵士の腕にぶら下がり、
亦腕をくみ歩く姿。
それを世間ではパンパンと呼び、
さげしむ。
黒人の米兵士達、
田舎に行きチョコレート等をバラマキ、
民衆を集めて頃合はよしと、
若い女を横抱きに野原で強姦を繰り返す。
若い女が姿を消すと、
土足で家にあがり家捜しをして女を探す。
昭和十六年秋頃、
黄浦江の岸壁で別れを惜しみ、
米海兵隊員と上海のクーニャンが、
岸壁で別れのキスをする。
人目もはばからずお互い抱いて抱かれて、
号泣を挙げて、
人目もはばからず別れを惜しむ姿。
横目に眺めて何と浅ましいと見たが、
何処の国の娘も金と強者には勝てず。
男と違い、
女の武器を使えば先方よりなびく。
それが日米戦争の前奏戦だったのか。
何処の国民も戦争に負けると、
我々から眺めると地獄の日夜だが、
戦争で勝てば彼らには退屈凌ぎに過ぎぬ遊び。
軽快にジープが走る。
同乗の米兵、
街を歩く若い女性に投げキッスを贈る。
答えるとジープを止めて、
笑顔と共に娘を連れ去る。
これが敗戦国の偽りの無い姿。
腹が空いては生活も出来ぬ現状だから?
巷では失業者多数。
その救済に土木作業をする。
その日雇い、
日給が二円四十銭。
それを世間ではニコヨンと呼ぶ。
盛り土をモッコに入れて、
前後二人で担い運ぶが、
モッコの中には一握りの土が入る。
それを、
ゆっくりゆっくりな歩調で、
人目もはばからず作業をする。
片側では見慣れぬ、
大きな土運びの機械、
ブルドーザーがエンジンの音も軽快に、
一度に何百人もの土を一度で運び地均しする。
通行の人達立ち止まり眺める。
私が上海で飛行場建設の勤労奉仕で、
モッコを二人で担ぎ土運びをする。
その時分にはアメリカでは、
こうした機械で仕事をしておったのか。
第84回『農地改革とやら』
農地改革とかで、
父も小作で無く地主になる。
政府より長年百姓に従事しているものに対して、
無償で百五十坪の山林を下賜される。
銀行に行き命と頼む、
三万円の小切手を出して請求すると、
何の連絡もありませんと断られる。
再々度請求するが同じ返事。
ついに諦めるが、
それが私の躓きの始まり。
山の開墾をしている、
手伝えと言われて断りも出来ず、
高熱を押して道具を担ぎ、
父兄に従う。
開墾は粗方大木は切り倒されて、
その整理におおわらわ。
仕事をしていると、
上より大声で、
大きな石が転げ落ちる早く退け。
と、
全部が素人、
何回も危険信号で逃げつつの作業。
切り倒した松雑木を、
小さく切り薪に。
持ち帰るが生木は意外と重い。
大小の石がころころ出てきて難儀。
その石を隣との境界に積み上げる。
雑草の根も深い。
大木を切り倒した。
根を掘り下げると、
必ず少ないが水が沸く。
この水で成長しているのであろう。
社会との仕組みを思い。
世渡りも、
金脈を早く掴んだ者が成功すると、
教えられる。
山の中腹、
畑の水不足を思い、
僅かに湧き出る水確保に、
周囲をセメントで固める。
休憩の折に遙か彼方の瀬戸内海を眺める。
屋島の裾が海底に沈む。
女木島が海上に浮くように浮かぶ。
周囲を釣り船が、
大小の船が行き通う。
その中を縫う様に連絡船が、
薄く煙を棚引かせ、
のんびりと警笛を鳴らしつつ宇野に向かう。
戦前と何の変わりも認められない。
静かに波紋を残す瀬戸内。
陸を望むと市街の中心部は、
掘っ立て小屋が点々と目に入る様相。
死力を尽くしての戦い。
何が残った。
戦争程に無意味な行為?は無い。
父も小作で無く地主になる。
政府より長年百姓に従事しているものに対して、
無償で百五十坪の山林を下賜される。
銀行に行き命と頼む、
三万円の小切手を出して請求すると、
何の連絡もありませんと断られる。
再々度請求するが同じ返事。
ついに諦めるが、
それが私の躓きの始まり。
山の開墾をしている、
手伝えと言われて断りも出来ず、
高熱を押して道具を担ぎ、
父兄に従う。
開墾は粗方大木は切り倒されて、
その整理におおわらわ。
仕事をしていると、
上より大声で、
大きな石が転げ落ちる早く退け。
と、
全部が素人、
