2023. 7. 19(水) 19 : 00 ~ 福岡シンフォニーホールにて
ベートーヴェン:劇音楽「エグモント」Op.84より 序曲
ショパン:ピアノ協奏曲 第2番 へ短調 Op.21
(ソリストアンコール)
チャイコフスキー:「四季」Op.37a より10月「秋の歌」
チャイコフスキー:交響曲 第4番 へ短調 Op.36
(アンコール)
ドヴォルザーク:スラブ舞曲 op.72-2
ピアノ:マルティン・ガルシア・ガルシア
指揮:シルヴァン・カンブルラン
ハンブルク交響楽団
ハンブルク響といえば、ちょうど6年前に聴いて2度目。
1曲目はベートーヴェンの「エグモント」序曲。
そういえば、昨年11月にコロナ禍以降初のアクロスで迎えた海外オケ、NDR北ドイツ放送フィルの公演のしょっぱなもこの曲だった。そしてコロナ禍になってしばらくあらゆるコンサートが中止になり、約5か月ぶりに開催された九響の定演 (2020年7月)のしょっぱなもこの曲だった。さらに奇しくもコロナに入る前、最後に聴いた公演のしょっぱなもこの曲・・・ というように、節目節目でこの曲を聴いているみたい。 なので、その時々のエグモント序曲が思い出として残っている。
この日のこの曲もとてもよかった。もぎぎ(茂木大輔氏)がこの曲を振るのは非常に難しい、と仰っていたのを聞いたことがあるが、たしかにアインザッツとか出だしを揃えるのはとても難しそう。そういう意味では横の線で最初ちょっとバラつきもあったものの、なんといっても重厚な弦に圧倒された。分厚くて骨太な弦!これがドイツオケの音なんだろうか、とてもよかった!
そいえば、6年前に聴いたときも気になっていたコンマスのこの方 Adrian Iliescuさん、この日もコンマスを務めていらして、相変わらずの熱演ぶりにニヤけてしまった
Adrian Iliescuさん
そして第2ヴァイオリン首席奏者の小池智子(さとこ)さんも今回も演奏していらした。
両脚を大きく開いて力強く演奏しているお姿がなんともカッコよかった!
小池智子さん
前回のツアーパンフの中に小池さんの書かれたエッセイが載っていて、
『ドイツは外国人であっても技術さえあれば、認めてくれる素晴らしい国』『外国人を心から受け入れてくれる国として、ドイツ以上の国はあるのだろうかと思う程』と書いていらっしゃった。ドイツ語が全くわからない状態で留学した頃の苦労話や、現在ハンブルクという街がどんなに好きかというお話も載っていた。
今回はパンフレットが売ってなかったんですよね~。残念
そうして2曲目は待ってました!今日一番の目的だった ショパンのピアノ協奏曲第2番。
そういえば、この曲のことを、「つまんねぇ~曲」って書いてるブロガーさんを以前おみかけしましたけど、そうなのかな!? 私は専門家でもないし、よく指摘されるショパンのオーケストレーションのこともわかりませんけど、1番も2番も大好きです。人それぞれ感じ方や好みは違うとはいえ、作曲家への敬意も全く感じられないそんな書き方、ひどいです
ガルシア・ガルシアさん初聴き~~
ご存知の方も多いと思いますが、スペイン出身のマルティン・ガルシア・ガルシアさん、2021年に開催された第18回ショパン国際ピアノ・コンクールで第3位に輝いた方。 まだ26歳(12月で27歳)なんですよ~奥さん!
