前回の記事
‐近くて遠い国 朝鮮 本編11(南北分断の「戦犯」アメリカ)‐
・アメリカによる南朝鮮の「基地化」と日本の「再軍備化」
註 一九四七年八月、米ソ共同委員会を完全にゆき詰らせておいてなされた朝鮮過渡憲法の発表(八月六日)、ついで朝鮮問題の国連への持ち込み(九月一七日)を経て、翌四八年三月一日、南朝鮮駐屯米軍ホッヂ司令官の「南朝鮮単独選挙実施に関する布告文」発表となり、同年五月一〇日、選挙が実施された。
『アジア・アフリカ講座 日本と朝鮮』第3巻 勁草書房 60頁より
この時点で南北分断は決定的となりました。
さらにアメリカは、南朝鮮の「基地化政策」を強行していく。
註 四八年七月、「統衛府」の大領(大佐)一名少領(少佐)四名をはじめ将校の一団が米国に軍事留学生として派遣される。これまでは米国への軍事留学がなく、これがはじめてであるところに興味がある。これを「韓国」基地化の端緒的指標とみてよかろう。それまでの米国の南朝鮮での諸措置━飛行場の拡張や道路建設その他━は、まだ単なる占領施策であり、朝鮮人による警備隊の創設なども、単なる米国軍政の補助機関措置とみてよいのではないか。
翌月、米・韓暫定軍事協定(八月二六日)が結ばれる。
一〇月には、北半部からのソ連撤退終了が発表されたが、米軍は南半部にしがみつく、基地化の突貫工事のためである。
四九年に入って、空軍施設のため三五万ドル投入、別に九六万ドルの空軍基地新計画の発表、四九年七月一八日、全港湾施設の米軍による掌握、そして四九年後半期だけで七〇〇〇万ドルの武器弾薬の韓国軍への提供等々、基地化が急速に進められる。
そして「韓国」政府の支出予算が、四九年度には一気に前年度の二倍(四五三億から一一二三億へ)に増加される。
六月六日、兵役法を発布した上で、米軍事顧問団五〇〇名残しつつ、六月二九日、米軍主力は南朝鮮から撤兵する。
『同』 同頁より
前回の記事で、アメリカの極東政策は「中国市場の獲得」のためだとしましたが、結局はリブログ元の英語ブロガーMichikoさんのご指摘通り、自分たちの利権やビジネス目的であり、そのためなら何でもする。
‐画像で振り返る『日本リベラルの愚かさ』 その2(朝鮮の永久分断を望み、アジア平和を拒む人々)‐
‐画像で振り返る『日本リベラルの愚かさ』 最終回(中国と北朝鮮は敵 米軍産複合体に靡く人々)‐
上のような、大本営報道の人たちが言う「周辺地域の防衛」にほとんど役立つことはなく、いたずらに緊張を煽ったりして、相手国が国防を厳にすれば、それ見たことかと殊更に「危機」を煽り立てるのが現状だ。
https://feckless.hatenablog.com/entry/2018/05/12/200001
拉致問題発生にしろ、アメリカ軍の「無能」を突っ込めば、逆ギレする形で「キミたち(日本人)のアホな国境警備や、警察活動のためにいるわけじゃない」と、その本音をつまびらかにした。
ちなみに1950年1月1日に、マッカーサーは年頭の辞で「日本国憲法の規定は、自衛権を否定したものとは解釈できない」と、米国の対日政策が、無害化(非軍事化)から極東の工場化・基地化を経て、再武装化の時期に入ったことを物語ります。
『2018.8.27「日本の戦後について(2)」大西つねきの週刊動画コラムvol.41』
https://www.youtube.com/watch?v=zBNL3vd8pPM
註 元来、新憲法中の非武装条項は、他の初期「民主化」諸条項とは次元を異にしている。マッカーサー草案が幣原内閣に交付されたのは四六年二月一三日であり、米国が唯一の原爆保有国として全世界に対して絶対的な戦略的優位をもっていると確信されていた時期である。したがって米国は、同盟的軍事力の追加を必要と感じていなかった。だから占領地日本に対しては、政治的経済的な無害化のみならず、軍事的にも丸裸にしてしまう方が、無害化としては望ましかったのである。
だが現実の推移は目まぐるしく、四七年十一月には、早くも「原子爆弾はなんら秘密でない」とするモロトフ声明、四九年九月二四日(中華人民共和国の成立と全く同じ時期に重ね合わせて)ソ連の原爆保有が公表されたし、その実験まで確認されたことは、米国の戦略にとっては聳動的な痛手であった。
この情況下に、米国の政治的・経済的従属下(ないし影響下)にある諸国への軍拡が要請される。日本のみならず、西独再軍備も五〇年度の一大問題となる。
『同』 61頁より
・南朝鮮民衆の一大抵抗 米軍の弾圧
‐新シリーズ・朝鮮統一と日本を考える その2(なぜ南北に分かれたか➄)‐
すでに1946年春以来、民主主義民族戦線に結集した南朝鮮民衆は、アメリカ軍政府の暴圧に抗して各地で立ち上がりはじめていた。
