日銀はありもしないインフレという現象を恐れて貨幣の供給をしぶっている!!という叫び声は一部の人の間では強い。
日銀が基金創設でETFなどの買取を発表し、FEDがQE2に踏み込んだことでその声は少しは収まったようにも見える。
しかし、いつも聞いていて思うのはまったく実務的なことを理解せずに、ただ「日銀が貨幣をもっと供給すればいい」と叫んでいる人が多すぎることだ。
以前(リフレに対する素朴な疑問(3) 貨幣でじゃぶじゃぶにすればいい?( 2010/11/4))も実務的に考えておかしいということを指摘したが、今日はさらに具体的に日銀が貨幣の供給を渋ってきたのかを見てたい。
いつも言っているが、日銀に各金融機関は口座を持っている。そして担保を出すことで日銀は彼らに資金を貸し出す。
たとえば、日銀(日銀に限らずどこの国の中央銀行でもよい)がの政策金利が0.1%だったとしよう。日銀はコール市場と呼ばれる銀行が資金を貸し借りする市場の日中の平均の取引レートがだいたい0.1%になるように監視している。
もし、このレートが0.2%とかに上がってくれば、日銀は資金供給オペレーションというのを入札方式で行い国債などの担保に対して資金を貸し出す。もちろん、1回のオペレーションでコール市場の金利が下がればいいが、そうでない場合は何度も資金供給オペレーションを行い0.1%程度へ押し下げることを行う。
すなわち、日銀は銀行間の資金市場での金利が0.1%を超えれば0.1%に戻るまで無制限に資金を供給するわけだ。だから、日銀(に限らず中央銀行は)一旦政策金利を決めたならばその金利が実現されるように市場に供給する資金の量を調整する。よって日銀が貨幣の供給を渋っているなどという現象は起こるはずがないわけだ。
直近であれば0.1%であればいくらでも銀行は資金を借りれる状態であったわけであり、日銀が貨幣の供給を怠っているというような事態はどう考えても起こらない。
もし、現実世界でお金を借りたい人が増えて銀行に殺到すれば銀行は銀行間市場から資金の調達を増やすだろう。その結果、銀行間市場の金利はたとえば0.2%とかに上昇するかもしれないが、その場合には上で見た例のように日銀がコミットメントどおりに0.1%の金利を維持すべく資金を大量に供給する。
逆に現実世界でのお金の需要がないのに日銀がお金を借りなさいと銀行に言ったところで、銀行はお金の使い先はないから日銀の口座におきっぱなしにするだけだ。
どうだろう?現実のオペレーションを以前よりもさらに深く見てみた。こう考えればやはり現実世界のお金に対するニーズが高まらない限りは意味がないということがさらにわかるのではないだろうか?
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参考記事
リフレに対する素朴な疑問(6) アイルランドに学べ (2010/11/25)
リフレに対する素朴な疑問(5
)(2010/11/18)
リフレに対する素朴な疑問(4) 長期国債を買えばいい?(
2010/11/11)
リフレに対する素朴な疑問(3) 貨幣でじゃぶじゃぶにすればいい?( 2010/11/4)
リフレ派への素朴な疑問(2) インフレってそんなにいいのか?( 2010/10/28)
リフレに対する素朴な疑問(1) (2010/10/20)