何回も危険信号で逃げつつの作業。
切り倒した松雑木を、
小さく切り薪に。
持ち帰るが生木は意外と重い。
大小の石がころころ出てきて難儀。
その石を隣との境界に積み上げる。
雑草の根も深い。
大木を切り倒した。
根を掘り下げると、
必ず少ないが水が沸く。
この水で成長しているのであろう。
社会との仕組みを思い。
世渡りも、
金脈を早く掴んだ者が成功すると、
教えられる。
山の中腹、
畑の水不足を思い、
僅かに湧き出る水確保に、
周囲をセメントで固める。
休憩の折に遙か彼方の瀬戸内海を眺める。
屋島の裾が海底に沈む。
女木島が海上に浮くように浮かぶ。
周囲を釣り船が、
大小の船が行き通う。
その中を縫う様に連絡船が、
薄く煙を棚引かせ、
のんびりと警笛を鳴らしつつ宇野に向かう。
戦前と何の変わりも認められない。
静かに波紋を残す瀬戸内。
陸を望むと市街の中心部は、
掘っ立て小屋が点々と目に入る様相。
死力を尽くしての戦い。
何が残った。
戦争程に無意味な行為?は無い。
第83回『貰うものは貰う』
翌朝目覚めて、
食事も戴き市内の状況を見て歩く。
中心部は壊滅状態。
妹の婚家先は跡形も無く、
友達の家も見当たらぬ。
心に痛手を受けて帰る。
持ち帰りの残高、
七百円にも足らず。
噂を聞き市役所へ。
引揚者に配給の衣類を受け取りに行くと、
指定の物の半分足らず。
定数を要求すると、
不機嫌な返答。
課長を呼び出し不足分の説明を求める。
ついに指定の分量より、
多い物を出す。
それを台に叩き付けて、
文句を言えば数量多く出す。
説明をしろと粘りに粘る。
同じ引揚者に待って貰い交渉する。
倍の品物を持って帰る。
翌日、
県庁に行き請求すると数量が少ない。
我々が得心の出来る説明を求める。
ついに市役所同様に、
倍の物を持ち帰る。
倍と言っても敗戦下知れた物。
次兄、
お前も強く変わったと驚く。
自分を守る者は自分のみ。
食事も戴き市内の状況を見て歩く。
中心部は壊滅状態。
妹の婚家先は跡形も無く、
友達の家も見当たらぬ。
心に痛手を受けて帰る。
持ち帰りの残高、
七百円にも足らず。
噂を聞き市役所へ。
引揚者に配給の衣類を受け取りに行くと、
指定の物の半分足らず。
定数を要求すると、
不機嫌な返答。
課長を呼び出し不足分の説明を求める。
ついに指定の分量より、
多い物を出す。
それを台に叩き付けて、
文句を言えば数量多く出す。
説明をしろと粘りに粘る。
同じ引揚者に待って貰い交渉する。
倍の品物を持って帰る。
翌日、
県庁に行き請求すると数量が少ない。
我々が得心の出来る説明を求める。
ついに市役所同様に、
倍の物を持ち帰る。
倍と言っても敗戦下知れた物。
次兄、
お前も強く変わったと驚く。
自分を守る者は自分のみ。
第82回『やっと到着』
プラットに屋根が無い。
皆と別れて宇野線に乗り換える。
八千人余が独りになる。
押して押されて、
どうにか乗り込むが、
背中のリュック、
両手にさげる風呂敷包み。
前には洗面器が身動きも出来ず、
やっと席は空いたと、
座ると終点の宇野駅。
連絡船に乗り越える。
身動きが出来るだけ心が休まる。
高松を望むと闇に沈む。
辺りの人に高松の様子を聞くが、
皆はそ知らぬ顔。
桟橋に安着する。
市内の灯を集めた様に電飾光り輝く。
勝手知った裏通りを、
小雨の中、
傘も差せず人通りも絶えた。
真夜中に父の家を目指す。
通る両側、
家並みも立ち並ぶ。
被害甚大と聞いたが間違いか。
ここを曲がれば父の家はある。
薄い街灯が点るが薄暗く何も見えず。
通る目に家並みも建ち並ぶ。
被害甚大は嘘か。
父の家は無傷で建つ。
暫く眺めて、
戸を叩き、
只今帰りました。
戸が開き次兄の元気な顔。
互いに見合わせ微笑む。
真夜中に途中で強盗に出会わなかったか。
最近は毎夜強盗が出る噂がある。
庭に立つ私の姿は、
背には大きな手製のリュック。
両手に風呂敷包みを下げ首より、
大きめの洗面器を吊り、
背中に差すは洋傘。
四月二日午前二時過ぎ雨の夜に帰る。
今夜珍しく風呂を沸かしている。