九月の鉄道ゼネストに端を発する1946年『一〇月人民抗争』では、延べ200万人にのぼる人々が「アメリカの植民地政策絶対反対」「政権を人民委員会に渡せ」「土地を働く農民に返せ」などのスローガンの下に、大衆的に反米抗争にたちあがり、とくに大邱(テグ)では、一時には市民・労働者・学生の手で、権力機構を壊滅させて全市を解放した。これに対して、アメリカ軍は凄まじい弾圧を加えましたが、民衆は1947年に入っても、3月22日のゼネストをはじめ、強い持続的な抗争を維持してきた。
そして、1948年2月7日の全国ゼネストは、「単独選挙」に対する南朝鮮民衆の反対意思表示であった。「国連臨時朝鮮委員会の撤去」「単選粉砕」「米ソ両軍撤収」をスローガンに掲げたこのゼネストには、全国に200万の人々が参加し、アメリカ軍や買弁右翼テロによって数万という死傷者、検挙者を出しながらも、三日間に渡る政治ストを戦い抜いている。
このゼネストをきっかけに全国で単独選挙反対のたたかいが展開されていった。しかし朝鮮人が命をかけ、血を流した訴えに対して、アメリカは少しも耳をかそうとしなかった。
1948年3月1日、アメリカ占領軍司令官ホッジは、選挙の5月9日(のちに10日に変更)実施を発表。民衆のたたかいはさらに続いた。
・済州島の虐殺
『処刑直前の済州島民』 (Wikiより)
1948年4月3日未明、済州島全域にわたって、単独選挙反対の人民武装蜂起が起った。島内の警察権力は解体され、武装蜂起鎮圧のため、本土から国防警備隊(旧日本官憲の下で働いていた者の中心にアメリカ軍政府が、その下部に育てはじめていた機構)や、西北青年会(朝鮮北部から南に移ってきた地主の子弟や狂信的反共主義者の組織)などのテロ集団が大量に送り込まれると、後の惨劇は想像に難しくはない。
島民は漢拏山(ハルラサン)に立てこもって、パルチザン闘争を展開し、島人口の8割が参加したといわれるこのたたかいは、それだけ弾圧も激しく、無差別殺戮によって、全島民の3分の1が犠牲になったとされています。
このような南朝鮮民衆のたたかいの背景に、金九・金奎植らの呼びかけで、1948年4月20日から、単独選挙に反対する『全朝鮮政党社会団体代表連席会議』が北部朝鮮のピョンヤンでひらかれ、次のような共同声明が発表された。
①外国軍隊の即時・同時撤退
②その後に民主主義臨時政府を樹立すること
③同政府は秘密投票によって、統一的朝鮮立法機関選挙を実施すること
④朝鮮憲法を制定し、統一的民主政府を樹立すること
➄南朝鮮の単独選挙に断固反対する
南北連席会議には、全朝鮮の56の政党社会団体の695人の代表者(南部朝鮮から40団体、395人)が参加し、朝鮮の自主統一へ向けての意思統一が行われました。
・強行された「南朝鮮単独選挙」
声明に述べられた統一政権を実現するためには、まず目前に迫った南朝鮮の選挙を阻止しなければならなかった。
金九ら南朝鮮の代表者たちは、ソウルにもどると投票忌避やいっさい候補者を立てずに選挙をボイコットすることを呼びかけました。そのため、選挙は李承晩の大韓独立促成国民会や金成洙の韓国民主党ら一部の団体と無所属だけで強行されることになった。
文字通り「単独」選挙でした。
しかも、国連臨時朝鮮委員会の監視とは名ばかりで「おおむね自由で民主的な雰囲気のうちに選挙が行われた」などと、たわごとのような報告をする始末で、ゆえに、この単独選挙をもって、朝鮮民衆の意思がそのまま反映されたと評することは、きわめて難しいというのが至極まっとうな解釈です。
・余談を交えて(憲法改正の国民投票に思うこと)
歴史の暴虐を振り返りつつ、きたる日本の憲法改正の選挙も、アメリカの軍事政策に応える安倍氏のたくらみであることは明白ですが、コマーシャルにおける「報道規制」が存在せず、資金がある方、つまり大企業をはじめとする安倍政権と親和性が高い集団が有利で、彼らは概ね憲法改正に「賛成」であり、この先の国民の権利や自由および経済生活の破壊につながっていくことに、筆者は強い警戒感を持っている。
<参考資料>
・Cluttered talk blab blab blab 『韓国関係ニュース~試される文大統領の手腕~』記事
https://ameblo.jp/cluttered-talk/entry-12408220647.html
・『アジア・アフリカ講座 日本と朝鮮』第3巻 勁草書房
・『朝鮮の歴史 朝鮮史研究会編 編集代表 旗田巍』 三省堂
・Youtube動画 『2018.8.27「日本の戦後について(2)」大西つねきの週刊動画コラムvol.41』
https://www.youtube.com/watch?v=zBNL3vd8pPM
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