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尾を引く「ネガティブ・エクイティ問題」

マイナスのカーブが大きくなっている日本のGDPなんだけど、昨日発表された速報値は、8年ぶりの「3四半期連続」マイナス成長を示す事になった。


次回の09年1-3月期GDPは、年率換算-12%からさらに悪化しマイナス成長も4四半期連続になる事が予測されていて、深刻なリセッションに証拠を突き付けられる事になるものと思われる。



期待薄の官民ファンド


そんなグローバルリセッションの問題解決へ向けて、米金融機関の不良資産切取り作業が依然として注目を集めてるんだけど、アメリカ政府は明日18日、その具体案を公表するらしい。


バッドバンク構想 から官民が出資する共同ファンド設立へと方向転換された「切り取り作業」なんだけど、住宅価格が下落の一途を辿る中、(彷徨う米住宅市場) 具体的計画発表とはならずに、踏み込もうにも踏み込めない状態が長らく続いていた。


切取り作業をアピールし続けた事が、市場安定のための「ただの時間稼ぎ」と看做されるようになった為、その具体案を迫られたって事なんだけど、民間企業と共同作業を行うことは現実的な選択と思われる一方で、計画自体についてはあまり期待する事はできないように思える。

問題の根源である住宅市場は、底入れにはほど遠く、今年来年とサブプライムローン(ARM型ローン)の金利リセットを迎える住宅購入者の拡大が見込まれていて、住宅価格のさらなる下落は規定路線となっている。


多くの民間企業が官民ファンドに関心を寄せている(米財務省)っていうアナウンスも流れていたんだけど、リスクの高い今回の計画に民間企業が関心を抱いているか極めて疑わしく、そのアナウンス自体嘘っぽい

損失保証をアピールする事で、民間資本を誘い出す今回の計画なんだけど、米国内の民間企業は瀕死の状態って事で、外国資本に対して大きく門戸を開く可能性は高い。



ネガティブ・エクイティの波


その問題の根源である住宅価格の下落なんだけど、今年・来年とサブプライムローン(ARM型)の元本支払い期間を迎える住宅購入者のさらなる拡大が見込まれている。


低金利の優遇期間が3年程続いた後、金利は大きくなり元本の支払いが始まる(金利リセット)しくみとなっているサブプライムローン(ARM型)なんだけど、簡単にいうと、住宅価格の驚異的な高騰が続いた頃に(~06年末) このローンを組んだ人達は、住宅価格の急激な下落によって、バブルの頃の値上がり率を担保価値に含む事ができなくなる


その結果、返済金額は膨らむ一方って事になるんだけど(ネガティブ・エクイティ)、要するに 「金利リセット→支払い延滞→差押さえ」という流れになる。

さらには差し押さえられた物件は「3割引」の競売物件になるようなんだけど、住宅建設業者はそれに対抗してさらなる値引きを強いられるって事で、差押さえがさらなる住宅価格の下落を引き起こす事になる。


果てしないカオス

底入れの予感を全く感じさせない住宅価格 (09/1‐27 S&P)


2006年以降に、サブプライムローン(ARM型)を組んだ人達は、3年後の今年2009年から低金利の優遇期間が終了する「金利リセット」を迎えるって事で、「金利リセット→支払い延滞→差押さえ→住宅価格下落」という悪夢のスパイラルは今後も当面続く事になっている。


住宅価格とRMBS(住宅ローン担保証券)の価値下落は同時進行であり、その上、CMBS(商業用不動産ローン担保証券)も格下げ方向って事で 、米政府は不良資産の買取りと同時に、サブプライムローンの条件を返済可能なものに変更する事が避けられない状況となっている。


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