入れと下を焚き付けてくれる。
風呂に入ると、
全身鳥肌立つ熱があるのだろう。
離れで就寝の父に帰国の挨拶。
頭を枕より挙げもせず早く寝よ。
仏間に入り。
長々と母に帰国の挨拶。
今夜は遅い、
話しは明日にと床に入り熱を計ると、
四十度。
このまま寝付くと起きられぬぞ。
自分に言い聞かせて就寝をする。
皆と別れて宇野線に乗り換える。
八千人余が独りになる。
押して押されて、
どうにか乗り込むが、
背中のリュック、
両手にさげる風呂敷包み。
前には洗面器が身動きも出来ず、
やっと席は空いたと、
座ると終点の宇野駅。
連絡船に乗り越える。
身動きが出来るだけ心が休まる。
高松を望むと闇に沈む。
辺りの人に高松の様子を聞くが、
皆はそ知らぬ顔。
桟橋に安着する。
市内の灯を集めた様に電飾光り輝く。
勝手知った裏通りを、
小雨の中、
傘も差せず人通りも絶えた。
真夜中に父の家を目指す。
通る両側、
家並みも立ち並ぶ。
被害甚大と聞いたが間違いか。
ここを曲がれば父の家はある。
薄い街灯が点るが薄暗く何も見えず。
通る目に家並みも建ち並ぶ。
被害甚大は嘘か。
父の家は無傷で建つ。
暫く眺めて、
戸を叩き、
只今帰りました。
戸が開き次兄の元気な顔。
互いに見合わせ微笑む。
真夜中に途中で強盗に出会わなかったか。
最近は毎夜強盗が出る噂がある。
庭に立つ私の姿は、
背には大きな手製のリュック。
両手に風呂敷包みを下げ首より、
大きめの洗面器を吊り、
背中に差すは洋傘。
四月二日午前二時過ぎ雨の夜に帰る。
今夜珍しく風呂を沸かしている。
入れと下を焚き付けてくれる。
風呂に入ると、
全身鳥肌立つ熱があるのだろう。
離れで就寝の父に帰国の挨拶。
頭を枕より挙げもせず早く寝よ。
仏間に入り。
長々と母に帰国の挨拶。
今夜は遅い、
話しは明日にと床に入り熱を計ると、
四十度。
このまま寝付くと起きられぬぞ。
自分に言い聞かせて就寝をする。
第81回『とりあえず帰郷』
九州は点在する飛行場が多いと聞く。
山間部の民家のまばらにも、
爆弾の後も生々しい。
間も無く夕暮れ、
車内に淡い電灯が点る。
突然の轟音に驚き目が覚める。
関門トンネルの中らしい。
引き揚げ列車は、
待避線に入り、
夜明けを待つらしい。
ふと横を見ると広島行きの空車が目に付く。
無断での乗り換えは禁止されている。
一部の独身者、
皆の止めるのも聞かず乗り換える。
広々とした車内にゆったり椅子を掛ける。
ふと目覚めると、
汽車は走る沿線の風景。
何処もかしこも空漠で、
壊滅的打撃を受けている。
建ち並ぶ民家は瓦礫の状態。
よくも之だけ根気良く、
爆弾を落とせたと見入る。
広島に近くなるに従い倒壊家屋。
広島に鉄筋工場は渦巻き状態で倒れる。
広島駅のプラットに立つ。
見渡す四方は、
瓦礫の山の残骸に言葉も無し。
目立つ建物が頂上に至る迄、
破壊も甚だしく建つ原爆ドームとか。
小高い丘の裾に小さな鳥居が立つ不思議。
駅前は通行に細く通路が通じている。
その隙間よりチョロチョロ水が流れ出る。
川は瓦礫の捨て場か…、
赤茶色の大小の瓦礫が投げ込まれて、
その隙間を縫いチョロチョロ細く水が流れる。
流石は広島大都市。
行き交う人々多数を数える。
歩む半数は背中にリュックを背負う。
引揚者か。
兵隊さんの姿、
裸足の人は無い。
皆、靴か草履を履く。
日陰で屯して行く人々を、
無心な目で眺めるのは噂の戦災孤児か。
それにしても只の一発の原子爆弾、
戦争中上海で噂に聞く、
日本で珍しい爆薬の製造をしたとか。
その爆弾を落とすと、
1万トンの軍艦でも1万メートル上空まで、
吹き飛ばされる話。
駅前に小旄を風になびかせて出店が並ぶ。
うどんの看板。
椅子に腰掛けてうどんを注文する。
出てきたのは薄い色に浮く細長い海草。
之がうどんかと聞き合わす横より手が伸びて、
鉢ごとさげて逃げ去られる。
追うにもリュックが重い。
逃げ去るを只見逃す。
結局疑わしい食べ物は食べもせず、
代金のみ支払う。
日陰で一休みして帰ろうと、
改札口を通ると駅員、
切符は?