反田恭平さんなど人気ピアニストが出場されてたので国内の注目度も高かったこのコンクール、私も例にもれずリアルタイムやアーカイブでどっぷりハマって観てました。
ガルシア・ガルシアさん(以下親しみを込めてガルガルくんと呼ばせていただきますw)は予選が進むにつれて注目されていきましたが、私がとても感動したのは彼がファイナルで弾いたピアノ協奏曲第2番。個人的にはファイナリストの中では彼の演奏が最も好きでした。
聴き終わったときは「彼に優勝してほしい!」と願ったくらい。そのくらい彼の弾いた2番は好きでした。 その時の演奏はこちら 緊張からかミスタッチは時々あれどもそんなん全然気にならないくらい彼のピアノを聴くとなんだかハッピーな気持ちになれる。第2楽章のさざ波のような音色の美しさ、第3楽章の左手の利かせ方などほんと好きです。
ショパン:ピアノ協奏曲第2番 (34分32秒:第2楽章;15分35秒~、第3楽章;24分53秒~)
/ マルティン・ガルシア・ガルシア (Pf) アンドレイ・ボレイコ&ワルシャワ・フィル
上京でもしない限り彼のピアノを聴く機会はないと思っていたけど今回ガルガルくんの方からやって来てくれた~
そしてなんとー!! ステージにFazioli (ファツィオリ)が出てきた
アクロスにはファツィオリはないはず。と思ったら、ファツィオリジャパンが提供して持ち込みだったそう 私は生のファツィオリを観るのも音を聴くのも初めて。それだけでも感動でした
本日公演!
— アクロス福岡 (@acros_fukuoka) July 19, 2023
ハンブルク交響楽団
当日券あり⬇️https://t.co/7lOZ4E7uJe
ショパンコンクールで、マルティン・ガルシア・ガルシアさんが選んだのは、ファツィオリのピアノでした!
今回、ファツィオリジャパンの楽器提供のもと、ファイナルと同じショパンのピアノ協奏曲第2番を演奏します! pic.twitter.com/aLjz5veF0J
で、生のファツィオリを初めて聴いた感想は、YAMAHAともスタインウェイとも違う感じ(思い込みも大いにあるかもですけどw)。スタインウェイのような華やかなキラキラ✨した音でもありながら(いい意味で)角ばった、というか、角角したシャープさ、骨太さも同時にあるように聴こえた。
そしてガルガルくんの実際に聴いた2番もとても素晴らしかった
第1楽章はピアノが入ってくるまでがしばらくあるが、ガルガルくんはオケを聴きながら時々頭を軽く振ってリズムをとっていた。第1楽章はオケが結構速くて、これどうなるかなと思っていたらピアノが入るとガルガルくんのペースに合わせていたように思う。
大好きな第2楽章はゆったりとためを作りながら弾いていたのはショパコンのときと同様だった。第3楽章もただ楽しく軽やかに、というのでもなく、なんだろう、陽と陰の表裏が一体となったような。 全体としてあぁこんな2番もあるのだなと思わせるような演奏で、私はとても感動した。
ショパンコンクールでは彼のショパンの演奏について、スペイン出身という先入観や彼の風貌、ハミングしながら弾くスタイルなどが相俟ってか、”陽気” ”明るいショパン”とか言われていたけど私にはそれだけとは思えない。もちろん彼の演奏を聴くとハッピーな気持ちになる面はたしかにあるのだが、なんとなく”陰”の面も含んでるような、表面だけに騙されちゃいけないよ、と言われているような気になる。
そして彼がコンクールのときに時々言われていたように、「ショパンの演奏はかくあるべきで、それとは外れている」といったような批評。言ってしまえば「ショパン自身の演奏」「ショパンが理想とした演奏」は誰も知らないわけで、ショパン自身がコンクールのコンテスタントたちの演奏を今聴いたとしたらきっと「皆強打しすぎる」と眉をひそめたかもしれない。曲、作品は作曲が完成したと同時に作曲家の手を離れるわけで、そっから先は演奏家がどういう解釈をしてどんな風に演奏しようがある意味自由なのだと思う(もちろん譜面の指示はふまえた上で、だろうが)。私自身は「かくあるべき」のような枠にはめようとするような考え方は好きではありません。
そしてアンコールが後半につなげる意図もあったのか、チャイコフスキーの「四季」より10月。彼自身が「チャイコフスキー、October」と曲紹介して弾き始めた。
これ聴いてぱっと思い出したのが、今年2月に九響で聴いた公演。ロシア人のポリャンスキー氏が振った公演でのアンコールがこれだった(管弦楽版のもの)。そのときも私は複雑な心境で聴いたが、ガルガルくんはチャイコの中からなぜこの作品を選んだのかな。ゆっくりと一音一音をかみしめるような演奏だった。う~ん・・涙腺がゆるんでしまいました。
今度はぜひ彼のソロ・リサイタルを聴いてみたい。
後半はチャイコフスキーの交響曲第4番。
この演奏もすごかった!
