ここから見に来て。[旧Quem tudo quer, tudo perde.] -72ページ目

ここから見に来て。[旧Quem tudo quer, tudo perde.]

ここは音楽のBlogでした。実際には節操無く何でも有りましたが、アメブロと相性が悪いようなので、他に書く事にしました。出来ればそちらを、よろしくお願いします。

              Albert Ayler - 002


身勝手にやってきたつもりだが、現実には、

「鎖に繋がれて生きるのは嫌だ」

と言う言葉に繋がれて生きてきた。

「人の背中を見て歩くのは嫌だ」

と言って仕事ばかりしていた頃も有った。

「自由にやりたいから」

と言う言葉に踊らされていたが、 

何一つ自由など無かった。

着実に死の側に向かって歩いていると言うのに

いつまでたっても自分が見えてこないし

何を求めているのかもわからずじまいだ。

自分では随分ノンビリとした性格のつもりでも

周囲の流れがそれを許してくれなかったと

責任転嫁するのが精一杯。 

身勝手に振舞うのが好きなだけで、

何一つポリシーなんて無かった。

アルバート・アイラーが存在したのは、
彼の残した録音で現実だと確認できるが、

私がJAZZの存在を知った時に

海の向こう側で彼の録音が行われていた事が、

紛れも無い事実だと理解するのには、

多少の違和感がいまだに残っている。

私が彼の存在を知った時には、

もう彼は存在していなかったのだ。

 

 Albert Ayler  Nuits De La Fondation Maeght 1970

               Sakura.-03

 

 

今日は良い天気だった。
空は青く風が強い一日だった。
乾燥した空気が埃を撒き散らし
髪の毛がバサバサして気持ち悪かった。

材料と道具を揃えながらそのままだった
庭に置く野鳥の餌台を作ることにした。
既に大体の事は頭の中に有ったし
庭に置くだけだから大した事はしない。

庭を見てみるとヒヨドリが
去年の秋に作った
針金製のハンガー製の餌台にぶら下がり
刺したミカンをついばんでいた。

木を切って作り出した新しい餌台は、
日が落ちる前に出来上がってしまった。
安い木のせいか切るのに手間もかからず
余りにもの簡単さに多少拍子抜けした。

桜の花が舞い散る豊かな春の訪れと共に
鳥たちの姿は少しずつ減るだろう。
餌台が必要な時期では無いのかもしれない。
まぁタイミングの悪いのはいつもの事だ。

裏の家の庭に置いてあった
建物の柱だったらしい古びた角材を拝借し
庭の松の木の横に打ち込み
その上に新しい餌台を乗せた。

薄暗くなる中でタバコを吸いながら
ぼおっと餌台を見ていると
ポケットの中の携帯から安っぽい音で
サマータイムが流れ出した。

去年の夏に彼女からの着信音に設定してから
ずっとそのままだった事に今更気がついた。
画面を見ながら考えていると音が切れた。
携帯をポケットに突っ込み家の中に入った。

 

 

 

 

 Clifford Brown   タイトル: Clifford Brown With Strings

しまったっ! Summertimeの入っているアルバムの方を忘れてしまいました(笑)。
なんかね、写真が載らないと寂しい感じがするんです。
実は今は↑のアルバムを聴いていたのでした。

 Cedar Walton and the Hank Mobley Quintet   タイトル: Breakthrough

 

               Sakura.-02


 

 

 もう外は暗くなっていた。雨は上がっていたけど、空を見上げても月も星もなかった。そう言えば、この街で星を見た事が今まで有ったんだろうか?思い出せないくらい、空を見上げた記憶が無かった。 街路灯に照らされたアスファルトはまだ乾ききってはいなく、アチコチで水溜りが光っていた。歩きながら傘をパタパタと振り手提げ袋の隅に突き刺した。
 アパートからバス停の有る大通りにでるまでの路地道を挟んでいくつものアパートが並んでいる。電灯のついたそれぞれの部屋には、それぞれの世界が存在する。そこで起こる出来事はその人達にとって、どこかの世界で起こるどんな重大事件よりも大切だったりするものなんだ。どれだけの人達が海の向こうの戦争を目の前にある愛よりも重要だって考える事が出来るんだろうか?全てが虚しく感じる時に、救いの手を伸ばしてくれた人を無視する事が本当の勇気なんだろうか。事実を確認出来るのは当事者だけだし、真実なんてそれを信じる人の数だけ存在する。ボクは自分すら信じる事が出来なくなっている。

