綻びるモラルハザード
世界中に迷惑を撒き散らした「AIG」のずさんな実態が露になっている
んだけど、公的資金の行きついた先が単なる社員ではなく、CDSを発行
していた「デリバティブ部門」だったらしい。
以前の記事 でも示したようにAIGの本業は健全だった。 いわば経営
を追い込んだ「A級戦犯」への高額報酬という事になるんだけど、NY
司法長官からの「ボーナス受け取り従業員リスト」の開示要請にもAIG
はだんまりを決め込んだままだという。
さらには、AIGは契約を盾に支払いの正当性を主張しているんだけど、
この「不当な」支払いに対して司法が対処できないようであれば、立法が
正さなくてはならない。 新たな法律を整備して政府が影響力を及ぼし、
遡及効を発揮すればいい。
1人当たり最大650万ドル(約6億円)の報酬を国民が支払っているという
事だけど、これはAIGだけの独立した問題ではなく、先月にはメリルリンチ
の幹部約700人に1人当たり100万ドル(約1億円)超の報酬が支給されて
いたことも発覚している。 その中のトップブローカー11人に至っては、1人
当たり1000万ドル(10億円弱)を上回る報酬が支払われているのが問題と
なっている。 これは個人給与でみた場合、AIGより遥かに高い。
ウォール街の重役の「金満体質」は、アメリカでも報道合戦が過熱してきた
ようでこうなるとこの流れは止められない。国民負担が続く中、メリルリンチ・
AIGに続き「不当な支給」を行う企業は今後吊し上げられる事になる。
給与面以外でも、以前から公的資金の不透明な使途を問われていたAIG
は、世論やFRBの圧力に屈したのか、15日にはようやく取引先を公表した
模様。その内容は、WSJが報道した内容(公表されたカウンターパーティ)
と一致するもので、金額的にはGS(ゴールドマン・サックス)が129億ドルと
圧倒的に多く、これは何度も言うようだけど、前財務長官・ポールソンが権威
を振りかざした事になる。
AIGへの公的支援は昨年、ポールソンだけでなくガイトナー・NY連銀も主導
していたって事で、CDSの保証金支払いについて米政府は、世論の批判を
かわす為に給与問題を大きくクローズアップしてくるものと思われる。
しかし、その給与問題にしても事前に公的資金の使途を細かくチェックでき
なかった米政府の責任でもあり、政府は民間企業からの「言い値」をそのまま
投入金額としていたのだろうか?給与問題は強欲なモラルハザードと同時に
米政府の危機管理体制の甘さも露呈している事になる。
方向感乏しいNY 2
パンディット(シティCEO)の黒字回復発言から、NYは回復基調って
事なんだけど、「根拠性乏しき上昇」がここ数日続いている事になる。
シティ・JPモルガンチュースに続き、バンカメ(BOA)のケネス・ルイス
CEOも1・2月の黒字回復をアナウンスしたらしいんだけど、要するに
主要3行が揃って「立ち直り」を宣言した為に、「報道ベース」では金融
不安が後退しはじめた、という事になっている。
パンディットの黒字発言があった後の3日間(10‐12日)で、S&Pも上昇
しているんだけど、S&P値上率上位25社のうち、19社は金融セクター
からなっている。(以下 上位25社)
(シティの13日終値は$1.78)
銀行国有化の懸念を払拭するかのように、黒字回復をアピールする
3行首脳なんだけど、前回(方向感乏しいNY) も言ったように評価損を
計上した実際の四半期はどうなるか分からない。
威勢の良い発言が続く主要3行のCEOなんだけど、パンディットとケネス
ルイスに関しては、これまでも誤った見解が多い(ブルームバーグ)と
いう事で、自動車含む「ゾンビ企業」のCEOの発言は既に信憑性が乏しい
ように思える。
仮に黒字を回復できたとしても、プラスorマイナス、どっちつかずの業績
な訳であって、重要なのは当然バランスシートの資産サイドとなる。
要するに、銀行の運命は結局のところ「ストレステスト」 の結果に委ねら
れるのは間違えない。
ただ、たとえ信憑性の薄い話であったとしても、それによって米国民が
景気回復に対して楽観的となり、消費意欲が旺盛になる事は当然悪い話
ではないんだけど、まぁそれによって株価が上昇トレンドに入るのかといえ
ばそう簡単にはいかないものと思われる。
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方向感乏しいNY
NYが反発してたんで、何があったのかと思ったらシティ(NYSE:C) ・
CEO(パンディット)が1・2月の営業黒字達成をアナウンスしたらしく、
それが株価に影響したとかいう報道が多勢を占めていた。
他にも、好材料としてFRBのバーナンキが「システミックリスクの
発見・抑止に向けた規制を設ける必要がある」と発言したり、SEC
も「アップティックルール(空売り規制)の再開を検討する」と公表した
らしい。
「報道ベース」ではさらに、棚上げ状態となっている官民ファンドに
ついて「詳細を数週間以内に公表する」とガイトナーが発言した事も
株価に好影響した、という事になっている。
「秩序的破綻」唱えるバーナンキ
今朝のABCを観ていたら、「底入れとなる気配もある」みたいな報道
だったんだけど、上記の要素のみで楽観的になってるキャスターを
観ていると日米マスコミのレベルはあまり変わらない気がする。
シティの場合は久しぶりの営業黒字って事で、CEOも自信回復と
なったようで、反発した株価に対しても不満を述べたらしい。しかしよく
観てみると、CEOのいう1・2月の収益は「公表済みの評価損を含めない
ベース」であって、その評価損を含めた今四半期となると、EPSが-0.3
前後の赤字の公算が強い(ブルームバーグ)という事になっている。
何とか黒字を確保したとしても、収益よりも評価損の方が問題となって
いる今現在の金融市場では、到底楽観的になれないものと思われ、
現在実施されている銀行セクターへの「ストレステスト」 の結果が出た
時には、大きな失望を再び味わう事になると思われる。
バーナンキの「システミックリスク抑止発言」もNY反発に影響、って報道
なんだけど、今更何言ってんのって感じ。 実際にはそのコメント自体は
株価に影響していないと思われる。バーナンキの講演を見てみると「経営
の悪化した大手金融機関を対象に、破綻処理する法制度が必要」って
言っているんだけど(ロイター)、むしろそっちの方が重要で、要するに
大手金融機関の破綻処理に「FDICモデル」の活用を示唆している。
「too big to fail」の認識が、規律低下に悪影響を及ぼしたっていう正論を
バーナンキが述べた事を、市場が好感したように思えるんだけど、穿った
見方をすれば今現在実施されている米主要行へのストレステストの経過
も「当然」思わしくないように思える。
SECの「空売り規制再開検討」は、株価に直接影響を及ぼすって事で、
まぁ好材料だと思うんだけど、バッドバンク構想 から官民ファンドへと軌道
修正したガイトナーの「不良資産切取り作業」の詳細公表についてもあまり
期待はできないように思える。 (期待薄の官民ファンド)
主旨がよく分からない文面なんだけど、まぁ要するに、反発したNYに対し
ていくつかの後付がなされているんだけど、その一つ一つを観てみると
不確かな要素が占めており、NYは依然として方向感乏しく彷徨う事になる。
(という主旨にする)

