リフレに対する素朴な疑問(5) | ロンドンで怠惰な生活を送りながら日本を思ふ 「東京編」

ロンドンで怠惰な生活を送りながら日本を思ふ 「東京編」

ロンドン・東京そしてNYといつの間にかいろんなところを転々とそしてまた東京に。海外なんて全く興味なかったし今もないという予想外の人生でした。今は東京に戻りしばらくお休みしていましたが少しずつ再開してみようかと思ってます。よろしくお願いします

これまでは

①デフレはあくまで結果であり、経済停滞の元凶ではないのではないか?

②インフレにせよと日銀に叫んだところでその具体的手段は非常に限られる

ということを見てきた。(一連のシリーズに関しては参考記事として最後にリンクを貼っています)


しかし、100歩譲ってデフレこそが経済停滞の元凶だとしよう。そして、仮に日銀がなんらかのデフレ脱却の手段を持っているとしよう。

しかし、それでも僕は単純なリフレ政策を支持しない。


リフレを声高に叫ぶ人はそれさえ実現すればすべてが解決すると考えているように見える。そして、それ以上にリフレに伴うリスクをまったく見ようとしない。しかし、すべての政策はリスクとリターンを見極めたうえで行わなければいけないということを忘れてはならない。


では、人為的にインフレを起こすことのリスクとは何かを考えてみよう。

①ハイパーインフレーション

これはよくリフレ派の人間がそんなものは起こるわけがないと切って捨てる話である。しかし、冷静に考えれば過去にハイパーインフレーションが日本でも起こったという事実を忘れてはならないだろう。ドイツでも起こったし、他にも世界中で起こった例は少なくない。

これの問題点は確率はおそらく非常に小さい。それは同意する。しかし、起こったときにはとんでもないダメージを日本経済に与えるということだ。発生確率は非常に低いかもしれないが、その威力はすさまじい。期待値ベースで見れば結構な量になるということは忘れてはならない。


②悪性インフレ

なぜか、多くのリフレ派の人が忘れるのがこのシナリオだ。日銀が人為的にインフレを起こすことに成功したとしよう。おそらく物価の動きというのは通常景気の動きに遅行するから、物価が本格的に上がり始めるのは景気がピークを打ったと思われる後の可能性は高い。リフレ派の頑迷な主張に従うのならば、日銀は景気がピークに達する前に利上げに動くことはできないだろう。なぜなら、そのときにはインフレはまだまだピークから程遠いのが通常の経済の動きだからだ。

よって、おそらく日銀は利上げに動くタイミングを失する可能性が高い。その結果として、景気悪化後にインフレ率が高止まりする可能性は通常のシナリオよりも高いだろう。(ましてリフレ派にとっては日銀は信用してはならない官僚組織なのだから当然インフレ阻止も失敗するんだろう。笑)

不景気下のインフレ高止まりがデフレと同様に経済に悪い影響を及ぼす可能性が高いのは多くの人が認識するところであるし、この悪性インフレのシナリオの実現可能性に関して、そんなものは起こらないと言い切れる人は少ないだろう。しかも、多くの政治家や論者がこれだけ日銀に圧力をかけている状況ではこのシナリオの実現確率は相当高いといえるのではないか?


③資産バブル

FEDのQE2再開が資産バブルを引き起こすのでは?との批判が今強くなってきている。

②のシナリオ同様に日銀はおそらく景気が潜在成長率を大きく上回った状態まで加速したとしても、また引き締めに動くことは難しいと考えられる。なぜなら、おそらくその状況下でもインフレ率はリフレ派が主張するレベルまで達していない可能性が高いからだ。(後は②と同様のシナリオ)

まして、日銀のばら撒いたマネーが日本ではなく世界の資産市場を駆け巡ったときにはどうなるのだろうか。おそらく日本経済への恩恵は限りなく少ない。その恩恵が受けられるのは資産家と金融機関だろう。そして過大なリスクテークは最後に庶民にそのツケをまわす。しかも商品価格の上昇などで庶民の生活はかえって悪くなる可能性も高いだろう。


よって①、②、③のシナリオが実現したときの経済に与えるマイナスのインパクトは相当に大きいと考えるのが普通だろう。一方で現在のデフレはたかだかマイナス1%程度であるし、経済も実質ベースでは順調に成長しているのは過去の僕の記事でも見てきたとおりだ。


政策というのは常にコストとベネフィットを見て考えなければならない。多くのリフレを主張する人達はそこの視点を欠いているように思う。


さらに重要な点は彼らが人間の手で経済を操作できるかのような傲慢な思想を持っている点だ。そして、その傲慢さは日銀の手足をしばり上記の悪いシナリオをかえって実現させる可能性は高いだろう。

しかも、日銀を悪く言うにもかかわらず、最後はうまくほどほどのインフレで抜けられるという。今は日銀はバカだがインフレになりそうなときにはうまくやるというトンデモな論法を使っている点も問題だろう。


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