 

  夕方のラッシュ時間は過ぎたようで車はスムーズに流れている。バスも時間通りに来るはずだ。ああっ、レコードのことを思い出して歩く足を止めた。あの部屋に戻る理由が有る、そう考えるとドキドキした。ポケットに手を突っ込んでくちゃくちゃになったタバコの箱と百円ライターを引きずり出して、今にも折れそうな1本を口に咥え火を点けた。振り向いて歩いてきた道筋を眺めながら煙をおおきく吸い込んだ。でも無理だと自分にもう一度言い聞かせた。おおきく煙を吐き出すとタバコを咥えながら歩き出した。横断歩道を水溜りに気をつけながら小走りに渡るとバス停の時刻表の向こうから走ってくるバスが小さく見えた。タバコを吸殻の沢山刺さった設置式の灰皿に突っ込むとバス停の時刻表の横に立ち運転手が気がつくように顔を走ってくるバスのほうに向けた。
 このバス停からバスに乗るのは今日が最後なんだと考えてるうちにバスはボクの目の前に止まり昇降口が開いた。バスに乗り込む時に足元の水溜りに目がいった。そこに浮かぶ桜の花びらは街路灯にほのかに光り、涙が出そうなほど美しかった。その時僕の頭の中で響いたのはどんな音楽でも無く、彼女の笑顔と笑い声だった。

 

                               fin         

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                    Sakura.-01


 スティーブ・フォバートのレコードが終わった。ボクはジャケットの中にレコードをしまいこむと窓際に立て掛けてあるジャムのセッティング・サンズをターン・テーブルにのせた。このLPももう何度も聴いている。何かと分別つけようとするけど、パンクもモッズもロックン・ロールさ。ストレートな音の塊がボクの心臓の高鳴りと共鳴する。
 最近いつもイライラしている。自分で自分が良くわからない。自分の心に訳のわからない怒りや恐怖や不安が広がっていく。押し潰されないように必死になっている。言葉に出来る理由なんてどうでもいいんだ、そう思いながらもずっとわかりやすい答えを求めている。じっとしているのが辛い。全てをメチャクチャにしたい。自分さえ壊してしまいたい。 
 ボクは立ち上がると部屋の奥に有る押入れを開け紙製の手提げ袋を出してきた。そう多くも無い荷物には大き過ぎるサイズだ。別に一緒に暮らしてるわけじぁ無いから大したものはない。Tシャツ数枚にGパンが1本、数枚の下着にさっき使ったタオルと雨で濡れた服もつっこんだ。何本かのカセットテープと灰皿とライターも投げ込んだ。何となく彼女が見て見ぬ振りをしているのがわかった。僕は僕で目が合ったらと思うと怖くてずっと背中を向けていた。きっと彼女の事が怖いんじぁなくて自分の事が怖かったんだ。

 