そんな物は持たぬと駅員と一悶着。
結局強引に汽車に乗り込む。
進むほどに倒壊家屋全部広島方面に倒れる。
岡山駅に停車する。
山間部の民家のまばらにも、
爆弾の後も生々しい。
間も無く夕暮れ、
車内に淡い電灯が点る。
突然の轟音に驚き目が覚める。
関門トンネルの中らしい。
引き揚げ列車は、
待避線に入り、
夜明けを待つらしい。
ふと横を見ると広島行きの空車が目に付く。
無断での乗り換えは禁止されている。
一部の独身者、
皆の止めるのも聞かず乗り換える。
広々とした車内にゆったり椅子を掛ける。
ふと目覚めると、
汽車は走る沿線の風景。
何処もかしこも空漠で、
壊滅的打撃を受けている。
建ち並ぶ民家は瓦礫の状態。
よくも之だけ根気良く、
爆弾を落とせたと見入る。
広島に近くなるに従い倒壊家屋。
広島に鉄筋工場は渦巻き状態で倒れる。
広島駅のプラットに立つ。
見渡す四方は、
瓦礫の山の残骸に言葉も無し。
目立つ建物が頂上に至る迄、
破壊も甚だしく建つ原爆ドームとか。
小高い丘の裾に小さな鳥居が立つ不思議。
駅前は通行に細く通路が通じている。
その隙間よりチョロチョロ水が流れ出る。
川は瓦礫の捨て場か…、
赤茶色の大小の瓦礫が投げ込まれて、
その隙間を縫いチョロチョロ細く水が流れる。
流石は広島大都市。
行き交う人々多数を数える。
歩む半数は背中にリュックを背負う。
引揚者か。
兵隊さんの姿、
裸足の人は無い。
皆、靴か草履を履く。
日陰で屯して行く人々を、
無心な目で眺めるのは噂の戦災孤児か。
それにしても只の一発の原子爆弾、
戦争中上海で噂に聞く、
日本で珍しい爆薬の製造をしたとか。
その爆弾を落とすと、
1万トンの軍艦でも1万メートル上空まで、
吹き飛ばされる話。
駅前に小旄を風になびかせて出店が並ぶ。
うどんの看板。
椅子に腰掛けてうどんを注文する。
出てきたのは薄い色に浮く細長い海草。
之がうどんかと聞き合わす横より手が伸びて、
鉢ごとさげて逃げ去られる。
追うにもリュックが重い。
逃げ去るを只見逃す。
結局疑わしい食べ物は食べもせず、
代金のみ支払う。
日陰で一休みして帰ろうと、
改札口を通ると駅員、
切符は?
