株価を打つ「米銀行問題」
米アカデミー賞で日本映画が「ダブル受賞」って事なんだけど、明日
米24日には麻生首相がオバマ政権初のトップ招待って事で、日米の
結び付きを強調される今日この頃となっている。
そんな中、今週の米国債市場に目を向けると、過去最大の米国債入札
(940億ドル)が実施される事になっているんだけど、「史上最大の米国
債発行」という背景の中、日本は何かと「友達」をアピールされる事になり、
ここ数年減らしてきた米国債 (墜ちるアメリカ最強の輸出品) を、今後
アメリカから買わされる事になる。
そんな米国債のCDSスプレッドについてなんだけど、2月17日に公表さ
れた各国国債のCDSスプレットは(CMAデータ)、日本国債が121bp、
英国債が175bp、米国債が91.4bpで揃って高値を更新し、他ドイツ、
フランス等、各国国債CDSスプレッドも過去最高を更新し続けている
らしい。 米国債よりも日本国債の方がリスクが高いっていうデータな
んだけど、これだけ増発問題が取り沙汰されている米国債のCDS数値
よりも、日本国債のCDS数値の方が高い水準っていうのはどうかしている。
まぁ国債のCDSスプレッドも、法人CDSと同様に 、デフォルトリスクを
直接表しているわけではないんだけど(破綻国家は別として)、売り手の
支払い能力について規制がスカスカのCDS市場で、国債レベルで設計
されている事自体が金融モラルハザードを象徴している。
どのくらいの規模のやり取りなのかゼンゼン分からないんだけど、企業
レベルで大変なパニックに陥っている事を考えると、国債レベルで債務
不履行に陥った時のCDS保証など到底不可能なものに思え、この構造
自体が狂ったギャンブルとしか思えない。
米市場のバロメーター 「銀行問題」
英・ノーザンロックの国有化法案が21日、英議会で可決されたって事で
広がる銀行問題なんだけど、アメリカでは23日朝、財務省とFRBによる
「米主要銀行に対する公的資金追加検討」っていう緊急声明が発表され
たらしい。
米シティに至っては、当初の観測通り米政府が最大40%の普通株取得
検討って事なんだけど、銀行は新たに普通株を発行する事が難しい現状
であり、米政府としても納税者負担の拡大を避けたいって事で、米政府
がこれまでに取得した優先株を普通株に転換できるようにするらしい。
(どちらにしても大規模な希薄化になると思われる)
国民負担の拡大を避けたいっていう米政府なんだけど、優先株を普通株
に転換した場合、株価下落による莫大な「転換損失」が生じてくると思う
んだけど、その分はどうするのかといったら、結局は国民の税負担になる
ものと思われる。
声明によると米政府は、主要行の資本を査定する「ストレステスト」を実施
し、場合によっては政府の出資比率が引き上げられるって事なんだけど、
その結果次第で、米主要20行が政府から約過半数株を保有される「実質
国有化」となるらしい。
今後どの位の規模で、銀行への公的資金が拡大されるのか分からないん
だけど、銀行問題は市場のバロメーターって事で、緊急声明と同時に早速
NYは12年ぶりの安値を付けた。
日米が親密になるという事は、株価も一体関係になるって事で、今後も
NYと東京の株価は低空飛行の歩調を合わせる事になる。
バランスシート無視の「悪しき投資習慣」
繰り返し話題に上る米民間企業救済を、下流の塞き止め作業とする
のであれば、問題の根源である住宅市場へのテコ入れ作業は、上流部
の決壊防止作業となる。
米財務省は18日に、長らくの課題であった 「ネガティブエクイティ状態」
にある借り手のローンを、返済可能なものとする住宅市場対策の概要を
ようやく公表した。
その大まかな内容としては、GSE (ファニーメイ&フレディマック) 関連の
住宅ローンの返済額を、借り手の月間所得の「31%」にまで抑える事を
目指したものらしく、それに同意した金融機関に対して、金融安定化法に
基づく公的資金枠から、減免分を肩代わりするというもの。(ロイター)
ローン条件変更の受け入れは、貸し手の任意となっているようなんだけど、