  背筋を伸ばして部屋を見回した。こんな風に部屋を見るのは始めてかも知れない。「あっ!」声を出しそうなくらい突然気が付いた。ボクはこの部屋で何を見ていたんだ。カーテンもクッションもテーブルの上の雑誌でさえも彼女の趣味じぁなかった。全部ボクの好みのものだった。何から何までこの部屋は僕の好みで彩られている。思わず振り向いてしまった。彼女と目が合った。胸をぎゅっと締め付けられた様で息苦しくなった。笑顔で「びっくりした?」って抱きしめたい衝動に駆られた。そうすれば、またいつもの時間が戻ってくる。でも目をそらしたボクの口から出てきた言葉は「じぁ」だった。ボクはうつむいた彼女の横を通り靴を履いた。もう振り返らずにこのまま出て行こうとドアノブに手をかけた。
 「ちょっと待って」彼女はそう言うとミニ・コンポのところへ行き、カセット・テープを取り出すと「まだ、片側にしか入ってないけど」と言いながらボクの前に差し出した。彼女の声がうわずり手が震えているのがわかった。「うん」と言って、受け取ろうとしたボクの声も手も震えていた。急いでGパンの後ろの右ポケットに無理やりねじ込もうとしたけど入らなかった。左手に持っている手提げ袋にやっと気がついて、その中にそっと投げ込んだ。袋の中に入っていたXTCとスクイーズをダビングしたテープに当たってカチャンと小さな音をたてた。そしてボクはドアを開け外へ出た。

 

  The Jam   タイトル: Setting Sons

 XTC  タイトル: English Settlement
 Squeeze  タイトル: Cool for Cats

 Steve Forbert  タイトル: Jackrabbit Slim

                             Sakura.-01

 チャイムも押さず無言でドアを開けたボクに彼女は「お帰り」と、まるでわかっていたような顔で言った。右頬にポツンとニキビがみえた。これはニキビか吹き出物かなんて言う他愛も無い言い合いをしなくなって、どれくらい経つんだろう。綺麗な首だねって言ってから束ねだした髪の毛は今日も薄いピンクのリボンで結んでいる。でもその目は、ボクの体を突き抜けてずっと遠くを見ているようにみえた。ボクは彼女の顔から視線をそらしてしまった。
 びしょびしょに濡れたボクに「お風呂は入れる様になっているから」と言うと彼女はたんすの中からボクの青いバスタオルを出しだした。その向こうでギルバート・オサリバンが流れている。ボクのレコードだ。最近聴いてなかったな、そう思いながら肌に張り付いたシャツとズボンを引き剥がすように脱ぐと、いつもと同じ湯加減の湯船につかった。
 タオルで髪の毛をゴシゴシとこすりながら出てくるとそれにあわせたように彼女はテーブルにコーヒーを置いた。飲まなくたってわかっている。ボクの好みの味がする、ボクの好みの濃さをしたコーヒーだ。左手で持ち上げその味を確認した。そう言えばコーヒーカップの握りに右手用と左手用が有るかって喧嘩した事もあったな。レコードがB面の最後に近づいていた。


 「スティーブ・フォーバート、録音してくれた?」が、アパートに戻ってからのボクの初めての言葉だった。「あっ、ごめん。まだだった。」彼女はターン・テーブルに乗っていたレコードをジャケットにしまうと、スティーブ・フォーバートのJackrabbit Slimの輸入盤をターン・テーブルに乗せてカセット・テープをセットした。ウォーク・マン用に何度も頼んでいるから買い置きのテープが何本かおいてある。いつもは「何色のケースにする?」って聞くのに今日は聞かなかった。ボクはコーヒーを持ってミニ・コンポの前に座るとジャケットに手をのばした。彼女は立ち上がるとキッチンの方に歩いていった。背中の向こうで洗い物をする音が聞こえる。そんなに洗うものなんてないのに…。
 あっ、まただ。訳のわからない不安とイライラが自分の中に広がっていくのがわかる。それを抑え付けるようにして、ボクはスティーブ・フォーバートの歌に耳をかたむけていた。彼女はA面が終わりそうになると戻ってきて、B面にすると今度は洗濯機の方に行った。彼女の背中を見ながら「外は雨なんだから」って聞こえないくらい小さな声で言った。そしてボクはもう一度ジャケットに目を落とし今まで気が付かなかった事が書いてないか必死で探そうとした。ボクは、ボクの中で少しずつ大きくなっていく訳のわからない不安とイライラを必死で抑えようと努力した。 

  ギルバート・オサリバン タイトル: バック・トゥ・フロント

 Steve Forbert     タイトル: Jackrabbit Slim