そんな物は持たぬと駅員と一悶着。
結局強引に汽車に乗り込む。
進むほどに倒壊家屋全部広島方面に倒れる。
岡山駅に停車する。
第80回『日本到着』
鹿児島市民の皆様であろう、
夕景迫る広場で盛んに手を振り、
我々を出迎えて戴く。
下船が始まる。
狭い板の上を背中に両手に、
全財産を背負いトロトロ降りる。
腕を掴み、
白布の医者が予告も無く、
注射針を差し込む。
それも両腕に。
一歩進むと噴霧器で、
白い粉を全身に吹き付けられる。
全部が無言で行われる。
何とか地上に降り立ち歩む前に、
老人達が腰を屈めて、
何か挨拶してくれるが、
意味不明で立ち往生。
女学生が来て、
この人達、
お疲れ様お帰りと、
挨拶をしております。
数百名の皆様の歓迎か。
その人達の衣服は粗末。
殆どの皆様は裸足か麦藁履を履く。
ほんの一部の人達が、
運動靴を履くのを見られるが、
破れ、
底には穴のある状態。
我々は引き揚げ者とは言え、
殆どの者は、
財産の新品で身を飾る。
實に対象的。
夕景にも関わらず、
なにかとお世話になり、
焼け残りの学校へ案内される。
教室に毛布が敷き詰められている。
皆は広いと大の字に寝る。
接待の夕食を済ませて一夜を明かす。
翌日、
小雨降る中を近くの人々であろう、
重いリュックも軽やかに、
足取りも勇み、
手を振りつつ去り行く。
再び会う事もなかろうが、
お元気にと、
後ろ姿に挨拶をする。
船の蒲団袋を降ろしたのを、
独身者のみで駅まで運び、
貨物列車に積み込み、
客車に乗り込むと、
満員状態で、
座る椅子は見当たらぬ。
所帯主達、
涼しい顔でご苦労様。
突然、
隣の客車で大声を張り上げて、
お前達は何様だ!!全員立て!!
婦女子は詰めて座れ!所帯主は後方に下がれ!
我々、
空いた椅子に腰掛ける。
団長、
我々が選出した団長では無い。
我々、
独身者を何と心得る。
お前は外に出ろと追い出す。
汽車はコトコト黒煙を吐きつつ山野を過ぎる。
夕景迫る広場で盛んに手を振り、
我々を出迎えて戴く。
下船が始まる。
狭い板の上を背中に両手に、
全財産を背負いトロトロ降りる。
腕を掴み、
白布の医者が予告も無く、
注射針を差し込む。
それも両腕に。
一歩進むと噴霧器で、
白い粉を全身に吹き付けられる。
全部が無言で行われる。
何とか地上に降り立ち歩む前に、
老人達が腰を屈めて、
何か挨拶してくれるが、
意味不明で立ち往生。
女学生が来て、
この人達、
お疲れ様お帰りと、
挨拶をしております。
数百名の皆様の歓迎か。
その人達の衣服は粗末。
殆どの皆様は裸足か麦藁履を履く。
ほんの一部の人達が、
運動靴を履くのを見られるが、
破れ、
底には穴のある状態。
我々は引き揚げ者とは言え、
殆どの者は、
財産の新品で身を飾る。
實に対象的。
夕景にも関わらず、
なにかとお世話になり、
焼け残りの学校へ案内される。
教室に毛布が敷き詰められている。
皆は広いと大の字に寝る。
接待の夕食を済ませて一夜を明かす。
翌日、
小雨降る中を近くの人々であろう、
重いリュックも軽やかに、
足取りも勇み、
手を振りつつ去り行く。
再び会う事もなかろうが、
お元気にと、
後ろ姿に挨拶をする。
船の蒲団袋を降ろしたのを、
独身者のみで駅まで運び、
貨物列車に積み込み、
客車に乗り込むと、
満員状態で、
座る椅子は見当たらぬ。
所帯主達、
涼しい顔でご苦労様。
突然、
隣の客車で大声を張り上げて、
お前達は何様だ!!全員立て!!
婦女子は詰めて座れ!所帯主は後方に下がれ!