以下はあくまで自席(1階中ほど)の聴こえ具合での感想ですので主観大ありです
カンブルランさんはショパコンもそうだったが、この曲もテンポ速め。
東京ではこの数日後にノットさんが東響を振ってこの4番を演奏したらしいが、それを聴いた方々の感想を読むと、カンブルラン&ハンブルク響の4番は、恐らくノット&東響の演奏とは対極にある演奏ではないかなと思った(実際ノットさん聴いてないから断言はできませんが)。
私はひっさびさに聴いた4番、こんなに猛々しい曲だったのかと。
第1楽章など金管は咆哮、弦も荒れ狂ったように弾いていて、全体が強奏するときなどまるで大嵐のようw ただ決してうるさくはなく、全体は大きく鳴っているのにそれぞれの楽器群の音は聴き分けられる。 ただ個人的に思ったのが木管がいまひとつインパクトに欠ける(あくまで主観)。特にフルートがいまいちピリッとしていないような気がした(あくまで主観)。6年前聴いたときはオーボエの方の音色にすごく感動した覚えがあるのだが、今回は普通だった(同じ奏者の方だった)。
私が一番好きな第3楽章(ピチカートだけで楽章作るとかすごくありません?w チャイコフスキー天才!)もめっちゃ速い! 弦間でのピチカートの受け渡しのときなんかゾクゾクしたw
そうして終楽章。これがまた超高速! 終楽章の弦は大体速弾きするんだろうけど、この日の弦の超高速具合にはびっくりカンブルランさんが捲りまくるんだけど、それにぴったりと呼応した上に一糸乱れぬ弦たちもすごすぎ 4番の第4楽章でこんなに捲りまくってる超高速の弦を聴いたのは初めてかも~。クルレンツィス&ムジカエテルナも凄かったけどこっちもすごい。
というわけで、この日はとにかく弦の凄さに感動した。そして何より前述したコンマスさんをはじめ、第1プルトから最後方のプルトに至るまで皆さん必死こいて弾いている姿を見ているだけでも高揚した。
コンマスさんはたびたび椅子から腰を浮かせて弾いてるし、チェロ首席のイケおじの方の熱演ぶりについつい目がいってしまう。 去年聴いたNDR北ドイツフィルもそうだけど、ドイツのこういう地方オケも弦のレベルって高いんだなぁ。しかもどちらのオケの弦も渾身の気合い(?)で弾いているところが共通してるなぁ。
で、この曲を聴いてみて、単に猛々しい、勢いがいい、勇ましい、だけではなく、な~んか裏に秘めたものがあるような。それをカンブルランさんは示唆しているような。そんな気もした。
カンブルランさんは初めて聴いたが、棒なしの両手での指揮、指揮そのものというより醸し出す音作りがうまいな~と思った。見た目の動きがすごく若々しくて、(カーテンコールも小走りだしw)髪の毛は白髪だけど実はすごいお若いのでは?と思ったら今月75歳になられたばかりみたい なんてお若い!しかもめっちゃいい人そう。そこらへんのくだ巻いてる75歳のじじいも見習ってほしいw
Photo:Daniel Dittus
今度このオケ聴けるのはいつかな~ また福岡公演あったら聴きたい。