変更に応じた場合は多大なインセンティブが得られるらしい。
さらには、所得に対するローンの比率が高い、もしくはローンが住宅価値を
上回っている状態(ネガティブエクイティ)にある住宅保有者は、延滞してい
なくても支援を受ける事可という事で、その効果の程は分からないんだけど、
ようやく住宅市場のテコ入れ作業に向かう事になった。
以前ロイターで、申請件数の増加を「兆しの兆し」と表現した記事が載って
たんだけど、ピンとこなかった。 今回の対策がようやく 「兆しの兆し」といえる。
バランスシート無視の悪しき習慣
ゼンゼン話が逸れるんだけど、2-18日付の「DIAMOND online」で、
「景気循環で使い分ける投資指標」 というような記事が載っていた。この
サイトはよく観てるんだけど、たまに酷いものがある。
この記事は、投資指標について論じたものなんだけど、記事の順番的には、
PER、PBR、NNV、PSR、PCSR、PEGレシオが登場してくる。
過去の投資指標等の記事で何度も繰り返しているんだけど、細かく言うと、
景気が上向きになろうと後退局面であろうと、投資指標一つのみに大きな
依存なんてできっこない。 PLとBSを細かく検証した上でのPERの活用と、
何も見ない「倍率のみ」で活用した場合では大きく異なってくるからだ。
PERに対しては、他の投資指標と同列にできないという自分の考えを何度
も繰り返してきたので、取り敢えずおいておく。 この記者のPBR論に対しても、
資産価値が下落して信憑性が乏しい等、以前の自分の記事と同じような事を
言っているので (金融危機における隙だらけ投資指標) ここではスルーする。
問題なのはここからなんだけど、まずNNV(ネットネットバリュー)。
この投資指標がどこまで有効なのか自分には分からないんだけど、バランス
シート(BS)の流動資産・固定資産を、「不況下なので厳しくする」という漠然
たる思いから割引している。まぁそれは分かるんだけど、在庫が半額・固定
資産は半額以下の45%にするらしい。
在庫の評価なんて業界によってまるで違ってくるだろうし、固定資産は半額
以下という随分厳しい査定なんだけど、あまりにも厳しい査定は適正評価と
いえるのだろうか? なぜ60%でなく半額だったり45%だったりするのか
その辺の根拠はまるで書かれていない。どの業界であっても一律その数値
なのだろうか?
さらには景気回復局面では、初期がPSR、後期ではPCFRが登場してくる。
また、景気が急騰する場面ではPEGレシオが効果的、となっているんだけど
その理由は「カケラ」も述べられてなく、ただ言い張っているだけとなる。
(PSRの登場には驚いた ;)
「この投資指標が良い」といいつつ具体的な数値(何倍以下が割安か等)にも
ゼンゼン触れていないんだけど、恐らく景気局面で割安基準の数値が違って
くるという事で、その辺が明確でない為に敢えて避けているものと思われる。
後から考えた場合に、景気回復局面の初期、急騰場面、後期、と後付する事
は可能なんだけど、リアルタイムに投資指標を活用する場面で、現在がどの
場面なのか判断はどうやって下すのだろう?その判断材料が示せたら大した
ものだ。
さらに毒付くのであれば、景気上昇局面で、PER・PSR・PCFR・PEGレシオを
述べているんだけど、上昇局面では負債は無視しよう、という考えなのだろうか?これらの指標は全て負債無視の投資指標となる。
「バランスシートにも目を通す」というような補足も無い。投資で損をする人が
多いのは、実質バランスシートを無視している人が多い事実が挙げられるん
だけど、PLと投資指標のみで銘柄選定しようというのは、本当に「悪しき習慣」
だと感じる。よって、そのような雑誌や著書、このような記事は自分の目には
無責任なものに映る。
第一、全ての投資指標に言える事なんだけど、業界平均値等の情報等が
簡単に手に入れられるようでないと、他業界との比較は難しい。 PERは業界
平均値が一般に出回っているんだけど、他の投資指標はどうだろう?自分で
業界平均値を計算するのだろうか?