我々、
空いた椅子に腰掛ける。
団長、
我々が選出した団長では無い。
我々、
独身者を何と心得る。
お前は外に出ろと追い出す。
汽車はコトコト黒煙を吐きつつ山野を過ぎる。
第79回『続々々、日本に帰る時』
顔色変えて座り込む女性を海に。
背を向けて男が一列に並び、
女性を舷側にと誘うが中々実行せぬ。
一人が誘いに乗ると、
次から次へと舷側で小便をして、
ほっとした表情を見ると、
何と無くこちらもほっとする。
が、
その度にお礼の霧雨の被害にあう。
一夜慰安に。
飛び入り慰労会を模様する。
飛び入り多数で時間を忘れる想い。
翌朝、
自前の持込の食料も底を尽き、
内地米と味噌汁の朝食が出る。
美味しいと皆は喜び食べるが、
それを手渡すのに難儀をする。
狭い狭い、
人との隙間に手渡すのは、
思わぬ不始末もあった。
船内放送で、
只今から水葬をいたしますから、
黙祷をお願いの放送。
祖国を目の前にして、
何故水葬に踏み切る。
内地に身寄りが無いのだろうか。
甲板に出る。
船の後方に長く板を突き出し、
その上に白布で全身に覆われた死骸が乗る。
哀しい音楽の吹奏が流れる。
船は減速して、
尾を引く汽笛を鳴らしつつ一周する。
板は徐々にさがり、
白布に覆われた死骸は重い重石と共に、
海底へ沈み行く。
祖国を前にして…。
進む右前方に五島列島が。
祖国も近い。
間も無く桜島を認める。
鹿児島湾を船は静かに進む。
船尾に大きな二メートルも有ろうか、
魚が追尾する。
皆は甲板に並び、
近づく市街に見入る。
市街の殆どは焼け野原。
言葉無く甲板に立ち尽くす。
廃墟の祖国。
桟橋に着く。
前方の右に若木の桜が満開だが、
美しいと声をだし者、
一人としていない。
その横に垢錆びた戦車が二台、
寂しく敗戦を物語る。
背を向けて男が一列に並び、
女性を舷側にと誘うが中々実行せぬ。
一人が誘いに乗ると、
次から次へと舷側で小便をして、
ほっとした表情を見ると、
何と無くこちらもほっとする。
が、
その度にお礼の霧雨の被害にあう。
一夜慰安に。
飛び入り慰労会を模様する。
飛び入り多数で時間を忘れる想い。
翌朝、
自前の持込の食料も底を尽き、
内地米と味噌汁の朝食が出る。
美味しいと皆は喜び食べるが、
それを手渡すのに難儀をする。
狭い狭い、
人との隙間に手渡すのは、
思わぬ不始末もあった。
船内放送で、
只今から水葬をいたしますから、
黙祷をお願いの放送。
祖国を目の前にして、
何故水葬に踏み切る。
内地に身寄りが無いのだろうか。
甲板に出る。
船の後方に長く板を突き出し、
その上に白布で全身に覆われた死骸が乗る。
哀しい音楽の吹奏が流れる。
船は減速して、
尾を引く汽笛を鳴らしつつ一周する。
板は徐々にさがり、
白布に覆われた死骸は重い重石と共に、
海底へ沈み行く。
祖国を前にして…。
進む右前方に五島列島が。
祖国も近い。
間も無く桜島を認める。
鹿児島湾を船は静かに進む。
船尾に大きな二メートルも有ろうか、
魚が追尾する。
皆は甲板に並び、
近づく市街に見入る。
市街の殆どは焼け野原。
言葉無く甲板に立ち尽くす。
廃墟の祖国。
桟橋に着く。
前方の右に若木の桜が満開だが、
美しいと声をだし者、
一人としていない。
その横に垢錆びた戦車が二台、
寂しく敗戦を物語る。
第78回『続々、日本に帰る時』
その夜。
警備当番の籤引きがあった。
不運にも私が引き当てる。
熱は依然として四十度。
熱を理由に交代と思うが、
見知らぬ者の集合そのまま甲板に。
出るとあの蚕棚の中で人が寝る。
横になり、
頭を挙げる余地も無い。
でも船底と違い余裕を感ずる。
でも三月末の夜風は身に冷たい。
甲板上は広い。
積み上げた蒲団袋の陰で、
各自の持ち場を受け持つ。
夜半の頃、
怪しいとの連絡がある。
物陰より見ていると、
船底の石炭を持ち出しているらしい。
船員に連絡をと思うが船室を知らぬ。
彼等五、六名。
連絡しつつ石炭を持ち出している。
