気感の訓練としての位置づけを考えなければ… | ふれあいと癒しの交響曲(名古屋/京都/気功/教室/講習/和気信一郎)

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気功の理論や教室のこと、日々のことなどを書いています


(一)
 名古屋から近鉄急行に乗って約1時間のところに〔白子〕という駅があります。
 駅を降りて10分くらい歩くと海岸に出ます。
 僕は、その白子海岸に数回、初日の出を拝みに行ったことがありました。
 今はどうかは判りませんが、僕が行っていた頃は、近くの神社の氏子さんたち(男衆)が下帯姿(褌一つ)で海に入っていき、お日様が水平線から顔を出すと同時に祝詞を上げるといった行事(祭)がありました。
 その男衆が海に入っていく前に行なっていた体操があるんです。
 それは、実に単純な動きで、片足を一歩前に出し、舟を漕ぐ(艪を漕ぐ)ような動作をするだけなんですね。
 前足に体重を掛けながら、艪を握ったような感じの両手を斜め下に伸ばしていき、その手を前回しに揚げながら体重を後ろ足に移して両手を胸に引き寄せ、再び前足に体重を掛けていって、その動きを何度もくり返すだけなんです。
 大きく手足を動かす訳でもなく、こんな簡単な体操で体は温まるんだろうかと心配になったものでした。

(二)
 ある時、気功の作品の中の〔手龍功(しゅりゅうこう)〕という功法を習いました。
 東洋異学の五行(木火土金水)に対応した五臓(肝心脾肺腎)の働きを調え、強化していく為に、呉第才という人によって創作された作品だと聞きました。
 ここでは、その総てを記すことは出来ませんが、その〔手龍功〕の一つに〔腎〕に対応した動作があって、その動きが、先程の男衆のしていた〔舟漕ぎ運動〕と瓜二つだったんです。
 東洋異学で〔腎〕というのは、根源的な生命力、命の活力と同じ様な意味合いがあり、腎が弱ってくると、骨や歯が脆くなり、髪の毛が細くなったり抜け落ちたり、或いは、耳の働き(聴力)が衰えてきたり、立っているのが辛くなって、直ぐに座りたがったりなどと言ったように、正に老化現象が起こってくるんですね。
 そして、その〔腎〕の働きを強くしていくのが〔舟漕ぎ運動〕だった訳です。

(三)
 〔腎〕が弱ってきた場合、八味地黄丸という漢方薬を飲むと良いとか黒豆や黒ゴマ、ひじきや昆布などの海藻類が良いとか腎経の原穴である〔太谿〕にお灸をすると良いなどということは東洋医学的に理解は出来るんですが、〔舟漕ぎ運動〕が〔腎〕に効果があるという話は聴いたことはありません。
 しかし、男衆がしていたような、〔手龍功〕に取り入れられていたような〔舟漕ぎ〕の運動が〔腎〕の働きを強くしていくことは間違いないようです。
 それは、体重を足裏に落とすとか足の筋肉を遣うとかということによって骨芽細胞を活性し、それが骨を強くするばかりか、精力を強くしたり脳の活動を促したりするとかというような現代医学で解ってきている生理的な現象と関係しているんだろうと考えています。

(四)
 その〔舟漕ぎ運動〕を単独でしても良いし、〔養生気功フルヴァージョン〕に取り入れても良いんですが、問題は〔気感の訓練〕としての意味合いをどう位置づけていくか、それを考えなければならないと思っているところです。