平均値が出ていないと、マクロ経済がどのような状況であろうと、固定した数値
で判断するという事になる。(5倍以下は割安、等) もしそうなのであれば、
それは間違えだという事になる。
どのような経済状況だろうと、他業界や他の銘柄と比較が容易であるが為の
指標、だという事は意外に忘れさられている事が多い。
投資指標のみの判断は結局は「隙だらけ」であり、あくまでも他の財務諸表と
絡めて考えなくてはいけない。 最終的にはそこに行き着く事となる。
尾を引く「ネガティブ・エクイティ問題」
マイナスのカーブが大きくなっている日本のGDPなんだけど、昨日発表された速報値は、8年ぶりの「3四半期連続」マイナス成長を示す事になった。
次回の09年1-3月期GDPは、年率換算-12%からさらに悪化しマイナス成長も4四半期連続になる事が予測されていて、深刻なリセッションに証拠を突き付けられる事になるものと思われる。
期待薄の官民ファンド
そんなグローバルリセッションの問題解決へ向けて、米金融機関の不良資産切取り作業が依然として注目を集めてるんだけど、アメリカ政府は明日18日、その具体案を公表するらしい。
バッドバンク構想 から官民が出資する共同ファンド設立へと方向転換された「切り取り作業」なんだけど、住宅価格が下落の一途を辿る中、(彷徨う米住宅市場) 具体的計画発表とはならずに、踏み込もうにも踏み込めない状態が長らく続いていた。
切取り作業をアピールし続けた事が、市場安定のための「ただの時間稼ぎ」と看做されるようになった為、その具体案を迫られたって事なんだけど、民間企業と共同作業を行うことは現実的な選択と思われる一方で、計画自体についてはあまり期待する事はできないように思える。
問題の根源である住宅市場は、底入れにはほど遠く、今年来年とサブプライムローン(ARM型ローン)の金利リセットを迎える住宅購入者の拡大が見込まれていて、住宅価格のさらなる下落は規定路線となっている。
多くの民間企業が官民ファンドに関心を寄せている(米財務省)っていうアナウンスも流れていたんだけど、リスクの高い今回の計画に民間企業が関心を抱いているか極めて疑わしく、そのアナウンス自体嘘っぽい。
損失保証をアピールする事で、民間資本を誘い出す今回の計画なんだけど、米国内の民間企業は瀕死の状態って事で、外国資本に対して大きく門戸を開く可能性は高い。
ネガティブ・エクイティの波
その問題の根源である住宅価格の下落なんだけど、今年・来年とサブプライムローン(ARM型)の元本支払い期間を迎える住宅購入者のさらなる拡大が見込まれている。
低金利の優遇期間が3年程続いた後、金利は大きくなり元本の支払いが始まる(金利リセット)しくみとなっているサブプライムローン(ARM型)なんだけど、簡単にいうと、住宅価格の驚異的な高騰が続いた頃に(~06年末) このローンを組んだ人達は、住宅価格の急激な下落によって、バブルの頃の値上がり率を担保価値に含む事ができなくなる。
その結果、返済金額は膨らむ一方って事になるんだけど(ネガティブ・エクイティ)、要するに 「金利リセット→支払い延滞→差押さえ」という流れになる。
さらには差し押さえられた物件は「3割引」の競売物件になるようなんだけど、住宅建設業者はそれに対抗してさらなる値引きを強いられるって事で、差押さえがさらなる住宅価格の下落を引き起こす事になる。
底入れの予感を全く感じさせない住宅価格 (09/1‐27 S&P)
2006年以降に、サブプライムローン(ARM型)を組んだ人達は、3年後の今年2009年から低金利の優遇期間が終了する「金利リセット」を迎えるって事で、「金利リセット→支払い延滞→差押さえ→住宅価格下落」という悪夢のスパイラルは今後も当面続く事になっている。
住宅価格とRMBS(住宅ローン担保証券)の価値下落は同時進行であり、その上、CMBS(商業用不動産ローン担保証券)も格下げ方向って事で 、米政府は不良資産の買取りと同時に、サブプライムローンの条件を返済可能なものに変更する事が避けられない状況となっている。