彼等の落とした石炭を掻き集めて様子を覗う。
頃合はよしと、
一斉に無言で蒲団袋の陰より、
石炭を投げつける。
目標は大きくて近い。
面白い程あたる。
夜盗達慌ててロープに縋り逃げ下りる。
その頭を狙い定めて大きな石炭を落とす。
石炭と共に水飛沫を挙げて落ち込み、
船に逃げ去る。
残党が居るやも知れぬと探すと、
一人隠れる。
そいつを引き出して、
皆で殴る蹴るの溜まった鬱憤を晴らす。
殺せば面倒と警備の中国兵を呼ぶ。
兵いきなり銃の先で、
息も絶え絶えの盗人の腹を突く。
翌朝、
皆に話すと何故呼ばぬと。
疲れはひどい遅い食事を済ませて寝る。
ふと目覚めると、
船のローリングの静かな音。
慌てて甲板に出ると、
船は早くも揚子江を下る。
上海の都市は見えず。
晴天に恵まれ、
波静かな洋上を船は進む。
広い甲板も人で狭く感ずる。
時間と共に地獄の責め苦に苦しむ。
八千余名の乗船に男便所は無い。
女の便所が五ヶ所並ぶだけ。
便所の前は五列の長蛇の列。
中には溜まらず放尿して居る者もいる。
態度で分かる。
男は船の細い鉄柵に捕まり放尿するが、
それも船の舳先が波に持ち上げられる時を狙い、
放尿する。
反対に船が波と共に、
舳先が沈む時に放尿すると、
吹き上がる風と共に、
他人の自分の小便が霧雨となって、
吹き上がり、
前進に小便の被害を被る。
洗う水は皆無の状態。
水筒の飲み水が無くなると、
甲板上に一ヵ所備え付けのタンクの前で、
細く細く出る水を受けるが、
なかなか水筒に溜まらず。
後ろは長い列が続く。
船員に水を貰いに行くと、
お金は要らぬ、
何か木綿物との交換と言われる。
日本人の人情も地に落ちたか。
警備当番の籤引きがあった。
不運にも私が引き当てる。
熱は依然として四十度。
熱を理由に交代と思うが、
見知らぬ者の集合そのまま甲板に。
出るとあの蚕棚の中で人が寝る。
横になり、
頭を挙げる余地も無い。
でも船底と違い余裕を感ずる。
でも三月末の夜風は身に冷たい。
甲板上は広い。
積み上げた蒲団袋の陰で、
各自の持ち場を受け持つ。
夜半の頃、
怪しいとの連絡がある。
物陰より見ていると、
船底の石炭を持ち出しているらしい。
船員に連絡をと思うが船室を知らぬ。
彼等五、六名。
連絡しつつ石炭を持ち出している。
彼等の落とした石炭を掻き集めて様子を覗う。
頃合はよしと、
一斉に無言で蒲団袋の陰より、
石炭を投げつける。
目標は大きくて近い。
面白い程あたる。
夜盗達慌ててロープに縋り逃げ下りる。
その頭を狙い定めて大きな石炭を落とす。
石炭と共に水飛沫を挙げて落ち込み、
船に逃げ去る。
残党が居るやも知れぬと探すと、
一人隠れる。
そいつを引き出して、
皆で殴る蹴るの溜まった鬱憤を晴らす。
殺せば面倒と警備の中国兵を呼ぶ。
兵いきなり銃の先で、
息も絶え絶えの盗人の腹を突く。
翌朝、
皆に話すと何故呼ばぬと。
疲れはひどい遅い食事を済ませて寝る。
ふと目覚めると、
船のローリングの静かな音。
慌てて甲板に出ると、
船は早くも揚子江を下る。
上海の都市は見えず。
晴天に恵まれ、
波静かな洋上を船は進む。
広い甲板も人で狭く感ずる。
時間と共に地獄の責め苦に苦しむ。
八千余名の乗船に男便所は無い。
女の便所が五ヶ所並ぶだけ。
便所の前は五列の長蛇の列。
中には溜まらず放尿して居る者もいる。
態度で分かる。
男は船の細い鉄柵に捕まり放尿するが、
それも船の舳先が波に持ち上げられる時を狙い、
放尿する。
反対に船が波と共に、
舳先が沈む時に放尿すると、
吹き上がる風と共に、
他人の自分の小便が霧雨となって、
吹き上がり、
前進に小便の被害を被る。
洗う水は皆無の状態。
水筒の飲み水が無くなると、
甲板上に一ヵ所備え付けのタンクの前で、
細く細く出る水を受けるが、
なかなか水筒に溜まらず。
後ろは長い列が続く。
船員に水を貰いに行くと、
お金は要らぬ、
何か木綿物との交換と言われる。
日本人の人情も地に落ちたか。